紅月の救世少女(こうげつのきゅうせいしょうじょ) 作:くにゅたろ
施設の中は薄暗く、天井から差し込む微かな光だけが頼りだった。かつてここで賑わっていたであろう店舗の跡には、商品の残骸や倒れた棚が散乱している。足音を立てないよう慎重に進む一行だが、時折、瓦礫を踏む音が広がり、緊張感が増していく。
「音を立てるな。敵に気づかれる。」
壮年の男が低く囁き、トレンチガンを構えたまま周囲を警戒する。その言葉に全員がさらに慎重になる。
リリスは鉄棒をしっかりと握りしめ、背後から仲間たちの動きを追っていた。自分が足手まといにならないよう、息を潜めるようにして歩く。
突然、奥からかすかな音が響いた。
「……聞こえたか?」
魔術師の女性が囁き、杖を握りしめる。その声には明らかな緊張がにじんでいた。
「確かに何かいる。準備をしろ。」
青年が剣鉈を構え、周囲を見回す。
次の瞬間、闇の中から異様な形の影が現れた。それはゾンビではなく、まるで異形の生物のようだった。
「奴らだけじゃないのか……!」
青年が叫び、剣鉈で応戦する。しかし、その生物の動きはゾンビよりもはるかに速く、攻撃をかわして跳ね回る。
仲間たちは必死に戦うが、状況は一方的に押されていた。
リリスは仲間たちの背後で立ち尽くしながら、どうすればいいのか分からず、ただ震えていた。しかし、その時、壮年の男が振り返り、叫んだ。
「リリス!お前がここを抜けて先に進むんだ!」
その言葉にリリスははっとした。
「そんな、私にできるわけない!」
「お前しかいないんだ!俺たちが時間を稼ぐから、早く行け!」
仲間たちの叫びと必死の抵抗を背に受け、リリスは涙をこらえながら奥へと走り出した。
廃墟の奥へと続く道は、さらに荒れ果てていた。崩れた壁や瓦礫が行く手を阻むが、リリスは必死でそれを乗り越えていく。
「こんな私が……本当に何かできるの……?」
心の中で繰り返される問いに答えることができないまま、足は自然と動いていた。
やがて彼女は、一つの扉の前にたどり着いた。それは他の場所とは違い、比較的無傷で、何かを守るようにしっかりと閉ざされている。
「ここが……。」
扉に手をかけると、冷たい金属の感触が指先に伝わった。震える手でそれを押し開けると、中には意外にも広々とした空間が広がっていた。
「ここは……何かの研究施設?」
リリスは奥に進むにつれ、奇妙な機械や装置が並ぶ光景に驚きを隠せなかった。
その時、背後から微かな音が聞こえた。
「追いつかれた……!」
リリスは身を縮めながら装置の影に隠れた。これから何が起こるのか、彼女はまだ知らなかったが、この場所が何か重要な秘密を抱えていることだけは確信していた。