キヴォトスの好敵手   作:名無しのナナ氏

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7.『アビドス市街地戦(1)』

 

 優勢に推移するかに思えた戦況は、意外にも拮抗の様相を呈していた。

 

 大通りを存分に使っての激しい銃撃戦の模様は、先程の便利屋68を交えた風紀委員会戦の比ではない。実態はものの量ではなく練り上げられた質。両陣営共に強者が出揃った上で真っ向からぶつかり合っているのだ、それも当然というもの。

 そして相手方──美食研究会と鱶鮫カノンと呼ばれた生徒も、先生(わたし)の確保が目的ではなく、対象の撃滅を主目的に据えている。……しかしカノンは、恐らくこの戦闘行為を純粋に楽しんでいる節があったけれど。

 

 そんな彼女と交戦しているヒナたちの様子が気にかかったが、呼気を整えて対策委員会の戦術指揮に意識を戻す。手元の端末、シッテムの箱には今もリアルタイムで戦況が映し出されていた。

 

 アビドスの面々は、道路に展開した美食研究会の生徒らと遮蔽物越しの撃ち合いになっている。乗り捨てられた、或いは駐車していた車に身体を隠しての銃撃戦。状態が拮抗し、セリカが痺れを切らして身を乗り出そうとすると、隣りにいたシロコが彼女の首根っこをぐいっと引っ張って再び元の位置へ。瞬間、セリカの頭上を風切り音とともに弾丸が通り過ぎる。スナイパーであるハルナの狙撃だった。

 

「あっぶな……ありがと、シロコ先輩」

「ん、セリカは危なっかしい」

「で、でもこのままじゃ埒が明かないわよ! ホシノ先輩は向こうの手助けに行ってるし、私たちでなんとかしないと……」

 

 もどかしさに歯噛みするセリカ。その要因は戦闘開始直後、ヒナの静止を振り切って突貫したイオリがものの1分も持たずに制圧されてしまったことにある。

 

 肉弾戦に持ち込んだイオリだったが、カノンが努めて冷静に捌き切り痛烈なカウンターと見舞っての決着。まるで赤子の手をひねるが如く、瞬く間に主力の一枚が落とされたことを見かねて、美食研究会を抑える役割を担っていたホシノがその場を任せて風紀委員会側へと加勢した、というわけだった。

 

 ホシノ不在でもやれる、と意気込んでいたセリカたちだが、想定以上に美食研究会の抵抗が強く苦戦を強いられているのが現状。シロコとセリカは遮蔽物に抑えられ、ノノミも同様に迂闊に身体を出せずにマシンガンの本領を発揮できずにいる。

 

「"っ! シロコ、セリカ! 車から離れてっ!"」

「ぅえっ!?」

「ッ──!」

 

 俯瞰視点で戦況把握に努めていたおかげで、攻撃の予兆を察知して指示が間に合う。遮蔽物に使っていた車両は、二人が転がるように離脱した直後爆発。車体が浮き上がるほどの衝撃はガラスを残らず吹き飛ばし、火炎が燃え上がる車両からは黒煙が立ち上る。

 

「"二人とも怪我はない?"」

「いったた……な、なんとか……」

「大丈夫。でも、引火に気付けなかったのは私の落ち度。ガソリンの匂いがしなかったから油断してた」

 

 セリカと共に後退し、手頃な看板──日常的に撃ち合いになるキヴォトスではこういった代物も防弾加工されているらしい──の裏に逃げ込んだシロコがその獣耳を垂れさせる。

 

「"ううん、銃弾に引火したのが直接の原因じゃないよ。アカリの榴弾で車諸共爆発させてきたみたい"」

 

 そう言ってシロコをフォローすると、彼女は苦々しそうに物陰から下手人を睨む。視線の先には、特徴的な瞳孔を煌めかせるアカリの姿があった。

 

「おや、逃げられてしまいました。仕留めたと思ったのですが……やっぱり先生が指揮されていると一筋縄ではいきませんね」

 

 ちろ、と舌を覗かせるアカリは学生とは思えないほど蠱惑的だ。言動とは裏腹に、彼女もどこか戦闘を楽しんでいるような節が垣間見える。不敵な笑みを浮かべつつも、手元のリロード捌きは素早い。小銃本体の弾倉交換と、銃身に取り付けたランチャーへの装填が済むとそれだけで強力なプレッシャーになる。

 

 イズミとジュンコが弾幕を張り、遮蔽物に隠れた相手はアカリが燻り出し、迂闊に飛び出せばハルナによる狙撃が待っている。シンプルだが連携が取れていて実に効果的だ。特に、切り込み隊長であるホシノを欠き、有効打を打てずにいるこの現状ではいずれジリ貧で押し負けてしまう。ハルナたちは知る由もないが、対策委員会はイオリたちとの連戦を経て戦っているのだから。

 

「グレネードランチャー……厄介だね。迂闊に車を盾に出来ない」

「"でも、それは相手も同じだよ。シロコ、手榴弾は残ってる?"」

「ん、結構消耗しちゃったからこれが最後の1個。ドローンはまだ動かせるけど、そっちも残弾が心もとない」

 

 ポケットから取り出されたのはなけなしの手榴弾。ドローンの攻撃と合わせても、敵を真っ向から制圧するにはとてもじゃないが物の数に入らないだろう。けれど、状況を打開する一手としては十分だ。

 

「"なら、チャンスは一回きりだね"」

「何か作戦があるの? 先生」

 

 シロコの期待に満ちた眼差しを受けて、私は首肯を返して見せる。

 

「"うん、成功すれば状況を好転させられると思う。……ちょっと不確定要素が絡むけど"」

「なんだか絶妙に不安になるんだけど……信じていいのよね?」

「ん……先生の指揮なら大丈夫。だから聞かせて」

「"わかった。肝心の作戦なんだけど──"」

 

 皆に作戦内容を共有する。成否の要はシロコたちの頑張りにかかっており、本人たちにも少なからずプレッシャーになってしまったかと思いきや、そんなことは露ほども感じさせない気合の入った返事が帰ってきた。対策委員会は厳しい環境を生き抜いてきた強い子たちだ、この程度は幾度となく切り抜けてきたのだろう。

 

「"じゃあ皆。私はこれから少し指揮が取れなくなるけど、無茶だけはしないようにね"」

「わかった」

「まっかせときなさい!」

「ホシノ先輩の分まで頑張っちゃいますよ~」

『私も全力で皆さんをサポートします!』

 

 頼もしいサムズアップを背に受けて、私は流れ弾に注意しつつその場を離れる。

 向かう先は──風紀委員会の医療用テントだ。

 

 

 

 

 

 

「やるわよシロコ先輩!」

「ん、反撃開始」

 

 後退していった先生の背中を見送り、私たちは攻勢に転じた。

 

「ノノミ!」

「は~い☆ いっきますよ~!」

 

 合図を出すと、ノノミが相手の弾幕要員めがけて弾幕を張る。それと同時に私とセリカも遮蔽物から飛び出して前線を押し上げていく。当然ながら相手も同様に遮蔽物に身を隠しているので、さして被弾している様子は見受けられない。でもこれで迂闊に顔を出せないはず。

 

 互いに離れた位置で車にカバーを取る。もちろん、それを黙ってみている相手じゃない。すかさず金髪のゲヘナ生──先生がアカリと呼んでいた子だ──が車ごと爆破させようとこちらに狙いを定める。

 

「──させない!」

「きゃっ!?」

 

 トリガーが引かれる寸前、機を伺っていたセリカによる精密射撃が命中。ぽんっ、という小気味良い音を立てて発射されたグレネードはあらぬ方向へ放物線を描き、無関係なビルの壁面に着弾。ぱらぱらと外壁が崩れ落ちて中の鉄筋が露わになる。心做しか、被害を被った民間人の慌てふためく声が聞こえてくるような気もする。

 ……大丈夫、建物の修繕費は風紀委員会が持つって言ってた。既に何台もの車がオシャカになっているけど、ゲヘナの風紀委員会ともなればアビドスとは違ってこれくらいの損害なんて物の数に入らないはず。

 

 うん、だから気にするようなことじゃない。

 

「お返しだよ」

 

 慌てて身体を引っ込めたアカリ目掛けて、最後の手榴弾を投擲。彼女が遮蔽物の代わりに使用していたのは、やはり道路に無数に置き去りにされた車だった。見方を変えれば、道路という場所は可燃性満載の実に誘爆しやすい危険地帯とも言える。そう考えてしまうのは、ひとえに私がキヴォトスの住民だから?

 

 なんて訊ねたのなら、先生は困ったように眉を顰めるんだろうな。先生の困り顔は、ちょっぴりだけ見たい気もする。

 

 胸中でそんな益体もないことを巡らせながら、放り投げた手榴弾の行く末を見守る。なにも、遮蔽物ごと爆破できるのはそっちだけの特権じゃない。それを思い知ってもらう良い機会だ。

 

 全力で遠投した手榴弾が、綺麗な弧を描いて落下していく。アカリの元までデリバリーされた暁には、余程の瞬発力でもない限り逃れられない。手痛いダメージ、或いは運が良ければ気絶まで持っていけるだろう。何にせよカバーから離脱するしかない彼女は、私かセリカの格好の的になる。それで1人リタイアさせられれば御の字。

 

 けれど、トントン拍子にコトを進ませてくれないのが現実。

 

 狙い澄ました投擲で着弾地点に到達するはずのそれは、予想に反して空中で爆発してしまった。予期せぬ出来事に、私は思わず目を白黒とさせてしまう。きちんとタイミングは図っていたし、なにより爆発までのタイムラグが短すぎた。

 ふと運悪く不良品を掴まされたかとも思ったが、どうにも違う気がする。あれはヘルメット団やチンピラは使っているような、ブラックマーケットで取引されている粗悪な廉価品ではなく、ちゃんとした自動販売機から購入したばかりの正規品だ。

 

 それに今日使用した手榴弾はどれも同じ物で、1つだけ信管が異なるわけもない。爆発までの猶予は全て同一のはずである以上、考え得るのは──、

 

「撃ち抜かれた……?」

 

 車体から僅かに身を出し、恐る恐る様子を窺う。美食研のメンバーのうち、2人はノノミの制圧射撃によって今もなお抑えられている。ただ、彼女らもやられっぱなしではなく遮蔽から銃身だけを覗かせて弾をばら撒いていた。流石にその精度は低いとはいえ、ノノミも数発ほど被弾してしまっているようだった。普段は穏やかなその顔立ちに苦悶を浮かべながら、マガジンの残弾が許す限り掃射を続けている。マシンガンのリロードは時間がかかるものであり、技術である程度短縮可能とは言え相手が切り返すには十分過ぎるだろう。

 

 標的に据えていたアカリは、既に別の遮蔽物へと移動したようだ。それまでは先程の位置で身を隠していたと思われるが、にしても飛来する手榴弾を咄嗟に撃ち落とせるとは考え難い。私が投擲した瞬間を、恐らく彼女は目視できていないのだから。

 

 となると……必然的に候補に上がるのは美食研の会長だ。

 

 姿を探してみれば、彼女は今、道路脇の建物から狙撃に徹していた。物陰から膝立ちの姿勢でライフルを構えるその姿は中々様になっていると言える。……遠距離から好き放題撃たれる私たちは堪ったものじゃないけど。

 

 とにもかくにも、手榴弾を狙撃したのが彼女だとして、そんな芸当が可能な腕前だと仮定するなら非常に厄介だ。この様子だと迂闊にドローンを出せば格好の的になってしまう。あれは私が出せる最大級の火力だから、ある程度のゴリ押しも効くのだけど……こうなると出来ることが限られてくるわけで。

 

 不甲斐なさに歯噛みして、私はひとまずノノミを下がらせるべく牽制射撃を行おうと──そこで不意に気づく。ノノミのマシンガンによる弾幕を受けていた美食研のメンバー、彼女らが身体を隠している車両の異変に。

 

「っ! セリカ、相手のスナイパーの注意を引ける?」

「え? わ、わかった!」

 

 簡潔にお願いすると、セリカはアカリから狙いを変えて、今まさにこっちを撃ち抜こうとしていたハルナへ射撃を開始した。その澄まし顔目掛けてシンシアリティの銃弾が殺到する。

 唐突にターゲットが切り替わり焦ったのか、相手の狙撃が僅かにズレてセリカの肩に命中。それでも僅かに怯むばかりで「なにすんのよ!」と怒りを発露させ、お返しとばかりに猛攻を加えるセリカのなんと頼もしいことだろう。

 

 奮戦する後輩を横目に、私は待機状態のドローンを起動。小型端末から目標へ攻撃指示を入力して飛ばす。虎の子の使い時は今しかない、そう確信していた。

 

 やや高度を上げて飛行させたドローンは、誰からも気取られること無く火を吹く。一斉に打ち出されるミサイルが風を切り裂いて襲いかかった。

 

「……ん? ねえイズミ、なんか変な音しない?」

「そお? それよりなんだかガソリン臭いような──あぇ?」

 

 爆炎。素っ頓狂な声を上げた美食研の少女は、お隣のツインテール娘と仲良く黒焦げになった。南無三。

 

 彼女らの身を守っていた車は、ノノミのマシンガンにより車体が穴だらけで、タンクからガソリンが漏れ出すほどに損傷していた。しかしガソリンは大抵気化してしまうものだし、弾丸程度じゃ発火には至らない。相応の火種が居る。なら簡単な話で、直接ミサイルをぶち込んでやれば良い。

 

 その結果がこれ。見事、車ごと爆発炎上。爆風で吹っ飛んだ2名は目を回して気絶している。作戦段階では精々気を引ければ良い程度だったけど、結果としては上々の大戦果だ。これで私たちが優位に立てる。きっと先生も褒めてくれるに違いない。

 

『美食研究会の戦力2名のダウンを確認!』

「シロコ先輩ナイス!」

「流石はシロコちゃんです♪ 私も体を張った甲斐がありました~」

「ん……2人が気を引いてくれたおかげ」

 

 皆からの称賛に、若干の照れくささに頬を掻く。実際、セリカとノノミが奮戦してくれていなければ、こうも上手くいかなかったと思う。だから皆で掴み取った結果なんだ。……こういう表現をすると、なんだか青春っぽくていい。すごくアオハルって感じがする。ちょっと火薬の匂いが強いけど。

 

 役割を完了したドローンを手元に回収し、鞄にしまう。作戦は十二分に達成した。後は先生次第で、私たちはそれまで耐えることになる。相手の戦力も削いだしこれでだいぶ楽になった。

 

『ノノミ先輩! 後方に補給物資を投下しました!』

「ありがとうございますアヤネちゃん♪」

 

 軽微ではあるものの消耗したノノミが一時後退。彼女が態勢を立て直して戦線復帰するまでは、私とセリカで耐え忍ぶ。

 

「……なるほど。これは少々困りました。些か、アビドスの方々を見くびっていたようですわ」

「お二人ともやられてしまいましたし……どうします? ハルナ」

「こうなってしまった以上、撤退が吉──なのでしょうが、肝心のヒナさんたちに鉄槌を下せていません。これでは美食研の沽券に関わりますわ。ということで……」

「徹底抗戦、ですね☆」

 

 戦力が欠けてもなお、美食研の戦意は失われていなかった。

 

「向こうはまだやる気みたいね」

「ん、迎え撃つ」

 

 互いに目配せをして迎撃の態勢を取る。数はイーブン、数的有利はない。ならノノミが戻るのを待って攻勢に出れば良い。それに見立てだとそろそろ先生の作戦も大詰めだ、焦らずいこう。

 

「今度こそウェルダンになってもらいますよ!」

「っ!」

「うわっ!?」

 

 ウェルダンが何なのかは分からないけれど、またもや始まった榴弾爆撃を慌てて回避する。すっかり焦土じみてきた道路を駆け、まだ無事な障害物へ逃げ込む。まるで過激派テロリストを相手にしているような気分だった。……いや、そういえば美食研ってテロリスト集団とか言われてたっけ。

 

「っ!? また……!」

 

 そうこうしているうちに飛来するグレネード。撃ち落とせる自信もなく、カバーから脱出することを余儀なくされる。背後で榴弾が炸裂し、車がまた1台爆炎を伴って廃車と化す。

 被害総額は果たして幾らになるんだろう──そう頭に浮かんだ時、

 

「あぐっ!?」

 

 胴体の側面を抉られるみたいな鋭い衝撃を受けて、私は何がなんだかわからないままに地面を転がった。

 

「シロコ先輩っ!?」

 

 後輩の悲痛な叫びが聞こえる。彼女を心配させまいと、私は鈍痛にも構わずにわななくその腕で無理矢理立ち上がってみせた。そのまま遮二無二体を動かし、適当な立て看板へと滑り込む。離れた位置から不安そうな目でこちらを見つめるセリカに、ぐっと親指を立てた。……実際は物凄く痛いけどね。

 

「……驚きましたわ。一撃で鎮めるつもりでしたのに」

「う~ん、気のせいかなと思ってたんですけど、やっぱりアビドスの子たち頑丈じゃないですか? ハルナの狙撃も耐えましたし……まあ歯ごたえがあるのは良いことです!」

 

 痛みに顔を顰める最中で、そんな会話が耳に届く。

 彼女の狙撃は余程自信があったのだろう。実際、意識が沈みかねない威力だった。恐らくは弾丸に神秘を乗せて撃ち出したからこその威力。生半可な耐性ではまずノックアウトさせられてしまうそれは、ハルナが腕利きであることの何よりの証明。身を持って味合わされた私だから分かることだった。

 

『大丈夫ですかシロコ先輩! 今そちらに医療品を──』

「っ、問題ない。まだ動ける」

 

 息を切らしつつ、飛び込んできた通信には端的に答える。痩せ我慢の自覚はあるけど、だからといって戦線離脱するほどではない。それにあの二人を相手にセリカを独りで置くわけにはいかないし、ここは先輩として意地の見せ所。

 

 軽く呼気を整えて、愛銃のグリップを強く握る。痛みは鈍く尾を引いているけれど、退く理由にはならない。

 

「また榴弾が来るわよ!」

 

 榴弾の装填を察知したセリカが知らせる。また──愚痴を言いたくなる気持ちを抑え、次の遮蔽物へ移ろうとした身体は私の意に反して躊躇い、硬直してしまう。ここで飛び出せば先程の二の舞いだ。それは分かっている。分かっているけど、私が盾にしている看板はグレネードの爆発を凌ぐにはあまりに頼りない。

 

 身を晒せば私とセリカ、どちらかが狙撃される。投擲された手榴弾を撃ち抜くほどの腕前だ、外すという選択肢に期待は持てそうになかった。でもそのまま隠れていても、いずれにせよグレネードの餌食。

 

 そして残ったどちらかも、同じように潰される。

 

 万事休す。一刻の猶予もなく、既にアカリは装填を終えどちらかに照準を絞ろうとしている。だったら、私の決断はひとつしか無い。

 

「セリカ!」

「シロコ先輩!」

 

 その呼びかけだけで、私たちは息を揃えて同時に駆け出す。二人のうちどちらかがやられても、もう片方が反撃する。そういう魂胆だった。

 射出された榴弾がセリカの隠れていた瓦礫の山を発破。けれど遮蔽物のない道路へ身を晒すことになり、撃ち抜かれる前にせめて一矢報いようとトリガーを──引き切る寸前、美食研の背後に悠然と立つ1人の生徒を見た。

 

「──覚悟しろ! 規則違反者共め!」

 

 銀髪のスナイパーが凛と吠える。

 勇ましい立ち姿の奥で、なんだか満足げな様子の先生がこちらを見つめていた。

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