Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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お待ちかね?のチート付与回です


Reincarnation!(5) 

「そういえば”魔法の倉庫”のようなPerkについては、これからなのか?」

 

 ジェイデンのふとした問いかけに、エリスはまるで「手品が成功したときのような」微笑みを浮かべた。

 

「すでに済ませてあります、Pip-boyを確認してみてください」

 

「???」

 

 疑問に思いながらPip-boyのステータス画面で「Perk」を確認していくジェイデン、するとそこには見慣れない「Personal Armory」というPerkが加わっていた。マジシャンのような格好のVault-boyが、パワーアーマーを何もない布の中から取り出す手品をやっているように見えるイラストの横に、こんな説明があった。

 

「異世界ならではのあなたのための特別な武器庫!小さな魔法の物置の中にあるものはあなたに負担をかけませんが、出し入れするには少しの時間と安全な環境が必要です」

 

「…ここに書いてあるのは本当なのか?」

 

「論より証拠ですね、こちらを使ってこのパワーアーマーを仕舞ってみてください」

 

 エリスはにこにこ笑いながら、漆黒の表地に金糸で魔法陣が刺繍され裏地は深紅の、マントのような大きな絹の布を差し出してくる。どう見ても、マジックアイテムというよりは手品の小道具といった趣だ。

 

「これで手品の真似事をしろと?」

 

「真似事、ではなくて本当のマジックですよ、さあ、どうぞ」

 

 半信半疑というよりは、これは何らかのジョークだなと思いつつ、ジェイデンは自分のパワーアーマーを布で包むように覆う。すると、布をかぶせた瞬間に、Pip-boyに何らかのプログレスバーが表示される。不審に思いつつ見ていると、十数秒かけて、プログレスバーが終了したとたんに、マントのような布が突然床に落ちた。慌てて布をめくってみると、その中にあったはずのパワーアーマーは完全に姿を消していた。同時にPip-Boyの画面に「冬用t-51bパワーアーマーはPersonal Armoryに収納されました」という通知が表示された。

 

「本当の消失マジック、か…?」

 

 慌ててアクアの執務室を見渡してみるが、パワーアーマーはどこにもなく、部屋の構造的にも隠す場所などどこにもない。

 

「それで、どうやって俺のパワーアーマーを取り出せばいい?」

 

「簡単ですよ、マジックを行えばいいんです」

 

「変な手順のPerkになったな…」

 

 ぼやきながらジェイデンは「魔法のマント」を手品のまねごとのように両手で持って、中から何かが出るぞ、と言いたげに軽くゆすった。すると、再びPip-boyの画面にプログレスバーが現れ、待つこと十数秒。今度は逆に、イリュージョンマジックのようにマントが突然膨らみ、めくってみると元通りにパワーアーマーが現れた。

 

「よくできました。これで、試験運用は大成功ですね」

 

「俺から見たら信じられないような手品だが、出し入れには、それなりに時間がかかるわけか」

 

「規模が極めて小さいとはいえ、とても高度で複雑な術式を展開していますからどうしても一定の時間はかかります。それに、周辺の状況が少しでも不安定になれば直ちに術式は停止されます。なので、このPerkの使用は、安全な状況下に限られますね」

 

「この様子だと、周囲に敵の気配があって、休息やファストトラベルができないような時は使えなさそうだ。それにしても、モノの出し入れの度に、この手品の真似事をさせられるわけか?」

 

 ジェイデンが渋い顔をすると、エリスはさらにいたずらっぽく笑う。

 

「実はそのマントような布はただの手品の道具です。このPerkの使い方を視覚的に理解していただくために用意しました。Pip-boyのインベントリを操作しても同じことが出来ますけど、このやり方のほうがわかりやすくて、面白いと思いませんか?」

 

「確かにインベントリのところにPersonal Armoryの項目が追加されているな。WTで大まかに見積もったところだと、限界容量はパワーアーマーで2機から3機分といったところか。これだけの装備を柔軟に運用できるというだけで、俺にとっては十分だ。それにしても、君のことはもっとまじめだと思っていたよ、こんないたずらを仕掛けられるとは思ってなかったな」

 

 むしろ面白そうに笑うジェイデンに、アクアは大きく頷きながら言った。

 

「この子も真面目ぶっててなかなかはっちゃけたところがあるからね。魔族への対策会議のときに、魔族殺すべし慈悲はないなんてノリで決まって過激な意見出してるの、この子だし。あと、胸はパッ「先輩そのあたりにしておきましょうね」

 

 静かで丁寧ながら殺気を込めたエリスの声に、ジェイデンは眼を見開き、アクアは気まずそうに口を閉ざした。

 

 

「特別な加護を与える」ために、執務室の床にアクアがせっせと描いていた精緻な魔法陣の中心で、ジェイデンは例の「手品用のマント」を軽くはためかせる。しばらくすると、何もない空間から、「冬用T-51bパワーアーマー」が、その武骨な姿を現わした。

 

「本当に重みも何も感じずに、このパワーアーマーを持ち運ぶことが出来るのか…このPerkの恩恵は計り知れないものがあるな」

 

 改めて「Personal Armory」の使い勝手に感心している横で、アクアはこれから加護を与えるパワーアーマーをじっくりと観察していた。

 

「冬山用のパワードスーツということで白を基調とした塗装になってるけど、まるでパラディンの鎧みたいね!あたしが加護を与えるにはぴったりだわ!!」

 

 アクアは弾んだ声で言いながら、パワーアーマーの正面に立ち、永続的な加護を与えてパワーアーマーを準神器にするための儀式を始めた。

 

「それじゃ、始めるわよ…」

 

 彼女は両手を力強く前に突き出し、詠唱を始める。すると、パワーアーマーの足元の魔法陣が輝き始め、やがてはジェイデンがまともに目を開けてられないほどの、眩い、青白い床面から描かれた魔法陣の形に伸びあがる。その光で描かれた複雑な幾何学模様がパワーアーマーを包み込むと、その光はパワーアーマーの構造や、配線に寄り添うように移動し、まるで機構の透視図のようにパワーアーマーを包み込む。そしてその光は、パワーアーマーの表面を這うように動き、装甲や配線の中へと吸い込まれていく。まるで、霊力そのものがアーマーの構造を解析し、再構築しているかのような、機械工学と神秘が融合したかのような光景だった。

 

「セイクリッド・ハイネス・ディバインブレッシング!」

 

 高らかにアクアが加護の言葉を詠唱すると、その術式は収まっていく。一見すると外見上の変化は見られないパワーアーマーだが、どこか神聖な雰囲気を纏うようになっていた。金属の表面に微かな霊力の痕跡が揺らめいている。

 

 アクアは額の汗をぬぐって、大きく息をついてから自慢げな表情で説明を始めた。

 

「これでこの「機械の聖騎士鎧」はもとの通常攻撃とか放射能とか、毒とか物理的な防御がすごいのに加えて、あたしの加護で、魔術や、呪詛、霊体の攻撃に対しても無敵になったわ!」

 

「無敵の防御力を付与できるほどのマナは使っていませんよね先輩。本来の防御力に比例した魔法への防御付与ですから、過信はしないでください、ジェイデン様」

 

 冷静に訂正するエリスに対して、アクアはほほを膨らませながら文句を言った。

 

「だって無敵レベルに防御力あげちゃうと普通の神器と同じコストが掛かっちゃうし、それだけのマナは分けてくれなかったじゃない!」

 

 いつの間にか、アクアがマナを与えられた後から彼女の身を包んでいた淡い光は、マナを使い切ってしまったために消えていた。

 

「武器にも加護を与えるためには仕方のないことでしたから。そして、パワーアーマー本来の動力源であるフージョンコアのエネルギーも消費しなくなりましたが、通常の神器同様、加護が有効なのは使用者本人のみで、あなた以外の誰かがこれを装備するときは『普通のパワーアーマー』に戻ります」

 

 ジェイデンは腕を組み、思案げな表情を浮かべる。

 

「つまり、魔法に対する防御が加わり、フュージョンコアの心配もなくなったが後の使い勝手は変わらないわけか。もともとこいつは頼りにしていたから十二分だ。あと、俺がくたばった時や万が一パワーアーマーを奪われた時も、いずれはエネルギー切れで動かなくなるというフェイルセーフも兼ねているわけだな」

 

 霊力の残光が僅かに揺らめく装甲を前に、部屋の中に深い沈黙が流れた。重い沈黙を破るようにエリスが口を開いた。

 

「通常の神器も、所有者の手を離れた時は「壊れないだけの少し便利なユニークアイテム」にグレードダウンします。やむを得ないリスク管理ですね」

 

「そういう点では、俺みたいな転生者はやはり異分子というわけだな。俺の場合は普段使わないような装備は、Personal Armoryにしまっておいたほうがいいか」

 

「…そうしていただけると助かります。所有者がお亡くなりになった後の、あるいは奪われてしまった神器は、地上に残ったままですと時には災いの元となりますから」

 

 表情を曇らせながら告げるエリスの様子から、ジェイデンはもしかしたら、地上において本来の使用者の手を離れた「神器」によるトラブルは、意外に多いのかもしれないと思い始めた。

 

「考えれば考えるほど、剣と魔法の世界に、右も左もわからない異世界人にユニークアイテムやPerkだけ与えて放り出すというのも、賭けの要素が強いやり方だな…それで、本当に武器にも「加護」をもらっていいのか?」

 

 ジェイデンは、儀式のためにわざわざしつらえた白い大理石の祭壇の上に、彼が一番信頼を置く武器、すなわちガトリングレーザーの特別なカスタム品である「ベンジェンス」を置きながらエリスに確認するように尋ねた。

 

 その瞬間、エリスの雰囲気が一変する。その瞳からは慈愛に満ちた温かみが消え失せ、代わりに冷徹な光が宿った。

 

「もちろんです、あなたなら、この武器に私の「魔を祓う」加護をお与えすれば、間違いなく何千、何万もの悪魔や魔族を打ち払っていただけると信じています」

 

 先ほどまでとは違った低く、重々しい調子でジェイデンのほうをまっすぐに見据えながらエリスは告げた。

 

「これは私が加護を授けた方に課す、最も神聖な使命です。地上の世界に蔓延る尋常ならざる存在を、徹底的に、一体たりとも残さず浄化していただきます。それこそが、あなたに与えられた神聖なる責務なのです」

 

 祭壇と、上に置かれた「ベンジェンス」の前に立ち、ジェイデンのほうを振り返ったエリスの表情には、もはや普段の慈愛深い女神の面影はない。その瞳には、魔族への冷徹な敵意と、聖なる浄化への揺るぎない決意だけが宿っていた。悪魔に対して神々の中でも一番の強硬派というアクアの言葉は本当だったか、と思いながらジェイデンはエリスの態度に若干引いていた。

 

「魔族対策会議の時みたいな言い方やめたら?知らない人が見たら引くわよ」

 

 呆れたように言うアクアの声に、我に返ったエリスはわずかに赤面し、バツが悪そうに咳払いをしてから、儀式に集中し始めた。両手を胸の前に組み、静かに祝福の言葉を唱えていくごとに、「ベンジェンス」の下に青白い光の魔法陣が現れ、その光は祝福を授けられる武器を包み込んでいく、その光は清浄さと同時に、どこか攻撃的な眩さを感じさせるものだった。ガトリングレーザーを包み込んだ祝福の光、その姿は幾何学的・神秘的な文様からまるでガトリングレーザーの設計図を機械の表面に書き写したようになり、部品の一つ一つを強化するように、目まぐるしく機構や配線に沿って明滅していた。

 

 最後にエリスは、静かな、だが厳かな声で祝福の言葉を告げる。

 

「セイクリッド・ディバイン・エクソシズム」

 

 そして、ガトリングレーザーへの祝福の儀式は終わる。エリス自分が祝福を与えた武器を、満足そうに見下ろしていた。

 

「これで『ベンジェンス』も準神器となりました。元々非常に強力な武器ですので、基礎となる攻撃力は強化されていませんが、不浄なるものを打ち払う祝福を与えましたので、いかなる敵にも対応できるはずです」

 

 エリスは一呼吸置いて、より実務的な口調で続けた。

 

「それと、ジェイデンさんが使用する限り、動力となる『充電パック』は不要となります。ただし―」彼女は少し申し訳なさそうに付け加えた。「通常の装弾数を撃ち切るごとに、クールタイムが発生します。おおよそ、今までのリロード時間と同じぐらいですね」

 

「つまりは充電パックの消費を気にしなくていいのと、悪魔や霊体とやらに効果があること以外は使い勝手は全く変わっていないというわけか」

 

「使い勝手を良くしようとして元の武器を超えた性能にしようとしたら、一気に祝福のコストが跳ね上がっちゃうし、これまた予算不足の悲しさ、かしらね」アクアが、マナを受けた証の淡い光が消えてしまったエリスを見ながら告げる。

 

「ですがこれで、準神器の準備も完了です、あとは、地上に降り立つための最終確認を残すのみですね」

 

 エリスが告げる前に、すでにジェイデンはパワーアーマーとガトリングレーザーをPersonal Armoryにしまい込もうとしていた。だが、Pip-boyの「機械の聖騎士鎧と女神の復讐はPersonal Armoryに収容されました」というメッセージに首をかしげる。

 

「いつの間に冬用t-51bパワーアーマーと、ベンジェンスの名前が変わっているんだ?」

 

「武器や防具には立派な名前を付けるのが決まりでしょ!形式番号のままの名前じゃなんだか味気ないし、白が基調の装甲と、ごっつくて威厳のある見た目でピンと来たの!聖騎士の鎧にふさわしいって!」

 

「俺はパラディンなんて柄じゃないぞ」

 

 弾んだ声で祝福と同時に、パワーアーマーを改名していたことを告げるアクアにジェイデンは苦笑した。

 

「謙遜しなくていいわよ、あなたのやったことはそれこそ勇者か英雄のそれなんだから。それに、これからの世界ではこの言い方のほうが、ピッタリだと思うの!…気に入らなかった?」

 

「それじゃ、そういうことにしておこう…そして、ベンジェンスが「女神の復讐」というのは…」

 

 ジェイデンがそう言った途端に、アクアを押しのけるようにしてジェイデンの前に立ったエリスが、座った眼をして早口でしゃべり始めた。

 

「この元からきわめて強力な「ベンジェンス」に私が加護を与えた以上はこの武器は女神エリスの名のもとにひたすらに悪しき存在を焼き払うことを運命づけられたのです魔族がどれほど悪辣な存在なのかご存じですか彼らは世界の均衡を壊し善良な人々の希望を踏みにじる存在ですそして何より彼らは人間の弱さや絶望につけ込み魂を汚し破滅へと追い込むそのような存在を私は断じて許しませんジェイデンさん私が加護を授けた理由はこの武器がもともと強力だったからだけではありませんあなたは前の人生で数々の敵をその手で葬り去ってきましたねあなたの死者の記録を見てあなたは私が加護を授けるのにふわさしく私に代わって数々の悪しきものを葬り去る力のある方だと確信しました「女神の復讐」の名はもともと「Vengeance(復讐)」と名付けられていたこの武器に女神エリスの名のもとに悪しき存在を焼き尽くし浄化する神聖なる準神器としてその役割を果たす運命を背負わせるためのものですさあジェイデンさんあなたは地上でこの女神エリスの代行者としてすべての悪しき存在をこの女神の復讐で薙ぎ払うと誓っていただけま「本当にそのぐらいにしときなさいよ!ジェイデンが完全に固まっているじゃないの!!」」

 

 完全に魔族殲滅の執行者としての側面を丸出しにしてるエリスの、あまりの早口と圧力のある演説に目を白黒させているジェイデンの間に割って入って慌ててエリスを止めようとするアクア。我に返ったエリスは、ジェイデンとアクアから目を逸らしながらつぶやくように言った。

 

「し、失礼いたしました。少し熱が入りすぎましたね。ジェイデンさんには大変に期待していますし…その…とにかく、『女神の復讐』をうまく使いこなしてくださいね!」

 

「まったく、あたしも悪しき存在、特にアンデットには容赦しないけど、あんたほど魔族に対してとは言え殺意むき出しなのは、女神的にもちょっと引くわよ」

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