隣に住んでる美少女は、ばあちゃんらしい   作:猫好きの餅

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温泉の集落よりも癒される場所

 

 

 

 

 

 

 

 ────流泉の衆。

 

 ナタ南部の海辺にある集落に住む、コホラ竜と親しい部族。「毎日をお祭りのように過ごす」がモットーのこの里で、僕は多大なインスピレーションを得ることができた。

 

 水着で入る習慣らしい温泉は僕好みの熱めの温度で、外の冷たい海で泳いだ後に入ると格別だった。魚も採れたてで美味しいし、潮風が心地よい。

 

 そんなこんなで満喫していたら、早くも3日ほど経っていた。稲妻ではあまり海で泳ぐことをしないのでマリンスポーツとやらもなかなか新鮮で面白かった。ただ、メガネを取らなきゃ潜れないことだけが不満だったけど。

 

 

「………でも、さすがにそろそろ帰ろうかな」

 

 いい加減、あのお酒好きな隣人の彼女の顔を見たくなってきた。壁に書き記しは残したから大丈夫だとは思うけど「なんでサソってくれなかったの!?」位のお小言は貰いそうだ。なにかお土産を買っていかなきゃね。

 

 でも、最後にやっぱり温泉には入っていきたい。僕は今一度水着に着替えるとタオルを持って宿の外に出た。

 

「……あ!ゲンモクさんっ!今日も温泉入るの?」

「こんにちは、ムアラニ。…ああ。今日で謎煙の主に戻ろうと思うからね。だから出る前に一度入っておこうかなって」

「そっか〜。…流泉の衆はどうだった?」

「最高だったよ。また暇があいたら是非もう一度来たいね」

 

 ムアラニは嬉しそうによかった〜とはにかむ。そんな彼女に僕は後ろでこっちを見てた青髪の青年と目を合わせると、ムアラニに耳打ちする。

 

「ムアラニ、後ろの子が呼んでるぞ?」

「え?…わかった!……ウル〜っ!どうしたの?」

「えっ!?」

 

 ムアラニは後ろの青年を見ると花が咲くような笑顔を向けて一目散に近づいて行った。いきなりムアラニが笑顔で来たものだからびっくりしたウルと呼ばれた可愛らしい顔立ちの青年は僕に瞬きを返す。

 

 そんな彼に「がんばれ」と口パクで伝えると、温泉へ足を進めた。

 

 

 

 

 

「……っあ〜」

 

 里のちょっと奥まった場所にある温泉。少し熱めのお湯に肩まで身を沈めた僕の口から勝手に声が出た。

 

 温泉と言うと、稲妻にも銭湯がひとつある。そこの番台をしている獏妖怪と神子とでよく酒を呑んでいたのだけど、確かその時に覚孝行を書く流れになったんだっけか。

 

 そんなことを考えながらぼーっと空を見ていると、ひとり、人の気配が近づいてきた。ここは人が少ないから好んで利用してたのだけど、同じ考えの人もいたもんだ。

 

「……おや、先客がいるとは珍しい」

 

 温泉に響いた芯のある勇ましい、美しい声。振り返った先には深紅の髪をまとめた美女が腰に手を当てて立っていた。瞳も真紅で太陽の光輪の様な虹彩に、溢れる炎元素。一目で人間では無いことを悟った僕は言葉を返す。

 

「これは失礼しました。貴方の温泉でしたか?」

「…いや、私が入ると大騒ぎになってしまうからな。人気がないここをよく使っていただけだ。隣、失礼するよ」

 

 そういい、赤いラインが入った黒の競泳水着に包まれた身体をお湯に沈め、ふぅと息を吐く彼女は閉じた目を片方開けて僕に問う。

 

「……君は、謎煙の主に住んでいる稲妻の妖怪か?」

「よくご存知の様で。…あなたは、炎神様で宜しかったですか?」

「敬語はいい。神と言っても君より年下だ。今はマーヴィカと呼んでくれ」

「……いいのかい?」

「今は神としてではなく、ナタの国民としてサーフィンをしに来ただけだからな」

 

 結構、民と距離が近い神のようだ。民と親しい神といえばフォンテーヌのフリーナが思い浮かぶけど、どっちかと言うとスターみたいな感じだし、新鮮だな。

 

「それより、何故私の目を見ないのかは、君の種族が関係しているのか」

「詳しいね」

「シトラリから聞いたんだ」

「シトラリはなんて?」

 

 肩に湯を掛けながら、炎神…マーヴィカは微笑む。

 

「そうだな…君に言える範囲だと、面白い奴。だったかな」

「あはは、なんて反応したらいいのかなそれ」

「そういえば、隣に住んでいるのだろう?ここに来るのはシトラリに話したのか?」

「言おうとしたけど留守だったから、近くの壁にペンキでちょちょっと書いたけど……ど、どうした?」

 

 話してる最中にマーヴィカが目を見開いたので聞いてみると、こめかみを抑えた彼女は「あ〜…だからか…」と小さく呟いた。

 

「まぁ、君とシトラリの問題だからアレだが……、君はいつ謎煙の主に帰るつもりだ?」

「今日の昼過ぎにでも帰ろうと思ったところだよ。温泉の入り収めに来たんだ」

「…そうか。…私的には…なるべく早く戻ることをオススメする」

「うん?……まぁ、わかったよ」

 

 彼女はどこか羨ましそうに僕を見ていた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎神様のお告げもあり、昼ごはんを食べてからという予定を変更。温泉から上がってすぐに帰ることにした。

 

 ここから謎煙の主は闘技場を経由するので着くのは夕方かな?ムアラニにブンブン手を振られて見送られながら集落を出る。少し歩いて少し考えた僕は、やっぱり急いで帰ることにした。なんだか嫌な予感がしたのとマーヴィカが言っていたことが少し引っかかったような感じがしたからだ。

 

 僕は妖力を解放する。

 

 踏み出した脚を強化し、地を蹴ると景色が勢いよく後ろに流れで行く。僕は邪魔になった眼鏡も外して、聖火闘技場に急いだ。

 

 

 

 

 

 聖火闘技場に着くと急いで眼鏡を装着。ささっとシトラリへのお土産(酒とつまみ)を買い揃えると、その足で闘技場を北に出た。温泉で流した汗を帳消しにする勢いで足を動かし、出発してから3時間という速さで謎煙の主の外れにあるシトラリの家の前まで戻ってきた。

 

 ………の、だけど。

 

「……君たち、何してるの?」

 

 僕は、シトラリの家の前の壁に落書きをしている数人の男女に優しく(・・・)問いかける。

 

「あ!アンタがゲンモクってやつか!」

「…黒曜石の老婆が言ってた人ね!」

「……質問に答えて欲しいんだけど」

 

 一瞬、ナタには人の家の前に落書きをするという文化があるのかと思ったけど、流泉の衆や謎煙の主の他の家を見たところ、そういう訳でも無さそうだ。

 

「とりあえず、今回はアンタが俺たちの相手って事なんだよな?」

「……一体、何を言っているかわからないけど。……ここに文字が書いてあっただろう。今は消えてるが、何か知らないか?」

 

 僕がここを出る前に書いたところを指さしながら問うが、知らないと返した青年たちは僕に武器を向けた。槍、剣、棍棒と言った殺傷力がある武器を持っている所と、「今回は」というセリフで僕が居なかったらシトラリにこれらが向いたのだと察した。

 

 僕は妖力を練りながら眼鏡に手をかける。

 

「………これは、正当防衛が成立するのかな」

 

 このまま話し合いに持っていく前に襲いかかってきそうだし、なにか理由があるのだろうがシトラリに武器が向けられるというのは自分の中で嫌悪感を感じた。

 

 ……そんな、大人気ないむしゃくしゃを込めて、眼鏡を外す。クリアになった視界に映った彼らから、僕を見て怖気付いた感情が伝わってきた。

 

「まぁ、いいさ。……どっからでもかかってこいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅ、おおぉ!」

 

 先に動いたのは大剣を持った青年だ。突進の勢いのまま僕の首目掛けて振られた横凪を、潜りながら半身になり、戻す動きで腕を首に回しながら後ろから脚を刈る。

 

 崩れ落ちた青年の手から零れた大剣を拾い上げ、青年の腹を踏みつけて動けなくしてから、隙をついて振られた棍棒を剣の腹で受けた。

 

「くっ、離せっ!」

 

 脚の下の青年がもがいて外そうとしたところに、脚を腹から胸の中央に移動させて妖力を乗せて重くしてやる。青年はようやく自分の状況がわかったのか、脚を抑えながらもミシミシと心臓に向かってくい込んでいく僕の足に顔色を真っ青にしながら震え始めた。

 

 そんな彼を他所に棍棒を持った女性の攻撃を妖力で強化した片手で持った大剣で捌いていく。脚の下の青年には妖力と一緒に殺気も叩きつけたのでもう動けないだろう。

 

 彼の上からどいて、横から僕を狙って走り出そうとした槍使いの青年に大剣をブン投げた。突然飛んできた武器に驚いた青年は辛くもしゃがんで躱すが、避ける力を全て使ってしまったので、次に飛んできたモノは無理だったようだ。

 

「ぐぅ!?」

「きゃぁ!?」

 

 棍棒を振りかぶる瞬間に入身。腕をとって背負い投げをして飛んでった女性ともつれ合うように倒れた槍使いが目を回している。

 

 倒れた大剣使いも僕を見て動けないでいるようで、どうやら勝負が着いたようだ。汗ひとつ書いてない僕は眼鏡をかけ直す。

 

「……で、どういうつもりか教えてもら「あ、ありがとうございましたぁ〜!!」えっ、ちょ」

 

 なんでこんなことをしたのか聞こうとした矢先、起き上がった3人は僕に向かってビシィと綺麗なお辞儀をかますと一目散に帰って行った。

 

「い…いや、せめて消してけよ…」

「いいのよ。それはワタシが消すものだから」

 

 僕の呟きに、返す声があった。横を着くと、逃げてく青年たちを見るお隣さんの姿が。

 

「……消すもの?」

「あのコ達はシャーマンの試練の一環でワタシに挑みに来たの。壁にラクガキをするのが挑戦状よ」

「あ、なるほど……」

 

 ってことは、僕結構やらかした?シトラリに挑む予定だった子達を返り討ちにしちゃったけど……。

 

 僕はシトラリの方を向き、謝ろうとしたところで。

 

 ぱちんっ。

 

「いひっ?」

「…………ねぇ」

 

 シトラリに両頬を手で挟まれる。意味がわからずぱちくりと瞬きを返すと、俯いたシトラリが低い声で尋ねてくる。

 

「ドコ、行ってたの?」

「りゅ、流泉の衆……だけど……」

「…………何をシに?」

「小説のインスピレーションを……」

 

「……んでよ」

「え?」

 

 ポツリと聞こえた言葉の意味がわからず聞き返すと、バッとシトラリが顔を上げる。その顔は怒ったような顔をしていて、目尻には涙が溜まっていた。

 

「えっ、し、シトラリ?」

「なんでっ、ワタシに黙って言っちゃったワケ!?………ぐすっ、……て、てっきりワタシ……」

「ちょ、だ、黙ってって……書き置きは残したよ!?」

「ウソっ!どこにもなかったわよっ!」

「そこの壁に書いたんだって。書くものがなかったから端の方に『数日出かけてきます』って!」

 

 俺がそう言うと、シトラリはハッとした顔になった。

 

「……そういうコトね………あのコ達……!」

 

 どうやら、わかって貰えたようだ。僕の頬を挟んでいた手が離れる。

 

「……あ、えっと。なんかごめん……心配かけちゃったみたいで」

「心配っていうか………でも、よかった…帰ってきてくれて」

「そりゃ帰るよ。流泉の衆はなかなかに良かったけど、やっぱりココが1番だからね」

 

 シトラリは本当に心から安心したような笑みを浮かべた。

 

「えっと、……ただいま?」

「ふふっ、おかえりなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荷物を置いて、壁のラクガキを消した後。

 

 久しぶりに酒を飲まないかとシトラリに誘われた。僕の方もそのつもりだったので快諾し、買ってきたお酒を取り出す。

 

「じゃ、……入って?」

「え」

 

 そのまま外で飲もうと思ったのだけど、シトラリが赤い顔をして自分の家を指差すものだから思わず固まる。

 

「……えっ、と、シトラリの家?」

「そうよ。いつもそっちの天幕にいれてもらってばっかじゃない。偶にはイイでしょ?」

 

 そういい、僕の着物の袖をつまんで言ってくるシトラリ。

 

 僕は女性一人暮らしの部屋に入るのは如何なものかと思ったのだが、唇をとんがらせるシトラリが可愛らしくてついつい頷いてしまった。

 

 話を聞くと、3日前も僕をお酒に誘おうとしていたらしい。それは悪いことをしちゃったなと反省した。

 

 初めて入ったシトラリの部屋は、意外とと言っては失礼かな?綺麗に片付いていた。壁にある大きな本棚にはたくさんの娯楽小説が入っている。

 

「お邪魔します」

「テキトーなとこに座って?」

 

 そう言われカーペットに腰を降ろすと、僕のすぐ隣にシトラリが座った。

 

 金属でできた杯にとくとくと音を立てて酒が注がれていく。買ってきたつまみも適当に広げると、満面の笑みのシトラリが杯を出てきた。

 

「……それじゃあ、乾杯しましょ?」

「うん。……じゃ、再会?……に乾杯」

 

 合わせた杯からコツンと音がなり、ささやかな再会の宴が始まった。

 

 

 

 

 

 ………始まったのだけど。

 

「…んもぉ〜!幻目がトツゼンいなくなって、ワタシ心配したんだからねぇっ!」

「あはは、ごめんって」

 

 僕は、早速酔っ払ったシトラリによる絡み酒の被害に遭っていた。

 

 でも、心配かけてしまったのは事実だし、ここは好きにさせておこうと自分も酒を1口飲む。

 

「僕の方こそ、シャーマンの試練だったなんて知らなくて。余計なことをしたよ」

「んーん!それを話してなかったワタシも悪いわ!」

 

 お互いに謝りあっているところアレなんだけどさ。ひとつ問題となることがあるんだけど。

 

 乾杯前ですら近かった距離が酔っ払ったことでオーバーランし、胡座をかく僕の肩と、すぐ隣で女の子座りしているシトラリの肩が密着する。

 

 横を見るとシトラリは美味しそうに酒を呑んでいて気にしている様子は無さそうだけど。

 

「ねぇ…1つキいてもいい?」

「なんだい?」

「さっき……ワタシの代わりに試練の相手をしてたトキ……キミ、なんだか怒ってなかった?」

「あ〜………見てたんだ……そのさ」

 

 シトラリがじっと僕を見つめる中、酒を一気に煽って飲み干すとアルコールに任せて言い放った。

 

「……もしかしたら、シトラリを襲いに来たヤツらなんじゃないかって思ったんだよ。……君が危険な目にあってないかって思ったら、ね」

「……ふふっ♪」

 

 シトラリは僕の言葉にちょっとだけ呆気に取られれてたけど意味を理解して嬉しそうに笑った。僕も酔いが回って来たのか、その顔がかわいいなと素直に感じた。

 

「……ありがと」

 

 すると、何を思ったのかシトラリが僕の肩に寄りかかってきた。二の腕に彼女の女性の象徴が着弾し、極上の感触と共に簡単に形が変わる。

 

「し、しとらり?」

「……うれしい」

 

 シトラリの顔を見ると、酔いが回っているせいか顔が真っ赤で僕の顔を真っ直ぐに見てきている。そんな彼女に僕もついに当てられた。

 

 隣のシトラリを見ないようにしている間に結構僕も飲んでしまったらしい。ふわふわして思考がまとまらない。

 

 僕は、とりあえず寄りかかってきているシトラリの腰に腕を回して抱き寄せた。

 

「ひゃぁ…っ、幻目?」

「こうした方が、楽だよ」

 

 いやいや、何を言ってるんだ僕は。ただのセクハラじゃないか。

 

 でも、彼女の細い腰に回した腕は言うことを聞いてくれなかった。

 

「……ふふっ」

 

 シトラリも寄りかかったまま甘えるように擦り寄ってくる。これはマズイ。お互い酔っ払ってくっついて、しかもほとんど密室。

 

「……ね、メガネとって?」

「え、いやコレは…」

「いいからっ」

 

 シトラリが僕の眼鏡を取ろうとして寄りかかりを強めた瞬間。僕の腹筋に限界が訪れ、そのままシトラリごと後ろに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 ……あとほんの少し動いたら当たりそうなくらい目の前に、シトラリの顔がある。そして彼女の手で眼鏡が取られていた。

 

 身体の上に乗っかるようにしてシトラリがいるため身体が感じている情報としては柔らかい、いい匂い、暖かいがあるが、極力無視して取られた眼鏡に僕は焦る。

 

 とくに酔っ払った人の心の中なんて読まない方がいい。僕は彼女の顔から目を逸らそうと……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ぁ〜♡…好きぃぃ』

 

 

 

 

 

 

 ─────強烈に届いた感情に、目が離せなかった。




( ゚∀゚)o彡゜ばーちゃん!ばーちゃん!

コーヒー足りてますかぁ?

  • 足りるかぁぁ!!!
  • もっとくれぇ!相殺できねぇよォ!
  • コーヒー1杯で乗り切ってみせるっ!!!
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