ーユウキsideー
【牧場‹エリザベスパーク›】の復興支援に来ていたサレンを見つけ、ミフユとタマキと挨拶しているユウキ達。
「ソッチの子達とは初対面にゃ。アタシは【メリクリウス財団】の、『タマキ』って言うにゃ。宜しくにゃん♪ お近づきの印に、『たい焼き』をあげるにゃ♪」
「どっから出したんですか、タマキさん!?」
タマキは何処からか、魚の形をしたお菓子『たい焼き』を差し出した。
「うわぁ、いただきます!ーーーーん。この味っ、良く屋台でたい焼き売ってません?」
「おっ、ご存知かにゃ。そう言えば、良く買いに来てくれる常連さんだにゃ〜? いつもご贔屓にしてくれて、ありがとうにゃ♪」
そしてたい焼きに喰らいつくは食欲の権化ペコリーヌ。一口で何処のたい焼きか見抜き、どうやらタマキの屋台の常連であったようだ。
「たい焼き・・・・? えぇっと皆さんは、何をするギルドなのでございますか?」
「ん〜、金融業を中心に手広くやってるにゃ。まぁ、『何でも屋』って所かにゃ。今回は同じ獣人‹ビースト›のよしみで、【自警団‹カォン›】に要請されて出張って来たにゃ。アタシも獣人‹ビースト›だから【動物苑】に戸籍を登録してるし、相互扶助は責務にゃ。アタシら獣人‹ビースト›は、『助け合いの精神』を大事にするにゃ」
因みにタマキは【自警団‹カォン›】のマコトのような若輩からは、『タマ姉‹ねぇ›』と呼ばれ慕われている。
「牧場には【自警団‹カォン›】の子が、何人か出向してるし・・・・ソレ繋がりで、他にも沢山の獣人‹ビースト›が復興を手伝ってるにゃ」
遠くで休憩しているシオリと、サボろうとしてリマに連れて行かれているリンを見据えるタマキ。
「この牧場は普通の人間‹ヒューマン›も獣人‹ビースト›も、分け隔てなく受け入れて平和に暮らしてる・・・・ある種の、『理想郷』だにゃ。災害なんかで、荒らされて壊れて欲しくないにゃ」
「分かるわ、タマキさん。近頃種族間の溝は深まる一方だけど、出来れば手を携えていきたいわよね」
同じくエルフであるサレンも、タマキの意見に賛同した。
「そう言えばこの近所に、エルフの集落があって、ソッチも爆発の影響でちょっと被害があったみたいだから。アレなら、様子を見てくるべきかもにゃ」
「ん~・・・・アタシはこの近所の森のエルフとは、あんまり関係がないんだけどね。別の枝族なのよ。確か、コッコロもそうだっけ?」
「はい。一口に『エルフ』と言っても、一枚岩ではございませんので。とはいえ、同じ種族ですし、被害に遭われたと言うなら安否が気になりますね」
「じゃあ、後で一緒に見に行きましょうか。非常事態だし、助け合わないとね」
“サレンちゃん、僕も行くよ”
他種族とはあまり交流を持たがらないエルフでも、今回は助け合おうと考えるサレン。そして、ユウキも一緒に行くと言い出した。
「ん? ユウキも、一緒に行きたいの? 全くもう。アンタ、人助けとなると見境がないわね〜」
“知り合いのエルフの人達がいるから、心配なんだ”
「ふぅん。アンタ、エルフの集落にも知り合いがいるのね。ホントに顔が広いわよね、エルフって割と閉鎖的なのに。ってか、アンタ達・・・・」
と、サレンは1拍子置いてから改めてユウキに話しかける。
「何気なくこの場いるから、つい普通に会話しちゃったけど、連絡もせずに行方を眩ませて、コレまで何処で何してた訳? ていうか、一応感動の再会よ? もっとこう何かあるでしょ、感極まって抱き合ったりさ〜?」
“・・・・うん”
サレンにもかなり心配をかけていたと思い、ユウキはご要望通り、サレンに抱き着いた。かなり良い匂いがした。
「わっ、冗談よ冗談・・・・良いわよ、無事だったならソレで。あまり心配させないでよね」
「ふふ。サレンさんはユウキ君の前だと、何だか不器用な感じね。先程まで凄く心配して苛々していて、随分私も八つ当たりされたのに♪」
「えっ、そう? ど、同居人だし・・・・家族だから、心配するのは当然でしょっ?」
ミフユにからかわれて、頬を少し赤くするサレン。
そして、【メリクリウス財団】に所属するミフユとタマキも自己紹介を終えると、ミフユは辺りをキョロキョロと見回す。
「負傷者の治療にあたっている『ユカリさん』は兎も角・・・・『アキノさん』は、何処に?」
「主様、『アキノ様』とは・・・・?」
“【メリクリウス財団】のギルドマスターである元気な人”
「『アレ』を『元気』の1言で片付けて良いのか疑問だけどね・・・・」
「あの人、目を離すと厄介な事をやらかすので、ちょっと不安なんですけど」
コッコロの質問にユウキが簡潔に説明し、サレンとミフユがやれやれと肩を落としながら補足した。
「にゃはは。あの子なら、飛空艇で近隣の牧場に向かったにゃ。【牧場‹エリザベスパーク›】で育ててた、牛や馬を・・・・一時的に近隣の牧場に預かって貰う事になったにゃ」
更にタマキが補足する。
「まだこの牧場は柵とか設備が復旧しきってないから、家畜はどっか余所に預ける必要があるからにゃ。『アキノ』は、そう言う話を通しに行ってるにゃ」
「ふむ。やる事をやっているなら、別に構いませんけどね。『アキノさん』は何故か交渉が上手ですしね、任せても大丈夫でしょう」
「あの子、天然の人たらしだからにゃ〜。『カリスマ』って言うのかにゃ、上に立つべく生まれたお嬢様だからにゃ」
「ええ。昔からそうなのよ、ズルいのよね〜・・・・アイツは。好き放題に生きてる割に、何となく巧くいって、皆に感謝されるのよね。周りはいつも、振り回されて大迷惑だけど・・・・♪」
『アキノ』と言う人物に対して、褒めているのか愚痴を言っているのか分からないが、兎に角話に花を咲かせいた。
「でも、アイツ・・・・【メリクリウス財団】の皆と、仲良くやれてるみたいで安心したわ。アイツ空気が読めないから、『合わない相手』とはトコトン合わないしさ」
「仲良いのかしらね、喧嘩も絶えないわよ・・・・ソレなりに和気藹々と、同じギルドの仲間として一緒に活動してるけどね」
と、話していると一同に近付く1人の女性がいた。
「ーーーーあのう、ゴメン! 誰か、コッチを手伝ってくれない?」
「おっと、つい雑談しちゃったにゃ・・・・どうしたにゃ、『ユカリ』?」
「おや、『ユカリ』とは、負傷者の治療を行なっていた方ですが・・・・主様、ではあの方が?」
“うん。『ユカリさん』”
聖職者のような格好に長い金髪と紫色の瞳をした、二十代の容姿をしたエルフ。彼女が【メリクリウス財団】の『ユカリ』であるようだ。
と、ユウキがコッコロとペコリーヌに話している間に、ユカリはサレン達に話を続けていた。
「うん。近くに魔物がうろついてるみたいで、皆が怖がってるの。別に、暴れたりはしてないみたいなんだけど。やっぱり被害に遭った直後だから、皆不安みたい」
どうやらこの周辺に魔物が現れたようである。
「念の為。何人か戦える人で集まって、その魔物を追っ払おうって話になってるの。ただ皆、朝から肉体労働とかして疲れてるから・・・・手が足りなくって。私も『ヒーラー』だから、前線でガツガツ戦うのは苦手だしね。そう言うのが得意な、ミフユさんあたりが手伝ってくれると助かるよ」
“(あれ? ユカリさんって前線も後方支援もできる万能型だったような・・・・?)”
「あぁミフユは全体の統括をしてるから、この場から動かせないにゃ。取り敢えず、アタシが行こうかにゃ。魔物が出たってのは、何処かにゃ?」
「こっちこっち、急いでね。今【牧場‹エリザベスパーク›】の人達が、魔物の相手をしてるけど・・・・皆昨日から避難生活をしてて弱ってるから、危ないかも」
「待って下さい、私も行きます。害獣の駆除等は、得意分野ですので」
と、ソコでミフユが声を上げた。
「・・・・サレンさん、この場を任せても良い?」
「了解、任せて。アタシも、手伝いたい所だけど・・・・複数のギルドが各々、勝手に行動してたらパニックになるしね。誰かが主導して、全体を管理する必要があるもんね」
今この復興作業の場では、ミフユとサレンが主導となっている。その2人が1度にいなくなるのは、確かに現場が混乱してしまう。
「アタシ、そう言う『調停』とかは得意だから任せといて。適材適所よね、実際」
故に、サレンがこの場を任させた。
と、話が進んでいく中、ユウキ達は・・・・。
「んっと・・・・状況が目まぐるしく展開してついていけませんけど、私達はどうしましょう?」
“ーーーー取り敢えず、人手が必要な魔物退治に参加しようか?”
魔物を討伐する方に行こうとした。
「そうですね。魔物の種類によっては、倒した後に捌いて料理できますしね。被災地ですし、食料は沢山あった方が良いですもんね♪」
“(なるべくグロテスクにしなければね・・・・)”
ペコリーヌは見た目を気にしない所があるせいか、妙にグロテスクな魔物料理を作ってしまう所があり、ソレがこの場にいないが、キャルの悩みの種になっているのだ。
「ふふ。ペコリーヌ様は、ソレばっかりですね」
“ペコさんらしいけどね。それじゃ・・・・ユカリさ〜ん”
ユウキが話しかけると、ユカリはこちらに気づいた。
「あれっ? ユウキくん! 無事だったのね〜、良かった♪」
“こんにちは、ユカリさん”
「ふふ。何か割と頻繁に、アチコチで会う気がするわね。・・・・って、アレ? アナタ、『エルフ』よね? えっと、何処かで会った事ある?」
ユカリがコッコロを見て訝しそうな眉毛を寄せながら聞いた。
「いいえ。わたくしは、この近所のエルフとは交流蛾ございませんので。もっと北方に住まう枝族の、『長老』の娘・・・・コッコロと申します」
「ひゃ、『長老の娘』ってお偉いさんじゃない。えぇっと、こう言う時はどうするんだっけ・・・・?」
コッコロがエルフの枝族の長老の娘と聞いて、同じエルフとして姿勢を正そうとするユカリ。
「と、遠い地に住まう同胞と巡り会えて、光栄でございます〜?」
「ふす。格式張った挨拶は不要でございます、礼儀正しいお方ですね」
「いや〜、両親に厳しく躾けられてさ〜・・・・社会人になってから長いし、段々そう言うのは忘れかけてきてるけど」
“(厳しく躾けられた反動が『アレ』かな・・・・)”
コッコロにそう言われ、砕けた態度になるユカリを見ながらユウキはユカリの『秘密』が頭に過った。
「よろしくね、コッコロちゃん」
「はい。あまり町中ではエルフとお会いする事が無くて、心細くありましたので・・・・仲良くして頂けるなら、大変有り難く思います」
「そっか。うん、仲良くしようね。コッコロちゃんくらいの子供なら・・・・醜態を晒す事も無い筈だし」
「はい?」
「いや、コッチの話・・・・くっちゃべってないで急ごっか、まだまだ大忙しよ〜♪」
と、考えている内にユカリとコッコロは自己紹介を終えた。
「ウンウン。忙しい時が気合の入れ時だにゃ。我ら【メリクリウス財団】・・・・本日も世の悪意に苦しむ人々を救う為、大盤振る舞いで猫の手を貸すにゃ〜♪」
「はい、最善を尽くしましょう。ユカリさん、魔物が目撃されたと言う現場は何処ですか? 私、最短ルートを算出します」
「助かる〜。んっとね、アッチの山の方」
ユカリが指さしたのは、牧場から少し離れた山の方、『大量破壊魔法』の被害があったのか、僅かに崩れていた。
「どうも昨日の大爆発のせいで地盤が崩れて、地中にあった魔物の巣が露出しちゃったっぽい?ソレで、休眠してた魔物達が暴れ出してるみたいね。その1部が、牧場の近くまで迫ってきてる感じ。他の魔物め刺激されて、かなり気が立ってるわ」
「う~む。下手をすれば、魔物がまた大暴れしちゃうにゃ。どうするかにゃ〜、臭い匂いは元から断つのが基本だけど。魔物の種類と数によっては、アタシらだけじゃ太刀打ちできないにゃ」
どうすれ良いか皆で悩んでいると・・・・。
「ーーーーおほほほほ! 安心なさいっ、このわたくしが万事解決してあげますわっ♪」
突然、ユウキ達の真上からそんな声が響いてきた。
「「「!!!」」」
【メリクリウス財団】の3人が空を見上げると、飛空艇の上に堂々と立っている、サレンくらいの少女がいた。
令嬢らしいドレスを戦闘用にし、赤い長髪を白いリボンで結わえてポニーテールにし、中々に大きな胸元でふんぞり返り、その手には身の丈近くはある大剣を堂々と持っており、サレンがクールでエレガントなご令嬢ならば、コチラはダイナミックでゴージャスな雰囲気があるご令嬢ーーーー。
「げっ・・・・もう戻ってきたのね、『アキノさん』。相変わらず、自分の見せ場は逃さないわね」
そう。彼女こそ、【メリクリウス財団】のギルドマスターにして、大財閥『ウィスタリア家』のご令嬢、『アキノ・ウィスタリア』である。
「ふふ〜ん♪ この飛空艇なら、あっという間に何処にだって移動できますのよ! 流石に無理して動かし過ぎて、動力部がおシャカになりかけてますけど!」
「ソレ借り物でしょ、壊さないでね。ウチの経営状況だと、弁償とかできないわよ。飛空艇って1回飛ばすだけで一軒家が建つぐらいの値段がするんだから」
「ご安心を! 飛行テストも兼ねてますし我が家の私物ですし、料金は取られませんわよ? 流石に壊しでもしたら、お父様にコッテリ絞られるでしょうけど♪」
因みに、ユウキは前に聞いたが『飛空艇』自体の値段はペコリーヌの1日の食事代の1年分、ソレこそキャルが見たら目を裏返しにして泡を吹いて1週間寝込む程の値段なのだ(ペコリーヌは無責任に呑気に笑っているだろうが)。
「ともあれ、話は聞こえましたわ! この飛空艇には魔法兵器も積んでますので、コレで魔物の巣穴とやらを焼き払ってやりましょうっ♪ わたくしだけでは魔法の知識が無くて動かせませんので、ユカリさんか同乗して操作してくれません? ミフユさんとタマキさんは、討ち漏らした魔物を殲滅して下さい!」
「仕切らないで。でもまぁ、悪くない作戦だわ。ただまぁ、魔物はまだ悪さをしている訳じゃないから、殲滅すべきじゃないわね。燻り出して、追い払えば良いから」
「あら、お優しいですわね?」
「効率の問題よ。魔物は種類によっては、独自のネットワークを持っていて・・・・同族を殺されたら、いつまでも怨む。今は良くても、近い将来に報復されて牧場に被害が出るわ。追い払うだけなら、『こっちは危険だ〜』って遠ざかってくれるだけで済むでしょ。後先を考えなさいよ、いつも言ってるけど」
「ふふん。わたくしが考えなくても、ミフユさんが考えてくれるでしょう? わたくし達、互い互いを支え合う素敵なギルドですね! おっほほほほ♪」
「一方的に迷惑を被ってるだけよ」
「・・・・ふむ。随分と、効率の話をしますね、ミフユ様は?」
“ミフユさんは効率的な事が大好きだからね”
クセの強い笑いをするアキノを余所に、コッコロにミフユがどう言う人間かある程度話したユウキは、アキノと同じくらいに後先考えない人物に目を向けて声を発する。
“ーーーーと言う訳だからペコさん。追い払った魔物を追いかけて仕留めるのはダメだよ”
「分かってますよぉ。私だって、ちゃんと後先を考えてますから♪」
“「・・・・・・・・」”
ペコリーヌの呑気な顔で笑うが、その両目には『食欲』の2文字が宿っており、顔には『でも2〜3匹、いえ、お腹も空いてきましたから5〜6匹くらいは捕まえても良いですよねぇ』と、書いている事にユウキとコッコロは気付いていた。
“コッコロちゃん・・・・”
「はい主様。キャル様がいない以上、わたくし達がペコリーヌ様の暴走を止めましょう」
「んん??」
こと食料問題に関しては、全く信用されていないペコリーヌであった。
「・・・・まぁ良いわ、さっさと行動を開始しましょう」
「OK。アキノさ〜ん、縄梯子を下ろしてもらえる? 流石にその高さだと、ジャンプして乗り込むのは無理だから!」
ユカリがアキノに向かって大声でそう言った。
「あっ、そうですわね? ごめんなさいね。わたくしったら、いつも肝心な事を忘れちゃいますの!」
「ううん。誰にだって、ミスやウッカリはあるから♪」
素直に謝罪するアキノに笑みを浮かべてそう返したユカリは、アキノが下ろした縄梯子を使って飛空艇へとよじ登って行った。
「んっと。じゃあアタシらは、地上で炙り出された魔物への対処だにゃ〜。ユウキ達も、アタシらと一緒に来るにゃっ♪ 猫も意外と嗅覚が発達してるにゃ、魔物の正確な居場所を探り当てるにゃ〜♪」
そう言いながら、タマキは軽く柔軟運動を始める。
「最近机仕事ばっかりでストレスが溜まってたし、たまには野っ原で大暴れするにゃっ!」
“うん、頑張ろう”
「その意気にゃ! 一緒に頑張るにゃ〜、ユウキ! えいえい、にゃおお〜ん!」
『偽者のユースティアナ』、『仮面ライダーカリバー』への対策は今は取り敢えず置いておき、【牧場‹エリザベスパーク›】の為にできる事をしようと思うユウキであった。
「よぉし、私達も張り切っていきましょう。【メルクリウス】の皆さんの、足を引っ張らない程度に♪」
「はい。しかしまぁ結局、いつも通りのドタバタ騒ぎになってまいりましたね。ふふ、もう慣れたというか、わたくし何だか楽しくなってまいりました・・・・♪」
コッコロもコレまで多くの経験を積んできた成果か、この状況を寧ろ頼んでいるようであった。