聖刃コネクト!   作:BREAKERZ

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【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の内情

ーユウキsideー

 

ユウキはコッコロと共にサレン達と食事をとり、それが終わると、スズメから頼まれ事をされた。

それは、眠ってしまったクルミを部屋まで運んで欲しい、と言うものであった。

 

「すや、すや・・・・♪」

 

可愛らしい寝顔を浮かべるクルミをお姫様抱っこで運ぶユウキ。

 

「あはは、すみませんユウキさん。クルミちゃんを、寝室まで運んでもらっちゃって・・・・私だけじゃ女の子1人抱っこして運ぶのは大変ですから。男手があると、助かりますね」

 

“どういたしまして”

 

「はい。ホントに、良ければずっと、【サレンディア救護院】で暮らしてもらって大丈夫ですからね。家事とか手伝ってもらえたら、嬉しいてすし。ユウキさんなら、安心ですから」

 

そう話している内に、クルミちゃんの部屋に到着し、スズメが扉を開けると、一人の女の子、恐らくクルミと同室であろう娘が、大きな熊いクマのぬいぐるみが付いた巨大な鈍器のような物をタオルで拭いていた。

 

「ん? あれっ、スズメ! 帰ってたんだ?」

 

「はい。先程帰ってきたんですよ。ただいまです、『アヤネちゃん』♪」

 

「うん、おかえり♪」

 

笑顔でスズメを出迎えたのは、赤い髪をツインテールにし、小さなクマのぬいぐるみを首から下げた、気弱そうなクルミと対照的に、活発そうな印象を受けるクルミと同い年の女の子『アヤネ』に、スズメも笑顔で応じた。

 

「あんまり家を空けないでよ、私はお姉さんだから大丈夫だけど。クルミが、寂しがるからねっ?」

 

「あはは。ごめんなさい、アヤネちゃん。今回はちょっと予期せぬトラブルがあって、帰りが遅くなりましたけど・・・・なるべく、皆の傍にいますからね」

 

アヤネとスズメが話していると、ユウキの腕の中で眠っていたクルミが起き出した。

 

「はぅ、あぅ・・・・? あ、あれっ・・・・? 私、寝ちゃってましたか・・・・?」

 

「あっ、起こしちゃいましたね。寝てても良いですよ〜クルミちゃん?」

 

スズメがクルミに寝てて良いと言うと、アヤネがユウキの存在に気付いた。

 

「あれ? クルミを抱っこしてるの、『ユウキお兄ちゃん』?」

 

“こんばんわ、アヤネちゃん”

 

ユウキが挨拶すると、ユウキの腕の中のクルミもおずおずと声を上げる。

 

「はぅ・・・・アヤネちゃんも、『ユウキお兄ちゃん』の事を知ってるの・・・・?」

 

「うん。クルミも?」

 

「あはは。ユウキさん、ほんとに顔が広いですね」

 

スズメは笑顔で言うが、ここにコッコロがいたらまた半眼になって苦言を言っていたであろう。

 

「かくかくしかじかで・・・・ユウキさんは、この【サレンディア救護院】で、寝泊まりする事になったんですよ」

 

そしてスズメが、ユウキとコッコロが【サレンディア救護院】に来た経緯を説明した。

 

「仲良くしてあげて下さいね。クルミちゃん、アヤネちゃん♪」

 

「うん、もっちろん! 任せて! ユウキお兄ちゃん、【サレンディア救護院】では、私の方が『先輩』だからねっ? 私の事は、『アヤネ先輩』って呼んでね♪」

 

『じゃあ、俺の事は『ぷうきち先輩』って呼べよ。よろしくな、新入り』

 

アヤネの言葉に続くように、アヤネの持つクマのぬいぐるみの鈍器『ぷうきち』から、ぶっきらぼうな口調でそう言った。

 

「はぅ・・・・じゃあ、私は『クルミ先輩』・・・・? お兄ちゃんに『先輩』って呼ばれるなんて、不思議な感じ・・・・えへへ♪」

 

そして改めて、お姫様抱っこされたままのクルミがユウキに話しかける。

 

「さっきはちゃんとご挨拶できませんでしたけど、一緒に暮らすなら『家族』てすね。よろしくお願いします、お兄ちゃん♪」

 

“うん。よろしくね、クルミちゃん”

 

そう言って、クルミはユウキに抱き着いた。

 

「えへへっ♪」

 

すると、ぷうきちをベットに置いたアヤネも、笑顔でユウキに抱き着いた。

 

「よろしくね、お兄ちゃん♪」

 

そう言って、アヤネは可愛くウィンクした。

 

「あはは。二人とも、ユウキさんに抱き着いて、甘えん坊さんしてますね・・・・♪」

 

その様子を見て、スズメが微笑めしそうに見つめる。

 

「とは言え。もう夜も遅いですし、二人とも寝ちゃって下さいね。夜更かしすると、悪いお化けに食べられちゃいますよ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

クルミとアヤネをベットに寝かし付けると、下の階に戻り、サレンとコッコロと共に夜食を食べるユウキとスズメ。

 

「はい、どうぞ。残り物で悪いけど、遠慮なく食べてね。あんたも災難ね〜ユウキ。せめて美味しい物でも食べてあったかいベットで寝なさいよ、終わり良ければ全て良しって言うしね」

 

「あれ? お嬢さまも、ユウキさんとお知り合いなんですか?」

 

「うん。ひょんなご縁でね、何度か仕事を手伝って貰ったり、変な能力を持った魔物を倒して、『本』を回収したりね」

 

“ーーーーこれだね”

 

《玄武神話!》

 

ユウキは懐の『白い本』から、『玄武神話』て記され、亀と蛇が描かれた灰色の『ライドブック』を取り出して見せた。

 

「そう、それよ。それにしても、どうもスズメもお世話になったみたいだし・・・・。アンタって、意外と顔が広いのね?」

 

「あはは。アヤネちゃんやクルミちゃんも、この方とはお知り合いみたいですよ。クルミちゃんったら、さっき同室のアヤネちゃんと一緒に、ユウキさんに親しげにご挨拶してましたよ。二人とも、ユウキさんを『お兄ちゃん』なんて呼んで、懐いてました♪」

 

それを聞いて、サレンが訝しそうにユウキを見据え、手に持ったリンゴを宙に放って、もう片方の手に持った小さなナイフで切り裂き、皿に乗せたリンゴは『髑髏の形』に切られていた。

 

「ふぅん。一応言っとくけど、うちの子達に良からぬ真似をしたら許さないわよ」

 

そう言って、ナイフを髑髏の形のリンゴの眉間に突き刺した。

 

「まぁ、アンタは、底抜けのお人好しっぽいし・・・・余計な心配だろうけど。あたしには、【サレンディア救護院】の子供を守る義務がある。あの子達を傷つける不逞の輩は、あたしの剣の錆にしてやるから」

 

“了解しました”

 

「主様に限ってそのような事はありませんが。わたくしも、気をつけておきます」

 

「よろしい」

 

ユウキとコッコロがそう言うと、サレンは納得したが、すぐに凝ったような肩をさすった。

 

「あぁもう、しかし疲れたわ。大急ぎで山奥の屋敷から駆けつけてさ、【自警団‹カォン›】と【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の、小競り合いを仲裁してさ〜? この後も、事情聴取を受けなくちゃいけないのよ。徹夜になりそうね・・・・老けちゃいそう、間違いなくお肌が荒れるわ」

 

「あはは。お疲れ様です、お嬢さま。て言うか。事情聴取なら、私達も一緒に受けるべきでしょうか?、お嬢さまよりも、よっぽど『当事者』って感じですしね?」

 

小競り合いの発端になったスズメや、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の副団長と戦り合ったユウキは確かに、事情聴取を受けるべき立場であろう。

しかし、サレンは首を横に振った。

 

「ううん。今晩の所は、ギルドマスター同士で軽く話をする程度にしとくわ。【サレンディア救護院】のあたしと、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の『ジュンさん』と・・・・【自警団‹カォン›】の、マホさん? その三人で、会合を開くわ。もう夜も遅いしね、アンタ達の事情聴取は明日以降になる筈よ。暫くは、面倒だろうけど時間を取らせてもらうからね。その間は、ユウキとコッコロは、【サレンディア救護院】で寝泊まりしてくれたら良いわ。食事と寝床ぐらい、こっちが無償で提供するから。救護院の裏庭にある、『聖剣』を調査し終えても、他に行き場がないなら、ずっとここで暮らしてくれても良いわ」

 

“それは助かるけど、良いの?”

 

ユウキが問うと、サレンとスズメは頷いた。

 

「うん。勿論自分の食い扶持は稼いでもらうけどね。こっちも仕事の紹介ぐらいするし」

 

でも、とサレンは付け加える。

 

「一応言っとくけど、『聖剣』を手に入れてすぐに逃げないでね。アンタ達を引き取ったのは、事情聴取とかが終わるまで監視するって意味もあるから。まぁ、『保護観察処分』って所ね。【自警団‹カォン›】のギルドハウスは、襲撃されたせいで半壊したし・・・・【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の本拠地は『王宮』だから、関係者以外は立ち入り禁止だしね。だからまぁ、うちが引き取るしかなかったんだけど。うちは今回の抗争では『ほぼ第三者』って立場だしね、そう言う意味でも好都合って理由。うちは一応、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】側・・・・【プリンセスナイト】の傘下ギルトだから、完全に『公平』って言うか『中立』って訳にもいかないけど。」

 

「何か、ややこしいですね。困ったものです。うちみたいな平和なギルドが、抗争に巻き込まれるなんて」

 

そう言って、スズメは頭を抱えだした。

 

「や、やっぱり私のせいですかね? ごめんなさい!」

 

「何でアンタのせいなのよ、スズメ。こっちはトラブルに巻き込まれただけの『被害者』よ、堂々としてなさい。弱みを見せたら、つけ込まれるわよ」

 

するとサレンは、今一話についていけてないユウキを見る。

 

「んっと。アンタは『ランドソル』に来てから日が浅いみたいだし、あんまりギルド同士の関係とかに詳しくないわよね。訳わかんない、って顔してるし・・・・」

 

そう言って、サレンが説明をする。

 

「まぁ、簡単に説明してあける。食事しながら、適当に聞きなさい」

 

“うん、分かった”

 

そして、サレンが話し出す。

 

「うちの町・・・・〈ランドソル〉は、この〈アストライア大陸〉を長年に渡って支配している、国家の首都よ。古臭い、所謂『中央集権タイプの国家』で・・・・代々、『王家』が為政者として君臨してる。そんな王家の居城が、町の真ん中にある王宮ね。王家は国家の運営と政治、公的機関や『ソルの塔』等の管理をしてるわ。【プリンセスナイト】っていうのは、そんな王家直属のギルドの総称よ。郵便、警察、消防、防水・・・・その他諸々の公的機関の運営は、【プリンセスナイト】傘下のギルドがそれぞれ行ってるわ」

 

【プリンセスナイト】。その名前に、ユウキは少し訝しそうに眉根を寄せる。同じような反応をスズメもする。

 

「そう言えば、どうして、【プリンセスナイト】なんて名前なんでしょうかね? ムイミちゃん・・・・ノウェムちゃんが、その名前に異様な反応をしてたんですけど」

 

「さぁ・・・・何か大昔の伝説に由来するみたいだけどね、興味があるなら図書館とかで調べると良いわ。あたしの権限なら、多分『禁書』なんかも閲覧できるわよ」

 

それにしても、とサレンが口にする。

 

「ノウェムねぇ・・・・その子の事も心配ね、【ラビリンス】とか言う連中に攫われちゃったんだっけ? 何だか気になるし、一応行方を追ってみるべきかしら」

 

ムイミともノウェムとも呼ばれていた彼女の事は、ユウキも気になっていた。

 

「ともあれ、【プリンセスナイト】の傘下ギルドの一つ、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は・・・・その名の通り、王宮を守護するのが目的のギルドよ。王家直属の、『親衛隊』って所ね。まぁ王家が常時、保有している軍事力そのものよ。今は平和だから出番はないけど、戦争になれば最前線に立つ事になってる」

 

「まさに、軍隊ですよね。おっかないです。あの【自警団‹カォン›】を襲って、ユウキさんとも戦った派手な女の人も・・・・スッゴク強くて、殺伐としてました。兵隊さん、なんですもんね」

 

スズメがクリスティーナの事を思い出して、プルプルと震える。

 

「あぁ、クリスティーナね。あれも、今一素性が分からなくて怪しいのよね。まぁ【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は、王侯貴族が中心になってる、格式高いギルドだし、多分、アイツも身元は確かなんでしょうけど」

 

クリスティーナの事を考えて、サレンめ苦笑するが、話を続ける。

 

「ともあれ、最近はちょっと治安が悪化しているとは言え・・・・この大陸では長い間、戦争らしい戦争はなかったわ。平和な時代が、延々と続いてるの。だから軍隊である【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】も、暇を持て余しているのよね。どんどん予算や人員が削減されて、規模が縮小されてるわ」

 

“王家を守る親衛隊なのに、世知辛い話だね・・・・”

 

「そんな状況に不満を抱いて、クリスティーナは戦争を起こそうとしてるのよ。戦争が始まれば、軍隊である【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は、規模が拡大されるからね。往年の権勢を、取り戻せるって事よ。落ち目だった【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は、復興して返り咲けるわ。それが、クリスティーナの目的何じゃないかしら。あたしはそう推測してるわ。もっと、深い事情があるかも知れないけど」

 

と、そこで、サレンは思い出したかのよう話をする。

 

「因みに・・・・うちの国は地理条件等も相俟って、歴史的に普通の人間が幅をきかせてる。獣人‹ビースト›やエルフ、魔族なんかは少数派‹マイノリティ›なのよね。他の地域なんかには、普通の人間以外の種族の国もあるけど。まぁ、〈ランドソル〉では他の種族は肩身が狭い思いをしてるのよ」

 

エルフ族のサレンが言うと、納得する。

 

「だから他の種族の中には、普通の人間に対してよ不平や不満を抱えている者もいるわ。そんな連中が今回の一件に触発されて、暴動を起こしたりするかめ知れない。そうなったら、お終いよ。種族間で対立して、血塗れの内乱に発展しかねない。行き着く先は地獄よ。外国まで手を出してきたら、世界中を巻き込んだ大戦になるわ」

 

「そんな・・・・せ、『戦争』になっちゃうんですか? 普段はそんな種族の違いとかは意識しないぐらい、仲良くやってるのに〜?」

 

「あくまでも、『最悪の場合』はそうなるって事よ。そこまで、一触即発って状態じゃないけど。普通の人間達からの、他の種族への明確な差別もないしね」

 

確かにと、ユウキは思った。ユウキの獣人‹ビースト›の友達は、他種族と仲良くしている姿を見せていた。

 

「うちの一族もエルフだけど、『貴族』の称号が与えられたし。まぁ、成金の父が高値で無理矢理買い取った感じだけど。けれど・・・・『種族』や『文化』や『宗教』、つまり、『イデオロギー』の違いで容易く戦争は起きるわ。それは『歴史』が証明している、厳然とした『事実』よ」

 

本当に世知辛い話だと、ユウキは思った。

 

「念の為、『最悪の事態』も想定して備えておく必要はあるわ」

 

サレンの言葉に、スズメは『最悪の事態』を考えて身震いした。

 

「ともあれ、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】が・・・・獣人‹ビースト›達の互助組織【動物苑】の傘下ギルドである【自警団‹カォン›】を襲撃する事で、獣人‹ビースト›と、普通の人間が対立する構図になっているわ。戦争の火種が、撒かれちゃったのよ」

 

いよいよ持って、話が大きく、そして厄介な事態になっているようだ。

 

「身内が襲撃された、知ったら・・・・【動物苑】処か、他の地域の獣人‹ビースト›達の国家とかも黙ってないわ。『最悪』の場合、本当に『戦争』になるかもね。そうなる前に、争い事の『火種』を揉み消そうと思うけど」

 

サレンが眉根をひそめる。

 

「単なるギルド間の小競り合い、で済めば良いんだけどね。もう襲撃は行われたわ。発生した事実は覆せない。事後処理が必要よ、その為に徹夜でも何でもするわ。戦争になったら、最初に犠牲になるのは弱い者達よ。『女性』、『病人』、『老人』、『子供』・・・・無辜の民草が血と涙で濡れるような事態は、絶対に阻止するわ。ったくもう。こんな事なら、あたしは【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】から、離れるべきじゃなかったわね。あたしがいれば、クリスティーナなんかに勝手な事はさせなかったのに」

 

口惜しそうに言葉を零すサレンに、スズメは話を変えようと声を発する。

 

「お嬢さま〜、手が止まってますよ、冷めない内に召し上がって下さいね。はい、あ~ん・・・・♪」

 

スズメがスープの入ったスプーンをサレンに差し出した。

 

「ちょっ、止めなさい恥ずかしい。んもう、真面目な話をしてるんだからねっ?」

 

「お嬢さま、何かに夢中になると食事を忘れちゃうんですもん。無理にでも、食べさせないと・・・・ユウキさんもどうぞご遠慮なくっ、あ~ん♪」

 

“あ~ん♪”

 

ユウキはスズメの差し出したスプーンに乗った食べ物を口にした。

 

「わっ、素直! 普通、もっと照れたりしませんか?」

 

“もっと食べさせて”

 

「はぁい、どんどん召し上がって下さいね。私は料理はそんなに得意じゃないですけど・・・・」

 

「自分で言ってて悲しくならないの、スズメ? 料理、コツとか教えましょうか?」

 

メイドが主人から料理を教わったら、立つ瀬がないようにも思える。

 

「う〜・・・・何故か昔から、料理はホント駄目で。が、頑張って特訓してるんですけどね?」

 

「あはは。スズメは、やる気が空回りするタイプだからね。寧ろ、あんまり頑張らない方が上達するんじゃない?」

 

サレンが苦笑しながらそう言った。

 

「おっと。話の腰を折っちゃいましたね・・・・つまり分かりやすく説明しておきますと・・・・お嬢さまは元々【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】に所属してたんですよ。ギルドマスターは『団長』と呼ばれ、お嬢さまはそれに次ぐ地位にある『副団長』だったんです」

 

“サレンちゃん、凄い人だったんだね”

 

スズメが自慢気に言うと、ユウキはそう言ってサレンを見る。

 

「ふん。父から地位を受け継いだだけよ。あそこは代々、貴族が団長等の要職に就く事になってるの。うちも単なる成金とは言え、一応貴族の端くれだしね。騎士団は、ホントに規模が縮小され過ぎて人手不足でね・・・・他に誰も適任者がいなかったから、あたしが仕方なく副団長をやってただけ。でも平和な時代に、軍隊なんて不要でしょ。マジでやる事無くて暇でね。適当に理由をでっち上げて離れたのよ。さっきも言ったけど、【プリンセスナイト】は、王家直属の公的機関なんかを管理・運営してる。戦災孤児なんかを引き取って育てる。まぁ孤児院みたいなギルドもあるのよ」

 

するとサレンは、やれやれと言わんばかりに肩を落とす。

 

「現在は書類上にしか存在しない。予算も与えられていない有名無実なギルドだけど。あたしはそのギルドを復活させて、【サレンディア救護院】って名付けて運営する事にしたのよ。王宮で日向ぼっこしてるよりは、よっぽど有意義だと思ってね。最近、『ロスト』って呼ばれる怪奇現象・・・・両親とか、親戚縁者が消えちゃう不可思議な事件が増えててね。家族を失って、行き場のない子供達がいるのよ」

 

“じゃぁ、クルミちゃん達も?”

 

「ええ、クルミがそうね。そう言う子達を引き取って、あたしが保護してるわ。子供達には安らかで幸せな、人間らしい生活を送ってもらう。その為のギルドが、【サレンディア救護院】よ。あたしは、この仕事に誇りを持ってるわ。やり甲斐のある、あたしの人生を捧げるに足る崇高な使命なのよ」

 

そう言うサレンの姿はとてもキラキラと輝いているのを、ユウキだけでなく、コッコロとスズメも見えているだろう。

 

“ーーーー偉いね、サレンちゃんは”

 

「ありがとう。まぁ今の処、理想ばかり上滑りして・・・・あんまり上手くいってないから、お恥ずかしい限りなんだけど。子供達を守り、育てる。その為だったら、あたしは何でもするわ」

 

そしてサレンは、優雅な笑みから顔を引き締める。

 

「先ずは戦争なんかを起こそうとしている馬鹿共を叱りつけてやんないと、子供達の未来を血で汚させる訳にはいかないんだから」

 

サレンのその気高い姿を見て、ユウキは「自分もアヤネちゃんやクルミちゃん達の為に、何か力になりたい」と、強く思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

ーーーーキィィィィン・・・・キィィィィン・・・・。

 

ユウキとコッコロの部屋に置かれたユウキの剣が、火炎剣烈火と水棲剣流水に交互に変わりながら、赤と青の波動を放ち、救護院の裏庭にある『聖剣』に呼びかけるように鳴り響く。

 

ーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

しかし、その『聖剣』は、その呼びかけに応じなかった。




次回、【サレンディア救護院】に迫る黒い影が・・・・!? 何故火炎剣烈火と水棲剣流水の呼びかけに聖剣は応じないのか!?
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