紅月の救世少女(こうげつのきゅうせいしょうじょ)   作:くにゅたろ

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11. 潜む罠、絆の証明

 

廃墟の内部はさらに深い闇に包まれていた。一行が進むにつれ、空気は冷たく湿り気を増し、天井や壁に生えた苔が足元を滑らせた。

 

「こんなに静かだと逆に不気味だな」

 

デルクが小声で呟いたが、その声もすぐに闇に吸い込まれていった。

 

「油断するな。何かが潜んでいる気がする」

 

カインが前を見据えながら言う。彼の言葉が終わるや否や、突然天井から崩れた瓦礫が落下してきた。

 

「伏せろ!」

 

叫び声と共に、建物全体が大きく揺れた。その揺れで足場が崩れ、一行はバラバラの方向に散らばってしまう。

 

「リリス!ラナ!」

 

カインの声が響くが、リリスの耳にはどこから聞こえているのか分からない。周囲の音が反響し、位置が全く掴めない。

 

「くそっ……」

 

リリスは一人きりで暗闇に取り残されたことを悟る。

 

---

 

リリスは暗い廊下に立ち尽くしていた。目の前には瓦礫が積み上がり、後ろに戻る道も塞がれている。

 

「こんなところで……死ぬわけにはいかない」

 

内心で自分を奮い立たせながら、彼女は懐に忍ばせていた小さなナイフを取り出した。その感触は冷たく、頼りない。しかし、何も持たないよりはましだった。

 

前世の記憶が蘇る――大学時代、サバイバルゲームを趣味としていた頃のことだ。男だった頃の経験が、今の彼女を支えている。

 

「まず、落ち着け。相手の位置を探るんだ」

 

耳を澄ませると、かすかな足音が聞こえた。それはゾンビのものではなく、何かもっと動きが滑らかな存在だ。リリスはその方向に向かい、一歩ずつ進んだ。

 

突如、目の前に影が現れた。それは大きな四足歩行の生物――獣のような姿をした異形だった。

 

「嘘だろ……こんなの聞いてない」

 

リリスは恐怖で足がすくんだが、頭の中で冷静さを保とうと必死だった。

 

「どうすればいい……逃げる?それとも戦う?」

 

 

---

 

 

リリスは獣の足音を聞きながら、咄嗟に近くの瓦礫の影に身を潜めた。心臓の音が大きく響き、全身が震える。

 

「……動かなきゃ、死ぬだけだ」

 

自らに言い聞かせるように、彼女は瓦礫の隙間を抜けて慎重に動き始めた。その瞬間、獣がこちらを察知したのか低い唸り声を上げた。

 

「くっ……!」

 

リリスは躊躇せず、獣の視界から外れるように横に飛び込んだ。その動きが功を奏し、獣の攻撃を間一髪で避ける。

 

その時、遠くから響く声――カインだ。

 

「リリス、無事か!」

 

「こっちです!」

 

彼女の声を頼りに、カインたちが駆けつけてきた。剣鉈が煌めき、トレンチガンの轟音が獣を圧倒する。ラナの矢も的確に獣を追い詰めた。

 

戦いが終わると、リリスはその場に座り込んだ。

 

「ごめんなさい……足手まといで」

 

「そんなことはない」

 

カインが穏やかに言う。

 

「自分で動こうとした、それが大事だ。ここからは俺たちがいる」

 

デルクやラナもそれに頷き、リリスに手を差し伸べた。彼女はその手を取り、立ち上がった。

 

「ありがとう……これからは、もっと役に立てるように頑張ります」

 

その言葉は、リリスが新たな一歩を踏み出す決意の表れだった。そして、その背後には、さらに大きな謎が彼らを待ち受けている予感が漂っていた。

 

 

 

 

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