Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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このすば世界にはそぐわないウェイストランド脳


Beginner’s Hunt,or Be Hunted?(2)

「ゴブリンの目撃情報のあった洞窟…広域マップを見ると町から離れた岩山のふもとで、中の広さによっては一旦引き上げか、洞窟の近くて野宿、か」

 

 ルナが、目が全く笑ってない満面の笑みで「ギルド内での乱闘は厳禁です」と言い渡してきた後で伝えてきた、ゴブリン討伐クエストの内容を打ち込んだ、Pip-boyのクエスト画面とマップを見ながら、テイラーとダストに続いて、後衛のキースとリーンの前の位置で歩いていくジェイデン。周囲の地形を確認して、Pip-boyのマップが正常なのを確認する。周囲はなだらかな草原で、天気も良く、クエストがなければまるでハイキングのような気分だ。

 

「腕前はそれなりのようだが、グラップラーみたいな奴が俺たちの戦力になるのか?あともえもえの作った薬、普通によく効くのがなんか納得がいかねぇ」

 

 頭に回復湿布の試作品を貼り付けたままのダストがぼやくように言う。2回も強烈な攻撃を入れてしまった後なので、ちょうどいい回復薬はないかと、冒険に出かける前にもえもえの店に、ジェイデンはパーティの面々を案内したのだった。

 

 昨日の人体実験の惨状と、「深淵の淵」の中二病全開の店構え、それからギルドでの経緯から、死人のような顔色になってしまったダストたちを店内に押し込んたジェイデンだったが、もえもえはそこで、錬金術師と、商売人としての実力をいかんなく発揮した。

 

 もえもえは、ダストの重傷一歩手前になっていた頭部を、回復湿布の試作品でほぼ完治させ、もえもえの店を、主に店構えから敬遠してきたテイラーたちへの売り込みにも成功し、テイラーは、クエストに必要な消耗品のいくつかを購入した上で、心なしか口元をほころばせながら、「価格と品質が両立しているな。これからはここを頼りにさせてもらっていいか」と、引き込まれそうな営業スマイルを浮かべているもえもえに告げたのだった。

 

「全く、ロリコンは一人だけじゃなかったのかよ、え?」

 

「そうは言っても、あそこのポーションの品質はさすが紅魔族といったところだし、もえもえさんのお店ならすごくいい買い物ができると思うわ…入っていくのにちょっと勇気はいるけどね」

 

 テイラーに遠慮のない悪口を言ってるダストをたしなめるように、リーンはいろいろな意味で紅魔族らしい「深淵の淵」をウイザードの視点から評していた。

 

「もえもえの店、今度は一人で遊びに行ってみるか」

 

 後ろを歩いているキースは、明らかに相好を崩しながら呟いている。リーンはテイラーとキースをじとっとした目で見ながら(二人とも昨日の無茶苦茶な実験のことをもう忘れちゃったのかしら…もえもえさん…やっぱり見かけによらない、怖い人だよね)と思っていた。

 

「…俺以上の命知らずがいるとは、恐れ入ったな」

 

「《サバイバリスト》っていうけど、近距離攻撃と遠距離、どっちのほうが得意なのかな?」

 

 キースのほうを「絶対にやめろ」と言いたそうな険しい表情で見やってから、油断なく周囲に目を配っている様子のジェイデンに、興味深そうにリーンは尋ねていた。

 

「場合によって使い分けていたが…テイラー、ここで止まってくれ」

 

 リーンに答えつつ、ジェイデンは、Pip-boyのレーダー…感覚(Perception)を元にして周囲の敵や味方の位置を可視化し、視界に同期させるシステムに、パーティの4人以外の反応、それも敵対反応の赤いマーカーが2つ出てきたのに気づいて足を止める。

 

「何があった?周りには、何もないぞ?」

 

 不審そうに聞いてくるテイラーの前に立ち、背中からヘビークロスボウを外して、膝をついて構える。すると、ちょうどスナイパーライフルのスコープを覗き込んだときのように、視界がズームインして、遠くのものが拡大されて見える

 

(こいつが『鷲の目』スキルの力、か。本当にこんな事ができるとは…)

 

 異世界の「スキル」の不思議さに驚き、弓や銃火器を構えてないない時でも使えるものか試してみよう、と思いつつも、視界の先には草原が広がるだけ。

 

 隠れている敵を見逃さないためにV.A.T.S.を起動。すると、レーダーが敵の反応を示す方向の先の地中に反応があった。人よりも大きな影で、体力ゲージの下には「Giant Toad」と表示されていた。

 

「この先の土の中に、ジャイアント・トードがいるぞ」

 

「嘘つけ!ビビってんじゃねえよ!…いでっ」

 

「何にしても静かにしなさい」

 

 一旦V.A.T.S.を解除して警告するジェイデンに、バカにしたような口を利いてるダストの頭を軽くはたいて黙らせるリーン。ジェイデンは、ヘビークロスボウの狙いをつけるべく。再びV.A.T.S.を作動させるが、弓矢のためか命中率はあまり高くない。

 

(スナイパーライフルなら、マニュアル照準でも外しようのない距離だが…別の「スキル」も使ってやるか…『狙撃』)

 

 この世界の別な『スキル』を使用して、再び、V.A.T.S.を起動させる。『スキル』の効果で命中率は急上昇。ただ、強力なクロスボウだけあって、アクションポイントの消費は重く、V.A.T.S.中に撃てるのはせいぜい3発程度だ。

 

 確実に仕留めるため、更に『クリティカルショット』も発動させて、地中に潜むジャイアント・トードめがけて最初の矢を放つ。その飛んでいく矢が、映画のワンシーンのようにスローモーションで見えているジェイデン。

 

(手応えあり、だ)

 

 その矢が地面を貫いて突き刺さると、「ジャイアント・トードにクリティカルヒット」のシステムメッセージ。それと同時に、地中に潜んでいたジャイアント・トードが、絶叫しながら飛び出て、すぐに動かなくなる。矢はその側頭部に深々と突き刺さっていた。

 

 すぐにV.A.T.Sで第二射を放つジェイデン。二匹目のジャイアント・トードが、矢に首を貫かれ、地中から弱々しく這い出てくる。続けてV.A.T.S.なしで、狙いをつけて放たれたクロスボウの矢が、ジャイアント・トードの背中に命中して矢羽近くまでめり込み、カエルはうつぶせに倒れて動かなくなった。

 

「どうしてあんな距離から、あそこにジャイアント・トードがいると分かった?『感知』スキルか?」

 

 アーチャーのキースも『鷲の目』スキルを使っていたが、ジャイアント・トードがいるのは、飛び出てくるまで気付けなかったらしい。

 

「…まあ、カンだな」

 

 Pip-boyの事を説明すると長くなるからな、と思いながらレーダーの敵反応が消えたことを確認して、それでも念のためにクロスボウに次の矢をつがえておいてから仕留めたジャイアント・トードのほうに歩いていく。

 

 ジェイデンを見やる他のメンバーは、むしろ複雑そうな表情だった。

 

「ジャイアント・トード相手とは言え、俺の出番が全くないとは…」

「グラップラーみたいな奴がキース以上の狙いと威力でクロスボウぶっ放せるとか、チート持ちはやっぱ違うってとこかぁ」

「…私たちに出番あるのかな」「だな」

 

 前衛のお株を奪われたテイラーは肩を落とし、ジェイデンを接近戦特化と思い込んでいたダストは天を仰ぎ、中級魔術師と、アーチャーとしての存在意義に疑問を抱いてしまったリーンとキースは苦笑する。だが、ジェイデンの、ほかの転生者やチート持ちと違う“異様な落ち着き”ぶりに、彼らはただの新人ではないと感じ始めていた。

 

(スキルは便利なものだ…だが、このマジカの減りようは何なんだ?この世界のスキルは、いざというときのための切り札なのか…)

 

 一方のジェイデンは、少しの回数「スキル」を使っただけなのに、マジカのゲージが目に見えて減っているのに戸惑っていた。しかも、アクションポイントとは違って、自然回復する様子はない。

 

(念のためにマジカの回復薬がないかどうか、もえもえに聞いてみるか)

 

 そう思いつつ、ジャイアントトードの横に立ち、「トレンチナイフ」…ハンドガード付きの戦前のコンバットナイフを抜いて、慣れた手つきでジャイアント・トードを解体しようとする。

 

「カエルの肉:Val 5000エリス」

 

 Pip-boyの分析結果を見ると、毒や放射能汚染のない食材が取れるようだった。

 

(もえもえにおごってもらった唐揚げの肉は、こいつか)

 

 生で食ってもある程度体力は回復するなと思いながら、トレンチナイフでジャイアント・トードの皮を剥いでいるジェイデンをテイラーが止めた。

 

「おいおい、カエルの肉をわざわざ自分で持って帰るのか?そういうのは普通、回収部隊に任せるものだ」

 

「…肉の現物や報酬はどうなる」

 

「それは冒険者カードに記録が残るから、あとでギルドからお金か、現物かで受け取ればいいの!」

 

「そんなことも知らないとは、さすが素人童貞だぜ!」

 

 説明を加えるリーンと、すかさず煽るダスト。リーンがダストの頭をはたくのを横目に、ジェイデンは少々納得がいかない様子で、解体しかけのジャイアント・トードから離れる。

 

「回収まで、自分でやりたかったが…」

 

「お前はいろいろと、変わっているな」

 

「それは自分でもわかっている」

 

 キースのつぶやくような問いかけに、この世界の常識にまだ不慣れな自分を思い知って、ジェイデンは苦笑するしかなかった。

 

 

 

 呑気にゲコゲコと鳴いている3体のジャイアント・トート。そのうちの一体が突然、胴体をほとんど真っ二つに切り裂かれて絶命。

 

 驚いて首を巡らせる二体目はその首を跳ね飛ばされる。

 

 ようやく襲撃者に気づいた三体目は大口を開けて舌を繰り出そうとするも、その間に正面から、電撃を帯びた剣の袈裟斬りを受けて動きを止められ、そのまま何もできないまま切り倒されてしまった。

 

 

 ジェイデンたちは、ジャイアント・トードを仕留めてしばらく歩くと、その先にさらに3体のカエルがいるのに気づいた。ジェイデンはテイラーたちに、カエルから離れた場所で待っているように告げると、全員が驚くような忍び足(Sneak)でカエルたちの死角から歩み寄り、不意の初撃から瞬く間に、ジャイアント・トードを一人で撃破していった。ダストたちは、戦いというより「作業」のような手際に、戦慄すら覚え始めていた。

 

「終わったぞ」

 

 息を切らすこともなく「ジンウェイのショックソード」片手にテイラーたちのところに戻ってくるジェイデン。テイラーはクルセイダーとして、戦士としてのジェイデンの力量よりも、容赦のない戦い、いや、「作業」のやり方に驚愕していた。

 

「モンスター相手とは言え、あそこまで容赦なく出来るものなのか…」

 

「全くだぜ!ヤバい腕前なのは確かだが、やり口が盗賊かアサシンのそれだ!戦士のやり方じゃねえよ!!」

 

 何故かダストは、今までにない真剣な表情で、煽り抜きで食って掛かっていた。

 

「楽に倒せるのならそれに越したことはない、弾…矢もマジカも有限だからな」

 

 素っ気なく、だが異様な重みをもって返すジェイデンの言葉に、テイラーとダストは絶句するが、それをフォローするようにリーンが声をかける。

 

「でも、もうそろそろあたしたちにも出番が欲しいかなー、って。だって、わざわざパーティに入ったんだから、全部一人で戦うこと、ないでしょ?」

 

「どんな戦いを経験すれば、あそこまで出来るようになるんだよ?」

 

「わかった…機会があったら、話してやるよ」

 

 ここはウェイストランドではない、ということを今さらながら思い出して、ブレーキをかけるようなリーンの言葉と、キースのもっともな疑問に苦笑で、ジェイデンは答えた。

 

 

 

 Pip-boyのワールドマップを確認すると、目的地の洞窟はもう間もなくのようで、まばらに木々の生えた林のような場所になってきた。

 

「こういう場がゴブリンの生息地だ、気をつけろ…」

 

(確かに…ちょうどパーティの進路に、レーダーの赤い表示が5体…今度はお手並み拝見だな)

 

 テイラーを先頭に警戒しながら進むパーティの一行、その中で、ジェイデンは中腰のSneak移動の体制でヘビークロスボウを構える。

 

「来るぞ!この数のゴブリンならいつも通りで、やれる!ジェイデンは横からに備えろ!!」

 

 現れてきた「ゴブリン」は一言で言えば「小鬼」だ。子どもぐらいの体格で、武器も防具もお粗末だ。個々の戦闘力はそれこそ、ジェイデンなら軽く撫でただけで、文字通り消し飛ぶ程度でしかないだろう。ただ、群れる習性と繁殖力は人間にとっての脅威とされ、駆除には一体あたり2万エリスの賞金がついている。

 

 「キー!!」「ギシャー!」

 

 ゴブリンたちは粗末な武器を振り上げ、あるいは短弓を引き絞り、統率の取れない動きで襲いかかってくる。即座に、テイラーは前に出て、盾でゴブリンの攻撃を受け止めてから逆に弾き飛ばし、倒れかけたゴブリンをダストが即座に切り捨てる。

 

 敵の後衛から放たれた矢は、リーンが風魔法ですべて狙いをそらして、すかさずキースが敵の射手に打ち返す。素早く、連携の取れたテイラーたちの動きで、数分もかからず5体のゴブリンは全滅し、このときばかりはジェイデンの出番もなかった。

 

「見事な手際だ…俺が手を出すまでもなかったな」

 

 素直に称賛するジェイデン。普段の冗談口の多さからは意外、と言っていいほどの連携と手際でゴブリンを仕留める様子から、付き合いが長いか、呼吸の合った優れたパーティであることが伺い知れた。 

 

「分かったか!お前みたいなド素人とはわけが違うんだよ!」

 

「それでも、いざという時は頼りにしてるからね…って何してるの?」

 

「また倒した敵から拾い物を漁っているのか?呆れたものだ」

 

「よっぽどの貧乏性か、戦場帰りとかか?」

 

 戦いを終えて、呼吸を整えてからドヤってくるダスト、フォローするリーンへの返答もそこそこに、早速倒れたゴブリンの装備や懐を漁っているジェイデンに呆れるテイラーと、からかうように言うキース。

 

 他のメンバーを無視して、倒れているゴブリンの装備や所持品を漁るジェイデン。武器や防具は小さすぎたり、状態(CND)が悪すぎて価値はなさそうだが、ショートソートの一つが妙に立派なので気になって、拾い上げてじっと見る。それなりの価値と攻撃力と作りの細かさが、他のゴブリンの持ち物とは不釣り合いに思えて、小さく首を傾げるジェイデン。

 

「ん、同じ形のショートソードを街で売っていたのを見かけたような気がするが」

 

 ジェイデンが観察しているショートソードを見て、テイラーも少し不審に思ったようだ。

 

「どうせどこかのマヌケが、落としたか、盗まれたかなんかされたんだろうぜ」

 

 お気楽なことを言うダスト。さらにゴブリンの懐を探るジェイデン、なぜか、そこそこの額のエリス銀貨や、金貨が出てくる。

 

「おっ、ラッキーじゃん」

 

「…ちょっと待って。ゴブリンがこんなに人間のお金を溜め込んでたこと、あったかしら…」

 

 ジャラジャラと出てくる金貨や銀貨に目を輝かせるキースと、弱いモンスターには不釣り合いなドロップに首を傾げるリーン。

 

「俺にはよくわからないが、非力なモンスターにしては持ってるものが立派すぎなんじゃないか?」

 

 意外な実入りの良さを、素直に喜ぶわけにはいかなかった。複数の冒険者が返り討ちにあった結果かもしれないからだ。ゴブリンの洞窟に、悪辣な罠、あるいは予想もしない危険が潜んでいる可能性が出てきて、パーティの雰囲気がいささか重苦しくなる。

 

「…ただの偶然だ偶然!さ、とっとと終わらせようぜ!幸い、ゴブリンの洞窟とやらには昼過ぎには着けそうだから、上手く行ったら今日中には、帰れるぜ!」

 

「まあ、少しでおかしいことがあれば無理をせずに引き返そう、何しろ新人をエスコートしてるからな」

 

 いささか警戒心を強めながら、まばらな林を抜けていくうちに、目撃情報通りの場所に、小高い岩山と、その裂け目のような洞窟が見えてきた。ジェイデンがマップ画面を確認するためにPip-boyを覗き込み、そして…わずかに眉をひそめた。

 

「…ねえ、何かあったの?場所を間違えたとか」

 

 ジェイデンの表情に気づいて、リーンが声を掛けるが、ジェイデンは首を振る。

 

「…いや、俺の「魔道具」は、ここが目的地だと示している」

 

「よしっ、チャッチャと終わらせて、早いとこ帰るぞ」

 

「ゴブリンの洞窟なら、罠や鍵のかかった扉もそれほど多くはないから、盗賊職がいなくてもなんとかなるだろう。念の為に灯りになる魔石は…ちゃんとあるな。では、行くぞ」

 

 洞窟に入る前の簡単な打ち合わせを終えて、テイラーとダストを先頭に、洞窟に足を踏み入れていく一行。その中で、ジェイデンは懐の「ブラックホーク」の重みを確かめながら(Pip-Boyに出てきたロケーションの名前が、正しいかどうかわからないから言い出せなかったが…こいつはただのゴブリン討伐では終わりそうにないな)と、警戒を強めていた。

 

この場ではジェイデンにしか読み取れない、Pip-boyの画面には、次のようなシステムメッセージが表示されていた。

 

「発見:初心者殺しのトンネル」

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