魔法少女育成計画Beyond the Bullet   作:皇緋那

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閑話の紅茶とチョコレート

 ◇キューティーミント

 

 アニメ『キューティーヒーラーショコラティエ~ル!』放映後、友達で同僚のキューティーショコラが急に副部門長の地位にまで就いたことで、自然とショコラティエ〜ルの溜まり場は副部門長室になっている。ここにはそれぞれが持ち寄ったよくわからない本棚があるし、かくいうミント自身も、部屋に置き場所を見い出せなかったぬいぐるみやプランターを置いて飾っている。ショコラはショコラで喜んでいるのか、今日もミントが顔を出した時、ぬいぐるみを抱いたまま誰かと電話中だった。ショコラ側の声色的に、同じショコラティエ~ルらしい。お姉ちゃんというワードが聞こえ、なるほどラムかと納得した。

 

 ショコラティエ〜ルは副部門長の直属組織となり、よって、アニメ関係以外の、表に出せない仕事が増えている。よくない噂はあれど、ショコラは気にしている様子もない。それもそうだ。不信感を露わにしていた相手が、気がつけばショコラと手を組んでいたなんてことはよくあることだ。そしてその尖兵として、仲間のショコラティエ~ルを向かわせ、対象を撃滅する、これがこの頃の日常だった。

 雑草に大事な仕事を任せるなんて──とは、どうしても思うものの。素直なラムはともかく、あのやる気のないプラリーヌや、ミントと同類の『喋らない方がいい』フレーズにも、表裏問わずの仕事がたくさん舞い込んでくる。あれもこれもショコラが色んな方面に手を伸ばし続けているせいだというが、真偽はわからない。

 

 

「うん、うん、そっか、ありがとー、はーい、頑張ってね~! ……はい! お待たせミントちゃん! おかえり! その様子だと、手が空いた感じかな?」

「そ、そう……ですね。ちゃんと、捕まえた主犯格さんの頭に種を入れて……悪いことするたびに全身に雑草が回っていくようにしました……」

「わーお……そこまでしろとは言ってないんだけど、まあいっか、ありがとう! やっぱりミントちゃんにお願いしてよかった!」

 

 ただ確実にわかることはといえば。

 

「そうだ! 丁度戻ってきてくれたなら、一緒に来てほしいな。私、これからプフレお姉ちゃんに……うん、人事部門長に会う予定があってね?」

 

 ショコラの香りはどうやら思っているよりずっとどこへでも漂っているであろうことだった。当然、ミントには拒否権はない。雑草には難しいことは考えられないからだ。そのまま大した支度をすることもなく、それとなく話しかけ続けてくるショコラに相槌を打っているうち、気がつけば広報部門の外だ。

 人事部門には、以前貸し出されたことがある。あの時は本当に死ぬかと思った。特に、スノーホワイトと対峙した時は、本当に。

 

「あ、ショコラさんですね。お疲れ様です」

「お疲れ様。受付業務も最近は大変だよねえ。これ、差し入れのチョコレート!」

「えっ! そんな、いいですよ!」

「大丈夫! みんなに配る用のチョコレートだから! あ、でも……これはあなたのために選んだ特別、ね?」

 

 距離を詰めるのが早すぎる。このままだとショコラ伝家の宝刀、口移しで食べさせてあげる(キストゥチョコレート)が炸裂してしまう。

 

「あ、あの……雑草が言うのもおこがましいですが……偉い人に会うのでは……」

「あっ! そうだよね、ありがとミントちゃん。ふふ、またね?」

 

 にこっと笑って手を振るショコラ。平常運転だ。迷惑をおかけしたためミントも頭を軽く下げた。が、受付の魔法少女は顔を真っ赤にしたまま硬直しており、聞いているようには見えなかった。可哀想に──と、迷いなく進んでいくショコラについていく。部門長室への道程は、ミントもなんとなくは覚えていたが、ここまで迷いないのも不思議だ。

 

「よく迷子になりませんよね……雑草には難しいです……雑草は上に伸びることしかできません……」

「あはは、清掃員さんとか警備員さんに何度か教えてもらったからね。そういう時はわかる人を頼ればいいの」

「ざ、雑草から話しかけるのはちょっと」

「後で差し入れのチョコとお食事のお誘いを忘れなかったら大丈夫だよ。あと、感謝の気持ちもねっ」

 

 広報部門所属なのに人事部門の従業員にどんどん手を出している。これも平常運転だった。

 やがて荘厳な部屋に到着する。前回もこの部屋だった。曰く、魔法の国メソッドとして、直接会って話すのは信頼の第一歩らしい。信頼とは、人事部門長ともショコラとも遠い気はする。

 扉を開く。その向こうで、車椅子の上で待っている者がいる。他ならぬ人事部門長──プフレだ。

 

「来たよ。今日もよろしくね、プフレお姉ちゃん」

「君の姉になった覚えはないが、歓迎しよう、キューティーショコラ」

「あっ、そうそう、これこれ! この間約束した茶葉だよね! 嬉しいなあ、さすがプフレお姉ちゃん。じゃあ私もこれ! このお茶にすごく合うんだよ、このチョコ。はい、お土産の二袋。家の人と一緒に食べてね?」

「……いやあの……ただのお茶会に来たんですか……?」

 

 プフレは上品に笑っている。さすがに表面上の付き合いの笑顔の気はする。が、ショコラに対する警戒は薄い。そもそもショコラが彼女を警戒していないせいか。このままだといつまで経っても本題に入らない。突っ込みを入れてようやくショコラが落ち着いた。

 

「えっと……聞いてるよね。裏城南のこと」

「あぁ。こちらからも調査員を送っているとも。例の、闇オークションの件だね」

「うん。丁度さっき、ラムお姉ちゃんからの報告があったんだ。死人も大勢。監査のエージェントとかも死んじゃったとか」

「聞いているとも。こちらで調べたこともある。主犯格らしい魔法少女二人組も、また未登録魔法少女だった」

「……あいつの仕業?」

 

 互いの目つきが、最初のお茶会とは変わっている。さらにショコラがそう口にした途端、プフレの口角が真一文字になり、口からほんの小さなため息が漏れていた。雑草は隅で縮こまっていたが、さらに小さくなっておくことにした。

 

「十中八九……どころか。奴は元より、こっち側には存在をアピールしていたとも」

「へぇ! 教えてくれなかったのに!」

「君が関わると話が拗れるからね」

 

 あっさりと言い放つプフレに、ショコラはむっとした顔をした。それから、普段の人懐っこい笑顔ではなく、こちらも真剣の表情をしてみせる。

 

「ラムお姉ちゃんにも言っておいたけど。改めて言っておいてほしいな。()()としても、あいつは……ダスティ・ダイヤは()してもらわなきゃ」

「無論だよ。裏城南の件も我々までで片付けなければならない。オスク派の耳に入れば大変だ」

 

 生憎人材はそう避けないが、と呟く人事部門長に、ショコラもため息混じりに頷いた。ミントからしたらいったい何の話なのか終始わからない。この場に誰が挟まれても、ついてはいけないだろう。

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