ーユウキsideー
怪奇現象『シャドウ』と遭遇し、『土の聖剣 土豪剣激土』を手にし、〈仮面ライダーバスター〉となった翌日。
ユウキはサレンから『ある頼み事』をされて、一人で鬱蒼とした山道を歩いていた。
それは、『シャドウ』の危険から子供達を守る為に、〈ランドソル〉から離れた山奥にある【牧場‹エリザベスパーク›】に、【サレンディア救護院】の皆を一時的に疎開させたいから、『交渉役』を頼まれたからである。
実はユウキは以前から、【牧場‹エリザベスパーク›】のギルドマスターである『マヒル』と顔見知りで、さらにそこにいる【自警団‹カォン›】から出向している獣人‹ビースト›の『シオリ』と『リン』。そして少し変った女の子『リマ』とも交友があった。彼女達との関係も良好なので、ユウキに代表として行ってもらったのだ。
ユウキ自身、『マヒル』の人柄は知っているので、事情を話せば快く引き受けてくれると思っていた。今回コッコロは神殿でアメス様からの神託を受けるので別行動である。
そんな時、遠くで何か唸り声のようなものが聞こえ、魔物か『シャドウ』が現れたのかと思い、茂みの中に隠れながら、剣を火炎剣烈火に変えて、その声のする方に行ってみるとーーーー。
「あうう〜・・・・お腹空いた〜お腹空いた〜・・・・。たっぷり食い溜めしたし、お弁当も、抱えきれないぐらい持ってきたのに・・・・もうお腹ペコペコですよ。私の胃袋、穴でも空いてるんですかね?」
胃に穴が空くのはストレスによるものなのだが、この女の子はストレスなんて全く感じていないように思える。
良く見るとそこに倒れていたのはーーーーペコリーヌだった。
「ひもじいです〜やばいですね。こんな調子だと、また行き倒れちゃうかも知れません。あうう〜フラフラする〜・・・・」
ユウキは仕方なく声をかけようとした、ガサッと音を立てたその時、ペコリーヌはガバっと起き上がり、満面の笑みを浮かべて剣を構えそして・・・・。
「うわぁい! いっただきま〜す・・・・☆」
ユウキに向けて駆け出し、剣を振り下ろした。
ーペコリーヌsideー
「(なるべく『王家の装備』を使わずにいれば、お腹も空かないんですけど・・・・ひっきりなしに、魔物が襲ってきますからね。全力で対応しないと、死んじゃいますし。)」
ペコリーヌは絶えず襲い掛かってくる魔物を撃退する度に、『ある代償』、要は『カロリー』を消費する事で、力を上げる自分の装備の力で返り討ちにしてきた。しかし、その為に空腹で倒れていたのだ。
「(誰か護衛でも、雇えば良かったんでしょうけど・・・・そんな事、気軽に頼める相手もいませんしね。町で知り合った子は、何人かいますけど。どうせ、“また忘れられるなら”・・・・これ以上は、仲良くなっちゃ駄目ですよね。お別れが、辛くなるだけです)」
ーーーーガサッ・・・・。
ひもじい思いをしていたペコリーヌの耳に、近くの茂みから音が聞こえた。
「(・・・・ん? ソコの茂みが、動いたような? ラッキー♪ 動物か魔物なら、狩って食材にできます! 天からの贈り物ってやつですねっ、私運命に愛されてる☆)」
かなり都合の良い考えをしながら、剣を携えて茂みへと向かう。
「うわぁい! いっただきま〜す・・・・☆」
そう言って、剣を振り下ろした。
が・・・・。
ーーーーガキンッ!
“待って! 僕だよ!”
剣を受け止めたのは、『炎の聖剣』を持ったユウキであった。
「おおっと!? あれっ、ユウキくん!」
知り合いの男の子であり、『聖剣』を持っている(一応)警戒人物である少年だと気付き、剣を引っ込めるペコリーヌ。
「オイッス〜☆ よく会いますねっ、元気ですか? ゴメンゴメン、うっかり斬りつけちゃいましたね〜♪」
呑気な笑みを浮かべて謝罪するペコリーヌであった。
ーユウキsideー
ーーーーキィィィィン・・・・。
何やら火炎剣烈火から、怒っているような波動を感じたユウキはペコリーヌと話をする。
「どうして、茂みの中を歩いてたんです? 落とし物ですか? 一緒に、探してあげましょうか?」
ユウキは火炎剣烈火を元の剣に戻して鞘に納めてから、事情を説明した。
「へぇ〜、コッソリ茂みに身を隠しながら近づくなんて、『忍者』みたいですね、『忍者』! 知りません? 大昔にそう言う特殊技能兵がいたらしいですよ、まぁ御伽噺ですけどね〜♪」
ペコリーヌはカラカラと笑うが、ユウキの脳裏には、ユウキの事を『将軍‹ショーグン›』と呼んで、自分はユウキの『一番の家来』と称している陽気な女の子の忍者を思い出していた。
そして、ペコリーヌは話を戻すように真面目な顔で告げる。
「兎も角。どういう事情か分かりませんけど、一人旅は危ないですよ。近頃、ホント異常に魔物が増えてますから」
今まさに一人旅と空腹で倒れていた人が言うと、妙な説得力と、お前が言うな感が凄まじくある。
「もう、ちょっと歩く毎に襲われちゃいます。フラフラ街の外を出歩いたら、命が幾つあっても足りませんよ。ユウキくんって『聖剣』がないと弱っち・・・・あぁいや、可愛い感じですからね、死んじゃいますよ?」
ーーーーフルフル・・・・。
何故だろうか、火炎剣烈火だけでなく、水棲剣流水に土豪剣激土が、ペコリーヌの言葉に震えている。
ーーーーまるで、彼女の言葉に怒っているような。
「良かったら、途中まだ一緒に行きましょうか? 護衛してあげますよ〜♪」
ーーーーグゥゥゥゥ・・・・。
すると、ペコリーヌのお腹から、空腹を訴える音が響いた。
「その代わり、食料を分けて下さい・・・・うう、私またお腹ペコペコ状態なんです」
ユウキは、取り敢えず軽食として持ってきたビスケットをペコリーヌに分け与えた。
「ん? ビスケット、くれるんですか? ありがとうございます! このご恩は忘れませんっ、恋しても良いですか?」
遠慮したユウキが離れると、ペコリーヌはあっという間にビスケットを食べ散らかした。
「モグモグ・・・・ンま〜い! あぁ生き返るっ、全身にカロリーが染み渡る〜♪ 甘い物を食べるとドーパミンが溢れてきますねっ、恋しちゃいますね〜☆」
満面の笑みを浮かべるペコリーヌは、ビスケットを食べ尽くした。
「あ〜ホントに助かっちゃいました。ユウキくんは、いつでも私を助けてくれますね♪ チュウしても良いですか?」
“いいよ”
「えっ、良いんですか? マジでしちゃいますよ? 前言撤回しませんよ?」
アッサリとOKしたユウキに、ペコリーヌは眉根を寄せてから言う。
「ん〜・・・・ユウキくん、今一チュウが何なのか分かってない感じですね。記憶喪失なんですもんね。そんな子に無理やりしちゃうのは、ちっちゃい子を騙してるみたいで気が咎めます」
どうやらチュウは無しになったようだ。
「ソレはさておき。えっとソチラの事情を説明してくれます?」
ユウキは、【牧場‹エリザベスパーク›】に向かっている事を話し、どうしてそうなったのかも話した。
「牧場かぁ、美味しいものがいっぱいありそう♪」
そして、顔見知りの自分が使者として頼みに行く最中だったのだと説明した。
「成る程〜その為に、ユウキくんは独りで行動してるんですね。そう言うお仕事って言うか、使命の為に単独行動してるんですね! お疲れ様です〜!」
そう言って、ペコリーヌはユウキの頭を撫でた。
「ユウキくん、い〜こい〜こ・・・・♪」
“???”
何故頭を撫でるのか分からないユウキが首を傾げていると、ペコリーヌがその頭から手を離した。
「えへへ。ごめんなさい、気軽に頭を撫でちゃって・・・・。私、スキンシップが過剰なんですかね〜。ずっと独りで行動してたから、人恋しかったんですよ♪」
“それて、ペコリーヌさんは何をしていたの?”
「私はね〜。ちょっと特殊なおウチの事情があって・・・・全国行脚って言うか、武者修行の旅をしてるんですよ。アチコチ巡って、人助けをしたり、民を困らせている悪い魔物を、やっつけたりしてるんです。うちの家系は、そう言う武者修行をしないと、一人前だって認められないんですよけ。面倒臭いお家柄なんですよ〜。伝統とか掟とかが多くって、苦労しちゃいます。でもまぁ親は、生まれる家は選べませんからね。仕方ない事です。全国を巡れるので、色んな地域の美味しいものとか食べ歩きできますしね。中々楽しいですよ〜。一人旅なので、寂しくはあるんですけど」
“そう言う事情だったんだね”
「はい。まだ暫くは全国を巡るつもりです。もう少し、〈ランドソル〉に滞在しても良かったんですけどね。ユウキくんや、コッコロちゃん、キャルちゃん・・・・仲良くなった子と、遠ざかるのは寂しいですし。でも。コレが、私の宿命ですから、仕方ない事です。今生の別れって訳でもありませんしね。一人前だって認められたら、〈ランドソル〉でずっと暮らせますし」
“・・・・そうなんだ”
何故か、ユウキはペコリーヌの顔に、『奇妙な影』が刺している事に気付いた。
「えへへ。ともあれまぁ、私は当て所のない旅をしています。特に、具体的な目的地はありませんから。良かったら・・・・ユウキくんを、護衛しますよ」
“それは助かるけど、良いの?”
ユウキが問うと、ペコリーヌはトンッてその大きな胸を叩いた。
「うん。目的地まで、無事に送り届けちゃいます。ご迷惑で、なければ・・・・コレも人助けですし、旅は道連れ世は情けって言いますしね。ユウキくんの事が、心配です。ちゃんと、無事におウチまで帰してあげたいです。『帰る所』があるって言うのは、有り難い事ですからね」
と、ペコリーヌが笑顔でそう言うと・・・・。
ーーーーキィィィィン・・・・。
「っ!?」
ユウキの剣が、何か不穏な気配を感じたのか、火炎剣烈火を納めた聖剣ソードドライバーに変わり、ユウキは近くの茂みから何かが飛び出して、コチラに向かって来ているのが見えた。
牧歌的な衣装に、長い茶髪を二股に垂らし、槍を持ち、リスの尻尾と耳をした獣人‹ビースト›の女の子が、キツネの魔物に追いかけられていた。
「うわぁぁぁぁん! 助けて〜!!」
“リンちゃん!?”
そう。その女の子こそ、ユウキが目指していた【牧場‹エリザベスパーク›】に出向している獣人‹ビースト›の『リン』であった。
「あっ! アンタ、なんでここに!? あっ!」
リンはユウキの背中に隠れると、数匹の魔物達に取り囲まれた。
「ち、丁度良かった! 助けて!」
「知り合いですか?」
“【牧場‹エリザベスパーク›】で警護として働いているリンちゃん”
「ふぅん、どうしたんでしょうね、ただならぬ様子ですけど?」
“取り敢えず、魔物を片付けよう”
ホンダナーから『ブレイブドラゴンワンダーライドブック』を取り出し開く。
[ブレイブドラゴン! かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた・・・・]
ワンダーライドブックを閉じてドライバーに装填し、ユウキは抜刀する。
“変身!”
[烈火抜刀!]
ーーーーギャォォォォォォォンッ!!
スロットに装填したワンダーライドブックが開いた。
[ブレイブドラゴン!]
✕の字の斬撃を目の前に放ち、セイバーに変身するユウキ。
[烈火一冊! 勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!]
セイバー‹ユウキ›はペコリーヌと共に、襲い来る魔物達に向かった。
聖剣は、ペコリーヌの事があまり好きではない設定です。武器のおかげで戦えている癖に、『自分は強い』と思い上がっている気配がするのが気に入らない様子です。