魔王放浪 陰実編(仮第)   作:幻龍

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連載するかどうか不明なので取り敢えず短編として投稿します。
リハビリを兼ねて書いているので、下手くそな文章になっているかもしれません。
それらが無理ならブラウザバックを推奨します。


プロローグ

「一体ここはどこなんだ? 次元間移動(プレーン・ウォ―キング)に成功したようだが、早く人のいる場所を見つけて状況を把握しなければ……」

 

 神城エリス()は草木が生い茂る田舎道を歩いて移動しながら辟易する。

 魔王内戦の最終局面でヴォバン侯爵、草薙護堂と三つ巴の戦いをした結果、自分の世界から、別世界へと強制移動させられてしまった。――それにより日本処か地球でもない異世界に転移し、そこで出会った神を、加護を与えていた魔術師共々始末したことにより、次元間移動を会得したので早速使ってみたのだが、――その結果現在進行形でエリスは迷子になってしまったのである。

 

「カンピオーネ関連のことに集中する為に、元の世界で高校と大学は既に飛び級で卒業しておいたから、学業に関しては問題ない。――それでも、元の世界に帰還するのに何年かかるのやら……」

 

 しかし、何時までも悩んでいても仕方がないので、エリスは気持ちを切り替える。

 暫く歩いていると血の匂いと剣劇の音が聞こえてきた。

 如何やら誰かが戦っているらしく、その方向へ足を速めると廃村らしき所に辿り着き、――漸く人を発見した。暗闇だがカンピオーネにとっては昼当然なので、戦っている人数も状況もエリスにはよく見える。

 

「何だこれ? どういう状況だ?」

 

 エリスはそれを見て唖然とする。――自分より年下と思われる小柄な子供が、高笑いを浮かべながら大多数の大人を狩っていたからだ。

 エリスはどっちに話を聞くべきか悩む。

 大人達は人相が悪すぎるし、如何にも悪人面している。しかし、明らかに狂気を感じるのは子供の方で、「金寄越せー! ヒャッハー!」とか言っており、極悪人なのは明らかだ。

 どう見ても盗賊連中が分け前で内輪揉めを起こして、同士討ちしているようにしか見えない。

 

「仕方がない。些か不本意だが、連中から情報を入手するか」

 

 エリスとしてはこのまま放置しても良かったのだが、漸く見つけた情報源である。

 嘘をついていないかどうか確かめる為に、複数人から情報を聞き出したい。――だから、これ以上人数を減らされるのは、正直困るので連中の戦いを止めることにした。

 

「お前ら! 戦いを止めて俺の話を聞いてくれないか?」

「うるせえ! 邪魔すんな! こっちはそれどころじゃないんだよ!」

「取り込み中だ! 金奪ったら話を聞いてやる!」

 

 大人達も子供も話を聞く気はないらしい。――エリスは言葉による説得を諦め、今度は力で無理矢理止めることにした。

 

「はぁ……。――我の前では全てが凍てつく。絶対零度の世界を顕現せよ」

 

 小声で聖句を唱え、とある神から簒奪した権能――凍氷の世界を発動する。

 エリスの周囲に美しい宝石を想わせる氷槍が幾つも生成され、それを彼らに向かって射出した。――放たれた氷槍は容赦なく彼らを衣服ごと身体を貫く。エリスは更に鋭い氷柱を地面から出現させて、賊達を完全に地面へと縫い付けた。

 

「き、貴様!? いきなり何をする!? この小僧の仲間か!?」

「お仕事ご苦労様。早速だけど俺の質問に答えてくれるかな? 素直に答えてくれるまでは反論は聞かないから。ちなみにそこの子供は俺と無関係だから」

 

 大人達が文句を言ってきたが、彼らの言葉の大半を無視してエリスは子供の方を向くが、――そこには氷柱で貫かれて既に虫の息だった。

 

「どういうことだ? 衣服を確実に狙ったはずだ? 俺がコントロールをしくじっただと?」

 

 急所は外して動けなくするだけのはずだったが、子供の方は刺さった氷柱が何故か致命傷になっていた。

 彼は何故か中二病的な言葉を呟いているが、言葉の意味は全く理解できない。――エリスは近寄って子供の傷の具合を見たが、――これはもう助からないと判断し、捨て置くことにした。

 

「……仕方がない。情報の精度は下がるがこいつらから聞くか……「今宵に宴は楽しくなりそうだ」――っ!?」

 

 その言葉を耳にした瞬間、カンピオーネの直感で少年が繰り出した斬撃を、エリスは首を横に振ることで躱した。

 

「お前。あの傷で動けたのか?」

「ああ。危うくあの世逝きだったが」 

「成程。――魔力で糸を作って傷を縫い合わせるとは、器用な真似をするな。お前」

「我が名はシャドウ。お前を狩る者だ」

 

 シャドウと名乗る同年代? と思われる盗賊の子供は、そう言って容赦なく剣で斬りつけてくる。

 エリスはそれを最低限の動きで躱し、権能で氷剣を顕現させて反撃を繰り出す。

 互いに凄まじい剣戟が繰り出すが、ドニの剣技や、羅濠教主の体技を権能で身に着けたエリスにとっては、余裕で対処できた。逆に盗賊(シャドウ)の切り傷は増えていき、内心焦っているのが透けて見える。

 エリスの放った斬撃の一閃がシャドウの付けている面と、フードを斬り飛ばし奴の顔が現れる。

 

「顔を見たな?」

「ああ。漸く面を拝めたな。――本当に子どもだったのか」

「そうか……。わが最強の奥義。受けてみるがいい」

「話を少しは聞けよ!」

 

 シャドウはそう言って剣を地面に突き刺し、魔力を展開し始める。

 なかなかの強力な魔力だ。少なくとも草薙護堂の愛人の騎士共より力だけは強いな。この範囲と魔力の高まりは――恐らく広範囲攻撃を繰り出してくると判断したエリスは、体内の呪力(魔力)を高める。

 

「仕方がない。受けて立つ」

 

 エリスは正面から攻撃を受けることにした。

 攻撃を耐えきった方が、相手の戦意を折れるだろうと思ったからである。

 

「アイ・アム・アトミック」

 

 漆黒の夜を青紫の魔力の光に染まった。

 

 

 

◇◇

 

 シャドウことシドは自分の技によって生まれた更地の中心に立っていた。――彼の本音を言えば本来ここまでするつもりはなかった。

 彼は戦闘経験と資金稼ぎを行うべく、いつも通り盗賊狩りをしていたが、戦闘中に想定外の第三者が乱入してきたのである。

 第三者は戦いを止めるべく自分と盗賊に声を掛けた後、聞き入れる気がないと判断したのか、容赦なく攻撃を仕掛けてきた――避けることに失敗した挙句、運悪く命中してしまい、本気で意識が飛びそうになる。

 しかし、モブ式奥義十分間の臨死体験を応用して何とか復活。美しい宝石と見紛うばかりの、美しい氷柱を強引に抜いて拘束から脱出。傷を素早く魔力で最低限治療して不意打ちをしたが、後ろに目があるのかと突っ込みをいれたくなるぐらい華麗に避けられた。

 第三者(恐らく新たな盗賊か彼らの仲間)と斬り合いになったが、その斬り合いの最中正体を隠す面とフードを斬られてしまい、今戦っている相手や拘束されている盗賊に、己の顔が露見してしまうとミスを犯してしまったのである。

 ――正体がばれてしまったら陰の実力者ではなくなってしまう。

 

 相手はシャドウ(自分)と話したがっているけど、最早手段を選んでいる暇はないと悟り、盗賊や彼らが持っていた金品ごと葬ることにしたのである。

 

「やっぱり、金貨とかは全部消えたか……。惜しかったな……」

 

 シャドウは一応周囲を調べたが、荒れ具合から金貨等はやはり吹き飛んだと結論づけた。

 

「でも、陰の実力者としては顔がばれたら正体が露見してしまう。そうなれば陰の実力者とは言えない……。これで良かったとするべきか――「消えろ」っ!? ――な、なんだ……と……」

 

 シャドウは全身を氷柱で貫かれた。

 

 

◇◇

 

 エリスは魔力攻撃をカンピオーネが持つ魔力耐性で無力化し、シャドウと名乗った盗賊野郎を権能で串刺しにした。

 今度は脱出されないように手足を一本ずつ貫き――尚且つ貫いている部分を棘状にして、身体の内部から食い込ませているので、盗賊(シャドウ)の身動きは完全に封じる。

 

「まさか、ここまでするとはな……。――ならば俺もそれ相応の行動をするまでだ」

 

 当初は情報を得たら治療して解放するつもりだったが、予定を変更することにした。――権能を使って強引に情報を獲得する方法に。――今他人がエリスを見たら凄く冷たい目をしているのだろう。

 

「他のものは全て我の者。この世の全ては己に帰す。――全てを捧げよ!」

 

 エリスは言霊を唱えて、権能である《貴方の物は我の者》を使用してシャドウの頭に触れる。――こいつが持つ情報は入手した。しかし、その思考には正直ドン引きしかなく、これ以上個人(こいつ)の情報を引き出すのは止めた。

 羅濠教主やスミス、ドニ、この世で最も消したい人物アイーシャ夫人達4人の同類の悪い部分を煮詰めた様な感じで、カンピオーネでもないのにこの思考に至れるのは正直呆れるしかない。おまけに良心も常識も責任感も皆無(カンピオーネの中には良心や常識を持っている者は存在する。ただし、それが発揮されるかどうかは別問題だが)。――シャドウことシド・カゲノ―は正真正銘、吐き気を催す邪悪な存在だとエリスは結論づけた。

 だが、いい情報も手に入った。これで暫くはこの世界で暮らして生ける目処もたった。もっと情報を引き出したいが、魔力(呪力)が転移直後のせいで多くない上、盗賊野郎(シャドウ)が派手にやったせいで騒ぎになるのも時間の問題。必要最低限の情報だけ手に入れてこの場を去ることにする。

 

「さてと。必要な情報は手に入った以上、お前にもう用はないな」

 

 エリスは手に入れた情報を吟味して、色々と思案した結果――盗賊と思われるシャドウを始末することにした。

 復讐に来られても困るし、盗賊相手に態々己の情報を渡す必要もない。――何よりこの世界での田舎では私刑が当たり前であり、それがまかり通っているそうなので、顔を見られた程度で人を殺そうとした奴を始末しても問題はないと判断した。

 男爵家の子息という情報もあったが、自分を貴族だと思い込んでいるだけの、狂人の哀れな妄想だろうとエリスは結論づける。

 

「この世界は都会以外では、悪人を私刑にしてもいいらしいな。だから、俺がお前を裁いてやろう」

 

 エリスは冷酷な表情でそう言い、既に意識が朦朧としているシャドウを氷にして、美しい氷像にする。

 

「砕けろ」

 

 エリスがそう言った瞬間――シャドウの氷像に突如罅割れが起こり、頭の天辺からバラバラに崩壊していき、最後は氷の破片となって消えていった。

 

「騒ぎならないように、このクレーターは直しておくか。――シャドウとかいう奴、本当に余計なことをしてくれたな」

 

 エリスは権能を使い盗人(シャドウ)が魔力攻撃で作ったクレーターを直す。

 

「……一先ず何とか情報は得たが、やることは山積みだな。取り敢えず――はっ!」

 

 エリスは盗人(シャドウ)から得た魔力操作技術で身体能力を強化――凄まじいスピードでその場を後にするのであった。

 

 




シド君が盗賊を襲っているのを第三者が目撃したら、どう考えても盗賊同士が分け前の分配に揉めた結果、仲間割れして殺し合いに発展したようにしか見えませんよね。
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