Fallout3 DLC:Goddess’s Blessing On This Wonderful World!   作:Survivalist

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Fallout3のチュートリアルミッションといえば、そう…


A Small step into a Wonderful World(2)

 ジェイデンが冒険者カードを懐に仕舞うのと同時に、Pip-boyには「レベルキャップが解放されました」というシステムメッセージが流れる。この世界では、さらに成長の余地があるということらしい。そして、グレイアウトしていたマジカのゲージが光りだすのを見て、いよいよ「剣と魔法の世界」で冒険が始まるのかと感慨を深めるジェイデン。さっそくいくつかのパーティからレベルと能力値を見込んで誘いが来るようになったが、

 

「悪いがまだ装備も整えていないし、スキルアビリティも取っていないから、返事はしばらく待っていてくれ」

 

そう答えて当座は勧誘を断り続けるジェイデン。剣と魔法の世界で、いきなりパワーアーマーと銃火器では目立ちすぎるデビューになるし、できるだけ再調達の利く武器や防具で戦いたいという考えから、買いそろえられるかはともかく、まずは装備の調達に動こうと思い、再び受付のルナに声をかける。

 

「装備を整えたいが、店がどこにあるかはわかるか?」

 

「それなら、街のガイドマップがありますよ。各種ショップの情報も載っていますし、こちらをどうぞ。」

 

 渡された地図を見ると、ギルド周辺が町の中心のようで、少し歩けばほとんどの店を見て回れるようだ。「ハリス武具店」「ウィズ魔法具店」とありがちな名前の店のリストの中に、やたら目を引く名前があった。

 

「魔装雑貨『深淵の淵』…なんだこりゃ」

 

 ジェイデンが思わず声に出した名前に、ルナは明らかに顔をひきつらせていた。

 

「あ、そちらのお店は紅魔族の方が経営しています。ポーションを中心に、武器や防具もいろいろ扱っていますよ」

 

「紅魔族というのは初めて聞く名前だが…」

 

「はい、生まれつき魔力が高くて、ほとんどの方がアークウィザードという上級職についています。ただ、その…名前と性格が、ちょっと個性的で…」

 

 言いよどむルナを見ていると、優秀だが、かなり癖の強い集団のようだとジェイデンは思った。だが、優秀な一族が経営すると聞いてまずはここを訪れようと、礼を言ってギルドを後にしようとするジェイデンに、ルナはなおも声をかけた。

 

「紅魔族の方には驚かないでくださいね…特に最初の自己紹介の時に」

 

 

 

 ギルドを出て市場の隣の区画に向かうと、武具、防具、魔法具など、冒険者向けの装備を扱う店が立ち並んでいた。それぞれ目立つ看板や商品ディスプレイを工夫し、装備を新調する冒険者たちで賑わっている。

 

 だが、その一角に異様な雰囲気を醸し出す店があった。おどろおどろしい店構えと装飾過剰な「魔装雑貨『深淵の淵』」という看板が印象的で、ジェイデンの目にはハブリス・コミック・フィルムに出てくる「邪悪な魔法使いの隠れ家」そのものに映った。あるいは、資料でしか見たことはないが、ヌカワールドのアトラクションのような、妙に自己主張の強い雰囲気だ。大丈夫かと思いながら、無駄に重厚感のある木製の扉を押し開けて店の中に入る。

 

 店内は、外観とは対照的に落ち着いた雰囲気だった。壁には武器や防具が所狭しと掛けられ、棚には色とりどりのポーションの瓶が整然と並んでいる。奥には薬草や鉱物が標本のように棚に収まっていた。乳鉢や実験器具が並ぶ錬金術か何かの作業台もあり、「魔装雑貨」という看板に説得力を与えていた。

 

 棚の前では、店番らしい黒いマントと深紅のローブ姿に、丸メガネをかけた小柄な少女が片づけをしていて、入ってきたジェイデンに気が付いて振り向いてきた。

 

「いらっしゃいませ!お客様ですか?あら…?」

 

 ジェイデンのほうに愛らしい笑顔を向けてきた少女は、丸メガネの奥の大きな赤い瞳を向けてきたが、急に表情を真剣にさせると、彼に駆け寄ってきて早口で話しかけてくる。

 

「あなた転生者さん!?その変わった格好、絶対そうよ!えっと、ニホンからの人?…ううん、違う!黒い髪と黒い瞳の人たちとは全然違うし、その青い服も!すごい!ねえ、どこの国から来たの!?教えて!教えて!」

 

 赤い瞳を好奇心で輝かせ、矢継ぎ早に質問を浴びせてくる少女。ジェイデンは少し圧倒されながらも、少女の人懐っこい笑顔と、テンションの高い話し方に奇妙な懐かしさと、少々の畏怖を感じていた。

 

(この感じ…俺はどこかで知っているような…いや、考えても仕方ないか)

 

「後で話に付き合ってやってもいいが買い物に来たんだ、店主はいるか?」

 

 店主の娘か何かだろうと思って質問をいなすが、小柄な少女ジェイデンの返答に頬を膨らませた。不機嫌な表情と仕草にも、不思議と愛嬌があった。

 

「もう!このお店をやってるのは私ですよ!それから…」

 

 少女はジェイデンのほうをじっと見てから、いたずらっぽく微笑んで言った。

 

「多分、あなたよりも年上ですよ、私」

 

「…大人をからかっているのか?」

 

 真顔で返してしまうジェイデン、目の前の少女、もとい女性はどう見てもローティーン、もっとはっきり言えば「Lolita(ロリっ子)」にしか見えない。

 

「何なら冒険者カードをお見せしてもいいですよ。乙女の秘密を知りたいなんて、無粋なことをおっしゃりたいのなら別ですけど」

 

「…わかった、信じよう」

 

「ああ!そういえば自己紹介がまだでしたね!」

 

 なぜか、待ってましたと言いたそうにテンションを上げた目の前の女性は、やたら芝居がかった大げさな動きでマントを翻し、手足を大きく伸ばしたポーズを取って高らかに告げた。

 

「我が名はもえもえ!深遠なる知識を追求し、錬金術の極みに至る永遠の美少女!そなたが欲するのは我が叡智か、我が美貌か!!」

 

 突然の堂々とした名乗りに思考がフリーズするジェイデン。自己紹介に驚いてはいけないというルナの言葉はこのことだったかとわずかに動く脳みそで思い出していた。

 

「…ジェイデンだ、転生者がやってくるのは主に日本からなのか?俺は…アメリカからやってきた。それと、質問にはできるだけ答えるが、そろそろ商談に入らせてもらっていいか?」

 

「アメリカ…初めて聞く国ね。いっぱい聞きたいことはあるけど少しずつね。ええ、喜んで!!」

 

 自己紹介の後も、「中二病」という概念のないジェイデンからすると、意味不明のノリがずっと続くのかと思っていた彼は、すぐに商談に入ってくれそうなもえもえの様子に少しだけほっとした。

 

 

 椅子に腰掛けたジェイデンに、わざわざお茶を入れてくるもえもえ。よほど話を聞きたいのだろうかと思いながらも、Vaultを出ていって以来かもしれないお茶の時間を満喫するジェイデン。うまそうにお茶を飲んでいるジェイデンを見ながら、もえもえは自分のお茶の入ったマグカップを小さな手で抱えるようにして持ち、丸メガネの後ろの大きな瞳をじっとジェイデンに向けている。

 

「その青い服は、時々見かける転生者さんが着ている服とは似てるようで違うわね。それから、その、左腕に付けてる魔装具…かな?すっごく気になる!!」

 

 そう言って、Pip-Boyを覗き込むもえもえ、独特のグリーンディスプレイはステータス画面を映し出している。

 

「んーと、文字や数字が読めないからよくわからないけど、冒険者カードみたいにステータスを管理するための道具なのかな?」

 

「よくわかったな。こいつは個人用の情報端末だ、俺の身体の状態を数値化して、それこそ冒険者カードのように教えてくれるだけでなく、タスクや持ち物、周辺の地図も管理してくれる」

 

「すごい性能ね!どんな魔力で動いているか感じてみたいから、その魔装具、少し触ってみてもいい?」

 

「Pip-Boyにか?ああ、大丈夫だが」

 

 ジェイデンが左腕を差し出すと、白い手でそっとPip-Boyに触れるもえもえ。だが、魔力を感じ取ろうとして首を傾げる。

 

「魔力…は全然感じられないわ。強いて言うなら流れているのは雷魔法に似たもの…電気、かしら。あら?中で何かが燃えているような…エネルギーがひとりでに湧き出しているけどやっぱり魔力を感じない…これは魔装具とは根本的に違うものみたいね!魔法なしでも、こんな不思議なことができちゃうんだ…」

 

 科学の知識を持たない上にPip-Boyに触れるのは初めてのはずのもえもえが、いきなりPip-Boyの用途と、原子力電池を含めた大まかな構造を言い当てたことにジェイデンは内心、驚いていた。少なくとも、Pip-Boyをただのブラウン管テレビだと思っていたアクアよりは、洞察力と観察力に優れている。

 

「科学の力、だな。原理について教えてやれなくもないが、かなり長くなるから後にしてくれないか。そろそろ、俺の装備について話したいんだが…」

 

「そうだったわね!それで、ジェイデンのクラスは何かしら。剣を差しているから、戦士系なのかな?」

 

「サバイバリストだ。転生したばかりでスキルポイントはまだ振っていない。戦い方を決めてから使うつもりだ」

 

「珍しいクラスだけど確か上級職よね!あなた結構強いんだ!冒険者カード、見せてもらっていいかな?」

 

「ああ、これだ」

 

 ジェイデンは懐から冒険者カードを取り出して、もえもえの前に置く。彼女はカードをじっと見つめていたが、やがて大きな瞳をさらに大きく見開き、興奮したように息を飲んだ。

 

(もえもえの目が…赤くきらめいている。いや、実際に光っていないか…?)

 

「こ、この高いレベル! 見たことない基礎耐久力! そして何より…この人間離れした生命力!!! そうよ…そうだわ! あなたこそ…わたしがずっと求めていた“究極の被検体”よ!!」

 

 急にテンションを最高潮まで引き上げるもえもえに、ジェイデンは思わず眉をひそめる。彼女は両手でジェイデンの手をがっちりと掴み、赤い瞳を今や、はっきりと光らせながら満面の笑みを浮かべる。その笑みはどこまでも無邪気なはずなのに、かえって異様な雰囲気を振りまいていた。

 

(…そうか…最初から気付くべきだった。どうして彼女とは初対面なのに“懐かしさ”と“畏怖”を同時に感じていたのか…)

 

 脳裏に蘇るのは、キャピタル・ウェイストランドでの”過激”という言葉すら生ぬるく感じるほどの危険な実験の数々。もえもえはジェイデンが硬直するのも意に介さず、満面の笑みのままはっきりと宣言した。

 

「お願いジェイデン!わたしの偉大なる実験のため、その身を捧げてほしいの!!」

 

(モイラ・ブラウン…どうしてこの異世界に、あいつとそっくりな女がいるんだ…)

 

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