紅月の救世少女(こうげつのきゅうせいしょうじょ)   作:くにゅたろ

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13. 塔への突入

夜明け前の風は冷たく、リリスの頬を刺すようだった。赤い月が空に浮かび、不安定に揺らめく光を放っている。その光景を見つめるリリスの胸中には、言葉にできない感情が渦巻いていた。

 

「これが終われば、本当にこの異常な世界に少しでも変化をもたらせるのだろうか……」

 

塔を目の前にした瞬間、リリスの心には確信よりも不安が勝っていた。元の世界での自分――平凡な会社員だった頃――では、こんな危険な場所に飛び込むことなど到底考えられなかった。しかし、今の自分はどうだ?この美少女の体に転生し、力もなく、仲間たちに守られるばかりの存在。それでも、少しでも役に立ちたいという思いだけでここにいる。

 

「私が来たところで、本当に力になれるのかな……?」

 

リリスは胸の奥に芽生えた小さな恐怖を握りつぶすように、短剣を強く握りしめた。

 

「行くぞ。全員、準備はいいか?」

 

カインの声が響く。その言葉に、他の仲間たちは力強く頷き、それぞれの武器を手にした。デルクの笑顔には余裕があり、ラナの瞳には冷静さが宿っている。彼らの確固たる意志と比べ、自分はどうだろうか?

 

「……大丈夫。私は、できることをするだけ」

 

リリスは小さく自分に言い聞かせた。

 

塔の入口を覆う巨大な鉄の門。その前には、異形の守護者たちが立ち塞がっていた。人間の形を模したようなそれらの体は不自然にねじれ、皮膚は半透明で赤い光を透かしている。その姿を目にした瞬間、リリスの足が一瞬すくんだ。

 

「やるぞ!派手にいく!」

 

デルクがトレンチガンを構え、先陣を切った。爆発音と共に放たれた弾丸が異形を貫き、黒い液体が飛び散る。

 

「リリス、後ろに下がって!俺たちが道を作る!」

 

ラナの声が響く。その声に従い、リリスは後方に下がりかけたが、自分の中で何かが引っかかるのを感じた。

 

「いや、私だって……!」

 

彼女は胸の奥から湧き上がる衝動に突き動かされるように、一歩前に出た。

 

「小さい体でも、何かできるはず。怖いけど、それでも……!」

 

異形の一体がリリスの方へ向かって突進してくる。その動きは異常に速く、彼女は思わず息を呑んだ。しかし、彼女の脳裏にカインの声が浮かんだ。

 

「落ち着け、自分のペースで動けばいい」

 

その言葉を思い出した瞬間、リリスは深呼吸をした。冷静になれ。焦るな。自分の力を信じて。

 

短剣を握り直し、相手の動きを冷静に見極める。異形が攻撃の隙を見せた瞬間、彼女は足を踏み出し、一気に短剣を突き立てた。

 

「やった……!」

 

初めての手応えに驚きと安堵が混ざり合う。しかし、それも束の間だった。

 

「気を抜くな!次が来る!」

 

カインの声が再び響き、リリスは慌てて後ろに下がった。

 

異形たちを全て倒し、一行はようやく塔の中へと足を踏み入れた。その中には長い階段が続き、不気味な風音と共に赤い光が漏れ出している。

 

「ここからが本番だ。気を引き締めろ」

 

カインが剣鉈を握り直しながら言った。その背中に続きながら、リリスは自分の手の震えをじっと見つめた。

 

「怖い。でも、ここまで来たんだから……私も、最後までやり抜く」

 

そう自分に言い聞かせ、彼女は塔の奥へと足を踏み出した。

 

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