魔法少女育成計画Beyond the Bullet   作:皇緋那

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ダーティ・エリザと帰り道

「ええと、調べたところ、変温動物ですから室温の維持とか色々必要みたいです」

 

 真面目に調べてくれたコルネリア。一緒になって画面を見る。この子の種類なら買いやすい方、らしい。魔法の生き物なのでどこまで一緒かわからないが、生まれ変わらせたスワローテイル自身の直感でいうと、普通と変わらなくてもいい、と思う。

 続けて、飼育に必要なものなんかのことも調べてもらおうとしたが、やり始めるぞというところでそんな時間はないことを思い出す。日は落ちている。

 

「あっ……ご、ごめんなさい! 帰る時間で、その……」

「この子はお店で預かっておきマス」

「室温とかは大丈夫なんでしょうか?」

「冬の外よりは暖かいデス」

「すみません! お願いします……!」

 

 トカゲをマスカレイドに渡そうとして、その時エリザがまた逃げるように距離を取った。当のトカゲ側はゆっくりと、さして警戒することもなくマスカレイド44の方に移動する。もしかしたら、マスカレイド44のコスチュームの機械部分に熱が溜まっていて、実質ヒーターになっていたのかも。暖かい方に彼を預けて、スワローテイルはひとり離れようとし、そこでコルネリアから声がかけられる。

 

「エリザさん、スワローテイルさんを送ってあげてはどうでしょう」

「……え?」

「ほら、このあたりは危険な場所ですし。迎えに行くなら場所を知らないといけませんよね」

「スワローテイルは戦えるでしょ。そっちの方が危険じゃないの」

「逃げ足には自信アリデス」

「私もそれなりですね」

 

 そういう話をしているわけじゃない、と首を振るエリザ。

 

「いや、っ、というか、あたし、そこまで信用していい人間じゃないでしょ?」

「それはあなたがスワローテイルさんを信用するかどうか、ですよ」

 

 そう言われたエリザは明らかに困った顔をした。スワローテイルの方を見てくる。別に、彼女は信用できると思っていた。企んでいるようには見えないし、事あるごとに助けてくれる。今日のことだってそうだ。服屋で襲われた時に助けてくれた。そこに違う理由があったとしても、人のために引鉄を引けるのなら。それに、こうして躊躇って警告してくれている彼女なら。信用しても、後悔はしない。

 

「……あんたがいいなら、仕方ないか。それがいいのもそうなんだろうし」

 

 これで受け入れられたことで、決まった。コルネリアとマスカレイド44はそのつもりだったらしく、あとはふたりで仲良く、なんて言いながら、張り込み用の場所を探しに別行動となる。マスカレイドの方はさっさと帰りたいだけのようにも見えたが、コルネリアの方はなんだか気遣いで仕向けたようにも思えた。

 

 残されたふたりで顔を合わせて、スワローテイルは埠頭から家に戻る道を考え、思いつかないので、まず空に出た。エリザが慌てて屋根を辿って続き、見覚えのある景色まではそれで。道がわかるようになったら、地上に降りて、変身を解いた。体が縮み、羽に通っていた感覚が消えて、いつものあげはに戻る。するとエリザとの身長差はもっと大きくなって、驚く彼女の顔は、思いっきり見上げないといけなくなっていた。

 

「……! 薄々わかってたけど、本当に歳下なんだな」

「来年から小学校です!」

「まだ小学校でもないって、マジで言ってるの? うわ……ってことは……歳、あたしの半分以下!?」

 

 半分……が引き合いに出る、と、いうことは? 

 

「……あぁ。不公平だし。あたしも見せるよ。引くなよ」

「いいんですか?」

「おあいこってこと」

 

 エリザもまた変身を解いた。スワローテイル同様に、かなりシルエットが縮んでいって、やがて現れるのは、少女。大人の女性なダーティ・エリザとはうってかわって、スワローテイルと変わらないくらいの背丈だった。

 そして目を引くのは、明るい茶髪にピアス。着崩したカーディガン。膝より短いスカート。格好はきりっとした目つきはエリザの時と似た印象を受ける。

 

「おお……! 魔法少女の時ほどお姉さんじゃないけど、お姉さんだ……!」

「あんたからしたら誰でもお姉さんでしょ」

「なんて呼べばいいですか? やっぱりエリザさん?」

「……ん、それでいいよ」

 

 人間同士なら、姉妹か、近所のお姉さんに遊んでもらっていたみたいな解釈をしてもらえるかもしれない。父にはもう友達だと伝えちゃっているけれど、通行人にはこっちなら自然だろう。

 

「せっかくですし、お父さんに挨拶していくとか」

「!? はぁ!? 飛躍しすぎだって、恋人か!?」

「だって、友達が家まで来るなんて初めてだから、お父さん大喜びするかなって」

「……」

 

 エリザは黙り込んだ。そして、仕方なさそうに、頷いた。きっとこれでお父さんは喜ぶだろう。軽い歩調で、家への道を歩く。そのすぐ後ろを歩く彼女は周囲を警戒しつつ見回しており、やっぱり頼れるお姉さんの目つきだ。到着まではそんなに時間はかからない。見慣れた建物にやってくると、あげははずんずん進み、インターホンを押す。

 

『はい』

「ただいま!」

 

 声でわかったのだろう。がちゃり、鍵と扉の開く音がして、父が顔を出す。あげはを見て安心したような表情に変わり、それからエリザに目が向いた。対する彼女は会釈をし、あげはから紹介してあげることにした。

 

「エリザさん! 私のお友達!」

「……ども」

「あげはの……! そうか、送り届けてくれたんだ。ありがとう。もしよかったら……少しあがっていくかい?」

「え、いやそこまでは──」

 

 遠慮しようとしたエリザだが、何かに思い当たったらしく、やっぱり少しだけいる、と答えた。父がお菓子と飲み物を用意すると台所に行く中、玄関をくぐる。ローファーを脱ぎ、揃えながら、エリザは息を整えていた。

 

「……あのさ」

 

 声をかけられて、あげはが首を傾げる。

 

「寂しかったら……言ってくれよ」

 

 その言葉でもっと首を傾げた。どういう意味なのだろうか。

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