Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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Reincarnation!(6) 

「そっ、そこまでおっしゃらなくても!とにかく魔族は許せませんよねジェイデンさ…ええと、今しまい込もうとしている珍しい光学兵器、ちょっと見せてもらっていいですか?」

 

 アクアのツッコミから逃れるように、エリスはジェイデンに話を振ろうと振り向くと、彼は、強力すぎる、あるいは見た目などで剣と魔法の世界にあまりにも似つかわしくなさそうな、当面は使いそうもない装備をPersonal Armoryに収めていく作業を再開していた。エリスは彼が、明らかに地球の技術では作られてなさそうな奇妙な、それでいて未来的な外見の光学兵器を手にしたとたん、さすがに不審に思って声をかけた。

 

「ん、この原子破壊光線銃のことか?確かに珍しい品だとは思うが」

 

「…これは明らかに地球よりも進んだ文明の産物ですね。どこの星のものかはすぐにはわからないですが…少しお待ちください」

 

「ジェイデンっていろいろ珍しいもの持ってるわね。これもただのおもちゃとか小道具みたいなのじゃないみたいだし」

 

 感心しているアクアの横で、エリスは原子破壊光線銃を手に取って不思議そうにあちこちの角度から観察してから、スマホに似たデバイスを取り出して地上世界で言う画像検索にかけて、神界のデーターベースと照合していた。

 

「ゼータ星の産物?!聞いたこともない星系ですし、通常なら地球との交流は考えられないぐらい離れてますよ?!担当神も…全く面識のない方ですね」

 

「あたしもその星のことも担当神のことも全然知らないわ。そんな全く地球になじみのない星のものがどうしてここにあるの?UFOから拾ってきたとか?」

 

 スマホに似たデバイスに出て来たデーターを見て、ますます謎を深める様子のエリスとアクアに対して、ジェイデンは苦笑しながら説明した。

 

「ゼータ星人か。向こうのほうから宇宙船に乗って地球に押しかけてきた連中だよ。俺は一度そいつらにアブダクションされて実験材料になりかけたんだが、脱走して同じようにエイリアンに捕らえられた連中と組んで、逆に連中の母船を乗っ取って、もう一隻の母船は船同士の撃ち合いで沈めてやったよ。まあ、ホラ話と受け取ってもらってもいいが」

 

「あー、死者の記録に書いてあったこと、ウソじゃなかったんだ。突っ込んだら負けと思ってスルーしてたんだけど」

 

「…確かにゼータ星人にアブダクションされて生還したと記録にあります。これは経験豊富な冒険者という範疇を完全に超えていますね…」

 

「あたしも彼の昔話は規格外過ぎて、ついていけなくなってきてるわ。ジェイデン、あなたひょっとして異世界転生の話も、たいして驚いてないとか?」

 

 ジェイデンの記録を再確認して突っ込むのをあきらめて投げやりになっている様子のアクアと、信じられないような顔で記録とジェイデンのほうを繰り返し見ているエリスに、ジェイデンは思わず苦笑した。

 

「まあ、こんなこともあるか、という程度だな…地上じゃ念のため、ジャンプスーツじゃなくてこういうのを着てたほうがいいか?」

 

 ジェイデンはパワーアーマーをしまい込んだ代わりとばかりに、プレートアーマーが進化したような「コンバットアーマー」の一種の「レンジャー・バトルアーマー」と、セットのヘルメットをエリスに見せる。

 

「これから降り立つ「駆け出し冒険者の街アクセル」と、その周辺は極めて安全で、普通の人も生活している場所ですから、冒険や戦いの場でない限りは重装備は必要ないと思いますよ。それよりも、先に仕舞っていたヌカランチャーについては、極めて慎重な取り扱いをお願いしますね」

 

「人が撃てるアトミック・バズーカーが実用化されているなんてどれだけ世紀末な世界だったのかしら…お願いだから、次の地上では撃ったりしないでよね」

 

 ジェイデンが小型ながら核兵器を持ち歩いている事にアクアとエリスは驚愕し、そしてまさかこんなものを次の地上でも使うつもりなのかと心配していた。ヌカランチャーは、威力は強力無比、攻撃範囲は極めて広いが、自爆の危険性と、わずかながら放射能汚染を残してしまうとリスクも大きく、文字通りの「最終兵器」だ。

 

「そうだな…俺たちの世界にとって核は文字通りの「終末の炎」だったからな。ミニ・ニュークは貴重品だし、威力も強すぎるからそうそう、使わないといけないような場面はなかった…次の世界でもそうであってほしいが」

 

 これからジェイデンが赴く「剣と魔法の世界」では、ミニ・ニュークはおろか10ミリ拳銃弾のような、元の世界では、当たり前に手に入っていた弾薬の入手は望むべくもなく、そもそも銃火器や光学兵器は存在すらしないはずの世界だ。当座の弾薬類は豊富に確保しているが、使い慣れた銃火器は異世界での戦い方を身に着けるまでの繋ぎのため、あるいは大きな戦いのためのとっておきで、一発たりとも無駄弾は撃てない、と思いながらPersonal Armoryにしまい込んでいく装備と、バックパックや懐に収めていつでも取り出せる装備を選別していく。

 

 最終的にジェイデンは、Vault101ジャンプスーツに当座の装備や薬品類を詰めたバックパックを背負い、腰には中華剣の改造品で、剣と魔法の世界でも見た目は違和感のなさそうな「ジンウェイのショックソード」を佩いて、懐には10ミリピストルを忍ばせた、彼にしてみると、ごくごく軽装で地上に降り立つ準備を終えた。

 

「準備はお済みでしょうか、これより、地上の世界へ転生する術式を展開いたします」

 

 これまで辛抱強く待っていた天使が、ジェイデンを地上へ送るための術式を展開しようとする。冒険の準備を終えたジェイデンの前に、アクアと、エリスは並んで立って、それぞれに別れの言葉を告げていた。

 

「あたしがここまでやってあげた以上、必ず魔王を倒してくれるわよね!ここから良いお知らせが届くのを、楽しみにしているわよ!」

 

「あなたの行いとその力は、魔王討伐を成し遂げるに足るものと信じています。そのためにアクア先輩と私は、許される限りで最大限の加護をあなたにお授けしました、どうか、その力を有効にお使い下さい」

 

「ここまでしてくれて感謝している。グロッグナックになり切れるかどうかはわからないが、次の世界でも精一杯戦ってみるさ」

 

 アクアとエリスに向かってほほ笑む、あるいは不敵な笑みを浮かべるジェイデンだが、地上に転移される直前にふと気づいた。

 

(そういえば、これから先の世界の金はどうなっているんだ…)

 

 これまでの世界で通貨として使われていたのは、主にヌカ・コーラの瓶の王冠の「キャップ」だった。新しい世界では剣と魔法の世界らしく、デナリウス銀貨か、ゴールドのような通貨が流通しているのだろう。地上で金の苦労を散々していたジェイデンは、気まずくなるのを承知でアクアとエリスに尋ねた。

 

「その、こんな時に聞くことではないかもしれないが…これからの世界では、どんな金を使っているんだ?まさかこのキャップや戦前のドル札が使えるわけはないよな」

 

 その言葉を聞いたアクアとエリスは、一瞬目を丸くした後、感動の別れの場面を台無しにされたと言いたそうな冷たい視線をジェイデンに向けた。

 

「ああ、なんだか視線が冷たいが、実はこれまで、金ではさんざん苦労しててな…Vault101から追放された時は、完全に無一キャップで、そこでたどり着いた最初の町で親父の行き先を聞こうとした相手にキャップを要求されてさ。仕方なく借金取りの真似事をして金を稼いだ事もあった。同じような面倒は二度とごめんだ。だから、当座の金を、少しだけでも貸してもらえないか?」

 

「…特別に5万エリスをお貸ししましょう。余裕が出来たら、最寄りのエリス神殿に寄付の形で返納してくださいね」

 

 呆れたような表情を浮かべつつも、エリスが手を振ると、ジェイデンの手元にいくばくかの金貨と銀貨、そして紙幣が現れた。これが、地上での通貨のようだ。

 

「いや、本当にすまなかった、できるだけ早く返すようにするよ。あと、エリスは地上でも、しっかり信仰されているんだな」

 

 エリスは表情をやわらげて微笑むと、嬉しそうに頷いた。

 

「僭越ながら、これからあなたが転移する国では、国教として信仰を受けています、あなたも是非とも地上において入信を…」

「ちょっと待った! 上げ底女神のあんたが、私の超有望な信徒候補をかっさらおうとしてるわね?! ジェイデン、地上では絶対にアクシズ教に入りなさいよ! そうすれば私がずっと見守ってあげられるし、あなたもきっとそうしたいでしょ!」

 

 アクアとエリスが女神の本能をむき出しに信徒勧誘で張り合い始める。そのやり取りを苦笑しながら眺めていたジェイデンだったが、天使が静かに咳払いをして二人に声をかけた。

 

「女神様方、そろそろ転生術式が完成いたします。転移を始めますが、よろしいでしょうか?」

 

 笑顔ではあるが、まったく笑っていない天使の目を見て、アクアとエリスはどちらも渋々口を閉ざした。

 

 

 

 ジェイデンは2柱の女神と、天使から少し離れた場所に歩いていく。立ち止まると、その足元に、青く光る魔法陣が現れた。そのジェイデンに向かって、アクアは静かに告げる。

 

「改めて言うわね。ジェイデン、あなたをこれから異世界に送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人として。魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう」

 

「ほう、そういう特典もあるんだな」

 

 そう尋ねるジェイデンに、エリスが穏やかに微笑みながら告げる。

 

「ええ、世界を救った偉業に見合った贈り物…たとえどんな願いでも、たった一つだけかなえて差し上げましょう」

 

「偉業に見合った贈り物、か。ついさっき死んだときは、俺はそういうものを目当てに命を懸けたつもりはなかったんだが」

 

 その言葉に、アクアとエリスの表情が僅かに揺れる。ジェイデンは改めて人生最後の瞬間を思い起こしていた。ジェファーソン記念館で、死を覚悟して放射線まみれのチェンバーに飛び込んだ。父ジェームズの遺志を継ぎ、「命の水」を守り、人々に、地上に希望を残すために。他に、願うことは何もなかった。

 

 アクアは突然、儀式を粛々と進めることをやめ、ジェイデンに向かって叫ぶように声を張り上げた。

 

「一度、命を捨てて本当に世界を救ったあなたには、今度こそ幸せになってほしいの!だからお願い、地上で魔王討伐を成し遂げてちょうだい!」 

 

「新しい世界での冒険の機会をもらっただけでも、俺にとっては十分すぎる。せいぜい期待しておいてくれ」

 

 その言葉は、何かを求めるわけでも、気負うわけでもなく、静かな決意を感じさせるものだった。アクアとエリスはその姿を見つめながら、改めて彼に特別な加護を与えたのは間違いではなかったと感じていた。 

 

「きっと、あなたは候補生ではなく、勇者そのものなのでしょう。魔王を打ち倒す存在はあなただと確信しています」

 

 転移直前のジェイデンに、エリスは厳かに告げた。

 

「絶対に魔王に勝ってここに帰ってくるのよ、ジェイデン、あなたならそれが出来るわ!だってあなたは「命の水」の勇者ですもの!水の女神のあたしが言うんだから間違いないわ!さあ、旅立ちなさい!」

 

 あえて、明るい声で告げるアクアにジェイデンが微笑み返そうとしたその瞬間、彼の体は眩い光に包まれた。青白い光が部屋全体を満たし、光が収まったときには、ジェイデンの姿はもうそこにはなかった。

 

 アクアの執務室に残ったのは、彼の旅の無事を祈る2柱の女神と、天使の姿だけだった

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