Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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遅くなって申し訳ありませんでした。

初心者向け(この世界での滞在時間基準)ダンジョン


Beginner’s Hunt,or Be Hunted?(3)

「ゴブリンの住み家」である洞窟の中をテイラーを先頭に進んでいく。陽の光が差さない奥の方は、まばらに篝火や松明がかかげられていて、最低限の明かりは確保されていた。

 

「ここがゴブリンの巣で間違いなさそうだ。足元に気をつけろ…」

 

「早速だが止まったほうがいい、見ろ」

 

 先頭を歩くテイラーを止めて、自分が先頭に立ってからジェイデンは一行に足元を指し示す。そこには錆びついた虎挟み(ベアトラップ)が口を開けていた。

 

「くそっ、ゴブリンのくせに生意気だぜ」

 

「ダンジョンだとこれがあるから。ジェイデンの注意力に助けられたわね」

 

「帰りも足元に注意しないとな、って、何をやってるんだ?」

 

 舌打ちするダストと、罠にいち早く気づいたジェイデンに感心するリーン。そして、キースは虎挟みの脇にかがみ込んで手を出すジェイデンを不思議そうに見やる。

 

 ジェイデンは、慣れた手つきで虎挟みの横の板バネを操作して罠を解除する。無力化した虎挟みを折りたたんでバックパックに吊り下げるジェイデン。手慣れた罠解除の様子を他のメンバーは驚きの目で見つめていた。

 

「盗賊スキルまで持っていたのか?」

 

「この程度の罠なら、《スキル》で魔力(マジカ)を消費しなくても何とかなる」

 

 Repairの技術の応用だがな、と内心でつぶやきつつテイラーに返すジェイデン。

 

「いや、スキル無しでなんとかするヤツのほうが珍しいし、わざわざ罠持っていくのも、盗賊系の専門職でもないとやらないぞ」

 

「そのくせ、戦闘の腕も一級品と来やがる。いくつ芸があるんだこいつは…」

 

「もしかして、単独で冒険するのが当たり前だったのかしら」

 

 他の冒険者とは能力も、行動パターンも異なりすぎるジェイデンについて不思議そうに会話するキースとダスト、リーンの言葉を背に、今度は少し進んだ曲がり角の足元にあったトリップワイヤーを解除し、ついでに連動していたクロスボウもかなり粗悪だが一発ぐらいは撃てるだろうと思ってこれまた持って行くジェイデン。テイラーたちは、散歩をするぐらいの気やすさで罠解除と探索を続けるジェイデンに、しばらくは一人で任せておくことにした。

 

「もしかして、ダンジョン探索が本業だったのか?」

 

「本業かどうかはともかく、慣れてはいる」

 

 足音も立てずに歩くジェイデンは、彼を不思議そうに見ながら尋ねるキースに短い返事をしながら、ほぼ一本道の洞窟の、所々に仕掛けられていた虎挟みを無力化させ、吊り下げられた岩などのトラップと連動しているワイヤーも外していく。

 

(キャピタルのメトロ探検を思い出すな)

 

 ジェイデンは、元の世界で地下鉄(メトロ)の駅やトンネルを探検していたときのことを思い出していた。探検というよりは、最終戦争で崩壊し、瓦礫で区画が分断されていたワシントンDCの中心街で、電車が走る代わりにレイダーやグールがはびこる地下迷宮と化してはいたものの、戦後においても立派な「交通手段」だったメトロのトンネルを利用していたに過ぎないのだが。

 

 そのうちに、洞窟の脇に、小さい部屋のような空間があるのが見えてきた。その中では5体のゴブリンが焚き火を囲んでいた。テイラーが何かを言う前に、ジェイデンはおもむろに小部屋の入口近くまで忍び足(Sneak)で進むと、虎挟みを起動させてそれを仕掛ける。そこから少し距離を置いてから、拾ったクロスボウで部屋の中のゴブリンの頭を射抜いて絶命させる。ゴブリンたちが騒ぎ出す前に、持ち替えた自前のヘビークロスボウでもう一体の胸を貫いて不幸なゴブリンを矢で壁に縫い付けさせてから、剣ではなくトレンチナイフを抜いてようやく騒ぎ出した他のゴブリンを待ち構える。

 

 絶叫しながら飛び出してきた先頭のゴブリンは、仕掛けられていた虎挟みに引っかかり、足を挟まれて悲鳴を上げ、罠から逃れようともがいている。仲間の悲鳴に立ち止まってしまったゴブリンの胴体を、走り寄ったジェイデンのナイフが容赦なく貫く。最後に動けるゴブリンが、短剣を振りかざすよりも早くジェイデンの蹴りが飛び、軽々と数メートルも吹っ飛んだゴブリンは壁に叩きつけられて動かなくなった。虎挟みから逃れられないままのゴブリンに、ついでとばかりに首めがけてナイフを振り下ろすジェイデン。罠を仕掛けてから1分も経たずに、一人で複数のゴブリンを仕留めてしまったジェイデンには、テイラーたちは驚く気分も失せているようだった。

 

「もう全部、あいつひとりでいいんじゃないかな」そんなつぶやきがテイラーから漏れてしまう、そんなテイラーの視線の先では、ある意味平常運転で、ジェイデンが動かなくなったゴブリンの装備や懐を探っていた。相変わらず粗末な武器や防具にはほぼ目もくれなかったが、やはり多めに出てくるエリス通貨に対しては嬉しそうにはせず、むしろ不審そうな表情を浮かべていた。

 

「腕が立つ割に、やってることがせこいんだよ、あいつは」

 

「でも、確かにちょっと変かも。ここのゴブリンも結構お金持ってるし…」

 

「そうか?ゴブリンを狩れば狩るほど儲かるんだから、もっと奥まで行こうぜ」

 

 白い目でジェイデンを見ているダスト、マッピング用の紙から顔を上げて首を傾げるリーンをよそに、キースの意見にダストも乗って、一行は更に洞窟の奥を目指すことになった。

 

 

 

「次にゴブリンに出くわした時に、罠や不意打ちで、戦士らしくない戦いぶりを見せてくれたら興ざめだぞ」

 

 曲がり角に巧みに仕掛けられた圧力板(プレッシャープレート)を慣れた手つきで解除しているジェイデンに皮肉っぽく言うダスト。罠の危険から開放されているダンジョン探索のお陰で、気が大きくなっているようだ。

 

「誰のお陰で楽な冒険になってるか考えなさいよね…」

 

「いや、構わない…ふむ、あそこの連中は正面から潰せばいいのか」

 

 呆れたように突っ込むリーンを止めて、ジェイデンが指し示す先には、先程のような脇に空いた洞窟の中で焚き火を囲んでいるゴブリンたちがいた。ジェイデンは、やにわに右手に、拳を強化する武器の一種の「スチールナックル」を装備して、その洞穴に走り込んでいく。

 

 あまりの考えのなさに呆れながらも後を追おうとするテイラーの目に飛び込んできたのは、すぐに反応して飛び出てきたゴブリンが、ジェイデンのスチールナックルでの一撃で、頭が内側から弾けたと見誤るほどの血しぶきを上げながら吹っ飛ぶ姿だった。次の一体も、腹を殴られるとくの字になって数メートルも吹っ飛び、すぐそばの一体も蹴りを入れられて宙を舞い、先に殴られて動かなくなった一体の後を追って床に転がる。彼の脇を通って逃げ出そうとする一体は襟首を掴まれて無造作に投げ飛ばされ、壁に叩きつけられると、そこ張り付いたように動かなくなる。破れかぶれで短剣を振り上げて突っ込んできたゴブリンは、一瞬で間合いを詰めたジェイデンに、スチールナックルつきの拳を頭部に丸ごとめり込まされ、頭の中身をその場にぶちまけながら崩れ落ちる。

 

「…いや、戦いというよりも弱いものいじめだわ、これ」

 

「あいつの実力に疑う余地はないのは何度も確認できているが、これは…」

 

 あのロリ野郎に正面から戦えとは二度と言わないほうがいい、と思いながら引いているダストと、戦いぶりを見れば見るほど、ジェイデンの戦士としての強さを実感するが、称賛する気持ちはどんどん失われていくテイラー。

 

「たしかに正面から戦っているけど、あれじゃ、戦いというより駆除というか、処理と言うか…実力差がありすぎるだけじゃない怖さを、彼のやり方からは感じるわね…」

 

「戦うときは少しビビるとか、逆に上がるとか、気分が動くのが普通と思うんだが、あいつはゴブリンがどれだけ派手に血しぶきを上げて倒れても、眉一つ動かさずに次の相手をぶち壊しに行くんだからなあ…戦いの時に、あそこまで感情を動かさないやつは、高レベル冒険者を含めても、お目にかかったことはないな」

 

 彼がやってきたことは自分たちの考えてる「冒険」とは根本的に異なるものではないか、と半ば確信をし始めるリーンとキース。ひそひそ話が止まらないテイラーたちの見ている中、今度は、小さな空間の奥に置かれた宝箱の前に歩いていくジェイデン。

 

「ちゃんと鍵のかかった宝箱をゴブリンが持っていることは少ないが、盗賊職がいない以上は合鍵を探すか奪うかするほかないな…何をしている?」

 

「おいおい、罠外しのついでに、鍵開けまで出来るのか?盗賊職でもないのにロックピック用の針金、使えるのかよ」

 

 テイラーとダストは、盗賊職でもないジェイデンが宝箱の鍵をこじ開けようとするのを呆れながら見ていた。

 

(カギの造りは単純(Very easy)だな。今までやってきたロックピックのやり方でいけそうだ…)

 

 慣れた手つきで、この世界で盗賊職が使うロックピック用のものとは異なる奇妙な針金…L字型に曲げたヘアピンで鍵穴の中を弄り、ドライバーも使ってこじ開けていくジェイデン。ヘアピンを鍵穴に突っ込んでから数秒とかからずに、宝箱は軽快な音とともに開いた。

 

「あの変わった針金で、どうやって鍵を開けられたのかしら…」

 

「どんな簡単な鍵でもあの早業は普通じゃねえな…」

 

 スキルアビリティではなく、素の器用さと技術だけで宝箱をこじ開ける様子を目を丸くして見ているリーンとキースの言葉も耳に入らない様子で、ジェイデンは、宝箱の中をじっと見て口を閉ざす。

 

「どうした、何も入ってなかったのか?」

 

 テイラーが興味本位で宝箱の中身を覗き込むが、すぐに中を見て真顔になる。中にはいっていたのは多額のエリス通貨、ゴブリンが使いそうにない魔法の杖、そして、冒険者カードだった。ただ、そのカードの上面には「Deceased」(死亡)の文字が浮かび上がっている。

 

「まさか、ゴブリンが(たむろ)してるだけの洞窟でやられたやつがいるのか?メイジ、ということはこの杖の持ち主ってことか?10とそんなにレベルは高くないが、ゴブリンにあっさりやられるほどには、弱くはなさそうだがよ…」

 

 真剣な顔つきでホロタグのような、戦死者の記録になってしまった冒険者カードを取り上げて、読み取っていくダスト。

 

「思ったよりもヤバそうだぞ、ここで引き返すか…?」

 

「ゴブリンごときにビビっててどうすんだよ!多分どこかに隠れているゴブリンが、残ってるはずだ。狩りの獲物はちゃんと探さないとな!」

 

「…もう少し進もう、リーン、急いで引き上げるとしても迷うことはないか?」

 

「そうね、ここまでに、時々さっきのような小さな空間とか、短い行き止まりはあったけどほとんど一本道の洞窟だから、急いで撤退するにしても迷うことはないと思う」

 

 不安を隠さないキースと相変わらず向こう見ずなダスト。マッピング係のリーンの返答に、もう少し進むが、撤退も視野に入れ始めたテイラー。

 

(その行き止まりのところに、ゴブリンしか通り抜けられなさそうな細い裂け目があったのが気になるが…俺一人ならそこにフラグ地雷を仕掛けてやるんだがな)

 

 Pip-boyのレーダーにも引っかからないので確定ではないが、まだ息を潜めているゴブリンの気配を感じるジェイデン。狙っているのは不意打ちか、あるいは。

 

 

 

「止まれ…いるぞ、だが一体だけのようだ」

 

 口数も少なく、洞窟の奥の方まで進んでいく一行。ゴブリンが設置していたであろう篝火や松明も奥の方ではなくなり、リーンが掲げる、光を発する魔石の明かりを頼りに歩を進めていく。洞窟の道は少しずつ広がりを見せ、その先は広い空間が広がっているようだが、レーダーの敵対反応に気づき、ジェイデンは歩みを止めて、他のメンバーに警戒するよう告げる。

 

「おかしいな、ゴブリンは普通、単独行動をすることはないが」

 

「ゴブリンといえば《初心者殺し》がつきものだけど、まさか、ね」

 

「初心者殺し…?」

 

 テイラーとリーンの会話に、ここのロケーションと同じ名前が出て来たのに気づいて、眉をひそめながら尋ねるジェイデン。

 

「初心者殺し。ゴブリンみたいな駆け出し冒険者にとって、美味しいと思われている、比較的弱いモンスターのそばをウロウロして、釣られた初心者を狩る習性がある。しかも、ゴブリンが定住しないように、ゴブリンの群れを定期的に追いやり、狩場を変えるという、狡猾で危険度の高いモンスターだ」

 

「駆け出しのお前なら知らないのは仕方ねえが、初心者殺しとゴブリンが一緒に定住することは普通ねえんだよ」

 

 ジェイデンは、キースとダストの説明を聞いているうちに、頭の中で数々の符号がつながっていくのを感じた。

 

「…もし、初心者殺しとやらが、狩場を変える必要がなくなったとしたら?」

 

 その言葉に、一行の表情が硬直した。多額のエリス通貨、明らかに冒険者の持ち物と思える装備品の数々、そして死亡を示す冒険者カードの存在…。

 

 次の瞬間、一行の沈黙を引き裂くように、洞窟の入口側からゴブリンたちの不快な叫び声と足音が聞こえてくる。

 

「くそっ、どこかに潜んでてやがったか!やってやるぜ…って、多っ!!」

 

 押し寄せてくるゴブリンの群れに立ち向かおうとして、振り返って駆けだしたダストは、狭い洞窟を埋め尽くすような数の、武器や松明を手にしたゴブリンが押し寄せてくるのを見て慌てて引き返して、テイラーと並んで剣を構え直す。押し寄せる数は、ざっと見ても20体は下らなさそうだ。

 

「数が多すぎる…突破するには、お前に頼るしかなさそうだ、ジェイデン」

 

 押し寄せてくるゴブリンに対して盾を構えて戦闘態勢を取り、苦々しそうに指示を出すテイラーの横に並んでダストも剣を構え、顔を青くしながらもリーンとキースも後方で身構える。

 

「いや、本命おそらく奥にいるやつだ…ゴブリンにかかりきりになれば後ろからやられる。そっちは俺に任せておけ」

 

「初心者殺しのトンネル」の、おそらくは最深部からの、低く重々しい唸り声の方に顔を向けながら、テイラーに静かに告げるジェイデン。

 

「何…まさか?!」

 

 愕然とするテイラーには黙って、Pip-boyのライトのスイッチを入れるジェイデン。リーンの魔石よりも周囲をまんべんなく照らし出す光は、広まった空間の中に転がる食い散らかされた冒険者の成れの果て、そして両手剣や槍などの、ゴブリンには大きすぎて放置されていた冒険者たちの装備を映し出していた。

 

「ひっ…!」

 

 リーンに、引きつった悲鳴をあげさせたのはそれだけではなかった。

 

「本当に、いやがったのかよ…!」

 

「距離があっても安心するな!奴は後衛まで一瞬で間合いを詰められるほど素早いぞ!…というか、俺やリーンが今は一番ヤバい…」

 

 歯ぎしりするダストと、動揺を隠せないキースの視線の先で、黄金色の眼光が、動揺する人間たちを冷ややかに観察するように動く。Pip-boyのライトの中に現れたのは、人間の肩ほどの体高と漆黒の毛皮、そしてサーベルタイガーを思い起こさせる牙と不気味に輝く黄金色の瞳の猛獣…《初心者殺し》。それは、獲物と「味方」の両方を睥睨しながら、悠然とジェイデンたちに向かって、歩を進めていた。

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