【完結】フラグ折り悪役令嬢〜乙女ゲー主人公の恋愛フラグを折ったら転生悪役令嬢の私と主人公で百合フラグが立った件〜   作:シャリ

30 / 46
16話:主人公(リエル):第三王子からの取引プロポーズ

 ある日の昼休み、中庭でいつもの三人で昼食をとっていると、とある人物が私たちの前に現れた。

 第三王子のターマイン様だ。第一王子のアレン様と、第二王子だと後からリリア様に教えてもらったヴェインさんと違って学園には通っていないらしい。だから学園の制服じゃなくて、王族らしい少し威圧感のある服装をしていた。碧色の目と髪で、髪型がワカメみたいにうねって伸びているのが不気味に見える。

 彼はリリア様に用があるのかと思いきや、私と二人きりで内密の話がしたいと言われた。王子に逆らうわけにもいかず、人気が無いエリアに移動してから会話を始める。

 

「ターマイン様、要件はなんでしょうか?」

「なぁに、大した話じゃないんだ」

 

 碧色の目は濁ったように暗く、どこか遠くを見つめるような表情をしている。心の中で少しだけ警戒を強める。

 

「ボクの妻になってくれ」

 

 あまりにも突飛な言葉に、思わず耳を疑う。まるで、ちょっとした頼み事や世間話でもするかのような調子で、とんでもないことを言ってきた。

 

「ええっと……聞き間違いでしょうか。私を妻にしたいと言いました?」

「そうだよ。冗談ではなく本気でね」

 

 本気に思えず訝しんでいると、彼は「あぁ違う違う」と手を振ってから続けた。

 

「ボクが求めているのは、君と子を作ることではない。単純に君の力を貸してもらいたいだけ。君が持つ光属性の魔力に用があるんだ」

 

 彼に対して、怖さよりも困惑の方が強くなる。話の流れが理解できず、思わず眉をひそめる。

 

「私の魔力が目的なのは理解しました。ですが、結婚との繋がりが見えません」

「詳しくは話せないが、君の助力には結婚も不可欠でね。実際のところ、これはプロポーズではなく取引さ」

「意味がわかりません」

 

 戸惑いながらも、私はどうにかしてその場を逃げ出そうかと考えた。そうする前に、彼の次の言葉が私を引き留めた。

 

「君はリリアに叶わぬ恋をしているだろう」

「──なっ!?」

 

 なんでそれを、と言いかけて言葉を飲み込む。だけど、私の反応で証明されたと言いたげに彼がニヤつく。

 

「甘い蜜を見返りに、学園内の様子を教えてくれる人間は多いんだよ」

 

 彼はやれやれと首をすくめる。

 

「第三王子への嫁入りなら、君も王族の一員だ。それなりの権力と金が手に入る。学園の外でもリリアと関わりが持てる立場になれる。なんだったら、リリアが困った時に君が助けることだってできる。どうだい、卒業したら縁が切れる今の平民の立場とは大違いだろう」

「私がリリア様を……」

 

 突然の提案に驚きと困惑が交錯する。しかし、彼の言葉に惹かれる部分もある。

 

「先に言ったが君を抱く気はない。結婚式も挙げないし、口づけも必要ない。君の身体を汚す気はないから不安にならなくていい。だが、学園を辞めて妻としてボクの屋敷に来てもらう」

「学園を辞める!? いくら何でもそれは……できません」

 

 リリア様との学園生活が終わってしまうなんて、私にはとても耐えられない。

 

「とにかく、考えてみてくれ。このまま平民としてリリアと残り約二年半を過ごして関係の終わりを迎えるか、ボクに手を貸す代わりにリリアと長い付き合いができる立場になるか。返事は二週間だけ待つ」

 

 そう言うと彼はポケットから碧色の便せんを取り出した。

 

「マジック便せんを渡しておこう。名前を書けば、学園の裏口に迎えが来る。学園を辞める際の細かい手続きは、君を屋敷に迎えた後にこちらで対処する」

 

 彼が右手で碧色の便せんを差し出す。

 迷いながらも便せんを受け取る時に、彼の左手が添えるように私の手の甲に触れた。なぜか金属が肌に触れる感触がした瞬間、視界がグニャリとねじれる。

 驚きの声を上げる前に、視界が元に戻った。

 

「あれ? なにか今おかしかったような……」

「なんのことかな。さて、ボクはここで失礼するよ。良い返事を待っている」

 

 立ち去る彼の後ろ姿を見つめ、言葉を失って立ち尽くす。

 手に持った便せんに視線を落とす。

 私が取れる大きな選択肢。

 簡単には決められない。

 

 

 便せんをしまい、どうにも頭がスッキリしないままリリア様の元に戻った。

 

「話は終わったのね」

「はい……」

「正直に言うと、内容が気になるけど、二人きりで話したかったことだろうから自重するわ」

 

 リリア様の気遣いがありがたかった。聞かれても、答えられるはずもないから。リリア様との付き合い方を選んで、取引のプロポーズを受けるか受けないかの話だなんて。

 

「あの……いきなりこんなことを聞くのもなんですが、学園を離れた後の私たちはどうなると思いますか?」

 

 そもそも卒業してからもリリア様との繋がりを保てるなら彼と取引しなくていい。もし、リリア様にとって私が学友に収まらないなら学園外でも関係が続くはず。

 

「住む世界が違うから、お互いに会うことはないでしょう」

「……ですよね」

 

 わかりきっていた返答だった。息が詰まり、胸が苦しくなる。

 やっぱり平民と貴族の壁は厚いし、普通に卒業して魔法院に行ってもリリア様とは関わりが無くて会えない。

 

 こっそり、ポケットの中の便せんに触れる。

 迷いは、まだ晴れない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。