魔法少女育成計画Beyond the Bullet   作:皇緋那

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華麗なる一族とブリキのおとも
生まれ変わりと怪しい粉


 ◇スワローテイル

 

「こっちの方です」

「はいよ」

「なぜワタシまで……」

 

 チーム・スワローテイルは、違法マジックアイテムの取引の捜査に乗り出していた。コルネリアの情報を交えながら、マスカレイド44も引っ張り出し、警戒態勢を最大にしたエリザを先頭に出発した。

 もしキューティーラムがいたら、スワローテイルが見ればわかるに違いない。もし本物の正義の味方と合流できるなら、した方がいい、というか、したい。キューティーヒーラーなら必ず力になってくれるはずだ。周囲には気を配りながら、裏城南を出て倶辺ヶ浜、及びそれより少し北の埠頭の方を目指す。最後にその監査部門が掴んだ足取りも海辺で、恐らく船に積み込んでいるだろうというわけだ。魔法少女のスピードなら、目的地までの時間そのものはすぐだった。

 停泊している船は、大きいものから小さいものまで様々。これらを片っ端から調べる……というのは、さすがに不審すぎる。せめて最小限に抑えないといけない。もうすぐ雪が降ろうという時期、傾きかけた日に、猶予はあまり残されていない。

 

「何かいい道具とかないんですか?」

「あったらもう売りつけてマス」

 

 コルネリアに言われて吐き捨てるマスカレイド44。無理やり引っ張りだされたせいで頬が膨らんでいる。しかしそれはそれとして調査はしっかりやってくれているようで、地味なところまでじっと見ている。船そのものへは飛行できるマスカレイド44がコルネリアと組んで違和感を探し、もうひとり飛べるスワローテイルはエリザと共にどちらかといえば地面を探る。

 

「連中のことだ、物陰に目印でもあっておかしくないが」

「……? これは?」

 

 スワローテイルが見つけたのは、コンクリートの上にばら撒かれたわずかな赤い粉だった。魔法少女の視力でなければ気にも留めない量だが、確かに何かの粉があるように見える。エリザも寄って、じっと見つめ、やがて指を出した。擦って取ろうというその時、彼女は声を出す。

 

「……っ、あっっっつ!?」

 

 いきなりの叫びに驚いた。慌てて息を吹きかけるエリザ。指は火傷のようになっている。一体何が起きたのか、触って確かめるほどの危ない好奇心はさすがになかった。むしろその少量で火傷なんて、何かあるに違いない。コルネリアとマスカレイド44に手を振り、呼んで、見てもらう。

 

「うーん……?」

「これ、実際熱いんデスかね」

「手袋越しならいけるんでしょうか? やってみますか?」

「嫌デスよ」

「ですよね。何か試す方法は……」

 

 コルネリアの目がスワローテイルに向けられ、少し見つめあった後、彼女はその次にマスカレイド44のことをぼんやりと見て、それから急に何かを思いついたように手を叩いた。

 

「スワローテイルさんの魔法、これが植物とか……魔法の粉でしたら、生き物に変えられますよね」

「た、たぶん……?」

「使ったばかりの火薬の粉とかだったら熱くて火傷するかもしれませんが……触れたらかぶれる特殊な粉だったら、スパイスと関わりがあると考えていいと思うんです。ですので、これをトカゲの卵に変身させてください」

「とかげ……?」

 

 コルネリアの意図はよくわからなかったが、言われるがまま、見つけた粉に意識を集中する。範囲が小さければ蛹で包むのも簡単だ。ぐっと拳を握り、コンクリートの表面を虫の組織が包んでいく。そこから再構成が始まる。粉を爬虫類に変えるというのは大変なものだが、少し時間をかければできなくもない。図鑑で見たことのあるトカゲ、というよりよくペットになっている種類の姿と、卵の形を想像して、魔法を使い続ける。蛹の壁が胎動して、やがてめくれて、今度は爬虫類の卵が出てきた。手に残りの粉がつかないように拾い上げると、ぱき、とヒビが入った。中から現れるのは、もちろんトカゲだ。特に魔法の生き物として指定したわけではなく、ただ普通に孵り、スワローテイルの手の上に出てきた。

 

「わぁ、かわいい!」

「お、おう、これかわいいのか?」

「目が大きくてかわいくないですか?」

 

 エリザは爬虫類が苦手らしく、距離をとられた。こんなに可愛いのに。

 

「よし……出番です、マスカレイドさん」

「ワタシ?」

「アレですよ。今日の道具」

「今日のは……昆虫雌雄鑑定機と、マジックアイテム強化装置デスが」

「それです」

 

 マスカレイド44は意図がわかっていなかったらしいが、コルネリアはそれらを受け取ると、迷いなく強化装置を雌雄鑑定機に装着。そのまま使ったら鑑定機が壊れちゃいマスよ、と言われるのも構わず、そのカメラを、スワローテイルに向かって構えた。

 

「えっ、お、女の子ですっ」

「違います! 手の上! そのトカゲちゃんですよ!」

 

 ……それもそうだ。どういう勘違いだったのだろう。手元が撮影される。ただ、トカゲは昆虫じゃないのに平気なのだろうか。

 

「ああ! 強化装置をつけたら、一度だけどんな生き物でも雌雄が判定できマス!」

 

 なるほど、そういうことだったのか。それで、産まれたばかりのトカゲでも、簡単に雌雄を判別できるということだ。結果は……オス、だった。

 

「……やはり。常温ですね」

「どうしてわかるんですか?」

「その種類のトカゲは、温度によって生まれる子の性別が変わるんですよ」

「と、いうことは……?」

「間違いありません。触れるとかぶれる効果のある、粉です」

 

 これで出てくる結論がそれでいいのだろうか。昆虫雌雄鑑定機はこの使用によって壊れてしまったらしく、強化装置を外しながら、マスカレイド44は引き直しデスねとこぼしていた。コルネリアには雌雄鑑定なんて役に立たないんだからいいじゃないですかとまで言われていた。

 

「で、火傷じゃなかったらどうなるんだ?」

 

 エリザの言葉に、コルネリアは端末を操作し、こちらに見せてきた。スワローテイルと、ついでに産まれたばかりのトカゲも一緒になって覗き見る。

 

「敵性魔法少女の魔法の中に、浴びると痛みの走る粉があった……って部分か」

「ってことは!」

 

 この監査部門で接触したという魔法少女が、この裏城南に来ている可能性は高い。

 

「粉溜まりは靴痕の形をしていました。着地の際に、コンクリートに付着したのではないでしょうか?」

「つまり?」

「ここまで考慮する人はそういないでしょう。ということは、この船でここまでやってきたのではないでしょうか」

 

 コルネリアが指したすぐそこのボート。一見して何も変わったところは無い、が、エリザがぴょんと乗り込むと、奥の方にどうやら隠しの収納スペースがあるらしい。中には、カラフルな粉の入った袋がどっさり。

 

「コレ……アレデスね。中毒性があって、魔法の国でも使用禁止になるタイプの」

「……まさか当たりとはな」

「じゃあ! すぐにでも……」

「まあ待てよ」

 

 エリザは、処分しようという提案がされる前に、遮った。

 

「こいつは後で突き出せばいい。ただ、まずもって持ち主はこれを取りに来るだろう。なんなら取引までし始めるかもな。あたしらは、そこを叩く」

「そっか……! それなら、犯人を捕まえられる!」

 

 これで糸口が掴めた。うまくいけば、これが大きな一歩になるはず。

 

「あ、でも、こんなものの取引なんて、やるとしたら真夜中ですよね」

 

 そしてその言葉で、気付いた。そもそも、もうすぐあげはは帰らないと行けない時間だ。夜中はもちろん、あげはの生活習慣では、寝ている。夜更かしすると、父に怒られるし。

 

「エリザさんに迎えに来てくださったらどうデス?」

「……それ、あたしに家知られるってことだけど」

 

 エリザは目を細め、警告するように話す。が、スワローテイルからすれば、彼女がそれで何かをするとは思えない。むしろ、友達を紹介してしまえば、父は喜ぶ。もちろん紹介は魔法少女抜きで、の話にはなるけれど。

 

「それは大丈夫です! その、ところで」

 

 皆の顔が、違う話を切り出したスワローテイルの方、ひいては手の上でよちよち歩くトカゲの方を向く。

 

「この子……うちで飼えるかなあ、って」

「……は?」

「ケースとか、どうすればいいんだろう」

「お、おい、今のより大事なことかそれ」

「大事ですよ!」

「……あたしにトカゲの飼い方、聞かれてもな……」

「飼育キットみたいな道具は見た事ないデスね」

「えっと……すみません、調べてみますね?」

 

 目を丸くされたが、それはそれとして協力的で、何だか嬉しかった。

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