転生したのもお前のせいだなイシュメール!!   作:ピークォドタウン在住

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5.5章やってました。格好いい過去作キャラを見ると図書館やりたい衝動に駆られるけど確実に時間が無くなるので楽しみに取っておく。


04/共闘、乱入スクラッパー

 

 

 オデュッセイア海洋高等学校本校舎。

 メガフロート港に建てられた第二校舎と違いキヴォトスの海岸付近にあるこの学校には外部への鯨油や幻想鯨素材の取引を行う為の市場があり交易拠点として活気に溢れている。

 かつては一般的な学区だったが、潤沢な資金によって改築を繰り返し鯨油の精製工場や取引を行う場等を整えていった結果、三大校と同じような規模の学区となったのだ。

 

 明るい喧噪を響かせる市場の中を、先生と生徒達は歩いていく。

 

「わぁ! 見て見てホシノちゃん! 暗幕鰭鯨のヒレジャーキーが売ってるよ! 買ってっちゃおうかなぁ……」

 

「うへぇ~、昔より鯨肉が多いねぇ。この穴掌鯨なんて前まで何隻か捕鯨船持ってかれてたのに、もう対策出来たんだぁ。あとユメ先輩? 無駄使いは駄目だってば」

 

「あ、これ綺麗だなぁ、買っちゃお」

 

「“な、なんというか、慣れてるね二人とも”」

 

「昔ホシノちゃんと一緒にこの辺でバイト帰りの食べ歩きとかしてたからねぇ」

 

「食べ歩きしてたのユメ先輩だけだったじゃん、オデュッセイアの整備用潤滑油の質が良くてたまに買いに来てたんだよねぇ」

 

 キョロキョロと所在無さげに辺りを見回す先生と便利屋ブルーローズ、久しぶりに来たと好奇心を露わにしながらも周囲を警戒するC&C、自然体で市場を楽しむユメとホシノとアスナ。

 三者三様の反応を示す集団に奇異の目を向ける者はいても金目当てに絡んでくる生徒は一人もいなかった。

 

「何というか、ブラックマーケットよりも治安が良いですよね……。強盗の格好の的になりそうなお店ばっかりですけど……」

 

「いや、その心配はないだろう」

 

「あぁ、ヒヨリっつったな。ここにいる奴らは全員強ぇぞ、別の学校の一般生徒とは比べもんにならねぇ位戦闘慣れしてやがる」

 

 鯨肉の串焼きを両手に持つヒヨリの言葉にサオリとネルが否定を返す。

 セーラー服を身につけるオデュッセイアの一般生徒達はそれぞれの銃と共にハープーンを背負っている。キヴォトスでも異例の近接戦闘に重きを置いた自治区だ。

 

「ここの子達はみんな戦闘訓練積んでるからね~、よそから来た不良程度なら中等部の子達だけでも鎮圧出来るよ」

 

「全員訓練を受けてるって、……戦わなきゃいけない理由もないんじゃないの? こんなに、平和そうなのに」

 

 フラフラと露店に立ち寄ろうとするユメを引っ張りながら答えたホシノにミサキが疑問を投げかけるが、それに答えたのはユメだった。

 

「ううん、皆が戦えるだけの力が無いといけないんだよ。自衛も出来なきゃご飯になっちゃうから」

 

「……? それってどういう――」

 

『キングクラップ蟹の襲来を感知しました。5番海岸及び6番海岸にお越しの方は直ちに避難してください。造船部及び武具開発部が現場へ急行致しますので手隙の生徒皆様は海岸防衛に参加されますようお願いいたします』

 

 アツコが聞き返そうとした瞬間、サイレンと共に焦燥を煽る様なメッセージが辺りに響く。

 それと同時に市場を歩いていたオデュッセイアの生徒が一斉にハープーンを手に取って海岸へと走り出した。

 

「駆除係は何やってるのさ!」

 

「どうせチマチマ武器漁ってるのに気づかなかったんだろ、海の中だと擬態完璧だからな」

 

「んなもんどうだって良いだろ! 久々のスクラップ狩りだ!」

 

「キングいるって言ってたっけ? 流石に私達じゃ無理だよ?」

 

「大丈夫だって、すぐオルガさんが来るからさ」

 

「――あれ? あ、ホシノじゃん! 久しぶり!」

 

 血気盛んに海岸へと走っていく生徒達の中の一人がホシノに気付き話しかけてくる。

 

「あ~、久しぶり、ミカ。レインはどうしたの?」

 

「医療用精製鯨油の申請に行ったよ、すぐ戻ってくるでしょ。にしてもタイミング悪かったね、そっちの人達は観光?」

 

「色々あって生徒会長に呼ばれたんだよぉ、ミカちゃん。私達も手伝った方が良い?」

 

「あ、ユメさんも久しぶりです! そうですね、手伝ってくれた方がありがたいです、万が一市場の方にまで被害が拡大したら大変ですし」

 

 紅い髪の活発な生徒と挨拶を交わしたホシノとユメが先生に向き直る。

 

「皆はオデュッセイアの自治区の戦い方を見た事は無いんだっけ、いい機会だから加勢してみようよ。いきなりだとびっくりしちゃうかもだけど」

 

「どうします? 先生。助けに行っても生徒会長さんは怒らないと思いますけど」

 

「“うん、助けに行こうか”」

 

 あの盛り上がり具合を見る限り助けに行く必要も無いだろうが、だからと言って先生は何もせず立ち去るなんて真似は出来なかった。

 それにオデュッセイアの生徒の戦い方という物にも先生は興味があった。いつぞやのカジノ船ではハープーンを背負ってはいたが銃による制圧が主だったので。

 

 ミカと名乗った少女の案内に従い、先生達は海岸へと向かった。

 

 

 

 銃声、喧噪、その中に混じるギシギシと金属同士が擦れる音。

 

 一行を出迎えたのはそんな耳障りな騒音だった。

 

 海の底から這いあがってくる巨大なヤドカリの様な生物の群れ。

 一際目を引くのは毒々しい緑の体色と、宿代わりに背にくっ付けた無数の兵器の残骸だった。

 

「先生、あれがクラップ蟹です。海の底に沈んだ銃やら大砲やらを背負って敵に向けて使ってくる知能の高い蟹なんですよ。兵器を使える原理として鯨油に似た性質の泡で癒着させて自身の神秘を用いて弾丸の補充や操作を行っているんだとか」

 

「その性質から一応は小型の幻想鯨の一種として認定されてるらしいねぇ~。基本的に何でも効くけど一定以上の火力じゃないとダメージが通らないからスナイパー以外は距離を詰めて戦うのをお勧めするよ」

 

 ユメとホシノの言葉に耳を傾けながら、先生はシッテムの箱を起動する。

 いくつかのクラップ蟹の群れが纏まりながら砂浜に侵入し、それを囲むようにオデュッセイアの生徒達が応戦して足止めをしているが、その戦闘方法に先生は目を奪われた。

 

「“ほ、本当に銛で戦ってる……”」

 

 クラップ蟹のハサミによる攻撃を避け、反撃とばかりに手に持つハープーンで頭部を勢いよく突き、甲殻に罅の入った個所を銃による追撃で破壊。

 相手が混乱して甲羅の兵器をやたらと振り回す所を冷静に対処して兵器を一つずつ剥がし、ハープーンで足を切り飛ばしながら頭部を貫く。この工程を複数人の生徒で手慣れた様に行っていた。

 時々クラップ蟹が背負う銃器が生徒の身体を撃つも衝撃を強引に抑え込み相手の銃をハープーンで弾き飛ばし、笑いながら戦闘を続けていた。

 

「嘘……、怖くないの? あの子達」

 

「怖くないと言ったら噓になるだろうけど、どうせ治るって考えてる子達ばっかりだからねぇ」

 

「あぁ、医療用精製鯨油か」

 

 医療用精製鯨油、先生はその名前をホシノとユメから聞いた事があった。かつてユメを死の淵から救った極めて即効性の高い回復薬であると。

 好戦的な子ほど近接戦を好む傾向にあるキヴォトスでも、皆が皆銃ではなく近接武器を振り回すのはおかしいんじゃないかと考えていたが、その背景にすぐに怪我が治る薬品の存在があるのならそれも納得と言えよう。

 

 しかも相手が通常の銃火器の効果が薄い相手で、ハープーンで直接外殻を裂かなければ碌にダメージも通らないとなれば、猶更か。

 

「“……これは、思ってたよりも毛色が違いすぎるね。ユメにブルーローズを、ホシノにC&Cを付けるから二人は自由に行動して。私達はサポートに回ろう、キングクラップ蟹とかいうのが出てきたら一度集合で”」

 

『――了解!』

 

「“それじゃあ、戦闘開始!”」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ユメ達は三人でクラップ蟹の群れを抑えていたオデュッセイアの生徒達の加勢に向かい、サオリとヒヨリの両名が先んじて射撃を行い注意を惹きつける事に成功した。

 

「この数なら纏めて私達が引き受けるよ! 貴女達は別の場所の手伝いをしてあげて!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ショットガン2匹、サブマシンガン1匹、ロケラン1匹、後ハープーンランチャー持ちが1匹です! 気を付けて!」

 

「おら喰らえやクソ蟹共!」

 

 三人は置き土産とばかりにスタングレネードを群れの真ん中に放り込み、戦線を離脱した。

 一人が言っていたように、背中にそれぞれ違う武装を背負ったクラップ蟹がユメ達に対して威嚇を行った。

 

「初戦闘だけど、皆なら大丈夫だよ。注意すべきは背中の武器よりハサミだけど、後ろのハープーンランチャー持ちが攻撃してきたら逃げて、私が対処する」

 

『“さっきまでの戦闘で身体に罅が入ってる所があるね、マーキングしておくよ。被弾を軽視せず広い視野を持って各自撃破と行こう”』

 

 ユメの激励と先生の指揮によって四人から緊張が抜け、自然体で戦闘に移行した。

 

 ショットガンを背負うクラップ蟹の片方をユメ、もう片方をアツコとサオリが接近して攻撃を行い、ヒヨリとミサキは後方から三人の支援を行う。

 ユメがクラップ蟹の振り下ろしたハサミを大盾で受け止め、シッテムの箱の力で赤い光を帯びたクラップ蟹の罅に銃剣を打ち込んで至近距離で発砲。体内を貫通する威力の射撃によって致命的な隙を晒したクラップ蟹はヒヨリの狙撃によって完全に絶命した。

 

「ヒヨリちゃんナイス!」

 

「えへへ……褒められちゃいました」

 

 即座にサブマシンガンを背負うクラップ蟹の対処に向かうユメ。

 アツコとサオリもまた、相手の攻撃を全て躱し、頭部の罅に集中的に攻撃を加えてクラップ蟹の撃破に成功。息つく二人に向けてロケットランチャーを放とうとするクラップ蟹の背にミサキの爆撃が直撃し、誘爆する。

 

「助かった、ミサキ」

 

「ありがと」

 

「良いから早い所残りを片して、二人とも」

 

『“ミサキ、ユメの加勢をして数を減らそう”』

 

「了解」

 

 動きを止めるロケットランチャーのクラップ蟹へと向かうアツコとサオリを一瞥したミサキはユメの援護を行う為に場所を移動する。

 後方へと下がりながらサブマシンガンを放ち続けるクラップ蟹の攻撃をユメが受け止め続け、銃撃の切れ目に合わせてユメとヒヨリが攻撃を行い着実に相手の体力を削っていく。

 

「加勢するよ」

 

 そこへミサキのロケットランチャーによる爆撃が直撃し、予期せぬ追撃により体勢を崩したクラップ蟹の頭部にユメのゼロ距離狙撃が命中し討伐に成功した。

 

「ありがと~、ミサキちゃん」

 

「ヒヨリもいるのに時間かけすぎだって」

 

「うぅ、あの蟹硬いんですよぉ……」

 

『“――ッ! ユメ! 最後方のクラップ蟹が!”』

 

 群れが残り二体となった事で焦ったのかハープーンランチャーを背負ったクラップ蟹が背中の武装を戦闘中のサオリとアツコへ向け始めた。

 

「――任せて! 私があいつを抑えるから皆はサオリちゃん達の加勢に入って!」

 

 ハープーンランチャーの射線上へ飛び出したユメが大盾を構え、打ち出されたハープーンを上空へ弾き飛ばす。

 

「……また助けられてしまったな、アツコ」

 

「うん、早く片付けてユメさんを助けにいこう」

 

 アツコとサオリの二人に翻弄されていたロケットランチャークラップ蟹はブルーローズ四人が揃った事で成すすべなく打ち倒され、残るクラップ蟹もまた五人の力で迅速に処理された。

 

「ふいぃ、お疲れさま。いつもと勝手が違う戦闘だったけど大丈夫だった?」

 

「私はあまりお役に立てませんでした……。あの甲羅は硬くて嫌ですね、やっぱり罅が入らないと……」

 

「そんな事は無いさ、どうにも衝撃に弱いようだからヒヨリもミサキも奴への牽制には十分な威力だった」

 

「どっちにしろ罅を入れる手段はサオリ姉さんかユメさんに頼らざるを得ないだろうけどね……」

 

「だとしても今ので勝手は掴めた。次はもっと早く対処できるよ」

 

『“……みんな、ホシノの方に合流しよう”』

 

 五人が勝利の余韻の中で戦闘の感想を語り合っていると海の方で不穏な影が蠢く。

 幾つもの棘の生えた鋼の様な小島が海の底から現れようとしていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「こっちは火力担当が多いから各個撃破で行くよ~」

 

 8体の群れに対処していた五人のオデュッセイアの生徒達から戦線を引き継いだホシノは、敵の編成を一目見て対処の難しいクラップ蟹が少ない事に安堵した。

 

「先生の力で罅が入ってる箇所が分かるからネルちゃんとアスナちゃんとトキちゃんで各個撃破していって、カリンちゃんのライフルなら蟹の甲殻に罅を入れられるからアカネちゃんと一緒に全体の行動妨害を」

 

「ホシノ先輩はー?」

 

「右のハープーン持ちだけは初見だと対処が難しいから私が倒すよ。さっさと倒してそっちの支援に入るから安心してね」

 

「は、言ってろ。すぐに片付けてやる」

 

 ホシノが敵陣に突撃し、何本ものハープーンを背中に張り付けたクラップ蟹をシールドで群れから弾き飛ばす。

 それに続きネルとアスナがクラップ蟹へと突撃を仕掛ける。7体のクラップ蟹が一斉に背中の武装を向けるが、アスナとネルの頭上をコンパクトなパワードスーツを纏ったトキが跳躍し群れの上空から攻撃を行う。

 

「リオ様に調整して頂いた改修型パワードスーツの実地試験と行きましょう。水生生物には電気と相場が決まっていますが、これは効きますかね?」

 

 群れのクラップ蟹の甲殻に杭が撃ち込まれ、けたたましい音と共に青白く放電する。内側から迸る電流によってクラップ蟹は少なくないダメージと共に足を止めた。

 

「わぁ、凄いねトキちゃん!」

 

「オデュッセイアとの共同開発武装の一種、パラライズニードルです。数は多くありませんが、これだけの隙があれば十分でしょう」

 

「へぇ、確かに硬ぇが動きが鈍けりゃどうって事ねぇな!」

 

 アスナとネルが最前列のアサルトライフルを担いだクラップ蟹に接近し赤く発行する甲殻の罅に向けて射撃を行う。トキの助力もありすぐさま甲殻は砕かれ、二匹のクラップ蟹は絶命した。

 一早く放電による麻痺から復活したクラップ蟹がアスナの後頭部へ向けてハサミを振り下ろすが、クラップ蟹の頭部にカリンの狙撃が命中し特大の罅が入り体勢を崩す。そこにアスナとアカネの追撃が入りクラップ蟹は沈黙した。

 

「カリンちゃんありがと!」

 

「いや、援護が遅れた。」

 

「これで3匹、残りも掃除してしまいましょう」

 

 アカネとトキの上空からの攻撃によってクラップ蟹は統率を崩す。

 次なる標的に向かって駆け出すネルとアスナ、この場の優勢は決まったも同然だった。

 

「ホシノさんは……」

 

 ふと単独でクラップ蟹の相手をしているホシノの事が気にかかったカリンはホシノの方向へと目を向ける。

 

「――ふっ」

 

 ホシノは無数のハープーンを背負うクラップ蟹の突進をシールドで受け止め、ハンドガンによって的確にハープーンの柄を撃ち抜き一本ずつもぎ取っていく。

 大きく跳躍し、背中を下に向けてハープーンで串刺しにしようとしたクラップ蟹のボディプレスを華麗に避け頭部に至近距離からショットガンを放つ。

 ハサミによる攻撃はシールドで弾き、僅かな隙を突いてクラップ蟹の足をショットガンで撃ち抜いていく。

 

 グラグラと体勢を崩したクラップ蟹の頭部にシールドを振り下ろし、混乱に合わせて罅が入った頭部をショットガンで撃ち抜いて、さしたる感慨も見せぬままホシノは呟いた。

 

「――次」

 

 まるで危なげなくクラップ蟹を解体していく姿は確かな慣れと強さを感じさせ、援護に入ろうかと考えていたカリンの余裕を戒めるものだった。

 最奥のスナイパーライフルを背負う個体が上空を飛びまわるトキに狙いを定めるが、カリンの狙撃によって失敗に終わり、畳みかける様にホシノの突撃によって群れから引き剝がされて頭部を破壊される。

 

 残り四体のクラップ蟹をそれぞれホシノ、アスナ、ネル、トキが受け持ち、遠方からカリンとアカネが行動阻害に徹した事で危なげなく殲滅に成功した。

 

「ふいぃ、お疲れ様~。初めてにしては大分早かったんじゃない?」

 

「いや、硬いにしてももっと手際よく狩れた筈だ。目を撃ち抜けばもっと効率よく動きを止められたかな」

 

「ハサミと銛は危なそうだけど、銃ならいつも私達が相手にしてる感じだから全部避けたりしなくても大丈夫だったかなぁ」

 

「今回の戦闘で攻撃能力や耐久値のデータは取れました、次から甲殻の破壊は迅速に行えるでしょう」

 

「爆弾の効きは悪いですね……火力を上げるべきか貫通力を取るべきか」

 

「何にせよ次だ次、近接戦に集中すれば大した相手じゃねぇのは分かったからな」

 

 クラップ蟹の討伐を終えたC&Cが次の戦闘に向けて情報を交換し合う。

 暫くの小休憩の後、海の方からギシギシと金属音が響き渡る。

 

『“皆、海の方から何か大きいものが来る。ホシノ、あれが?”』

 

「うん、キングクラップ蟹だ」

 

 海の底から複数のクラップ蟹の群れと共に、今まで戦ってきたクラップ蟹の数倍の体躯を持つ巨大なクラップ蟹が現れた。

 背負うのは船の残骸。無数の銃に加え三門のハープーンランチャー、破損した船の装甲の隙間から針山の様にハープーンが覗く。

 

「■■■■■――ッ!!!」

 

 キングクラップ蟹はハサミを砂浜に叩きつけ威嚇の声を上げた。

 

「うわぁ、ホシノちゃん、今回は随分大きいねぇ」

 

「うへぇ、これはちょ~っと骨が折れそうだね?」

 

 ホシノ達の元にユメと便利屋ブルーローズが合流する。

 全員、弾薬には余裕がある。先生がこのまま戦闘を続行する事を決めた。

 

『“全員、戦闘準備!!”』

 

 

 

 けたたましい金属音と共に全員に向けてハサミを振り下ろす。それをユメが押し留め、ハサミに向けてスナイパーライフルを打ち込むが容易く弾かれる。

 クラップ蟹の足をホシノ、サオリ、ネルの3人が駆け上り同時に頭部へ攻撃を加えるがこれも弾かれる。背中のハープーンランチャーが動き3人に向けて放たれるのを、ネルとサオリを背に庇ったホシノがシールドで防いだ。

 

 キングクラップ蟹の目に二人のスナイパーの狙撃が命中するも、少しの硬直の後何ともなかったかのように背中から何発もグレネードランチャーを発射した。

 アスナとトキ、そしてアツコとミサキがそれらを打ち落とし、対処しきれなかった攻撃はユメが防ぐ。

 

 取り巻きのクラップ蟹はオデュッセイアの生徒達が誘導して引き受けてくれたが、肝心のキングクラップ蟹へはハープーンを突き立てても罅どころか浅い傷を付けるだけに留まった。

 全員が一通り攻撃を加えた結果理解したのは、どうにかして弱点を見つけなければ一切ダメージを加えられないという事。

 

「――ちょ、ちょっと大きすぎませんかぁ!? 私のアイデンティティでも殻を撃ち抜けないんですけどぉ!?」

 

「静かにしてってヒヨリ。でも私のセイントプレデターやアカネの爆弾でも背中の武器を落とすので精一杯、地道に削ってくしかないのかな……」

 

「ユメさんやトキが弱点を見つけた所に私とヒヨリで集中的に弾を打ち込めば流石に甲殻を破壊出来る筈。それまでは足やハサミを攻撃してネル先輩やアスナ先輩、サオリさんの様な火力担当の支援に徹するべきだろう」

 

「は、はいぃ!」

 

「うふふっ、スナイパー仲間が出来てカリンも楽しそうですわね。ミサキさん、私達も堅実に武装を剥がして援護していきましょう。私達が攻撃を加えるだけ前線で耐えるトキちゃんやアツコちゃん、ホシノさんやユメさんも楽になりますからね」

 

「……分かってる」

 

 後方支援を担当する生徒達は有効な弱点を探りながら前衛のサポートに注力し続ける。

 幾つかの武装は剥がせたものの、船の残骸やハープーンランチャーを剥がすには至っていない。

 

「チマチマ背中を剥がせば倒せるだろうけど時間かかり過ぎるねぇ」

 

「目玉も硬いし、どうなってんだありゃ」

 

「先程背中から銛をもぎ取って突き立ててみたが罅一つ入らなかった。こんどはあのハープーンランチャーとかいう兵器をもぎ取ってみるか……?」

 

「奪っても使い方が分からないと意味無いと思うけど……」

 

「ん~、完全に全身が神秘で覆われてるね。どうにか頭を攻撃し続けて神秘を削っていくべき、かな」

 

「寧ろ背中の武装を剥がさずに足を奪うのはどうでしょう。自重で動けなくなるのでは?」

 

「うーん、オデュッセイアから増援が来るってさっき言ってたし耐えてるだけで良いと思うけど」

 

『“うん、増援が攻撃を入れられるようにまず暴れられるのを防ごうか”』

 

 前衛もまた有効な戦術を模索しキングクラップ蟹の攻略を進める。

 攻撃が通らないのなら更なる密度で攻撃を。何も考えていないような戦法だが、ただ硬いだけの相手であればこの上なく有効と言えよう。

 

 再び戦闘を開始する。攻撃の予兆を射撃で潰し、足にダメージを加えキングクラップ蟹をその場から動かさない様に対処する。

 着実にダメージを蓄積させているとはいえまるで進展の無い状況に、ネルが愚痴をこぼした。

 

「ったく、キリがねぇな関節にも弾が通らないんじゃ何処を攻撃すりゃいいんだ?」

 

「――それは当然、ドタマをぶち抜いてやればいい」

 

 瞬間、キングクラップ蟹の頭上に何者かが下り立った。

 右手に持つ機械的なハープーンが駆動音を上げて回転する。それが勢いよくキングクラップ蟹の頭部に打ち下ろされると甲高い音と何かが削れる音、そしてキングクラップ蟹の悲鳴が響き渡った。

 

「こいつは変異種だ。まともにやり合えば消耗するだけだが効率的に神秘を削る武器でも持ってなきゃ対処は難しい」

 

 頭部が罅割れ、肉が露出した所に声の主が左手に持つハンドガンで一発叩き込んだ後、ひらりとキングクラップ蟹の頭部から飛び降りる。

 

「そういう意味では、あんた達の足止め戦法は最適解だった。流石はシャーレが集めた戦力だ」

 

 ビクリと一際大きくキングクラップ蟹が震え、雷の様な激しい音と放電に巻き込まれ、頭部から黒い煙を上げてキングクラップ蟹は沈黙した。

 たったの二撃でキングクラップ蟹を打倒した声の主は金色の髪をたなびかせてこちらに向き直り笑った。

 

「手荒な歓迎になってごめんね、私はオルガ。オデュッセイア造船部外部顧問だよ」

 

 




クラップ蟹
・緑色のヤドカリの様な生物で海に沈んだ船の残骸や兵器を纏って武器にする。
・幻想鯨の出現と同時期に出没。幻想鯨とは比べるまでも無い弱さだが鯨油に似た泡を用いる事から小型の幻想鯨として扱われている。
・甲殻がアホ程硬いが、何とか罅が入れば普通の銃でもダメージが通る。
・要注意個体はハープーンやハープーンランチャーを背負った個体。油断していると生徒の神秘を貫通して致命傷を喰らう。
・かなり美味しい。

キングクラップ蟹
・通常個体よりも更に大きく、更に硬いクラップ蟹。とはいえ普通であればハープーンで普通に罅が入る。
・通常個体よりも知能が発達しており複数の武装を背負い戦闘する。
・滅茶苦茶美味しい。

オルガ
・酒が好きな大人。
・先生と同じく普通の人間の姿である。



名前:ユメ
フルネーム:梔子ユメ
レアリティ:★3(入手不可)
役割:STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:タンク
武器種:スナイパーライフル
攻撃タイプ:貫通
防御タイプ:重装甲
学園:アビドス高等学校卒業生
所属:シャーレ事務員
年齢:20
趣味:バイト、武器の手入れ、先生やアビドスの皆との談笑

市街地戦闘力:A 屋外戦闘力:A 屋内戦闘力:A

EXスキル:灼熱の太陽と憩いの泉
・指定した対象一人に向かって貫通する弾丸を放ち、攻撃が命中した全員に火傷持続ダメージを付与
・その後味方全員にバリアを付与。バリアが付与されている間HP持続回復

ノーマルスキル:私を倒してからにしてもらうよ!
・20秒毎に自分以外の味方の被ダメージ15%減少。自分の防御力15%上昇
・全ての敵に挑発状態を付与

パッシブスキル:躊躇と全力
・攻撃対象が生徒だった場合与ダメージ20%低下
・攻撃対象が生徒以外だった場合与ダメージ20%増加
・攻撃対象との距離が近ければ近い程与ダメージ上昇(最大30%)

サブスキル:ひぃん、熱いよぉ!
・EXスキル使用後10秒間銃剣による近接攻撃を行う。この場合攻撃属性が爆発属性となる
・近接攻撃が命中した相手に火傷持続ダメージを付与する。



正月バフはここまでだ。これから6章やったり仕事片付けたりで投稿頻度は落ちるけど一応展開は最後まで考えてるから気長にお待ちください。
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