紅月の救世少女(こうげつのきゅうせいしょうじょ) 作:くにゅたろ
静けさを取り戻した大地には、穏やかな風が吹き抜けていた。荒廃した都市の廃墟を背に、リリスたちは歩みを進めていた。赤い月が消えた夜空には、無数の星が煌めき、新しい時代の到来を告げているようだった。
リリスは肩で息をしながらも、前を向き続けた。疲労が体を包み込むようだったが、その胸には不思議な満足感があった。
「やっと終わったんだな」
デルクが肩に担いでいたトレンチガンを下ろし、空を見上げながら呟いた。その表情には安堵とほんの少しの寂しさが混じっていた。
「終わったというより、これから始まるんじゃない?」
ラナが歩きながら笑顔を見せた。その手には炎の杖ではなく、摘み取った野草が握られている。
「赤い月は消えた。でも、傷ついたこの世界を癒すのは、これからの私たちの仕事だ」
カインが足を止め、一行を振り返った。その目には、旅の途中で見せていた鋭い光はなく、優しさと決意が宿っていた。
「そうだな。これからだ」
リリスは微笑み、カインの言葉に頷いた。自分が赤い月を消す鍵となったこと、それが今の自分に何を意味するのかはまだ整理しきれていなかった。それでも、自分の選択が間違っていなかったことだけは確信していた。
「リリス、本当にありがとうな」
デルクがふと立ち止まり、彼女の肩を叩いた。
「何度も助けられたよ。お前がいなかったら、俺たち全員ここまで来られなかった」
「そうかな……?」
リリスは頬を赤くしながら視線を落とした。まだ自分が大きなことをしたとは思えなかった。それでも、仲間たちの信頼を得られたことが嬉しかった。
その時、一筋の流れ星が夜空を横切った。全員が立ち止まり、その瞬間を見上げた。
「この世界も、少しは綺麗になってきたな」
カインがぽつりと呟く。
「でも、まだまだ汚れた部分も多いわ。この旅が終わったわけじゃない」
ラナが笑いながら、未来に思いを馳せるように語る。
「じゃあ次は何をするんだ?休む暇なんてないのかよ」
デルクが軽口を叩き、一行は笑い声を上げた。
リリスもその笑いに加わりながら、ふと自分の手を見つめた。赤い月を消す力を発揮した短剣はすでになくなっていたが、その手には温かい感覚が残っていた。それは、仲間たちと共に戦った記憶と、自分自身の成長の証だった。
「よし、行こう!」
カインの掛け声に、一行は再び歩き始める。新たな道の先には何が待っているかは分からない。しかし、彼らには希望があった。
夜明けを迎える世界を背に、リリスたちは未来へと歩き出したのだった。
--完--