Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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今日から本気出す(ただし銃火器縛り)


Beginner’s Hunt,or Be Hunted?(1)

(冒険、か。ようやくといった感じがしないでもないが…)

 

 昨日の実験の後遺症もなく、十分に休めた朝早くに、改良型Vault101アーマード・ジャンプスーツに袖を通しながらジェイデンは思った。今日は、もえもえに朝の挨拶をして、「この世界の武器」ももらってから、ギルドのクエスト掲示板を物色するという、この世界の冒険者の生活を始めるつもりでいた。とはいえ、銃火器のほとんどはPersonal Armory入りで、バックパックに潜ませるのもコンバット・ショットガン程度だ。銃火器は目立つ上に弾薬の補充も絶望的と、異世界を実際に見て改めて思ったからだ。

 

(銃火器を取り出したら説明が面倒そうだからな…代わりになるものは、弓矢かクロスボウ位か、そいつをもえもえに貰おう。…こいつが最後の頼りになるような状況には、出くわしたくないな)

 

 「ジンウェイのショックソード」をメインウェポンにいくつかの手になじむ武器を見繕って身に着けて、最後に44マグナム・リボルバーのカスタム品「ブラックホーク」を懐に収めて、その重量を頼もしく思いながら宿屋を後にして、店が開く時間の少し前に「深淵の淵」の扉をノックしようとするが、内側から扉が開き、店を開けようとするもえもえとばったり出会った。

 

「おはよう!ちゃんと来てくれたんだ、体の調子はどう?」

 

「全く問題ない。それよりも、今日は初めてクエストを受けようと思っているが、弓矢か、クロスボウが入用だ。それからできれば水や食料、薬もだ」

 

 正確に言えば元の世界から持ち込んだ水や食料はあるにはあるが、こちらの世界の水と食料を口にした後では、色々な意味で手を付ける気にはなれなかったし、「スティムパック」をはじめとする持ち込んだ医薬品も、できるだけ温存しておきたかったので、もえもえを頼ることにしたのだ。  

 

「遠距離攻撃が専門かな?アーチャー系のスキルは持ってる?」

 

 いよいよ、どのアビリティにスキルポイントを割り振るか決めないといけないようだ。以前に比べるとはるかに複雑化したPip-boyのスキル欄を開けて確認すると、弓術(Archery)スキルは熟練度がすでにそれなりにあって、アビリティ取得のためのスキルポイントも軽かった。おそらくは上がるところまで上げていたSmall Gunsスキルの影響と思いながら、『狙撃』『クリティカルショット』『鷲の目』『クイックショット』『急所狙い』といったスキルを習得していく。V.A.T.S.との相乗効果が期待できるし、銃火器を使った時も弓術スキルを流用できるかもしれないと思っての選択だ。

 

「専門職のアーチャーと変わらないぐらいの強さだね!多分、一番重いクロスボウも使えると思うよ」

 

 冒険者カードを確認してから、いかにも重そうな弓がついてるクロスボウを選んで差し出すもえもえ。普通なら先端を足で支えて、両腕と全身で弦を引っ張らないと(つが)えられない「ヘビークロスボウ」を、腕力だけで引いて発射準備を整えて、もえもえを逆に引かせながら「これでいい」とジェイデンは言った。

 

「スキルがすごいのか、STRとレベルでごり押しなのかしら…やっぱジェイデンって、凄い!」

 

 一瞬、ほんのりと後ずさりつつもジェイデンの実力を素直に称えるもえもえ。

 

「こいつ用の矢と、あとは当座の水と食料とポーションも欲しい、いくらだ?」

 

「今日はぜんぶおまけしてあげる!昨日の実験に付き合ってくれたおかげで、ギルドの技術顧問の話が前に進みそうだから!」

 

 そう言って「剣と魔法の世界」のイメージには少々不釣り合いな、ペットボトルのような素材に詰められたきれいな水や、いくつかの缶詰、体力回復用のポーションや応急処置用の包帯などを差し出してくるもえもえ。自分の世界では、Vault33に設置されたイートマチックなど、限られた設備でないと製造できなくなったと聞いていたツナ缶が普通に入っているのを見て、元の世界の貧相さと、この世界の豊かさを改めて思い知るジェイデン。

 

「体力回復ポーションの効き目は昨日実感したが、体のどこかの重傷は、すぐには治せないのか?」

 

「実はそれができる回復術式は、キュア・ポイズンよりも難しくて、確かこの町のプリーストは、エリス教の人もアクシズ教の人も使えなかったはずよ」

 

「そんなに重傷は、ポーションや術で治すのは難しいのか?」

 

 手足がちぎれそうなほどのケガでも、一瞬で痛みと状態を回復させるスティムパック、あるいは重傷をただちに完治させられる設備は、自分の世界の医療技術ならではと思い知るジェイデン。

 

「普通のプリーストが唱えられる治癒術や、ポーションでできることは、痛み止めや止血、少し治すのを早めるくらいで、少しでも手当てが遅れると後遺症が残るし、膝に矢を受けた冒険者さんが、引退を余儀なくされて衛兵になった話はいくらでもあるわ」

 

 スティムパックはこの世界では、弾薬以上の貴重品になってしまったな、と思いながら、ジェイデンはふと尋ねた。

 

「もえもえなら、特別に薬を調合したら、少しは重傷患者を早く治せるのか?」

 

「患者さんの容態を見ながら、一回一回調合したらだけど、それでも一瞬、というわけにはいかないわね。湿布に魔法薬をしみこませて痛みを取りつつ、治りを早めるようなお薬、作ってみようかしら…」

 

 さっそく、次の発明を思案しているもえもえを見て、こっそりと店を出ようとするジェイデンに、後ろから声がかかる。

 

「うん!次の研究テーマは回復湿布の作成ね!その時はよろしくね、ジェイデン!今日のところはいってらっしゃい!昨日、ゴブリン退治のクエストが張り出されているのを見たから、最初はそんな簡単なクエストがいいと思うよ!」

 

 いらないことを言ってしまったと後悔しながら「深淵の淵」を後にするジェイデン。とにかくも装備が整ったので、もえもえの言う「簡単なクエスト」を受けよう、と思いながらギルドに向かって歩き出していった。 

 

 

 

 ギルドに到着すると、まず掲示板を見に行く前に、ルナの姿を探した。昨日彼女が置いて行った金一封は、受け取ってしまうともえもえの実験にまた付き合わされてしまうために、突き返そうと考えていた。

 

 そんなジェイデンに、ルナがカウンターから出てきて声をかけてきた。

 

「おはようございます、あれからもえもえさんにお会いしましたか?」

 

「ついさっき店に寄ったが、朝から元気一杯だったぞ。今度は回復湿布の開発をしたいとか言っていたが、俺は、また実験台になるのはごめんだ」

 

 懐から金一封を取り出そうとするジェイデンを手で押しとどめて、意味ありげな表情を向けるルナ。

 

「あなたがもえもえさんの被験者から降りられるのはご自由です、ですが、あなたが被験者にならなくても、もえもえさんの危険な実験は止まらないでしょう。そうなれば、次の被験者さんはどうなりますか?」

 

 思わず天を仰ぐジェイデン。彼女の「実験」は、普通の人間を被験者にすれば、最初の段階で致命的な結果に陥りかねないことは、昨日で身に染みている。

 

「被験者さんに万が一のことがあれば、もえもえさんは、技術顧問への道が閉ざされるのはもちろんのこと、この町でのお店の営業許可さえ取り消されるかもしれません。実際に、王国検事のセナさんたちはかなり問題にしていますから…私たちとしては、錬金術師として優秀なもえもえさんの能力を最高に生かしたいんです。ですが、それにはジェイデンさんの協力がなければ、とても…」

 

 俺には関係ない、という言葉はジェイデンには言い出せなかった。彼女の能力の程はよくわかっているし、その無邪気さに接してしまうと、悲しませるのも気が引ける。何より、乗り掛かった舟からは下りられない性分でもあったからだ。

 

「引き受けてもかまわないが、宿の部屋を自宅として使わせてもらうとか、もう少し報酬に色を付けてもらえないと困る」

 

 渋い顔でルナに応えて、彼女が満面の笑みでカウンターに戻っていくのを見て、ため息をついているジェイデンに、横から下品な調子で声をかける男がいた。

 

「ヒャハハ!見た目ロリっ子な女に死ぬ寸前まで毒飲まされて一晩でピンピンしてる上に、そいつを見捨てないとか。お前、昨日はよっぽどお楽しみだったんだろうな、え?」

 

 ゲスなひそひそ話は散々聞かされてきたが、今度のは直接的かつ一番ひどいな、とうんざりした様子で声がしたほうに顔を向けると、金髪の戦士らしい若い男が、ニタニタ笑いながらジェイデンのほうを見ていた。酒場のエリアから、どっと笑う声が聞こえてくるあたり、そういう風に見なしてる手合いが多いのだと思うと、ジェイデンの眉間に、自然に深い皺が寄る。

 

「そう思うんなら一度被験者を代わってみろ。それに、あいつの誘いに乗っていたら、俺はおそらく今ここには来られてないぞ」

 

「…あー、でもよ、あんだけムチャな実験に付き合ったってことは、それなりの「ご褒美」があったんだろ?実験の後、完全にロリな見た目の娘を好き放題できたとかな!高レベルの新人はさすがにいい趣味してやがるぜ!」

 

 彼の一言で酒場のエリアが爆笑に包まれる、これがアクセルの冒険者たちの自分に対する、あるいはもえもえに対する認識だと察したのと、それを背景に、にやにや笑いを止めない男に、珍しくジェイデンは苛立って、本能(Strength)が命じるままの返答を口にした。

 

「…同じことをもえもえの前でも、抜かせるのか?」

 

 平板な、低く、重い一言。それだけで目の前の軽薄そうな男はにやにや笑いを引っ込めて一歩後ずさる。酒場の酔客も、ジェイデンの言い知れぬ迫力に、急に静かになった。

 

「ダスト、そのぐらいにしておけ…悪かったな。こいつはいつも、こうなんだ」

 

 剣と盾、重鎧姿の男が、表情をひきつらせている軽薄男の肩に手をかけて押しとどめ、ジェイデンに向かって頭を下げている。どうやら同じパーティのメンバーらしい。彼の後ろには、弓を背負った若者と、軽装の、おそらくは魔術師系の少女がいて、少女のほうはダストと呼ばれた軽薄そうな若者を呆れたように見ていた。

 

「新顔に絡んでいくのはいいけど、もうちょっと相手を見て喧嘩売ったほうがいいわよ、ほんと」

 

 少女のツッコミに逆切れしたダストは、ジェイデンが、自分の仲間たちのほうを見ていて油断しきっていると思い込み、不意に殴りかかろうと拳を固める。それを横目で見ていたジェイデンは、ダストが攻撃に動く前に、余裕をもって反撃に移っていた。

 

(普通に殴り合い(Unarmed)に付き合うか?いや、こっちの世界に来てからは、一度もV.A.T.S.を使っていなかったな…)

 

 精神を集中するジェイデン。一瞬にして脳神経系と直結したPip-boyのV.A.T.S.(Vault-tec Assisted Targeting System )により、人工的な過度の精神集中状態に移行して、殴りかかろうとするダスト、横にいるの彼の仲間たち、そして、ジェイデンの周囲のものすべてが、時を止めたかのように静止する。

 

 

 Taylor

 Keith

 Rin

 Dust

 

 ターゲット選択。標的は赤色の敵対表示に変化したダスト。命中率…外しようはない。相手の体力ゲージを確認…素手でもおそらくは3発、クリティカルが入れば1発で「気絶」になりかねない体力のようだ。一発だけ殴ると決めて、攻撃に移行。

 

 

「スキあ…おぶああああ!!」

 

 殴りかかろうとして拳を振り上げたダストの前に一瞬で青い影が飛び込み、カウンターのようにストレートパンチを叩きこんで彼を吹き飛ばす。ダストが殴り飛ばされて大きな音を立てて床に転がると、酒場は一瞬静まり返り、その後、ざわざわとした声が広がった。

 

「今の、見えたか?」

「いや…まるで瞬間移動だ…」

「新人って聞いてたが…レベルの高さは伊達じゃなかったのか」

 

 彼の仲間たち…テイラー、キース、リーンという名前のようだ…もまた、何が起こったのか理解するのに数秒を要した。その中の魔術師らしい少女…リーンが真っ先に反応し、ダストに駆け寄る

 

「くっそ!あの距離とタイミングで殴り返せるとか反則だろ!ごついクロスボウ背負っておいて、お前グラップラーかモンクみたいな殴り合い専門職だったのかよ!!」

 

 起き上がって腫れあがった頬をおさえてなおもダストは文句を言うが、内心ではボディに2、3発食らったら、地獄の苦しみの上に動けなくなるようなパンチだ、とおびえていた。

 

「冒険者カード作った時点でレベル30だったみたいよ!だから、ケンカ売るならちゃんと相手見ないと、そのうち死ぬよ?」

 

 なおも口喧嘩を続けるダストとリーンを差し置いて。重鎧姿のリーダーらしい男…テイラーはジェイデンの前に出て、深々と頭を下げていた。

 

「俺は、このバカ…戦士のダストのいるパーティーでリーダーをしている、《クルセイダー》のテイラーだ。改めて、仲間の無礼を詫びさせてもらいたい」

 

「気にするな、こういう手合いをあしらうのには慣れている。それはそうと、俺もクエストを受けたいんだが、この町に来てから冒険をするのは初めてだ。こんな時に何だが、簡単なクエストでやり方を教えてくれないか?」

 

「あれほどの腕前で、俺のよりも強力な弓を背負って、冒険は初めてなのか?ああ、俺は《アーチャー》のキース…お前と組めるなら、俺たちとしても心強いが」

 

「ちきしょう!こんなロリ野郎にいいカッコばかりさせられるかよ!冒険が初めての素人童貞野郎に、アクセルの町の厳しさを、教えてやるぜ!!」

 

「いちいち言い方がアレなのどうにかしなさい!ごめんなさいね、このバカが迷惑かけてばっかりで。あたしは《ウイザード》のリーン。あたしは戦士系じゃないからよくわからないけど、さっきの動きはすごいと思うわ!頼りにさせてもらうね」

 

「…決まりのようだな、俺としても異存はない。ただ、たとえあんたのレベルが上でも今のパーティーのリーダーは俺だ、指示に従ってくれるか?」

 

 テイラーの問いかけに、ジェイデンはそれが普通だな、という調子で答える。

 

「もちろんだ、俺のほうがアクセルでは新入りだからな、よろしく頼む。俺はジェイデン、《サバイバリスト》だ、他に言っておいたほうがいいことはあるか?」

 

「いや、構わない。昨日で人間離れした耐久力と、さっきで動きの鋭さは見せてもらった。お前ならオーガーと殴り合いができるんじゃないのか?」

 

「あとは、ロリコンなのも…あがああああ!」

 

 むしろあきれたように言うテイラーと、なおも煽るのを止めないダスト。ジェイデンは今度は一瞬でダストの後ろに回り込んで見事なブリッジでジャーマン・スープレックスを決める。今度こそダストは完全に気絶し、リーンとキース、そしてルナたちギルドの中の全員が静まり返った。

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