ーユウキsideー
ペコリーヌと別れたブレイズと【牧場‹エリザベスパーク›】の皆は、魔物の群れを蹴散らしながら突き進む。
マヒルは日頃の牧場の仕事で使い慣れているフォーク状の三叉の槍を巧みに扱いながら魔物を薙ぎ倒していく。
リマはそのラマのような見た目に反せず、馬力のある一撃とその体格から想像できない軽やかな動きで魔物を撃破する。
リンはその小柄な体型と獣人‹ビースト›らしい身体能力で魔物達の間をすり抜けながら逃げ、ブレイズがその魔物達を切り捨てる。
病弱で体力も少ない為か走るのも辛そうなのだが、意外と『やる時はやる性格』をしたシオリは、息切れしながらも冷静に弓を構え矢を放ち、魔物の急所を貫いて仕留めていく。
「援護します、マヒルさん。・・・・一人だって、死なせません」
勇ましい事を言うが、やはり体力的にキツイのか、ふらついてしまうシオリ。そんなシオリをリマが慌てて支える。
「シオリちゃん、私の背中に乗って! んもう、フラフラしてるじゃないの? あっ、リンちゃんは自分で歩いてね〜♪ ユウキくんに背負ってもらおうとなんてダメよ〜♪」
シオリを背負うとするリマが、ちゃっかりブレイズの背中に乗り込もうとしたリンを牽制した。
「え〜・・・・まぁ、良いけど。たまには、あたしも本気出さなきゃね〜?」
普段はズボラでサボり魔で運動不足のせいかシオリとはまた違ったスタミナ不足があるのだが、やる気を出せば【自警団‹カォン›】のメンバーらしい身体能力の高さを持っているリンなのだ。
“っっ!!”
と、その時、ブレイズは自分に迫る殺気に機敏に反応し、水棲剣流水を構えると、ガキィィンッ!! と、衝撃と共に現れたのはーーーー。
『ーーーー再び戻ったぞ! 剣士よ!』
“お前は!?”
「何だべ!? トカゲの魔物か!?」
『トカゲではないっ!! 失敬な! 我はハンザキメギドーーーー否、サンショウウオメギドだ!!』
鎧の武装が追加され、両肩にサンショウウオの尻尾のようなものと、頭部に三本のツノが生えた姿の『サンショウウオメギド』が現れた。
「うぇ〜、また変な魔物が現れたよ〜?」
「何か・・・・ユウキさんの集めている『本』を食べた魔物達と似てる気がします・・・・」
「えっ? それじゃあの魔物も、『本』を食べたって事?」
リンが辟易し、シオリがハンザキメギド改め、サンショウウオメギドを見ると、ユウキが回収している『ワンダーライドブック』の力を得た魔物達と似ている姿をしていると推察すると、リマが少し目を見開いてそう言った。
“〜〜〜〜! ハッ!”
『ぬぅ!?』
ブレイズが力を込めて押し出すと、サンショウウオメギドは大剣『サキガエシ』ごと身体を後ろに後退させた。
「オメェさんが、オラ達の牧場を襲っているだべか!? なしてこんな事をするだ!?」
『ふん。こんな牧場など欠片も興味ない。我が興味あるのはーーーー貴様らだ!!』
サンショウウオメギドがリマと、リマの背中に背負われたシオリにザキガエシの切っ先を向けた。
「えぇぇぇぇっ!? わ、私とシオリちゃんが目的って・・・・! もしかして、私に一目惚れしちゃったの?」
「リマさん、違うと思います」
いや~ん、と顔を赤くしてはしゃぐリマに、背負われたシオリがボソッとツッコミをいれると、サンショウウオメギドは構わず声を上げる。
『この世界でも『特異の存在の一つ』である貴様と、『特異な存在の関係者』である貴様に、我が『主』は少し興味を抱かれたのだ!』
「えっ? 『特異な存在』って・・・・そりゃぁ、私って見た目がちょっと魔物っぽいけど・・・・」
「(『特異な存在』・・・・きっと『お姉ちゃん』の事だ。この魔物の『主』と呼ばれる人はまさか、私を人質にして、『お姉ちゃん』を誘き出すのが目的・・・・?) そんな事、させません!」
リマは良く分からず首を傾げるが、シオリは『最愛の姉』が狙われて、自分は姉の人質にしようとしていると考え、リマに背負われたまま弓矢を構えて、サンショウウオメギドに向けて矢を放つと、飛んでいった矢はサンショウウオメギドの肩に突き刺さった。
がーーーー。
『ーーーーふん』
サンショウウオメギドは刺さった矢を引き抜くと、矢が刺さった部分が、ブすぐに小さくなっていき、傷口が綺麗さっぱりなくなっていた。
『え!?』
“・・・・!!”
目を見開く【牧場‹エリザベスパーク›】を余所に、ブレイズはダッと駆け出して、サンショウウオメギドの身体を袈裟斬りした。
『無駄な事を』
サンショウウオメギドがそう呟くと、ブレイズが斬った傷跡がすぐに閉じて、綺麗になくなってしまった。
「傷が消えてるべ!? どうなってるべか!?」
「もしかして、再生能力とか、回復魔法みたいなのが使えるの!?」
「いえ・・・・前に図鑑で読んだ事があります。サンショウウオと言う生き物は手足や尻尾、目や皮膚に肝臓、さらには脳まで再生できる高い再生能力を持っているそうです・・・・」
「うわっ! 何それチート能力じゃん!?」
【牧場‹エリザベスパーク›】のメンバーが目を見開いた。
『クックックッ・・・・分かったか? 不死身とも言える我に貴様らが勝てる訳がない。ソコの二人、諦めて我と共に来い!』
「「!」」
リマとシオリはビクッと肩を揺らす。
がーーーー。
「何言ってるべ! リマリマもシオシオも、ウチの牧場の大切な仲間で、家族だべ! おめぇさんみてぇな怪物に、渡す訳にはいかねえべ!!」
そうはさせまいと、マヒルとリンが二人を守るように立ち塞がる。
「そうだよ! リマとしおりんは、いつもサボってる私の分まで仕事してくれるんだから! こんな時くらい、私が二人を守るよ!」
「マヒルさん・・・・!」
「リンちゃん・・・・!」
すると、ブレイズも聖剣を構える。
『貴様ごときで、我に勝てるとでも?』
“・・・・分からない。でも、マヒルさんも、シオリちゃんも、リンちゃんも、リマさんも、大切な友達だ。だから戦う。だから守る、僕の戦う理由はーーーーそれだけだ。それだけで、十分なんだ!!”
勝てるかどうかなんて関係ない。しかし、それでも、自分にとっては大切な友達だから、それを守る為に戦う。ブレイズは、ユウキは一片の迷いもなくそう断言する。
と、その時・・・・。
ーーーーキィィィィン!
ーーーービュォオオオオオオオオオオオオオ!!!
『!?』
『な、なんだ!?』
突如、牧場の裏手から、“翠色の竜巻”が巻き起こり、その風圧で牧場のアチコチで燃えていた炎を消し飛ばし、竜巻が消え、一本の剣が回転しながら飛んでくると、サンショウウオメギドの身体を斬りつけた。
『グォアアアア!!』
斬りつけられたサンショウウオメギドはゴロゴロと倒れ込んでいくと、その剣はブレイズに向かってくる。
“っ!!”
ブレイズは水棲剣流水でその剣を受け止めると、その形を露わにした。
「あっ! アレって牧場の向こうにある倒れた木に突き刺さってた剣じゃない?」
「本当です・・・・。リマさんや牛さん達が引っ張っても抜けなかったのに・・・・」
「あの木の近くって、気持ちいい風が吹いてるからお昼寝にピッタリなんだよねぇ〜」
「リンリンがサボってドングリ食べてる所だべな!」
【牧場‹エリザベスパーク›】の皆がそれぞれいい、改めてその剣を、翠色の刀身をした他の剣と比べると半分くらいの長さしかいない聖剣を、ブレイズは見据える。
[ーーーー風双剣翠風‹フウソウケン ハヤテ›!]
風双剣翠風は、水棲剣流水と一つに重なるとブレイズの変身が解除され、風双剣翠風がユウキの手に収まった。
そしてユウキの脳裏に、この聖剣と合うワンダーライドブックが過った。
“!”
[猿飛忍者伝!]
ユウキは『猿飛忍者伝』と記された『ワンダーライドブック』をライドブックホンダナーから取り出して開く。
[とある影に忍は疾風! あらゆる術でいざ候・・・・]
音声が鳴り終わった後、ワンダーライドブックを閉じてハヤテシェルフに装填。背後に巨大な『猿飛忍者伝ワンダーライドブック』が現れる。
“ふっ!”
そして風双剣翠風を二本の剣に分離すると、『猿飛忍者伝ワンダーライドブック』が開かれ、ソコから翠色の風と、十字型の剣、手裏剣が飛び出し、ユウキは二本で十字の斬撃を生み出すと、斬撃が飛びユウキの後ろに変わった形の一文字が円となって時計回り囲うと、ユウキは変身のトリガーを引いた。
[猿飛忍者伝! 双刀分断!]
“変身! フッ! ハッ!”
[壱の手、手裏剣! 弐の手、二刀流! 風双剣翠風! 翠風の巻! 甲賀風遁の双剣が、神速の忍術で敵を討つ!]
風を身体に纏い、飛んでいった十字の斬撃を顔の左側に着け、右側に二本の刃を着けた、身軽さと速さに特化したようなアーマーを纏い、首に翠色の長いマフラーを付けた風の剣士『仮面ライダー剣斬』が推参した。
“『仮面ライダー剣斬』。強さを見せてやる!”
「おぉっ! あんちゃんがなんか違う姿になったべ!」
「凄い風! シオリちゃん、大丈夫?」
「は、はい・・・・。リマさんに背負われてなかったらフラ〜っと倒れていました・・・・」
「う~ん、でもアレで倒せるのかな?」
“・・・・・・・・はぁぁっ!”
剣斬は一瞬、力を溜めるように腰を落とし、一気に駆け出すと、小さな翠色のつむじ風となり、凄まじいスピードで動き、サンショウウオメギドだけでなく、牧場にいる他の魔物達を細切れに斬り捨てていく。
“・・・・ふっ!”
つむじ風が収まり剣斬の姿を顕にすると、牧場にいた魔物達は撃破されていった。
ーペコリーヌsideー
「うわっ!? アレってもしかしてユウキくんですか!?」
魔物達を引き寄せていたペコリーヌも、突然現れて魔物達を蹴散らした緑色の鎧剣士を見て、ソレがユウキなのだとすぐに察した。
「新しい聖剣を手にしたんですかね? アレなら大丈夫そうです! では私も、『元凶』を見つけましょうか!」
ペコリーヌはそう言って、森の方へと向かっていった。
ー剣斬sideー
「うわっ! 凄い! でも・・・・」
『ーーーー!』
サンショウウオメギドだけは、斬られた複数の傷が塞がっていった。
「やっぱり、あの魔物の再生能力をどうにかしないと!」
「・・・・あれ? もしかして・・・・ユウキさん」
“?”
サンショウウオメギドに向けて風双剣翠風を構える剣斬に、シオリが声を掛ける。
「もう一度、連続斬りであの魔物を斬りつけて下さい!」
シオリの言葉に頷いた剣斬は、風のような速さで肉薄すると、舞うような動きでサンショウウオメギドを斬りつけ、更にバク転しながら蹴りを叩きつける。
『グォォォォッ!!・・・・フッフフフフ、コレで我を倒せると思ったのか?』
が、やはり再生していくサンショウウオメギド。
「・・・・やっぱり」
「ん? シオシオ。何か分かったべか?」
「あの魔物・・・・再生のスピードが遅いんです。正確に言うと、一度に複数の傷を治すのに時間がかかるんです」
「えっ? そうなの?」
「はい。つまり、再生するのが間に合わない位のダメージを一気に与えるか、再生する時間が足りない位の手数で攻撃すれば、あの魔物は倒せると思います・・・・」
「んだら、オラ達とあんちゃんで一斉に攻撃しまくって、アイツをやっつけちまうべか?」
「うえ〜、脳筋なやり方・・・・。もっと簡単なやり方ないの? ユウキは兎も角、私らのスピードじゃ追いつけないよ〜」
“っ!”
リンがげんなりして言うと、剣斬の脳裏に、ある『ライドブック』が過ぎり、『白い本』から『KOBUTA3KYOUDAI』と記された『一番年齢の低い女の子達のギルド』と一緒に見つけた『黄緑色のライドブック』を手に取り開いた。
[こぶた3兄弟! とある三兄弟が繰り広げる。お家を守る戦いの物語・・・・]
『こぶた3兄弟ライドブック』を閉じて、風双剣翠風の『ハヤテシェルフ』に装填して開く。
[こぶた3兄弟!]
音声が流れると、剣斬の左腕に、緑色のレンガ造りの建物が、まるで騎士の盾のように装備された、『仮面ライダー剣斬 忍者ぶた3』となった。
“ーーーーはっ!!”
剣斬が構えたその時ーーーー剣斬の左右に、同じ剣斬(左腕の色が違う)が二人も現れた。
『えぇぇっ!?』
『なぬっ!?』
「分身の術!?」
コレにはマヒル達だけでなく、サンショウウオメギドも目を見開き、リンが思わず叫んだ。
“““ーーーーはっ!!!”””
すると、三人の剣斬が緑色のつむじ風となって、三方向からサンショウウオメギドを囲って斬り刻む。
ーーーーザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザン!!!!
『グゥアアアアアアアアア!!!! さ、再生ををを!! だ、だめだぁ!! 間に合わなーーーー』
“““たぁ!!”””
三人の剣斬のつむじ風が、サンショウウオメギドの身体を上空に吹っ飛ばすと、風双剣翠風を十字に交差するように重ねた『手裏剣モード』にして、サンショウウオメギドに向けて投擲すると、風刃を纏った三つの手裏剣は縦横無尽にメギドの身体を斬り刻む。
『ガァアァアアアアアアアアア!!!』
[猿飛忍者伝! ニンニン! 翠風速読撃! ニンニン!]
分身が消え、戻ってきた風双剣翠風を手に取り、『シンガンリーダー』に『猿飛忍者伝ワンダーライドブック』を読み込ませて、トリガーを引いて必殺技を発動する。
[回転! ニンニン!]
“『疾風剣舞・回転』!!”
『グゥゥ・・・・急いで再生を・・・・!!』
「させないよ、糖分補給! 『お手製あんパンチャージ』!」
リンが懐からあんパンをマヒル達に渡して全員が食べると、体力が回復する。
「ありがとうなリンリン! ぶちかますべ! いでよ相方! 『エリザベスコンビネーション』!!」
『モゥゥ〜!!』
『ドワァアっ!?』
落下したサンショウウオメギドが再生しようとするが、マヒルが何処からか牛を呼び出し、牛がサンショウウオメギドに突進して吹き飛ばすと、その先にいたマヒルがフォークを思いっきり叩きつけた。
「私も、全力です! 『エンチャントアロー』!」
『グガァ!?』
空かさずシオリがパワーを込めた一矢を放つと、サンショウウオメギドの身体に拳大の風穴を空けた。
「私も全力お見舞いよ! 『もふもふストライク』!!」
『ヌァァァ!!』
次にリマが剣を一回キスしてから、大振りに振り回して、サンショウウオメギドを斬りつけた。
『今よ(だべ/です/だよ)!!』
“ーーーー!!”
【牧場‹エリザベスパーク›】の皆の声を聴いて、剣斬がコクリと頷き、手裏剣モードの風双剣翠風の刀身に風を纏わせて、サンショウウオメギドに再び投擲すると、風のエネルギーの手裏剣がサンショウウオメギドに命中すると、縦回転しながら風を纏う剣斬が突撃し、サンショウウオメギドの身体を絶え間なく斬りつけていく。
『ヌグァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
ーーーードガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
斬りつけ、サンショウウオメギドの身体を切り裂いた後、シュタッと着地した剣斬の後ろで、サンショウウオメギドが爆散し、『ハンザキサンショウ王アルターライドブック』が爆炎から出てくる。
“ーーーー今度は逃さない!!”
剣斬が『白い本』を開いてアルターライドブックに向けて掲げると、吸い込まれるように引き寄せられ中に入っていった。
そして、『白い本』に表示された文字を剣斬が読む。
“『ハンザキサンショウ王アルターライドブック』、回収完了!”
剣斬が『白い本』を握り締めてそう言うと、【牧場‹エリザベスパーク›】の全員が笑みを浮かべて頷くと、そのまま牧場から避難する為に走り出した。