聖刃コネクト!   作:BREAKERZ

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ここからはかなりはしょっていこうと思います。


囚われの誓約女君‹レジーナゲッシュ› エルフの集落での出会い

ークリスティーナsideー

 

ここは『王都ランドソル』の王城の地下牢獄の牢屋。

本来ならば罪人を閉じ込めておくその場所に、あまりにも似つかわしくない豪奢な女性が、不機嫌そうにそのお粗末なベッドに横たわっていた。

 

「ーーーーふん。気に食わないな、何もかもが」

 

【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】の副団長、クリスティーナ・モーガンであった。

『偽者のユースティアナ』が放った『戦略級の大量破壊魔法』の直撃を受けて、命があっただけでも儲け物と言うものだが、こんな退屈な牢屋に押し込められて不機嫌になっているのだ。

 

「しかし・・・・どうして、私は助かったのだろうな?」

 

退屈しのぎに、『戦略級の大量破壊魔法』が放たれたあの時に、何があったのか冷静に思い返してみた。

ーーーーあの『陛下』が、本気で始末するつもりで放った魔法を、生半可な防御と回避では『絶対』に不可能であると確信していた、が・・・・自分はこうして生きている。恐らく、『聖剣を集めているボウヤ』も、『本物のユースティアナ』も生きている筈でであろう。

 

「『絶対』、ね。ふん・・・・所詮は陛下であっても、『絶対』などあり得ないって事か。つまらないな。やはりこの世には、『絶対』等というものは存在しないのか」

 

『絶対』と言う言葉に強いこだわりを持つクリスティーナは、少し落胆したように肩を落とすが、改めてあの時何が起こったのかを思い返す。

ーーーー覚えている限りでは、『陛下』が放ったのは『戦略級の大量破壊魔法』。『絶対防御』を持つクリスティーナでも当たれば蒸発していた筈。あの場には他にも異様な気配を持った奴らがいた。特に、最後に出てきた赤い髪の女、『ラビリスタ』だったか、彼女が何故か無性に気になる程に、只者ではなかった。

そう言えば、あのラビリスタは『ノウェム』と言う小汚い小娘から、『何か』を受け持っていた。『王冠の形をしたブローチ』に見えた。確かオクトーが自慢気に見せていた気がしたが、賊に盗まれたから探していると言っていたが、どうやら繋がっているようだ。あのブローチが重要な代物だと最初から知っていれば、手元に置いてけば良かったと、少し悔しく感じる。オクトー自身も『独自の能力』を持つ天才である。あのブローチを彼が開発したか、誰かから譲り受けた秘宝なのかと思い、牢屋から出たらオクトーに問い詰めようと考えた。

そして、あの『ラビリスタ』と言う女が、ブローチを手にして『陛下』が放った『戦略級の大量破壊魔法』が直撃した瞬間に、『何か』をした。

ノウェムと一緒にいた『ラジラジ』と言う色黒の男に、ラビリスタの手が触れていたが、ソレも関係あるのだろう。何故ならその瞬間ーーーー“時空が捻れたのだ”。

そんな形容し難い感覚があったのだ。そして自分達の周りは輝きに包まれて、何処かに繋がった。

その時、『ラジラジと全く似た声』と『老いぼれた男の声』が聞こえた気がした。何故か懐かしい感覚があった。まるで夢のような出来事である。

そして気がつくと、クリスティーナは王宮の自室にいた。瞬間移動でもしたのか、どう言う理屈なのか、何故自分は自室に飛ばされたのか、他の連中はどうしたのか、全てが謎である。

今にして思えば短絡的にも、『陛下』に仕返ししようと玉座の間に進撃し、警護の騎士団と激突し、団長‹ジュン›とその精鋭によって、クリスティーナは取り押さえられ、現在に至る。危険な政治犯等を収監させる為に、秘密裏に存在する王宮の牢獄。何重にも脱獄を防ぐ仕組みがあり、今クリスティーナがいる監獄も、彼女の『能力』、『絶対攻撃』を熟知する『陛下』が特別に『防御策』を施してあり、流石のクリスティーナでも脱出できないでいた。

 

「ーーーーふん、良いさ。色々あってくたびれたし、少し休もう・・・・この世に『絶対』はない。私がその気になれば、こんな牢獄はいつでも脱出できるだろうよ」

 

そう言って、眠ろうとするクリスティーナはボソッと呟いた。

 

「・・・・陛下、どうして、私を殺そうとしたの・・・・?」

 

慕っていた相手から殺されそうになり、クリスティーナは自分でもらしくないと思いながらも、辛そうに涙を流しそうになった。

その時ーーーー。

 

「ーーーーおい」

 

「・・・・!?」

 

すぐ隣から聞こえた声に、クリスティーナは飛び起きながら涙を拭って、その声の主に目を向けると、ノウェムと言う小娘が憮然とした顔でソコに立っていた。

 

「貴様、確かノウェム・・・・だったか? 何処から入ってきた?」

 

「ふふん。ちょっと『裏技』っぽいけど、ウチのラジラジは『空間跳躍』って技が使えるからさ。どんな場所にでも、自分と後1人ぐらいは送り込めるんだ。アイツは今、力を使い果たしかけてるから・・・・アタシを此処に送り込むだけで、もう大分限界だったみたいだけど」

 

「ふむ・・・・その『空間跳躍』とやらで、私達は『陛下』の『大量破壊魔法』も回避したのかもな」

 

泣いているのを見られてなかったようで少し安堵したクリスティーナは、いつもの調子で話に応じる。

 

「『陛下』がそんな回避策を、予想していなかった訳がないだろうに」

 

「ん〜、そう言う難しい事は知らん。あの赤い奴・・・・ラビリスタってのが、何かしてラジラジを強化したっぽいけどな。まぁ、要するに、コッチが、一枚上手だったって訳だ。ともあれ、アタシ今ちょっと訳があって、【ラビリンス】の連中と行動してるんだけど。お前も、良かったら合流しないか?」

 

「・・・・は?」

 

突然ノウェムから言われた言葉に、クリスティーナは思わず間の抜けた声を漏らした。

 

「もしかしてお前、私を『仲間』として勧誘しに来たのか? その為に。態々奇跡みたいな方法で、この牢屋の中に忍び込んだと? このクリスティーナを仲間にしたいと見込んだ、その慧眼は褒めてやろう。だが、理解できんな。私は自分で言うのも何だが、首輪を付けられない狂犬だぞ」

 

「分かってる。コッチとしてもお前みたいな危険人物は、仲間にしたくないんだけど・・・・アタシはお前に、結構世話になったからな」

 

ノウェムの言葉に、クリスティーナは訝しげに眉毛を寄せる。

 

「? 初対面の時から、そう言う口ぶりだったが・・・・私はお前と、昔会った事があるのか? 正直、お前のような小娘を、世話した覚えが無いのだが?」

 

「忘れちゃってるんだよ、お前も。昔の事を、【ラウンズテーブル】の事をさ・・・・」

 

少し物寂しげに言うノウェムから出た【ラウンズテーブル】と言う名前に、妙に引っかかりを感じるクリスティーナ。

 

「今のお前に言っても仕方ないけど、昔アタシ達は仲間だったんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そしてクリスティーナは・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ーユウキsideー

 

ユウキはその頃、アメス様に呼ばれ、夢の世界へと赴いていた。

 

「はい、お疲れ様。ふふ。今回は比較的、平和だったわね。一安心ではあるけど。前回は打ち切り漫画の最終回、みたいな急展開だったのに落差が激しいわ。まぁ、アンタの知らない所では・・・・結構重要な出会いや、驚くべき進展開があったみたいだけど。ともあれ今回、アンタの周りが平和だったのには理由があるわ」

 

“理由?”

 

「どうも、アンタの最大の敵である『ユースティアナ』が・・・・前回、『大量破壊魔法』を放ったせいで魔力が底を突いて、回復するまで動けないみたいなのよね。同時に【ラビリンス】の首魁、ラビリスタも意識不明になってて・・・・敵も味方も大物が動けず膠着状態、冷戦状態の睨み合いみたいな感じになってるっぽいわ」

 

どうやら、あの『偽者ユースティアナ』は動けないようで、少しホッとするユウキだが、アメス様は気が緩みそうになるユウキに声をかける。

 

「だからって、油断しちゃダメよ。敵が動けない内に、できる限り次の展開に備えておきなさい」

 

“う、うん・・・・”

 

聖剣の力の引き出し、『ライドブック』をより使いこなせるようにする。更にはユウキ自身を鍛える。やる事は山積みである。

 

「ともあれ。今回の出来事における重要なトピックスとしては、ペコリーヌちゃんの正体があるわよね。いやぁ、アタシも初めて聞いた時は驚いたわよ。何となく浮世離れした変な子だと思ってたけど、まさかお姫様だとはね」

 

“・・・・本当なんだよね?”

 

「ええ。事実よ。彼女は間違いなく、本物のお姫様だから。冗談みたいな話だけど、事実は小説よりも奇なりよね。でも現在の彼女は、『ユースティアナ』によって立場を奪われてるのよね。どう言う手段が用いられてそんな状態になってるのかは、良く分からないけど。以前の『ユースティアナ』は、世界の法則・・・・みたいなのを弄くって色々悪さをしてたわ。他者の立場を乗っ取ったりとか、ね。今回も、同じような真似をしてると推測できるわ」

 

どうやら、以前からペコリーヌにしていた事をやっていたようだ。

 

「この状態を覆してペコリーヌちゃんが立場を取り戻す為には、敵と同格の『神様』みたいな存在の助けが必要よ。実際、常識外れの『裏技』が使われてるからね。神様にしか不可能な奇跡を悪用して、『ユースティアナ』は好き放題に振る舞ってる訳。その野望を阻む為には、同じような神様の力が必要よ」

 

“『神様』・・・・か”

 

「アンタが過去に遭遇した『神様』には、頼れないわね。『この世界』における神様の名前は、『七冠‹セブンクラウンズ›』。だから今後アンタはそんな『七冠‹セブンクラウンズ›』を探して接触して、仲間に引き入れるべきだと思うわ」

 

“『七冠‹セブンクラウンズ›』・・・・”

 

確か、『偽者のユースティアナ』の口からも聞いた気がした。

 

「もう既に、アンタと面識がある『七冠‹セブンクラウンズ›』も何人かいるしね。接触するぐらいなら、左程難しく無い筈よ。ただ当然・・・・敵も自分と同格の『七冠‹セブンクラウンズ›』に動かれると目障りだからって、手は打ってくると思う」

 

“じゃあ、あの『大量破壊魔法』を使ったのも・・・・”

 

「ええ。まとめて『七冠‹セブンクラウンズ›』を殺そうとしたのね」

 

“・・・・クリスティーナさんに、ラジラジって人と、ラビリスタって女の人が、『七冠‹セブンクラウンズ›』?”

 

あの場にいた面々で、ユウキとペコリーヌてノウェム意外の面子を思い出した。アメス様も肯定を示すように頷く。

 

「うん。彼らは、今は色んな経緯で【ラビリンス】の庇護下にいるみたい。だから、まずは【ラビリンス】と接触するのが良いかもね。後今回、チラッと名前が出てた『ネネカ』って子も『七冠‹セブンクラウンズ›』よ」

 

“やっぱり・・・・”

 

ユウキは、以前会ったピンクに染め上げた小さな女性を思い返していた。

 

「機会があったら接触してみなさい。どうやら、あの子もアンタに『渡したい物』があるようだし。まぁ先ずは牧場の復興を手伝ったりとか・・・・やる事やってから、だけどね」

 

“そうだね”

 

「うん。アンタは暫く、牧場の復旧をお手伝いする事になるから。頑張ってね。人の助けになる、アンタらしくて尊い仕事よ。人に優しくすれば、きっと報いがあるわ。ううん、ソレがアンタの『正義』であり、アンタの『強さ』そのものよ。記憶喪失のアンタも、ソレだけは忘れてないみたいで幸いだわ」

 

アメス様は、とても良い笑顔でそう言った。

すると、『夢の世界』が光に包まれる。

 

「さて、ネネカだけでなく、【ラビリンス】からもアンタに『渡したい物』があるようね。例えコレからどんな戦いが待っていようと、アンタはアンタの思いを貫いて一味違う音を響かせてみてね。それじゃ、ボンヌ・レクチュール。よい読書を♪」

 

ユウキの視界が真っ白な光に染まった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

「こちらです、ユウキさん。後えっと、コッコロちゃんも。足場が良くないので、転ばないように気をつけて下さいね」

 

「恐縮です。わたくしは森歩きにも慣れておりますので、問題ありませんけれど」

 

休憩がてら仮眠していたユウキが起きて、シオリに案内されながら、森の中をコッコロと共に歩いていた。

元々森育ちのコッコロと違い、ユウキはほぼ獣道の森の中を歩き辛そうに進んでいた。

 

「主様は、ご注意下さい。宜しければ、手を引きましょうか」

 

“ありがとう”

 

「いえ、お礼など。如何なる時も、おはようからおやすみまで、主様のサポートをするのがわたくしの『役目』でございます」

 

見兼ねたコッコロが手を差し出すと、ユウキはその手を取ってお礼を言うが、コッコロは少し頬を赤くしつつ、コレが自分の『役目』と言った。

 

「ふふ。はい、ギュウと手を握って下さいまし・・・・♪」

 

「ーーーーお二人は仲良しですね。良いなぁ、『家族』みたいで」

 

「良く言われます。わたくし達は単なる主従関係ですのに、『兄妹みたいだね』とか『親子みたいだね』等と。わたくしも・・・・偶にウッカリ、主様の事を『お兄ちゃん』とか『パパ』とか呼びそうになります。甘えん坊さんっぽくって、自分が恥ずかしくなります////」

 

「良いんじゃないですか。コッコロちゃんは、まだちっちゃいんだし・・・・」

 

仲睦まじいユウキとコッコロを羨望の眼差しで見るシオリ。コッコロはユウキに甘えそうになる自分を恥ずかしいと言うが、シオリは優しく諭した。

 

「ーーーーおっと、『エルフの集落』が見えてきましたよ」

 

と、シオリが『目的地』が見えてきたので指差した。

 

「おぉ・・・・わたくしの地元のソレとは、やはり趣きが違いますね。枝族によっては文化が違う、とは聞いておりましたけど」

 

「そうなんですね。コッコロちゃんの故郷って、どんな感じなんですか」

 

「ふむ・・・・説明が難しいですが、もうちょっと四角四面と言うか。清潔ではありますが人情味が薄いと言うか、全体的に冷え冷えとしております。位置的にも、ここよりずっと北部ですしね、寒いのです。この『エルフの森』は、生の自然そのままと言う感じで・・・・好ましいです。生命力に溢れた環境ですね」

 

コッコロは『エルフの集落』を見渡しながら笑みを浮かべる。

 

「それに見た所、先日の『大量破壊魔法』による被害も全く無さそうです。爆心地になった山間に近かったので、心配しておりましたけれど」

 

「はい。だから様子を見る為に、こうして山登りをしてるんですよね。必要があれば『救援』等を送るつもりですが、先ずは実地調査です」

 

“案内役を引き受けてくれてありがとう、シオリちゃん”

 

そう。何故牧場近くに現れた魔物を追い払う為に【メルクリウス財団】と共に向かった筈のユウキとコッコロが、シオリと共に『エルフの集落』にやって来たと言うと。

『大量破壊魔法』の爆心地である山間の近くであった為に、被害が出ているのではないかと、その調査の為に『エルフの集落』に『姉』がいるシオリが案内役を頼み、同じエルフ族のコッコロ、そして2人を心配してユウキがやって来たのだ。一応ペコリーヌが食欲に暴走して逃げようとする魔物を追わないように、ミフユとタマキ達にペコリーヌを見張っておいて欲しいと頼んでおいてある。

 

「ふふ。ここの集落では、私のお姉ちゃんが暮らしてますので・・・・距離も近いし頻繁に行き来するから、私め道には慣れてるんです。私は【牧場‹エリザベスパーク›】の警備や、狩猟の為に良く森を歩きますしね。案内役なら、任せて下さい。牧場の復興作業を手伝って下さった、その恩返しになれば良いなと思います。ソレに私も、『お姉ちゃん』の安否が気になってましたし」

 

“(・・・・『あの子』もだけど、『ミサト先生』に『アオイちゃん』も、無事だと良いな。まぁ、『アオイちゃん』はそう簡単にどうこうなる事は無いと思うけど)”

 

シオリが『姉』を心配しているように、ユウキもまた、『シオリの姉』だけでなく、知り合いの『保育園の先生であるエルフ』を心配し、『コミュ障のエルフ』の事を心配しているが、無事だと妙な確信を持っていた。

 

「・・・・相変わらず『大量破壊魔法』のせいで、魔力が乱れているらしくて・・・・『通信魔法』も繋がりませんしね、実際に現地に行くしか無かったですし」

 

「・・・・むっ? 少々お待ち下さい、何か『不可解なもの』が見えますよ?」

 

空を見上げたコッコロが険しい顔で言うと、シオリは弓を構え、ユウキは速さのある『風の聖剣 風双剣翠風』を召喚する。

 

「コッコロちゃん、下がって下さい。コレも魔力の乱れの影響か、奇妙な魔物の目撃情報が増えてるんです。複数の魔物が合成されたような、おかしな魔物がウロウロしてるみたいです。危険な魔物に襲われたら大変ですし、私が弓矢で牽制し、ユウキさんが『風双剣翠風』で斬っちゃって下さい」

 

“(コクリ)”

 

普段は大人しく優しいが、『やる時はやる性格』をしたシオリの冷徹な言葉に、ユウキも『剣士の目』になって小さく頷く。

が・・・・。

 

「いえ、どうも魔物でないようですよ。何でしょう・・・・? 誰かが不自然に、“宙を浮いてるような”?」

 

“「えっ?」”

 

コッコロの言葉に、ユウキとシオリも空を見上げるとソコにはーーーー。

 

「ーーーースヤスヤ・・・・」

 

足の生えたピンク色の塊、否、ピンク色の長髪をした誰かが、“宙を浮いて横になって寝ているのだ”。

『浮遊魔法』なんてあるから人が空を飛ぶのは別に不思議ではないのだが、『浮遊魔法』はかなり集中力が必要となる魔法なので、寝ながら飛ぶなんて普通はできないのだ。

 

「・・・・う~ん、スヤスヤ・・・・」

 

その人物が寝返って、その顔をユウキに見せた。すると。

 

「お姉ちゃん!?」

 

“『ハツネちゃん』?”

 

「えっ? あの方がシオリ様のお姉様なのですか? 何故空中に浮かんでいるのでしょうか? 魔法でしょうか?」

 

「スヤスヤ・・・・」

 

驚くシオリ達を余所に、シオリの姉、ハツネは可愛らしい寝顔をしながら安らかに眠っていた。

その衣装は星のアクセサリーが散りばめられ、魔法使いらしいフリフリとした服装である。

 

「確かに服装は、魔法使いのソレですけど・・・・」

 

「いや、う~ん、説明は難しいです・・・・。お姉ちゃん、偶に寝惚けて空を飛んじゃうんですよね・・・・。困った人なんです。その分、他人にはない『特別な力』を持っているんですけど・・・・」

 

ユウキは知っている。ハツネには『魔法』とは違う『特別な力』があり、ソレを使用すると宙を浮かびながら寝てしまうのだ。そして、ハツネ自身はその『特別な力』の事を秘密にしている。ソレを知っているのはユウキの知る限りでは、妹のシオリだけである。

 

「ーーーーお姉ちゃ〜ん! 起きて〜!!」

 

シオリが必死に空で寝ている姉を起こそうと大声を上げる。

 

「スヤスヤ・・・・」

 

「シオリだよ〜! お姉ちゃ〜ん!!」

 

「・・・・うっ、う~ん・・・・はにゃ? う、う~ん・・・・!! あ、あれ? しおりんの声が聞こえた気が、する・・・・」

 

漸く起きたハツネが下を見ると、森の木よりも高い位置にいた事を自覚した。

 

「・・・・え”っ!? うわぁああああ!? 何で私空中にいるの!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! たぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

狼狽えるハツネは重力の法則に従って落下した。

 

「危ない!」

 

“『翠風』!!”

 

ーーーービュォォォォ!!

 

「えっ!?」

 

「あっ!」

 

コッコロが叫ぶと同時に、ユウキは風双剣翠風を使って、緑色の風に乗って低空飛行しながらハツネよ落下地点まで飛んだ。

 

「うわぁぁぁぁ・・・・あ、あ!!」

 

ハツネが目を開けると、緑色の風を纏って自分をお姫様抱っこで受け止めたユウキの顔を見た。

 

“ハツネちゃん、大丈夫?”

 

「っ!////」

 

ハツネは一瞬顔を赤くするが、すぐに元に戻す。

 

「・・・・お〜、ビックリした! 死ぬかと思ったよ〜♪ あれっ、ユウキくんだ! 私を受け止めてくれたんだね、ありがとう〜☆」

 

「その方、シオリ様のお姉様ですよね。普通に、やはり主様のお知り合いなのですか・・・・? 主様は行く先々に、仲良しの女の方がいらっしゃるのですね」

 

コッコロはまた呆れたような視線を向けると、ハツネはユウキ達を見回す。

 

「えぇっと? ユウキくんにシオリンに、知らない子! どう言う面子なの? ええっと・・・・皆は、エルフの集落に何か用事かな? 良く分かんないけど、歓迎するよ! 今はちょっと他の皆は、近所で起きた大爆発の調査の為に出払ってるんだけどね〜♪」

 

“ソレで、ハツネちゃんは何でいるの? お留守番?”

 

「うん! 集落を無人にする訳にはいかないし、私はお留守番してるんだ! ていうかシオリン、大丈夫だったの? 爆発はこの近所だったし、何か大量の魔物が暴れたんでしょ? 牧場の方に火の手が上がったり、緑色の竜巻が起こったりしてさ、肝を冷やしたよ〜?」

 

ハツネもこの集落から牧場の異変を知り、シオリを心配してギルドの仲間達と魔物を蹴散らしながら向かって行ったそうだが、既に〈仮面ライダー剣斬〉に変身したユウキと共に避難した後だったので、牧場はもぬけの殻であり、ソレを知らない上に『通信魔法』を使えなかったものだがら、ハツネは生きた心地がしなかったと言った。

シオリは〈ランドソル〉に避難していたと伝え、今は牧場の復興作業をしていると伝えた。

 

「シオリ〜ン! 無事で良かったよぉ・・・・♪」

 

「あはは、心配かけてゴメンね、お姉ちゃん。大丈夫だよ。お姉ちゃんも、怪我1つないみたいで安心した・・・・♪」

 

最愛の妹を力いっぱい抱き締めるハツネ。そして最愛の姉を優しく受け止めるシオリ。姉妹仲睦まじい美しい光景がその場に広がったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーペコリーヌsideー

 

 

そしてその日の夕方。

戻って来たペコリーヌとアキノ達は、サレンと合流した。

 

「はふう。漸く、人心地付けそうですね。牧場の周りを彷徨いていた魔物は、取り敢えず追っ払えましたし」

 

飛空艇の過剰な位の火力で魔物を追い払う事ができたが、機体にトラブルが起こって墜落し、危うく死にかけ、ユカリなど「もうヤダこのブラック企業‹ギルド›」とボヤいている程である。

ボヤくユカリを宥め、ミフユは飛空艇の墜落に巻き込まれた他の人達の手当てを頼んだ。そしてタマキは、結果的に人的被害は無く、このまま問題が無ければ、牧場の復興は1週間で終わるから取り敢えず一件落着と言った。

 

「お疲れ様〜。【メルクリウス財団】や他の皆が復興作業に協力してくれたお陰だべ。どれだけ感謝しても足りねぇ、あんがとな♪」

 

と、マヒルが皆を労い、感謝の声を上げた。

 

「お礼なんて! コレも高貴なる者の義務ですわっ。そうでしょうサレンさん♪」

 

「うん、ソレはそうね。あ〜・・・・もうくたびれたわ。でもまぁ、皆無事で何よりよ」

 

アキノは当然の事をしたまでと言い、サレンもソレに同意しながら、全員の無事を安堵しながら、ペコリーヌに向き直った。

 

「えっと、ペコリーヌさん? コッコロとユウキが戻ってきたら・・・・日が沈む前に、【サレンディア救護院】に一緒に戻りましょ。子供達が、心配してるだろうし。まだ復興作業が完全に片付いていない牧場に、厄介になるのも迷惑だしね。日が沈むと、山道を歩くのには難渋するから」

 

「了解です〜。お世話になっちゃいます、サレンさん」

 

サレンと話をしたペコリーヌは、ユウキ達が何処に行ったのかを説明する。

 

「ユウキくん達は・・・・えっとシオリちゃんって子のお姉さんがいる、エルフの集落に向かったんですよね。私も一緒に行きたかったんですけど、魔物の対処をしなくちゃいけなかったし・・・・ホント思ってた以上に強力な魔物で、相手するのは大変でしたよ」

 

「・・・・でも実際、ユウキくんから聞いていたけど、ペコリーヌさんの監視が1番大変だったわね?」

 

「全くにゃ。追い払った魔物を追撃しようとして、何度も釘を刺したか分からないにゃ。獣人‹ビースト›のアタシが言うのもにゃんだけど・・・・まるで空腹に飢えたケダモノのようなオーラがあったにゃ」

 

ユカリとタマキは、涎を垂らしながら、逃げ惑う魔物達を追いかけようとするペコリーヌを制止するのが1番大変だったとボヤいていた。

しかしふと、ミフユはある『疑問』を皆に向けて話す。

 

「ちょっと気になるのだけど。今回、牧場の周りを彷徨いてた魔物・・・・何だか、見た事のないおかしな造形をしてなかった?」

 

「えっ、そう? よく見てなかったから分かりませんわっ、おほほほほ♪」

 

「アキノさんには聞いてないわ。何だかこう・・・・“複数の魔物を合成させたような”、奇妙な形状をしていたわよ。アレも『大量破壊魔法』の影響で生まれた、新種の魔物かしら?」

 

魔力が乱れたり、強力な破壊魔法を受けると、稀に生態系影響が出て、珍種の魔物が跋扈するとミフユは皆に伝えた。

が、

 

「いや・・・・あぁ言う魔物は、稀にだけど牧場の周りで見掛けた事がある。『大量破壊魔法』が直撃する、以前からな。年に数回あるかないか、って頻度だけど」

 

「ふむ・・・・この近所に特有の、変種って感じかにゃ? ユウキと一緒に戦った『メギド』って魔物もそうだけどにゃ。珍しい魔物や動物は高値で売れるにゃ。捕獲しとけば良かったにゃ」

 

「またそんな・・・・生きてるものを売り買いするのは、私は何だか気が咎めるけどなぁ。管理するのも大変だしね、商売にはならないんじゃないかしら」

 

マヒルの話を聞いて、タマキが『商売人の目』になるが、元聖騎士であるユカリは現実的な意見も交ぜて否定する。

 

「ふむ。突然変異は大抵の場合、環境に適応できずにすぐ絶滅するわ。保護をする必要はあるかもね。研究材料として有用だろうし、研究所とかに高値で売れるかも。勿論、『メギド』みたいなのなら撃破して、ユウキくんに『本』を届けようと思うわ」

 

【メルクリウス財団】の何でも商売にする性質に、サレンは逞しい連中だとボヤいた。

と、その時。

 

「皆さ〜ん! 遅くなってすみません、只今帰参致しました♪」

 

と、コッコロの声が上げ、ユウキとシオリが戻って来た。

 

「あら、ユウキ達が帰ってきたみたいね」

 

「オイッス〜! ユウキくん達、お帰りなさ〜い♪」

 

“ただいま〜。皆と仲良くしてた?”

 

「えっ、お父さんみたいな事を言いますね・・・・? ちゃんと和気藹々としてましたよ〜、ご心配なく♪」

 

“・・・・・・・・”

 

ユウキの言葉にペコリーヌがそう笑顔で返答し、ユウキとコッコロはチラッとミフユ達を見ると苦笑していたので、やはり少し迷惑をかけていたと思い、ミフユ達に向けてペコリと頭を下げた。

そしてそんなやり取りに構わず、ペコリーヌが声を上げる。

 

「えへへ。エルフの集落どんな感じだったんですか? 皆さん無事でした?」

 

「はい。お姉ちゃんも元気そうでした。一安心です」

 

“集落の被害も、全く無かったみたいだよ”

 

「『大量破壊魔法』は・・・・不自然な程に限定的な範囲のみ、被害をもたらしてますね」

 

「そうですか〜。『大量破壊魔法』が炸裂した前後には、周囲に結界が張られてたみたいですしね。必要以上の範囲には、破壊力も吹き荒れなかったんでしょう」

 

シオリ達の報告を聞いてペコリーヌは安堵し、更にコッコロは、ハツネから『耳寄りな情報』を聞いており、それを話した。

曰くーーーー『大量破壊魔法』が炸裂する前に、ソレを事前に予知し、エルフ達に警告していた『占い師』がいたとの事。その人物のお陰で、集落は最小限の被害で留められたようである。『大量破壊魔法』、魔物の大暴れ、ソレラにも対処する事が出来たとの事である。

勿論、最初は怪しい話であり、半信半疑であったが、実際に『大量破壊魔法』が炸裂してしまい、牧場の人達にも情報共有しておけば良かったと、ハツネは悔いていたようである。

 

「『占い』? 確かに怪しげな話ね。本当に未来を予知したって言うなら凄いけど。『未来予知』なんて、どんな魔法でも不可能な『奇跡』よ」

 

「う~ん、気になりますね。ちょっと、詳しく聞きたいです」

 

サレンが胡乱げな顔となるが、ペコリーヌは興味を持ったようで、ユウキとコッコロに話しかける。

 

「ソレこそ、『大量破壊魔法』を放った『あの男』は、私から全てを奪った、『ユースティアナ』は・・・・度々未来を予知していた、としか思えないような行動をしていたんです」

 

ソレはユウキにも心当たりがあった。セイバーとなって、〈仮面ライダーカリバー〉となった『ユースティアナ』と戦っていた際、ヤツはまるで、コチラの攻撃全てを予知していたように回避していたのだ。

 

「その『占い師さん』とやらは、『あの男』と同じ力を持っているのかも? 繋がりがあるのかも知れません。調べて見る必要がありそうですね。少なくとも本当に未来予知が出来るなら、次に『あの男』が何を仕掛けてくるか分かるかも。あの人今は弱っているみたいですけど、全く油断できませんしね。もう2度と、被害を出さない為に・・・・誰かが泣いちゃうような展開にならないように、準備はしておくべきだと思います」

 

ペコリーヌの言葉に頷き、反撃の手段を得る為にも、その『占い師』の元へと向かう事に決める。しかし、今日はもう遅いので、明日にするのであった。

 

“(『占い師』・・・・まさか、あの子かな?)”

 

ユウキは『知り合いの女の子とその父親』の事を思い浮かべながら、コッコロを後ろに座らせた『ディアゴスピーディー』に乗り、ペコリーヌとその後ろに座るサレンが乗る『ライドガトライカー』と共に走り、【牧場‹エリザベスパーク›】の皆と、【メルクリウス財団】の皆と別れたのであった。

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