紅月の救世少女(こうげつのきゅうせいしょうじょ)   作:くにゅたろ

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12. 決戦準備

 

廃墟から戻ったリリスたちは、仮拠点となる街の片隅で一息ついていた。しかし、空はどんよりとした灰色に覆われ、赤い月が薄く輝いている。この世界の不穏な雰囲気が一行の心を重くしていた。

 

「これからどうするんだ?」

 

デルクがカインに尋ねる。その表情には、すぐに行動を起こしたい焦燥感がにじんでいる。

 

カインは地図を広げ、街の中心に描かれた大きな印を指差した。

 

「赤い月の力を封じるには、都市の中心部にある『塔』まで行かなければならない。あそこにある制御装置を使えば、この異常な現象を抑えられる可能性が高い」

 

「ただし、そこにたどり着くのは簡単じゃないだろうな」

 

ラナが冷静な声で言う。

 

「塔は街の中央にあるが、周囲はすでにゾンビや異形の存在で溢れている。それだけじゃない。赤い月が強く輝くほど、奴らの力も増す……」

 

「でも、やるしかないんだよね」

 

リリスが呟いた。その声はか細いが、確固たる意志を感じさせるものだった。

 

デルクが彼女をちらりと見て言った。

 

「おい、本気で言ってるのか?お前が行ったところで何ができる?」

 

その言葉に、リリスは一瞬口をつぐんだが、すぐに顔を上げた。

 

「私ができることは限られてるかもしれない。でも、何もせずに見ているだけなんて嫌。それに、みんなに守られてばかりじゃ申し訳ないから……少しでも力になりたい」

 

彼女の言葉に、一瞬の沈黙が落ちた。

 

カインはやがて微笑みながら言った。

 

「いいだろう。君がその覚悟を持っているなら、俺たちもそれに応える。だが、無茶はするな。全員で生きて帰るのが一番の目的だ」

 

リリスは小さく頷いた。その瞳には微かな不安と、少しの希望が混じっていた。

 

塔へと向かう準備を進める中、リリスは一人で街の外れに立っていた。街全体に漂う湿った空気はどこか鉄錆の匂いを含み、遠くから時折ゾンビの呻き声が聞こえてくる。

 

夜風が頬を撫で、冷たさを感じさせる。それでも、リリスの心は不思議と静かだった。

 

「……本当に行くのか?」

 

振り返ると、そこにはラナが立っていた。その瞳は鋭く、彼女の決意を見透かすようだった。

 

「ラナさん……」

 

「正直言って、君がそこまで踏み込む必要はないと思う。戦闘に関してはカインやデルクが十分に力を発揮する。君は無理をするべきじゃない」

 

ラナの言葉は冷静で、リリスの身を案じる気持ちが込められていた。しかし、リリスは首を横に振った。

 

「でも、何もしないまま見ているだけじゃ、私は……私自身を許せなくなると思うんです」

 

ラナは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔に戻った。

 

「……なぜそこまで?」

 

「この体になってから、ずっと自分が何者なのか分からなくて怖かった。でも、カインさんやラナさん、デルクさんに出会って、助けてもらって、少しだけ分かった気がするんです。私も、誰かのために何かをしたいって……」

 

リリスの言葉は静かだが、芯のあるものだった。

 

「そうか……」

 

ラナは短くそう言うと、何も言わずにリリスの横に並んだ。一緒に見上げた空には、赤い月がぼんやりと光を放っていた。

 

「覚悟はいいんだな?」

 

ラナの声は、今度は優しさを帯びていた。リリスはしっかりと頷いた。

 

「はい。私ができることを全力でやります」

 

その夜、仲間たちは塔へ向かう計画の最終確認を行った。ルート、敵の配置、そして役割分担。リリスには、仲間をサポートしながら、塔の最上層にある制御装置にたどり着くという重要な役割が割り当てられた。

 

「大丈夫だ。お前ならやれるさ」

 

デルクがトレンチガンを肩に担ぎながら、不器用な笑みを浮かべた。

 

「俺たちが絶対に守るからな」

 

カインも剣鉈を磨きながら力強く言った。その言葉に、リリスは小さく微笑みながら頷いた。

 

「ありがとうございます。でも、私もみなさんを守りますから」

 

彼女の言葉に、一瞬仲間たちは驚いたような顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「頼もしいな。じゃあ、俺たちも負けてられない」

 

準備は整った。一行は、静かに夜明けを待つことにした。赤い月の下で、その光が薄れることを願いながら。

 

 

 

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