ーユウキsideー
“・・・・・・・・・・・・やっぱり反応しない”
【牧場‹エリザベスパーク›】の復興作業の手伝いから翌日。【サレンディア救護院】にて、ユウキは食堂で椅子に座りながら剣を持って瞑想し、『火炎剣烈火』を呼び出そうとしていたが、反応はなかった。
「あん。動かないで下さいまし、主様」
“ゴメンね、コッコロちゃん”
と、コッコロが後ろでヘアブラシを以てユウキの髪をとかしていた。
「〜・・・・♪」
“・・・・・・・・・・・・・”
ユウキが一応真面目に瞑想に戻るが、髪の毛を整えているコッコロの存在が和やかな空気を作っている。
「ふふ、御髪もお召し物も整いましたね。これで、いつでも出発できます」
「コチラも準備万端です! ていうかコッコロちゃん・・・・毎朝そうやって、彼に服を着せてあげたり髪を整えてあげたりしてるんですか?」
「いけませんか? 主様のお世話をするのが、わたくしの使命でございます♪」
「いけなくはないですけどね〜。何から何までやってあげると、彼が駄目人間になりそうで心配です。赤ちゃんみたいですね。て言うか王侯貴族みたい。えへへ、アナタの事を、『王子様』って呼んでも良いですか?」
ペコリーヌが問うと、コッコロは突然のように答えると、中々失礼な事を言う王女様であった。
“・・・・ソレはもう呼ばれてるから、普通に呼んで”
「えっ? そうなんですか?」
既に【自警団‹カォン›】のマホに呼ばれているので、遠慮するユウキ。
「と言うか。ペコリーヌ様こそ、本物の王女様なのでしょう? いつも身の回りの事は、召使いがやっていたのでは?」
「いや〜、ウチはフランクな家風でしたから。ちっちゃい頃はソレこそ蝶よ花よと育てられたんですが、物心付いてからは寧ろそう言うのも煩わしくって。『あの男』・・・・『ユースティアナ』は傲慢に、王様ぶってふんぞり返ってるみたいですけどね。偉そうにしてれば王族、って言う理由でも無いでしょうに」
“(でもあの人・・・・風格とか威厳とか威圧感とか存在感とかなら、ペコさんよりも王族っぽかったけど・・・・)”
ユウキは対面し、戦った『ユースティアナ』の事を思い浮かべ、失礼だがついペコリーヌと比べてしまい薄く苦笑してしまった。
と、話していると、サレンが食堂に入ってきた。
「あら。皆揃って、お出かけ?」
「あっ、はい。例の『占い師さん』とやらを探すつもりです。何でもユウキくんのお知り合いらしくって、結構簡単にお会い出来そうなんですよね」
「アンタ、ホントに顔が広いわよね・・・・ともあれ、一応何か分かったら、コッチにも報告して頂戴。同じ釜の飯を食う仲よ。足並みを揃えていきましょう」
サレンは【自警団‹カォン›】と【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】との会議に、イヤイヤながらも出席する事になっている。『大量破壊魔法』や『牧場の復興作業』、更には絶対に脱獄不可能な牢獄から、『クリスティーナが脱獄』し【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】は大混乱との事である。
ーコッコロsideー
サレンから、『転移魔法』に付いて色々と聞き、コッコロとユウキとペコリーヌは、件の『占い師』がいる場所へと向かう為に、ユウキが事前に頼んでいた『案内役』と合流する為に〈ランドソル〉の広間へと向かうと、相変わらずの活気に満ちていた。
「えへへ。昼時だからか、アチコチのお店から良い匂いがする〜♪ あぁ、お腹が空いてきちゃいました♪ ねぇねぇ、先ずは腹ごしらえといきません?」
そして、【サレンディア救護院】で昼食をとったばかりなのに、早速目的を忘れてフラフラと店に向かうペコリーヌの手をコッコロが引いて、呆れながら口を開いた。
「前から思っていたのですけど、ペコリーヌ様の胃袋には穴が空いているのではないですか?」
「いやぁ・・・・何があるか分かんないし、栄養を摂取しておきたいなって。何度か説明しましたけど、私の『王家の装備』は、カロリーの消費量が半端じゃないですから。“コレを脱ぐと、戦闘力が激減しますしね”」
「元々はお姫様何ですもんね。なのに最前線でガツガツ戦えるのは『装備』のお陰・・・・と」
ーーーーですがソレでは、“『聖剣』を使わないとマトモに戦えない主様と同じでありますね”。
と言う言葉を、コッコロは内心思いながらも呑み込み、話を続けた。
ーユウキsideー
話している内にペコリーヌは、屋台にフラフラと歩みそうになると、コッコロが思い出したように呟く。
「・・・・屋台飯、キャル様がお好きでしたね。暫く音沙汰がありませんが。あの方は大丈夫でしょうか」
既にユウキは、同じ【美食殿】の仲間であるキャルが、『ユースティアナ』と近しい間柄である事を2人に伝えている。
連絡も取れず、安否が気になる所である。王宮務めであるからサレンを通じて調べて見ると、出張で不在との事である。ソレも真偽が定かではないが。
「キャルちゃんも、おかしな因縁の渦の中にいる感じ。また皆で、仲良く一緒に食卓を囲みたいんですけどね」
と、その時ーーーー。
「・・・・おや?」
コッコロが、広場の中央を見ると・・・・。
「ーーーーきゃぁぁぁぁ!! 来ないで! 近づか寄らないでよ! バカバカバカー!!」
「パニクらないでお姉ちゃん。もう、そんなに強い魔物じゃないでしょう? 冷静に対処すればどうにでもなるから」
二人の女の子、ソレも背中に悪魔のような羽と悪魔のような尻尾を生やした容姿と格好が似ている双子のような女の子達が、その手に同じ槍を持ち、薄紫色で獣のような顔をした3匹のスライムと対峙していた。
『お姉ちゃん』と呼ばれた少女は来ないように喚き、妹の方は冷静になるように姉に言う。
「だ、だって、コイツの飛ばしてくる粘液に触ると、服が溶けるんだもん!」
と、姉が言うのと同時に、スライムの1匹が口から粘液を飛ばす。
「ひゃっ!?」
粘液が姉のスカートの部分を掠ると、その箇所からジュワ〜と音を立てて僅かに服が溶け、姉はその場に腰を落としてしまった。
「え、エッチ〜〜〜〜!!」
「わぁ! ソレは大変! その服結構なお値段してたのにね! よぉし! 『アカリ』が片付けちゃうね!」
そう言って妹、『アカリ』がスライムに向かって駆け出したが、その瞬間に3匹のスライムが粘液を飛ばしてきた。
「チョチョイのチョーイ!!」
が、アカリは軽やかに回避しながら槍を振り回し、スライムを2匹撃破し、姉を庇うように前に出る。
「はぁ~、はぁ~・・・・や、やったの? 魔物、やっつけた?」
「うん。ホントに弱い魔物だったよぉ、どうして町の中まで侵入してこれたのか不思議なぐらい」
〈ランドソル〉の王都は星型の城壁に守られた場所であり、騎士団もいるから、弱い魔物が簡単に入って来られる筈がないのだ。
「ん~・・・・近頃【王宮騎士団‹NIGHTMARE›】が、ちゃんと機能してないみたいだし、町の警備が、杜撰になってる感じね。今回は対処できたけど、もっと高位の魔物が侵入してきたら大惨事よ。全くもう、近頃何処もかしこもキナ臭くて、嫌になっちゃう」
「そうだねぇ、魔物が現れると・・・・地方によっては魔物の一種に見られる、アカリ達『魔族』の印象も悪くなるし」
双子の姉妹は、『アストライア大陸』で高い魔力を持つ種族、『魔族』である。しかし、魔族の中には角やら尻尾やら、魔物と同じ特徴を持っており、敬遠されがちな種族なのである。
昔は獣人‹ビースト›よりも迫害に近い扱いを受けていた事が歴史に記されていた。
「まぁ今は、そんな時代でもない筈だけどぉ」
「うん。ソレよりも、倒した魔物の後始末をしましょ」
そう言って姉は清掃を担当するギルドに連絡をし、代金は役所に払って貰おうとした。
アカリは『服だけを溶かす特殊粘液』を少し回収し、姉が消してしまえて言った。
“『ヨリちゃん』! 『アカリちゃん』!”
ユウキは、見知った双子の姉妹に近付く。
「ん? あっ、ユウキお兄ちゃん♪」
と、ソコで双子の姉妹もユウキの存在に気付き、顔を向けてきた。
『ヨリ』と言う姉と妹のアカリ。
灰色の髪をショートヘアにしたヨリと、小さなツインテールにしたアカリ、ヨリは服はピンク色で露出が少なく、アカリは紫色で露出が高い、顔立ちは全く瓜二つだか、ヨリはツリ目がちでアカリはタレ目がちであり、そして何よりーーーー神のイタズラと言える程の胸の大きさであった。ヨリは13歳と言う年齢に違わぬサイズだが、アカリはスズメと同じくらいの大きさをしていた。
「ーーーーいい加減にしてくださいね主様。世界中の女の子と顔見知りなのですか?」
あまりにも女性(しかも美幼女・美少女・美女)と交友関係が広過ぎる主に、とうとうコッコロも怒気を纏い始めてしまった。
「見ないでぇ! 不幸な事故で、お姉ちゃんの服が溶けちゃたのぉ♪」
「えっ、ユウキ? ちょっ、何でいるのこう言う時に限って! 私がピンチの時には、影も形もなかった癖にっ! そう言う処がムカつく!」
アカリは見ないでと言いつつ楽しそうに笑みを浮かべ、ヨリは身体を隠し、キャルのような物言いをする。
「賑やかですね〜。大丈夫ですか、お怪我等はないですか?」
「うん。お姉ちゃんが軽めの露出プレイをしちゃったせいで、社会的地位には傷が付いちゃったけどぉ? あぁん、お姉ちゃん! 可哀想・・・・♪」
「ちょ、ちょっと服が溶けただけだもん! 全裸で徘徊したみたいに言わないでよ〜っ!?」
あらぬ誤解を生みそうな台詞を言うアカリに、頬を赤く染めたヨリがツッコミを入れた。
「う~・・・・全くもう、とんだ災難よ」
「アカリ的には・・・・今時ラブコメ漫画でも見かけないようなものが見られて、ラッキーだったんだけど♪ ともあれ、待ってたんだよぉ、ユウキお兄ちゃん♡」
“僕達の方も、ヨリちゃんとアカリちゃんに会えて良かったよ。『シノブちゃん』に会わせてくれないかな?”
そう言って、アカリはユウキに抱き着くと、ユウキがそう返した。
「うん。『シノブさん』に用事があるんでしょ。取り次ぐよぉ、アカリ達同じ『ギルド』だから」
「あぁ、この子達が、『案内役』なんですね。『シノブ』・・・・って言う方が、私達の探している『占い師さん』ですよね?」
「うん。あの人割と気ままに、路地裏とかを徘徊しているからねぇ。会おうと思っても会えない場合があるんだけど、アカリ達が案内すれば確実に面会が叶うから。『シノブさん』、何を考えているのか分からない所があるけど、アカリ達同じギルドの仲間の事は、ちゃんと大事に思ってくれるみたいだし」
「ふん。ユウキには、いつもお世話になってるしね。仲間への取り次ぎぐらいはするわよ、感謝してよね。コッチよ、付いてきて」
ヨリとアカリが、『シノブ』の元へ連れて行こうとすると、ユウキが待ったをかけた。
“あっ、ヨリちゃん。『イリヤ』と『ミヤコちゃん』もいる?”
「ん? いると思うけど・・・・」
“それじゃ、お土産にプリンでも買っていこうと思うんだけど”
「あぁ、確かに。出かける時騒ぎそうになってたから、必要かも・・・・」
「それじゃぁ、大きめのプリンを10個くらい買っていけばいいね♪」
「おや? プリンが必要なのですか?」
「うん♪」
「良いですね! 私も何か買ってきま〜す!」
そして、大きめのプリンを10個と、ペコリーヌのご飯を買ってから、一同は『シノブ』のいる、ヨリとアカリが所属するギルドの拠点へと向かった。
◇
そして、到着したのは、〈ランドソル〉から離れたダンジョンのような古城であった。照明もなく、古城の窓や隙間から差し込む陽の光が、薄暗い古城の通路や部屋を、申し訳ない程度に照らしている。
なんでも、ヨリとアカリのリーダー的な人がこの古城を住まいにしており、ヨリ達も普段は別々に行動しているが、何かする時はここに集まっているとの事。そして『シノブ』がここに来るようにとヨリとアカリに通信魔法で指示したのだ。
ーーーーズズゥゥゥン・・・・。
すると、ユウキ達のいる古城の階層の天井からパラパラと欠片が落ち、更に地響きと言い争うような声が聞こえた。
“・・・・これ、『ミヤコちゃん』だね”
「多分そうね。『ミヤコ』のヤツが『ポルターガイスト現象』を起こしているんだわ・・・・」
「『ミヤコちゃん』ったら、プリンが不足しているからって激しいんだから〜♪」
「おや? 主様達のお知り合いですか?」
「うん。『ミヤコ』はウチのギルドの一員よ。ちょっとあからさまに変な子だけど、見ても驚かないでね」
「あはは。ウチはそんな感じの人ばっかりだよねぇ。『シノブさん』も、お喋りする骸骨を持ってるし。『イリヤさん』も、大人になったり子供になったりする、不思議な生き物だし。変な人が多い方が、アカリは楽しいけどぉ・・・・♪」
「うん。ちょっと変わってるせいで苦労したり、偏見を持たれたりしてきた人が多いから、どんだけ突飛な言動をされても、あんまり引かないでね」
ヨリとアカリも、『双子』と言う事で変な目で見られたりした事があり、彼女達のギルドはそう言う『はぐれ者』の集まりで、本来は俗世にあまり関わらないが、ユウキの頼みなら仕方なくもあるが、最近町の方もピリピリして居心地が悪く、少しでもソレが改善されるなら協力してくれるそうだ。
「ーーーーはい。町にも良くない空気が蔓延していますから、ソレをどうにかする為にも協力します」
“あっ、『シノブちゃん』”
「「えっ、この人(方)が?」」
と、その時、別の廊下の暗がりから、1人の女の子が現れ、ユウキが名を呼び、ペコリーヌとコッコロの声が重なった。
年の頃はユウキやペコリーヌと同じく若く、紫色のベリーショートヘアに、『魔族』らしく小さな角が生え、首には鎖付きの首輪を付け、『占い師』らしい衣装だが肩を丸出しにしており、物静かで落ち着いているが、何処か幸薄そうな儚げな雰囲気をしている、しめやかな美少女だった。傍らに、髑髏の形をした水晶を携えている
「あっ、シノブさん! んもう、暗がりから急に出てこないでよ〜?」
「ごめんなさい。視界が良くないので、せめて間接照明でも設置したいんですけどね。『イリヤさん』が、光を嫌いますから、私は暗いの、全然大丈夫ですし。ともあれ。皆さん、態々ご足労ありがとうございます。私が、『占い師のシノブ』です」
シノブの持つ独特で怪しげ、そして妙な気味の悪さが、本物らしさを出していた。
と、その時・・・・。
『ーーーーげっへっへ! 小僧〜、でかした! またぞろ綺麗所を用意してくれたじゃねぇか、そんなに俺を喜ばせたいのか!』
何と、シノブの傍らにあった水晶髑髏が、青い炎を放出しながらその目の形をいやらしく歪め、宙を浮いてペコリーヌの方に近づく。
『おっぱいの大きなお姉ちゃん、お名前は? ランチしない? オレ、良い店を知ってるんだよね!』
「ひぇ・・・・ががが、骸骨が喋った! 腹話術とかですか?」
「すみません。コレには父の霊魂が宿っていて、偶に喋るんです。お父さん。初対面の女の人に、あんまり馴れ馴れしく話しかけちゃダメ」
シノブに嗜められ、『ドクロ親父』は仕方なく引っ込む。
“シノブちゃん。『イリヤ』と『ミヤコちゃん』の喧嘩を終わらせてから話をしようか? プリンも買ってきたし”
「ソレは助かります。コレで、『ミヤコさん』もある程度落ち着くでしょうし、ユウキさんが仲裁に入れば収まりますね。2人共、アナタの言う事なら、聞いてくれると思いますから」
ーコッコロsideー
そして一同が古城の上の階層、玉座の間のような場所に到着するととソコにはーーーー。
「ひ〜ど〜い〜の〜! 絶対に許さないの〜! ミヤコのプリンを食べた輩は、地獄の釜で茹でられてしまえば良いの! プンプン!」
色素の薄い長髪をし、マフラーで首を隠している他に服の袖を余らせて手を隠しているアヤネやクルミ位の年齢の女の子が、宙を浮いているのだ。そしてこの女の子が、件の『ミヤコ』が頬を膨らませて怒りを顕にしながら、小さな瓦礫とかを浮かせて暴れていた。
「おおお、落ち着かんか痴れ者! 暴れるでない! 妾の城が崩れる!」
そう言って、ミヤコが投げる瓦礫を躱しているのは、小さな女の子であった。
雪のように白い肌と黒い長髪、ガーネットを嵌め込んだような美しい赤い瞳、口には小さな八重歯が生え、ゴシック調のドレスにコウモリの羽根のような装飾がされた黒いヘッドドレス。胸元やスカートに赤いバラのような装飾と黒いタイツを着けた露出の高い格好をした、コッコロよりも幼そうな女の子、ヨリ達のギルドマスター『イリヤ・オーンスタイン』である。
「ミヤコのプリンをイリヤが食べちゃったの! だからミヤコは怒ってるの〜!」
「わ、妾はプリンなど食べぬし! お子ちゃまじゃないので! 高貴な妾は、高貴な物しか食わぬ!」
「プリンを馬鹿にするの? プリンは世界の王侯貴族が認める高級食なの〜!」
「訳分からんキレ方をするでない! ち、近頃おかしな魔物が、妾の城に侵入する事が多くてのう? 大方、そやつらがプリンを食べてしまったのではないかの?」
「人のせいにしないの! 大体いつも、プリンをコッソリ食べちゃうのはイリヤなの〜! ソレに魔物が侵入したって言うなら、ちゃんと警備しておかなかったイリヤが悪いの! イリヤのせいなの〜っ、ミヤコの楽しみを奪ったの!」
「違うんじゃよ〜? 妾は悪く無いんじゃよ〜・・・・?」
ミヤコとイリヤの喧嘩、と言うか癇癪を起こしているミヤコをイリヤが必死に宥めようとしている。
“ーーーー何の騒ぎ?”
「む? おぉっ、ユウキ! 良い所にきたっ♪」
と、ユウキが声をかけると、イリヤは顔を喜色に染める。
「ミヤコを止めておくれ〜? この子ったら利かん坊てまのう、人の話を聞いてくれんのじゃよ〜?」
と、イリヤがユウキて話しているのを、ペコリーヌとコッコロがコッソリと話し合う。
「おぉ・・・・何か、ちっちゃい子達が喧嘩してますね」
「ふむ、不思議な雰囲気の子達でございますね」
「取り敢えず、先ずはイリヤを落ち着かせないと!」
ヨリの言うように、先ずはミヤコを落ち着かせなければならない。どうすればと考えると、アカリが閃いたように口を開く。
「ユウキお兄ちゃん〜? ちょっと、イリヤさんを抱きしめてあげて♪」
“分かった。任せて”
そう答えて、ユウキはイリヤを抱き締める。
「何じゃそりゃ!? ちょっ、やめんか! 気安く触れるでないっ、ユウキ!」
と、言いつつ抵抗もせずに顔を紅く染めるイリヤを、コッコロは目を少し細めてしまう。
と、その瞬間、イリヤの身体がポンッと光ると、その身体が大きくなった。
「うう〜? あっ、『元の姿』に戻れた! ふはは、力が漲ってきよるわ♪ やはりユウキに接触する事が、『引き金』になっているのかのう? 我が事ながら、理屈が分からぬのう?」
「『愛の力』だと思うよぉ、アカリは♪」
「おぉ? 見た目が変化した・・・・?」
「ソレだけではありません。内包する魔力も、桁違いに上がっています(・・・・ソレに、大きいです・・・・)」
ペコリーヌとコッコロが驚いた。
イリヤの姿は、幼い子供の姿から順調に成長し、ミフユやユカリくらいの成熟した大人の女性へと変貌し、更に存在感と威圧感、魔力、妖艶さも増した、正に魔性の美女へとなったのだ。
そしてコッコロは、ペコリーヌよりも大きく実ったイリヤ(大人)の胸元を見て驚愕した。いや、大きさで言えばペコリーヌも負けていないのだが、何やらペコリーヌのよりも存在感があるように感じた。
・・・・所詮、どれだけ大きくともペコリーヌはまだまだお子様な青い果実、イリヤ(大人)は熟した食べ頃の果実、と言った所であろうか。
「説明が難しいのですが・・・・イリヤさんは、ちょっと『特殊な体質』なんです」
「イリヤさんが元の姿に戻れたなら、ミヤコちゃんを取り押さえられるでしょ?」
“そうしたら、このプリンを見せて落ち着かせよう”
「ふむ。仕方ないのぅ。ミヤコの霊体を傷つけぬように気をつけなければ」
「相変わらずお優しいですね」
渋々とミヤコをなるべく傷付けないように取り押さえるイリヤに、シノブは薄く笑みを浮かべ、ユウキがプリンを差し出すと、ミヤコは笑みを浮かべて大人しくなり、買ってきたプリンを1人で貪り食い、満面の笑みを浮かべる。
幽霊が食事を摂れるのか疑問だが、何でもミヤコは、『霊体』と『実体』を分けて使えるようなのである。
「・・・・えっと、コレが私達のギルド、【悪魔偽王国軍‹ディアボロス›】よ」
ヨリがおずおずと、自分達のギルドを説明した。
吸血鬼、幽霊、魔族、〈ランドソル〉では珍しい種族が混交するギルドであった。
今作ユウキとペコリーヌには、『武器』が無いと戦闘はできない、と言う共通点があり、ユウキは自覚しているが、ペコリーヌはまだ自覚していません。