隣に住んでる美少女は、ばあちゃんらしい   作:猫好きの餅

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決意と勘違いと。

 

 

 

 

 

「『……いいわよ……?』」

「っ!?」

 

 目の前は絶景。

 

 白いワンピース状のフード付きのパジャマの前を完全に開け、その中の何も身につけてない素肌を僕に晒しながら、蕩けた顔でシトラリはそう言った。

 

 僕は、何も考えれられず、呆然とシトラリの身体に目を通してしまう。

 

「……あ、あんまりミないで…は、はずかしいから」

 

 そんなことを言いながらも、彼女の手は身体を隠すバジャマの前を更に開けた。本当に隠す場所が無くなり、シトラリの身体が余すことなく僕の目に飛び込んでくる。

 

 本当に200歳のおばあちゃんかと問いたくなるくらいには、綺麗な体だった。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでる最高のバランス。

 

 ……ヤバい。本当にやばい。止まらない。酔っ払った頭が、妖怪としての本能が「襲え」と強く僕の身体を押してくる。

 

 現に、僕の手が彼女の身体へ向かおうとしている。シトラリのそれに気がついたのか、嬉しそうな顔をして僕の顔をじっと見ていた。

 

 

 

 ………でも。僕は一つだけ、どうしても譲れないことがあった。

 

 

 

 ここ1週間一緒に飲んで、シトラリが記憶を飛ばす酒の量に当てが着いてきた。横をちらりと見て転がってる瓶の数的に、今日は特に飲んだ可能性が高い。

 

 

 つまり、もしここで僕と一線を超えてしまっても、それが記憶に残る確率は低いということ。

 

 

 それは、少し嫌だった。……だから。

 

 

「………シトラリ」

「……え」

 

 僕は、完全に開いたパジャマの前を閉じ直す。目を見開いたシトラリに、僕は安心させるように笑いかけた。

 

「……ううん、ダメなんかじゃない。凄く嬉しいよ。…でもね、こういうことは、ちゃんと……ちゃんと段階を踏んでしたいんだ」

「……幻目…」

「だから、今度……お互い素面の時に話そう?……ごめんね。こんな、君の勇気を踏みにじる真似をして」

 

 シトラリは、パジャマのチャックを閉じた。身体を起こした僕の着物の裾をつまむ。

 

「……ううん。ワタシの方こそ……」

「シトラリが謝ることは無いよ」

 

 シトラリの手が着物の裾から僕の手に移動する。僕が手を開いて迎え入れると控えめに握ってきたので、意志を示すために彼女の指の間に指を絡ませる。

 

「…っ」

「……明日、また話そう」

「……うん」

 

 シトラリは、安心したように僕の肩に顔を擦り付ける。甘えるように頬擦りをするシトラリと、僕は朝までずっと手を繋いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 

「……よしっ!」

 

 気合いを入れるために自分の両頬を張る。じんじん痛む頬に清々しい気持ちで自分の天幕を出る。シトラリの家の方を見るが、まだ本人は起きてないようで、しんと静まり返っていた。

 

「……さて」

 

 これからどうしようか。

 

 確認だけど、僕はシトラリのことが好きだ。……そして、シトラリも……。

 

 そこまで考えて、頬が暑くなるのを感じた。昨日、一線を超える寸前まで行ったし、シトラリの身体を余すところなく全て見てしまった。未だに忘れることが出来ない男としての最高の絶景に、僕はブンブンと頭を振った。

 

 と、とりあえず。お互い、気持ちは同じということだ。だからこそ、ちゃんと素面の時に話したかった。

 

 そして今度こそ彼女と……。……シトラリ、身体綺麗だったなぁ…。

 

 僕はまた頭をブンブン振って煩悩を払う。ダメだ。昨日の刺激が強すぎた。欲が薄い方だと言う自覚があった僕だけど、やっぱり根っこは妖怪なのか……。こんな話神子に聞かれたらそれをそのまま小説にして出版されかねない。

 

 と、そこまで考えたところで、1つ思うことがあった。

 

 

「……僕、これからどうするんだ?」

 

 元々、ナタには小説を書きに来た。ある程度インスピレーションが溜まって、新作が出せそうになったら稲妻に帰る予定だったけど、当初ともう事情が変わってる。

 

 ここに永住してシトラリと添い遂げるとして(妄想)、一度も稲妻に帰らないのもあれだよね。なんならこっちに住むなら向こうから持ってきたいものもいくつかあるし……、挨拶したい人もいる。

 

 僕ははぁ、とため息を着くと、ぽろりと口からこぼした。

 

 

 

 

「………稲妻に、帰らなきゃなぁ」

 

 

 バタン!

 

 直後、大きな音がして隣の家の扉が開いた。びっくりしてそっちを見ると、いつもの格好のシトラリが大きく目を見開いて僕を見ている。

 

「お、おはよう。……どうしたの?」

「………や」

「……え?」

 

 

 俯いて表情が見えないシトラリから、漏れた声がよく聞こえなかったので聞き返すと、彼女は僕の方に走ってくる。

 

「し、シトラリ?」

「…イヤっ、イヤよそんなの!」

「な、なにを言っ…うわ!」

 

 シトラリに押された僕は、天幕の中に逆戻り。寝床に足を取られてシトラリ共々倒れ込む。

 

 シトラリは僕の胸に顔を押し付けていやいやと首を振っていた。何がなんだかわからない僕は「?」が飛び交う頭の中、とりあえず問いかけようとした。

 

「ほ、ほんとにどうし…んっ!?」

「んっ」

 

 僕のセリフは、途中で塞がれた。

 

 目の前に、目を閉じたシトラリの綺麗な顔がある。そして唇には信じられないくらい柔らかい感触。

 

「……ん、…ふ……んぅ…ん」

 

 シトラリは僕に身体を密着させながら、柔らかい唇で僕の唇を包んでくる。次第に僕の強ばっていた身体から力が抜け、シトラリの身体を抱きしめる。

 

「……ん……ちゅ……っ」

 

 時間にして10秒ほどのキスを終えて、シトラリは唇を離した。お互いに顔が真っ赤だ。シトラリは、僕の裾を掴んで離そうとしない。

 

「やだっ!幻目……稲妻に帰らないでっ……!」

「え、帰るって…」

「だって、昨日のワタシの行動でキライになっちゃったんでしょ?……ゴメンなさいっ!謝るからっ、…居なくならないでよぉ…!」

 

 シトラリは涙目でひしっと僕に抱きついてくる。訳が分からなかった僕だけど、彼女の言葉でやっとわかった。シトラリは勘違いをしてるんだ。

 

「……シトラリ」

「いやっ、絶対離れないからねっ!……幻目がワタシの前からいなくなるなんて、もう耐えられない…!」

「いやあの、さっきのは…」

「ヤダっ!聞きたくない…!」

「だー!もうっ!」

 

 埒が明かない。僕はシトラリを落ち着かせようと、起き上がって背中に回した手を上に持ってきて彼女の頭を撫でた。

 

 安心させるように優しく撫でていると、シトラリが顔を上げる。不安と期待が混ざった顔で僕を見上げているシトラリに、追い打ちをかける。

 

「……シトラリ」

「な、ナニ…ぁ、……んっ」

 

 顔を近づけると何をしようとしてるのか伝わったようで、シトラリは嬉しそうな声を漏らして目を閉じて顔を傾けた。そんな彼女の唇に自分の唇を重ねる。

 

「ん……ちゅっ……んぅん…」

 

 今度はさっきよりも長めに。キスをしながらも頭を撫でるのは辞めずに、もう片方の手でシトラリを離さないとばかりに抱きしめる。

 

「シトラリ」

「幻目……」

 

 唇を離し、シトラリの顔を上げさせる。先程の不安そうな顔が取れて、満たされたような、ほわほわとした顔に早変わりしたシトラリに、僕の気持ちをぶつけた。

 

 

「君が好きだ」

「…っ」

「……シトラリ?」

「……ほ、ホント?……本当に……?」

「こんな時に嘘なんかつかないよ。………シトラリ。君のことが好きだ」

「ぅ」

 

 シトラリはぼっ!と音が立ちそうな勢いで顔を真っ赤に染めた。「ぁ…そ、その……ぅ……ぁ……」と言葉にならない言葉が口からこぼれて逃げようとするが、僕がしっかり抱きしめて離さない。

 

「シトラリは?……返事を聞かせてくれない?」

「わ、ワタシは……ワタシも……貴方のことが……スキ……」

「うん、しってた」

「…う、ううううう!……ば、ばか…」

 

 そう言いつつも、とても安心した。シトラリも唸っていたが、僕が彼女の顎に手を添えると、期待した顔で僕を見上げる。

 

「……好きだ」

「スキっ……ん」

 

 気持ちが通じあったところで、改めて唇を重ねる。さっきよりも心做しか唇が熱いような気がする。って、多分僕もか。

 

 唇を離すと、僕に全力で抱きつきながらシトラリが聞いてくる。

 

「……ね、ワタシたち、コイビト……ってことでいいのよね?」

「ああ。是非お願いしたいな」

「……うんっ。……………あ、そういえば、さっきの……稲妻に帰らなきゃってのはどういうイミよ」

「え、言葉に出てた?」

「出てたわよっ、だから、ワタシ……」

 

 ああ、なるほど。僕はむくれるシトラリに言葉の意味を説明した。

 

「……その、稲妻に帰らなきゃって言うのは、……シトラリと添い遂げたいから、その前に挨拶に稲妻に戻らなきゃなって」

「添い遂…っ!?」

 

 シトラリは口を手で押えて真っ赤っか。書く言う僕も頬があっついあっつい。天幕に静寂が訪れ、気まずくなった僕は咳払いをした。

 

「ん、んんっ、だからその、シトラリが心配することはなんにもないから……安心してくれ」

「か、帰ってきたら…どうするの?」

「どうするって……?」

「だ、だって……」

 

 シトラリは、もじもじしながら、上目遣いでちらちらと僕の方を見る。

 

「添い遂げ……るってコトは、……昨日の続きを…」

「あっ」

 

 言ってる意味がやっとわかった。それと同時に脳裏に刻み込まれたシトラリの裸がフラッシュバックして、なんとも言えない気分になる。

 

「……それとも、……今……?」

「っ」

「さ、さっきおフロに入ってきたし……幻目さえ良ければ……」

 

 僕はここになって今更、自分を止めるブレーキがこの会話で全て吹き飛んでいることに気がついた。

 

 そして僕は妖怪。理性よりも本能の方が元来強く出る。

 

 僕はおもむろにメガネを外した。心が読めるようになった状態でシトラリを見る。

 

 シトラリはメガネを取った僕を見て嬉しそうに微笑んだ。

 

「『……シましょ?』」

 

 あ、もうダメだ。あかん。止まらない。

 

 僕がシトラリに肩に手を乗せ、昨日のように押し倒そうとしたところで。

 

 

 

「……じいちゃん?ばあちゃん?」

「「っ!?!?」」

 

 天幕の外からオロルンの声が聞こえて、僕とシトラリはココ最近で1番早く身体を動かした。僕は妖力まで使って全力で彼女から離れ、シトラリは元素力で身体を浮かせて僕の反対側に立つ。その2秒後にオロルンが顔を覗かせた。

 

「ん、こっちにいたのか」

「や、やぁオロルン。何か用かい?」

「ど、どうしたの?こんな時間に珍しいわね」

 

 オロルンは、不自然な位置に立つ僕たちに一瞬首を傾げたが、手に持った野菜を見せてきた。

 

「今朝、いい野菜たちが採れたんだ。じいちゃんにあげたら喜ぶかなっておもって」

「あ、ああ。ありがとう」

 

 やけに上機嫌なのはそれが理由か。ホクホク顔のオロルンから野菜を受け取る。実際野菜の質はとても良かった。

 

 オロルンは、じゃあ僕は戻るよと踵を返したところで、なにか思い出したのか振り返った。

 

「そういえばばぁちゃん」

「ん、ナニ?」

「昨日の続きって、なんだ?」

「……っ!?こ、ここどもにはまだ早いわよっ!」

「ちょ、シトラリ!?それ捉えようによっては隠せてないぞっ!」

「……あっ!」

 

 テンパってほぼ答えを言ってしまったシトラリだが、幸いオロルンには伝わらなかった。そのまま集落の方に歩いていくオロルンを見送ったところで。

 

「ほんと、いい教育してるね」

「でしょ?」

 

 手を振りながら僕らは顔を見合わせると、どちらからともなく笑う。

 

「なんだか、逆に緊張解けた気がするよ」

「ワタシも」

 

 シトラリは腰に手を当てて、僕の方に向き直る。

 

「幻目……ワタシは、貴方のことが好きよ。………コイビトになってくれる?」

「ああ。喜んで」

 

 僕も微笑み返しながらそう言うと、シトラリは輝くような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そういえば、あんなに飲んだのに記憶残ってたの?」

「えっ、…あ〜……」

「やっぱり、記憶飛ぶのは嘘か」

「……その、ゴメンなさい……。どうにかアプローチ出来ないかって、色々考えてて……」

「そ、そうなんだ……その、役得だったし、さ、最高でした」

「あ、アリガト……」

 

「「………」」

 

 僕らは同時に真っ赤になった顔を両手で覆った。

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