ーマヒルsideー
日がとっくに沈み、夜の世界となった〈ランドソル〉近郊にて、牧場を焼け出されたマヒル達【牧場‹エリザベスパーク›】の面々は、どうにか無事に山の麓まで避難した。
「ひい、ふう、みい・・・・うん、動物も含めて皆無事だ♪」
マヒルが牧場で世話をしている動物達も含めて全員の無事を確認して笑みを浮かべた。
「はひ〜・・・・一時はどうなる事かと思った・・・・大急ぎで山道を降りたから、足が痛いよ〜。しおりん、足の裏とか揉んでくれる? 優しくね〜?」
「はい。リンちゃんって、偶におばあちゃんみたいですよね」
「甘やかさなくて良いわよ〜シオリちゃん。リンちゃんったら、途中から『もう歩けない!』って駄々をこねたから、私が抱っこで運んであげたんだから。全くもう・・・・ちょっとは殊勝になったかと思ったのに、リンちゃんはリンちゃんね。すっかり、いつものリンちゃんに戻っちゃったわ」
リンは途中から走るのをリマに任せていたのに、足のマッサージをシオリに頼み、シオリがマッサージしようとするのをリマが止め、元通りになったリンにやれやれと肩を落とすリマ。
「あはは・・・・リンちゃんが真面目だと不気味なので、私は『いつものリンちゃん』の方が見ていて安心します」
「ふふん。そうでしょそうでしょ、もっと褒めても良いよ?」
「別に褒めてはいませんけど・・・・でも良かったです。殆ど怪我人もいないぐらいでしたから。【牧場‹エリザベスパーク›】の建物は、悲惨な状態でしたけども」
フフンッとドヤ顔でふんぞり返るリンに、シオリは呆れながら、怪我人がいない事に安堵していたが、自分達の『家』でもある【牧場‹エリザベスパーク›】が焼かれたのを悲しそうにしていた。
「建物ぐらい、幾らでも修復できるべ。魔物の襲撃は保険が適用されるしな。寧ろ建て直しができると考えたら得した気分だべさ」
「ふふ、マヒルさんは逞しいですね、尊敬します」
一番の被害者である筈なのに、笑顔を絶やさず頼もしい言葉を言うマヒルに、シオリだけでなくリマやリンも尊敬の視線を向ける。
「いや〜・・・・でも、皆にはおっかねぇ思いをさせちゃったなぁ。こんなのは、もう二度と御免だべ。何だったんだべ、あの魔物達の大暴れに、サンショウウオの魔物は・・・・ちょっと、尋常じゃなかったど」
「【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の人達が、調査してくれるって話でしたけどね。大勢で助けに来て、ココまで私達を護衛してくれましたし」
少し後ろを見ると、鎧騎士達がついてきてくれていた。
「ふふ。【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】は獣人への当たりが厳しいので、ちょっと苦手だったんですけど、見直しました。いい人達、なのかもしれませんね」
「ど〜だか・・・・騒ぎに気付いて駆けつけてきたにしては、やけに準備万端って感じで迅速に行動してたし。な~んか、きな臭い感じがするなぁ?」
シオリは騎士団を見直した風に言うが、リンは半眼で訝しげな視線を向けていた。
「ーーーーふふ。私達に何か文句でもあるのかな、【牧場‹エリザベスパーク›】の皆さん?」
そんなリンに話しかけてきたのは、護衛にやって来た騎士団の中で年若い女の子、トモであった。
「べっつに〜・・・・。護衛してくれて、あんがとね。でも、アタシら今日は何処で寝れば良いの? 宿とか、手配してくれないの?」
リンの質問に、トモは【牧場‹エリザベスパーク›】の面々を見て、顎に手を当てて唸る。
「う~ん・・・・人間や獣人‹ビースト›なら兎も角、動物も沢山いるからね。すぐには、住まいも用意できない。今日の所は、野営して欲しい。テント等の必要物質や食事等は、出来る限り用意するから」
「そりゃ助かるべ〜。クタクタだし、さっさと寝床に入って休みたい。えっと、アンタは【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の・・・・『トモちゃん』、だったか? まだ子供なのに、夜中まだ働いてい偉い♪」
「ソレが職務なので。・・・・えっと失礼だけど、あなた私より年上なのかな? 何か、子供扱いされて変な気分なんだけど」
「んあ、オラは二十歳だ〜♪」
「え・・・・?」
以外ではあるが、トモはこんなにしっかりした雰囲気なのだが、実年齢はシオリ(十四才)より歳下の十三才。そんな女の子が騎士団として働いているのを褒めるマヒルが、トモは自分よりも背丈が低いマヒルが年上であった事に少し目を見開いた。
「ソレより、良い子は寝る時間だべさ。ソッチの子も、眠そうにしてるし・・・・オラ達は大丈夫だから、アンタらも帰って休むといい♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫ッス、寝てないッス」
「寝ててもいいよ、『マツリちゃん』」
マヒルが指差したのは、頭を覆い隠す程に大きく動物の耳が付いた帽子を被り、その帽子にゴーグルを掛け、マントを羽織った軽装の鎧を着けた、金髪に金目であり、トモよりも年下のような女の子【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の見習い騎士『マツリ』が目をショボショボと擦りながら大丈夫と言うが、眠そうなのは間違いない。
トモはそんなマツリに、小さく笑みを浮かべながら優しく声をかけていた。年下のマツリの事をトモは妹のように接しているのだろう。
「ううん、自分も【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の一員ッスから。先輩を差し置いて、休む訳にはいかないッス。押忍!」
「その子も、【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】だべか? 人手不足だとは聞いてたけど、こんなちっちゃい子まで動員するのはどうかと思うべよ〜?」
「いや、この子はまだ『見習い』というか・・・・私、子守りを押し付けられたんだよね。詰め所に置いていこうと思ったんだけど、ついてきちゃった」
「う~自分だけ仲間外れは嫌ッス! 『ヒーローの心得その7』、『全員で力を合わせて、巨悪に立ち向かう』ッス!」
元気にそう言うマツリをマヒルは訝しそうに見据える。
「んん。【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】って、獣人‹ビースト›とは仲が悪いって聞いてたけど。この子って、もしかして獣人‹ビースト›じゃ・・・・?」
が、マツリが両手を上げて振り、慌ててマヒルの言葉を遮る。
「あ~っ、あ~っ! 言っちゃ駄目ッス! 正義の味方には秘密がいっぱいッス、そう言う事ッス!」
「・・・・まぁ、ともあれ。ユウキ、って言う人はいるかな?」
トモはマツリの反応を聞かなかった事にし、ユウキの事を聞いた。
「『陛下』直々に、お呼びがかかってるから。できれば今すぐにでも、王宮に出頭して欲しいんだけど」
「ユウキ? あの子なら、ペコリーヌとか言う子が戻ってこないから・・・・心配して、避難が完了してすぐ、山ん中に向かったよ。危ないから、オラ達と一緒に行動しようって言ったんだけど。ペコリーヌって子が見つかっても見つからなくても、後で合流するって事だから。待ってりゃ、その内姿を見せるべさ」
そう。ユウキは〈ランドソル〉に到着する少し前に、二輪の乗り物に乗ってもと来た道を戻っていったのだ。
「しかし、『陛下』ってのは〈ランドソル〉の『王様』の事だべか? そんなお偉いさんが、ユウキに一体何の用だべ?」
「さぁ・・・・私は、単なる『使い走り』だから。個人的にユウキとやらには聞きたい事もあるし、できれば面通しをしておきたかったんだけどね」
「すう、すう・・・・♪」
と、そう話している内に、マツリは器用に立ったまま寝ていた。
「おや、マツリちゃんが眠気に負けて寝ちゃってる・・・・。私、この子をお家まで送ってくるよ。ユウキって人が戻ってきたら、引き留めといて欲しい」
「了解だ。アンタも、夜道には気をつけなよ?」
トモがマツリを背負い込み、後の事は先輩騎士に頼み、そのまま〈ランドソル〉へと向かった。
「う~、アタシも眠くなってきたよ〜」
「良い子達ね。トモちゃんとマツリちゃん、だっけ? でも、ユウキくんに何の用なのかしら?」
「・・・・もしかして、『聖剣』の事では無いでしょうか? 以前、『カスミさん』から聞いた事があります。あの人の所持する『聖剣』を、王宮が監視しているって・・・・」
「ん~・・・・一件落着としたいとこだけど、何だかまだまだきな臭いべや。嫌な予感がする、どんな時でも平和が一番なのに」
【牧場‹エリザベスパーク›】の面々は、夜空の星々を見上げながら、ユウキとペコリーヌの無事を祈っていた。
ーペコリーヌsideー
そしてここは【牧場‹エリザベスパーク›】から少し離れた『ミステリオン森林』。
ソコに牧場を襲った魔物達を操る『黒幕』がいると考えたペコリーヌが捜索していると・・・・。
「ふふっ、うふふ! はははっ、あっははははははははははははははは・・・・☆」
突然現れた【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の副団長クリスティーナ・モーガンと斬り合いを繰り広げていた。
「楽しいなぁ、『ティアナ』! 愛おしい我らのプリンセスよ! もっともっと愛し合おう、ドレスを血に染め踊り明かそう! 傷つけ合って火花を散らし、噛みつきあって愛し合おう! 民の願いを聞き届けるのが、貴様らの『天命』だろうが! もう疲れたなどと言わないでくれよっ、ワタシはまだまだ満足していないぞ! 十二時の鐘が鳴り響いても、舞踏会は終わらない! さぁお手をどうぞっ、麗しの姫君! 死ぬ気で剣を振るえっ、ワタシの退屈を殺してくれ・・・・!」
テンションを高くしながら、ペコリーヌの『本当の名前』を叫ぶと共に、その剣で斬り掛かってくるクリスティーナから逃げながら斬り結ぶペコリーヌ。
「はひ〜っ!? しつっこいですね、あの人! 何か、ずっと追いかけて来るんですけど〜っ!? もうすっかり、夜になっちゃいましたよ!」
夕方、ここに牧場を襲った魔物を操っていた『黒幕』を探していれば、突然襲い掛ってきたクリスティーナを相手にしている内に、とうとう夜になってしまった。
「ユウキくん達、私が中々戻ってこないから、心配してるでしょうね。申し訳ないです〜。何か、通信手段でも用意しとけば良かったんですけど。こんな展開、予想できなかったんだから仕方ないですね。まさか、おかしな人に、延々と追いかけ回される事になるとは思いませんもんーーーー!?」
と、ソコでクリスティーナからの連続斬りを避けると、距離をあける。
「どうしたどうした、考え事かっ? 疲れたのか? 休憩にしようか? 頑張ってくれっ、お願いだからぁ! ボウヤが熟す前に、良い相手が見つかったのだ! 踊ろう! 可愛い可愛い、プリンセス・ティアナ・・・・!」
「う~ん? 何なのでしょう、あの人? 私の『本名』を、知ってるみたいですけど〜、それ自体は、喜ばしいですけどね?」
クリスティーナが、まるで猛り狂う『ケダモノ』のようなテンションで声高く吠えるが、ペコリーヌはそのテンションに引き気味である。
「皆、“私の事を忘れちゃってるみたいですし”。『父上』も『母上』も・・・・皆々」
何やらブツブツ言うペコリーヌは、改めて自分を追いかけてくるクリスティーナを見やる。
「詳しく、話を聞きたい所ですけど。あの人、会話する気ありませんよね!? ど〜しましょ、何故か、コッチの攻撃はあの人に当たらないみたいですし。何かズルい、超自然的な方法で回避されてるっぽいです。だから相手するだけ徒労ですし。大暴れしていた魔物は、ユウキくんがやっつけてくれたみたいですから・・・・【牧場‹エリザベスパーク›】も、多分もう安全です。私も役目を果たせました。魔物を操っている『何者』かを仕留めて、牧場を救うって目的は。だからもう、ぶっちゃけ帰りたいんですけどね〜・・・・?」
あらかた自分の現状を確認すると、やれやれと肩を落としたペコリーヌは、クリスティーナの方に目を向ける。
「タイミング的に考えて、魔物を操ってたのは・・・・今、私を追いかけて来てるあの人なんでしょうか? あんまりそう言う魔法っぽい事が得意そうには見えないですけど? う~ん・・・・」
ペコリーヌもアホだが、ソコまで馬鹿ではない。クリスティーナのコレまでの戦闘で得た情報を分析していていた。
「身体能力は中々優れているっぽいですし、不自然に攻撃を避けたり当てたりするので・・・・何かしら、『特別な存在』なんでしょうけどね。私から全てを奪った、『あの男』のように」
脳裏に浮かぶのは、玉座を我が物顔で座り、冷酷に、傲慢に、高圧的に、そしてコチラを見下し切った視線をする『あの男』の顔が。
「そう言う意味でも、私を追いかけて来てる人とは、腰を据えて、語り合いたい感じなんですけど。多分『人間』ですしね〜、『殺して食べる』のも可哀想ですし」
腹が減ったら人間ですら食べようと考えるあたり、クリスティーナとは別のベクトルで、『ケダモノ』のような思想をしているペコリーヌであった。
「どうしましょう? 逃げる為に『王家の装備』を、低出力とは言え、常時稼働させ続けてますし」
ーーーーグゥゥゥゥ〜・・・・。
と。
言っている内に、唯でさえ栄養の燃費が悪いペコリーヌの身体が『王家の装備』を使って更に悪くなり、空腹を訴え始めた。
「お、お腹ペコペコになってきちゃいました。このままじゃ、ジリ貧ですね」
と、その時・・・・。
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。
「・・・・むっ? ティアナ! 今、何か物音がしなかったか? 地響きもするような」
「はい? あ〜・・・・そうですね、何かが爆発したような感じです!」
突如として起こった異変に、クリスティーナが剣を止め、お腹を片手で抑えながらペコリーヌも感じていた。
「ていうか、フツーに話しかけられてビックリしましたよ! 私達、戦闘中でしょう?」
「あはは☆ 良かった良かった、『戦闘中』だと言う自覚はあったんだな? そうして逃げているのも、何かの『作戦』なんだなっ? 素晴らしい! もっと楽しませてくれ!」
折角中断されたのに、ペコリーヌの余計な一言でまた再開しそうになった。
「あう〜・・・・。こんな山の中で爆発なんて不自然ですし、何かの『人為的な災害』、或いは『事故』かも知れません。私、様子を見に行っても良いですか? 怪我人とかいたりしたら、救助したいですから」
「はっ、お優しい事で! 構わんぞ。一時的に休戦してやっても良い!」
ペコリーヌの戦闘中とは場違いな言葉に、意外にクリスティーナも了承した。
ークリスティーナsideー
『ティアナ』は呑気に人助けを提案し、クリスティーナも乗るが、彼女の思惑はソレだけではない。
「(爆発が響いた方向は、本来の私の『目的地』・・・・【ラビリンス】とやらの、『秘密基地』のある方向だし)」
自分が『陛下』から承った『特別任務』の場所であったからだ。
「(・・・・気になるな。一応、様子を見に行った方が良いだろう。所在がバレた事に気付いて・・・・証拠隠滅の為に、『アジト』を爆破して撤収でもしたのかも知れん。だとしたら、面倒だな。【ラビリンス】の誰か『生け捕り』にしろと命じられているのに。【ラビリンス】は『秘密結社』と言う事だし、逃げ隠れするのは得意なようだ)」
折角所在を突き止めた『アジト』を破壊されれば、【ラビリンス】はまた姿を消し、振り出しに戻ってしまうのも面倒だとクリスティーナは思い、ソレを目の前の『ティアナ』に悟られないように声高く言う。
「ではそうと決まれば急ごう『ティアナ』! 手を繋いで歩こうか、小鳥のように歌を囀りながら! 用事が片付いたら、また殺し合いだぞっ! アッハハハ・・・・☆」
「う〜・・・・誰か助けて下さぁい。私、変な女の人に粘着されてますよ〜? も、もう勘弁して下さいよ〜?」
ズケズケと突き進むクリスティーナの後を追いながら、『ティアナ』は助けを求めるように空に向かって叫んだ。
ー???sideー
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ソコは、何処かの洞窟に作られた牢屋のような場所。
その牢屋のベットに横になりながら天井を見据えているのは、【ラビリンス】に連れて行かれたノウェム・・・・否、ムイミであった。
「この場所に閉じ込められてから、どれぐらい時間が経ったんだ? 精々1週間って所か? う〜一生の不覚」
あの日、オクトーを見つけた日。シズルに一撃かまされて気を失い、目を覚ましたらこの牢屋の中にいた。
「今の所、危害を加えられてないし・・・・あったかい食事や寝床も与えられてる。好待遇だけど、アタシを捕らえた連中の意図が分かんないから不安だな。あの【ラビリンス】とか言う連中は・・・・アタシに、何か『聞きたい事』があるみたいだけど。ペラペラ喋るのも、ちょっと迂闊過ぎる気がする」
それなりに快適な生活を与えられているが、ムイミはソレで簡単に口を開く程マヌケではない。
「連中が『知りたい事』を、アタシから全部聞き出すまでは、アタシの安全は保証させる筈・・・・。かと言って、全く何も喋らないと、『拷問』とかされかねないし」
『拷問』をされる想像をして身震いする。
「今は連中、お優しい素振りを見せてるけど、アタシを殴って気絶させて誘拐したんだ、危険な奴らだ。用済みになったら、『始末』されちゃうかも。まだアタシが“連中にとって価値のある情報を隠している”、と言う風に装いつつ・・・・ご機嫌を取って『時間稼ぎ』をしてる内に、脱出方法を探らないと」
と言いつつ、ムイミは横になったまま腕組みをして考える。
「う〜・・・・こういう『駆け引き』、アタシは苦手なんだけど。ずうっと、そう言う七面倒臭い事は、オクトーに任せてたしな」
目を閉じて思い浮かぶのは、あの銀髪おかっぱの優男のヘラヘラ顔であった。
「オクトー・・・・会いたいな。アイツがいると、安心するし。まぁ今のアイツは、“アタシの事を忘れちゃってるんだけど”、ソレでも、アイツに会いたい。独りぼっち、もう嫌だ」
と、ムイミが呟いたその瞬間ーーーー。
ーーーードガァァァァァァァァァッ!
突然の爆発音に、ムイミは飛び起きた。
「・・・・!? な、何だっ? 爆発音・・・・? 何かの事故かっ、ソレとも誰かが襲撃してきたのか? まさかオクトーが、アタシを助けに来てくれたとかっ? いや、そんな訳が無いか・・・・」
一瞬の期待をすぐに切り捨てたムイミ。
「アイツ、寧ろアタシを捕まえようとしてたし。覚えてろよ〜アイツが全部思い出したら仕返ししてやる。ーーーーともあれ、一体何が・・・・?」
ムイミは鉄格子を掴みながら、外へ声を差し上げた。
「お~い! 何があったんた、誰かいないのかっ?」
ココは洞窟の中であり、爆発など起これば崩落し、生き埋めになってしまうので少し焦るムイミは、シズルとリノと言った外にいるであろう【ラビリンス】の人間達に向けて声を張り上げるが、全く返事がない。見張りもいないようだから、鉄格子さえ何とかすれば脱出できる。
しかし、ムイミの腕力ではソレは不可能であり、壁に寄りかかって座り込んでしまう。
「はぁ、『天楼覇断剣』さえ使えればぁ・・・・!」
と、ため息を吐いて、『失った武器』の事を考えるムイミの耳に突然、足音が聞こえてきた。
「ひっ、誰だ!? こ、こここ、恐くないぞ! 【ラビリンス】の連中かっ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ビビっているムイミが鉄格子に目を向けると、牢屋の向こうの暗闇からーーーー1人の男性が現れた。