聖刃コネクト!   作:BREAKERZ

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救護院から脱出したユウキ達は、サレンと合流し、漸く眠りについた。


謎の存在『シャドウ』と謎の現象『ロスト』

ーユウキsideー

 

そしてユウキは、いつの間にかアメス様の夢の世界に来ていた。

 

「はい、お疲れ様。夜更けまで大変ね、あんたは。でもまぁ、『土の聖剣 土豪剣激土』を手に入れて、〈仮面ライダーバスター〉にもなれて、窮地を脱出できたみたいで良かったわ」

 

アメス様はやれやれと肩を落としながら安堵した。

 

「土豪剣激土も、もっと早く来てくれれば良いのに。・・・・見てる事しかできないと、こう言う時歯痒いわね」

 

“土豪剣激土は、何でもっと早く来てくれなかったのかな?”

 

「・・・・アンタがコッコロたんとサレンちゃんとスズメちゃんとご飯食べてお話している間、火炎剣烈火と水棲剣流水が、何度も呼びかけていたのよ。でも、土豪剣激土はアンタに『足りない物』を感じて、飛んで来なかったのよ」

 

“・・・・『僕に足りない物』??”

 

首を傾げるユウキに、アメス様は冷静に応える。

 

「アンタはーーーー“優し過ぎるのよ”。良くも悪くもね。周りの女の子達はそんなアンタだから慕っているけど、それは『甘さ』と紙一重のものよ。アンタ、サレンちゃんの姿をした『アレ』を見た時、【許せない】って思ったでしょう?」

 

“・・・・・・・・うん”

 

確かにあの時、アヤネとクルミに涙を流させ、スズメの顔を曇らせた『偽者のサレン』に、言いようの無い『怒り』を感じたと、アメス様に伝えた。

すると、アメス様は納得したように頷いた。

 

「成る程ね。土豪剣激土は『義』を重んじる上に、気難しい聖剣だから、悪人すらも許してしまうアンタの『甘さ』が、『自分の主に相応しくない』と思われたのかもね。でも、アンタは怒った。サレンちゃんの姿になって、救護院の子達を悲しませた偽者に、アンタは怒りを、『義憤』を自覚した。だから、土豪剣激土はアンタを『主』と認めたのかもね」

 

“そうなの?”

 

「そうとしか言えないわ。気を付けておきなさい。他の聖剣も、アンタを『主に相応しくない』と判断されれば、アンタの元に来てくれないわ。『アルターライドブック』も回収できなかったし、これから益々激しくなるわよ?」

 

“・・・・あの偽者は、一体?”

 

「ああ。アンタが今回遭遇した、恐ろしい『怪奇現象』ね」

 

アメス様が思い出したように言葉を発した。

 

「一応補足しとくと・・・・アンタ達は無事に逃げ延びて、会合していたサレンちゃんに保護されたから安心してね。それから、漸くゆっくり身体を休める事ができたわ。取り敢えずは、一息つけたわけね」

 

それを聞いて、ユウキは少し安堵した。連続の修羅場にもう心身ともにヘトヘトだったのだ。

 

「まぁ寝床を整えたりしつつ、アンタはサレンちゃんから『ある頼み事』をされて・・・・これから単身、何故か『山登り』をする事になるんだけど。まぁ、今はソレは良いわ。今後の、ううん、目覚めてからのお楽しみね。それよりも。今は、アンタが行き逢った『怪奇現象』の方が問題よ」

 

やはりあの魔物なのか判断できない存在、アレが関係しているようだ。

 

「最近『この世界』では様々な、常識では説明できない摩訶不思議な現象が発生するようになってる。そして、人々の平和な日常を脅かしてるのよ。あんたもか、多分聞いた事があるんじゃないかしら。そんな怪奇現象の中でも、『シャドウ』や『ロスト』辺りが有名ね」

 

アメス様はこれらの事を説明する。

 

「『シャドウ』って言うのは、アンタが今回、遭遇した奴よ。お化けみたいな、奇妙な存在・・・・一般的には、魔物の一種って思われてるわね。最近になって、『シャドウ』の目撃情報は急激に増えてるの。基本的に不気味なだけで無害ではあるみたいだけど、人が襲われた例もあるらしいわ。今回のアンタ達みたいにね。でも、『アルターライドブック』を使って、メギドになったのは、今回が始めてのようよ」

 

どうやら、あの『シャドウ』と言うのは以前からいたようだ。

 

「コレがまた正体不明の存在で、どうも生き物ですら無いみたい。刃物で斬りつけても血も流れ無いし、食事も睡眠も取らずに延々と彷徨うだけの存在のようね。ただまぁ、気味が悪いし・・・・『シャドウ』は実在する誰かと、そっくりの見た目をしてるみたいなのよ」

 

だからサレンとアヤネに化けたのかと、ユウキは得心した。

 

「そんなの『シャドウ』に見た目を模倣された本人としては、放置もできないわよね」

 

本人だけではない。スズメ達のように、大切な人の姿で悪事を行われれば、心を痛める家族もいる。

 

「今回アンタが出会ったのは、アヤネちゃんとサレンちゃんによく似た『シャドウ』だったわ。声まで、そっくり同じだったでしょ。あんなのが、アチコチに大量に湧いてる。本来『この世界に存在しちゃいけない何か』が、無数に出現してるのよ」

 

つまり、今後も『シャドウ』と遭遇する事もあると言う事だ。しかし、『記憶』や『知能』がある訳でなさそうである。

そしてアメス様は話を続ける。

 

「逆に、『この世界から何かが消えちゃう場合』もある。その怪奇現象は、『ロスト』って呼ばれてるわ」

 

『ロスト』。サレンも言っていた。

【サレンディア救護院】は元々、その『ロスト』によって家族や親戚縁者を失って、行き場のない子供達の為にサレンが設立したのだ。

 

「サレンちゃんからも聞いていると思うけど、もっと詳しく説明するわね。普通、誰にでも両親がいるわよね。お父さんのお母さんが愛し合って結ばれて、子供ができる。ソレが自然の摂理で、人間の・・・・ううん哺乳類の基本よ。でも。何故か子供はいるのに両親の存在が確認できない、みたいな事例が多発してるの。ソレが、『ロスト』と呼ばれる怪奇現象よ。まるで最初から存在しなかったみたいに、“人間が消えるの”。戸籍として扱われるギルドに所属した記録や、人々の記憶から誰かが消える。単に記録から消えただけなら、書類の抜けとか紛失とかで説明がつくんだけど。“記憶からも、消える”。子供には必ず親がいる筈なのに、その親の記憶も記録もなくなってるの。存在する筈なのに、いない。だからこそ不自然で、『ロスト』と言う現象は認識されたのよ」

 

存在していた記憶も記録も無くなる。確かに怪奇現象だ。

 

「親がいない、その記録も記憶もない子供が普通に生活してたりしてたのよ。普通に変だって思うでしょう、でも何故か誰も疑問にすら思わなかった。『ロスト』と言う現象が認識されて、調査が始まってから初めて・・・・不自然に消失している、と予想される人々が沢山確認されたのよ。ソレが一件か二件なら、まだ親が子供を捨てて、記録も丹念に消して失踪し、子供がソレが哀しくて記憶に蓋をしたとかの方がまだ説明はつくわ。でもそんな事が数百件も起きてれば、コレはもう『怪奇現象』よ。ソレが『ロスト』・・・・」

 

もう数百件にも及んでいる事に、ユウキは驚くが、更に驚く事をアメス様は話した。

 

「アンタと仲良しなクルミちゃんも、この奇妙な現象によって両親を失ってるみたいね」

 

“!!”

 

まさかクルミも被害にあっていたとは思わず、ユウキは目を見開く。

 

「『シャドウ』も『ロスト』も、今はまだ誰にも説明がつけられない謎めいた事象よ。他にもまだ認識されていないだけで、幾つもの怪奇現象が発生してる筈だわ。コレらの怪奇現象の原因は、アタシには分かってる。『この世界』は歪み、病んで、おかしくなってるの。『シャドウ』も『ロスト』も、その為に生じてる『バグ』なのよ」

 

“・・・・・・・・”

 

ユウキは自分が『聖剣』を『この世界』にばら撒いてしまったからなのかと思ったが、アメス様はソレを否定するように首を横に振った。

 

「コレらはアンタが聖剣を落とす前に起こっていた事よ。世界が不自然な形に歪められた余波、悪影響ってところね。だから世界の歪みを正さないと、『シャドウ』も『ロスト』も根本的には解決しない。クルミちゃんも、永遠に両親と会えない・・・・ううん、思い出せもしないままなの。そんなの、可哀想だって思うでしょ。あんなに優しい、良い子なのに」

 

“・・・・・・・・”

 

ユウキは拳をキツく握り締めた。ソレに気づいてアメス様がフッと笑みを浮かべて話す。

 

「だったら、アンタは、世界の歪みを正して。その為に必要な『武器』、『聖剣』と『本』を見つけるのよ。そして『鍵』は、アンタの周りに転がってるわ。一つ一つ、拾い集めるのよ。そして『世界の謎』を解き明かし、歪みの原因を除去するの。ううん、『この世界』を救うのよ。それは多分、アンタにしかできないわ。期待してるし、応援してる。あ、これから向かう所にも『聖剣』はあるから。ちゃんと認められるように頑張りなさい」

 

『聖剣』と聞いて、ユウキはピクリと反応するが、自分が認められるか不安になる。

アメス様は、そんなユウキの心情を察してくれたのか、優しい笑みを浮かべる。

 

「大丈夫よ。アンタは確かに甘いと言う程に優し過ぎるけど。その『優しさ』が、アンタの『一番の武器』なのよ。その優しさを強さにすれば、アンタは誰にも負けないわ」

 

夢の世界が歪み始める。どうやら今日はここまでのようだ。

 

「頑張ってね、〈仮面ライダー・・・・〉。アンタの、『優しさと言う強さ』で、正義を見せてやりなさい。かつて世界を救ったヒーロー、ユウキ。それじゃ、ボンヌ・レクチュール。よい読書を♪」

 

いつものお別れの挨拶を言われ、夢の世界が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

ーサレンsideー

 

そしてここは、〈ランドソル〉にある〈ギルド管理協会〉の所有する『ギルドハウス』。これより、何度目かの【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】と【自警団‹カォン›】の会合が始まろうとしていた。

 

「(あ~・・・・もううんざりね。毎日毎日・・・・こないだのクリスティーナによる【自警団‹カォン›】ギルドハウス襲撃事件の事後処理で、てんやわんやよ。こっちも暇じゃないって言うのに、勘弁して欲しいわ・・・・。この様子じゃ、【サレンディア救護院】の通常業務にも、支障をきたしちゃう)」

 

クリスティーナの尻拭いのような真似をさせられて、サレンも辟易としていた。

 

「(【サレンディア救護院】は、子供達の生活の場なのに、ほぼ唯一の戦力であるあたしが連日の会議で忙殺されてて、守りが手薄になってる。先日みたいに、『シャドウ』とか言う魔物っぽいものや、『メギド』と言う未知の魔物に襲撃されたら対処できない。心配だわ〜こんな所で油を売ってる暇はないのに)」

 

先日、ユウキとコッコロを迎え入れてすぐ、アヤネと自分の姿ソックリの『シャドウ』達に襲撃され、スズメ達が避難してきてこの話を聞いた時は、肝が冷えた程だ。

 

「(取り敢えず・・・・お父様に頼んで、警備員を派遣してもらったりしたけど。お父様ったら、身内からもお金を取るのよね。強突く張りなんだから)」

 

元々貧乏な平民で商人だったサレンの父親は、金の力で爵位を買って貴族になった、世に言う成り上がりの貴族である、それ故か、身内からもお金を取る性格をしているのだ。

 

「(子供達の安全をお金で買えるなら安いものだけど、このままじゃ【サレンディア救護院】の経営が傾くわ。扶養家族も増えたし、家計が火の車よ)」

 

「顔色が優れないな、サレンちゃん」

 

サレンに話しかけてきたのは、【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の団長、ジュンであった。クリスティーナの上司である彼女が、この会議に参加しているのだ。

 

「・・・・『ちゃん』付けはやめてください、『ジュンさん』」

 

「すまない、馴れ馴れしかったな。けれど、私はサレンちゃ・・・・サレンが幼児だった頃を知ってるからな。どうしても、子供扱いしてしまう。礼を失していたな、謝罪しよう」

 

「構いませんよ。ジュンさんにさら遊んでもらった事もありますしね。いつも舐められないなように、って突っ張ってるのも・・・・結構、疲れちゃいますし」

 

「お二人さん、お茶は如何どす〜?」

 

と、そんな二人の会話に入ってきたのは、クリスティーナによって被害を受けた【自警団‹カォン›】のギルドマスターであるマホであった。

彼女は穏やかな雰囲気で、二人のカップに紅茶を注いだ。

 

「あぁ・・・・給仕の真似事をさせて申し訳ない。非礼を詫びよう」

 

「良ぇんどす、おもてなしは好きやし・・・・毎日毎日、侃々諤々とやりおうてるから喉が痛ぉてなぁ。うちが、お茶を飲みたいんどす〜♪」

 

「(う~ん、良い人よね、【自警団‹カォン›】のギルドマスター・・・・マホさん)」

 

本来ならば、【自警団‹カォン›】の方は剣幕になってもおかしくない状況なのに、マホは少しもそのような素振りを見せていなかった。

 

「(優しくって穏やかな、平和主義者。平時なら、お友達になりたいぐらいだけど。今は非常時、ううん戦時よ。優しさは、『足枷』になる。【自警団‹カォン›】は今回の件については、『被害者』なのに、強気で交渉もできずに、妥協案を飲まされている。見てられない位だけど・・・・あたしは『第三者』だしね、どっちかの陣営に肩入れしすぎる訳にもいかないし)」

 

サレン個人としてはマホ達に肩入れしたいが、そうも言えない。

 

「お気遣いには感謝するが、お茶は結構。実際、女子会をやっている場合ではないからな」

 

ジュンが会議を戻そうと、姿勢と声を引き締める。

 

「別に、賄賂のつもりやあらへんで?」

 

「あぁ・・・・邪推、良いや侮辱するつもりは無い。見ての通り、私は飲み物を口にできないんだ。ほら、兜が邪魔だから」

 

「それ、脱げば良ぇんとちゃいますの? 顔を見せへんのは、失礼どすえ?」

 

屋内、それも会議をしているのに、フルヘルメットの自分を指差すジュンに、マホは眉根を少し寄せて言った。

 

「いや、素顔を見せられないのには事情があってな・・・・決してマホさんを、【自警団‹カォン›】を、獣人‹ビースト›を蔑ろにする意図は無い。今回の騒動は、我ら【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の副団長・・・・クリスティーナの、独断専行。彼女が個人的に暴れて、ソチラに迷惑をかけたと言う構図だ。彼女には謹慎処分を言い渡し、反省させている。それで手打ちにして、今回の騒動については一件落着としたい。私も、いい加減連日の会議に倦み疲れてしまった(ーーーーまぁ、クリスちゃんは全く反省していないだろうが・・・・謹慎と言うのは表向きで、〈ランドソル〉の外で、『密命』を帯びて怪しげな行動をしているようだし)」

 

下手な事をすれば、戦争問題になる事をしでかした人間に対して、あまりに不可解な事である。ジュンは兜の下で渋面を作っていた。

 

「正式な謝罪もしてもらわれへんのは、少し引っかかるわ。こっちには、怪我した子もおるんよ。いつまた襲われるか、って怯えて夜眠れへん子も」

 

そう。被害を受けたのは【自警団‹カォン›】だけではない、その襲撃をギルドハウスの外で見ていた獣人‹ビースト›の人達も、不安を抱いているのだ。

ジュンもソレは分かっているのだが、騎士団の団長として言葉を続ける。

 

「すまない。我々【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】が、正式に非を認めて謝罪する訳にはいかない。我らは、王宮直属のギルドだ。国の全てに、頭を下げさせる事になる。他国などに、弱みを見せる事になる。民にも、不信感を抱かれる。王家は、常に堂々と君臨していなくてはならない。個人的には、申し訳ないとは思っているがな。それに・・・・破壊された【自警団‹カォン›】ギルドハウスの修繕費用は、損害賠償金としてクリスティーナが支払った筈だ。怪我をした者への、慰謝料もな。彼女、物凄いお金持ちだからな。簡単に、ポンッと支払ってしまった」

 

「ううん、お金の問題とちゃいます。誠意の、心の問題どすえ」

 

マホはお金の問題ではなく、クリスティーナが謝意を見せない事に不満があるのだ。

 

「ふむ・・・・クリスティーナの生首を切り取って献上すれば、あなたは満足してくれるのか?」

 

「だ、誰もそんな物騒な事は言うてへん。あんたら、血腥すぎるわぁ?」

 

「そう言う気風だからな。【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】は。これは、高度に政治的な問題だ。クリスティーナの個人的な暴走・・・・として片付けるのが、互いの為だろう?」

 

「それは、そやけど・・・・そんなんで、皆納得せぇへんよ(う~しんどいわぁ・・・・でも、うちが踏ん張らんとな)」

 

下手な事をすれば、戦争にまで発展しかねない問題であると、マホ自身も分かっているが、他の獣人‹ビースト›の人達は納得しない。それこそ【動物苑】が暴走して、【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】に攻撃しかねない。

 

「(お金とかで簡単に片付けられてしもたら、今回の一件はソレで済むやろけど・・・・根本的な解決をせぇへんと、また同じ事が繰り返されてまう。次また同じような事があったら、今度こそ人間と獣人‹ビースト›の全面戦争になってまうかも・・・・そしたら、もっと大量の血が流れる事になってまうやん。【自警団‹カォン›】の皆は、うちが宥めとるけど、【動物苑】全体は開戦も辞さへんってムードやし。皆わりと血の気が多いからなぁ? 嫌やわぁ、こんなん・・・・何とか穏便に済ませたいけど、起きてしもた出来事は、『なかった事』にでけへん。戦争に向かう時勢を、何とか平和な方向に導かんと。〈ランドソル〉で暮らす獣人‹ビースト›達は、長い時間をかけて平和な生活を営めるようになってきたんどす。努力して、嫌な事をいっぱい我慢して、積み重ねてきた過去を、たった一度の変事で台無しにする理由にはいきまへん。そんなん、ご先祖様に申し訳が立たへんわぁ。でも、そんな歴史的な、だいそれた使命を・・・・重荷を、責任を、うちが背負えるやろか? 自分の家庭の事情からすら、逃げて来た癖に)」

 

マホもマホで、色々な葛藤と責任で重い溜め息を吐きそうになってしまう。

少し話の空気を変えようと、サレンが口を開く。

 

「マホさん。話は変わるけど、『シャドウ』についての調査に進展はあった?」

 

「ほぇ? あぁ、うちのギルドの『カスミはん』が調べてはりますえ。今んとこ、『シャドウ』は町中でしか目撃されてへんみたいやから。よっぽど身の危険を覚えるなら、町の外へ疎開するんが良ぇと思うんやけど」

 

「ん〜それが良いかしら。うちの子供達が、かなり怯えててね。『シャドウ』についての調査が、進むまでは・・・・何処か、安全な所に避難させておくべきかも?(それに、『聖剣』を三本ももっているユウキが、いつ【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】に目を付けられるか分かったものじゃないし・・・・)」

 

「良かったら疎開先、紹介しまひょか? うちの【自警団‹カォン›】と懇意にしてる、【牧場‹エリザベスパーク›】ってギルドがあるんやけど。町から離れた山奥で、安全に、平和に暮らしてはるから。ソコのギルドマスターは人間‹ヒューマン›やけど、獣人‹ビースト›とも仲良ぉしてるし。中立の、安全地帯やと思うんよ」

 

「ん〜中々良さそうね。お手間をかけちゃうけど、紹介してくれる? 『シャドウ』についての調査も、してくれてるし・・・・。あたし、あなたに恩義を感じるわ。マホさんの意向には、賛成だし。戦争は避けたいしね、応援するわよ?」

 

マホの味方になりそうなサレンに、ジュンが待ったをかけた。

 

「待て待て。【サレンディア救護院】は中立の第三者じゃなかったのか、サレンちゃん?」

 

「【サレンディア救護院】は、【プリンセスナイト】の傘下ギルドだし。立ち位置としては、そっち側よ。獣人‹ビースト›側に歩み寄る事で、漸く公平になるってものでしょ?」

 

「あぁ言えばこう言う・・・・口が達者だな、昔から。私は口下手だから、羨ましいぞ」

 

上手く丸め込まれたように感じ、ジュンは溜め息を吐いた。

 

「まぁいい、平和を望むのは私も同じだ。慎重に丁寧に、誰もが穏やかに暮らせる未来を模索していこう。時間は無限ではないが、まだ多少は猶予があるからな」

 

そう言って、三者の会議は続いていくのであった。




次回、腹ペコ娘と再会。
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