ーユウキsideー
朝食を終えて、改めてコレからの話し合いをする。
王宮にラジラジの『空間転移』できないかと言われたが、その対応をされていて不可能とされ、他にも『ユースティアナ』の目論見も話し合っていたが、まだ要領を得られないものばかりである。
そして改めて、ムイミが話を始めた。
「クリスティーナやダイゴ、ラジラジやマサキにもまだちゃんと話してなかったけど・・・・色々、一通り皆に説明しておきたい。今からアタシがする話は、オマエらには俄には信じ難いかも知れない。アタシの『願望』や『憶測』、『勘違い』なんかも混じってるだろうしな。ーーーーでも。どうか先ずは疑わずに聞いて、各々で検討して欲しい。そして、“この変わり果ててしまった残酷で恐ろしい世界”での、身の振り方を改めて考えてくれ」
ムイミは部屋の隅に置かれた黒板を持ってくる。
「今、この『世界』は悪意によって染め上げられている。何も考えずに、ただ現状を受け入れていると不幸になる・・・・場合によっちゃ、何もかも失って絶望の中で死ぬ事になるぞ」
そしてムイミは頭の後頭部を掻いてから話し出す。
「何処から話せば良いのかな・・・・ゴメン、分かりづらいだろうけど聞いて欲しい。オマエらは、この世界に『違和感』を覚えた事は無いか? 『不自然な地形』、『社会制』、『歴史』、何故か異様に発達している『武器・防具』や『攻撃魔法』・・・・普通に考えたら変な点を指摘すれば、数え切れない位だ」
「はぁ・・・・言われてみれば、その通りでございますね。同意いたします。普通に暮らしていくだけでも、何かと不便ですから」
“ーーーー『偽者のユースティアナさん』も、似たような事を言っていたよ”
『日常生活』に不必要な武器は異常に充実しているのに、必要な最低限の諸々も、最近になって慌てて用意されたように感じる。ソレまでどの様に、否、マトモに暮らせていたのかも、『疑問』に思えてしまう。
「だけど、その様な記録はありませんしね。成る程、確かに奇妙な話です。なのに。誰もソレに、『疑問』を抱かない」
ペコリーヌも、『疑問』を抱き始めた。そしてソレは、他の面子もようだ。
しかも、思い返してみると、考え始めてみるとソコで思考が止まり、意識できなくなる。「こう言うものだ」、と納得してしまう。確かに異様な出来事だ。まるで『何者』かに頭の中を弄られているようで気分が悪い。
“ーーーー今も、『ソレより他に考える事がある』って、自然と思考が逸れている気がする、『偽者のユースティアナさん』が変身する『闇の聖剣 暗黒剣月闇』の鎧、〈仮面ライダーカリバー〉とどうやって戦えは良いのかとか、あの人の『能力の正体』、とか・・・・今はソレは置いておかないといけないのに・・・・”
他の皆もそれぞれの思考が逸れてしまっているのに気付いたのか難しい顔をしている。そしてムイミが顔を引き締めて声を発する。
「そうだ。今は、もっと大事な『世界の秘密』について考えて欲しい。この説明で、理解できるかどうかは分からないけど」
ムイミは一旦置いてから、意を決して話す。
「ーーーーアタシ達、『この世界』で生きている人々はほぼ例外なく、『集団幻覚』を見ているようなもんなんだ。ううん。皆が共通の、『歪んだ夢を見ているようなもんだ』」
「『夢』・・・・あのう、良くわかりません」
「だろうな。ってか正確には『夢』って言うより『ゲームの世界』なんだけど、そんな表現をしたら逆に混乱しそうだ・・・・まぁ、分かりやすさ優先で『夢』って言っておこう」
コッコロの返答に、ムイミはハァ〜っとと溜め息を吐いた。
「あ〜、やっぱりこういう説明とかは苦手だ。オクトーがいてくれたらなぁ、アイツ口が達者だから全部丸投げでお任せてきたのに」
“・・・・でも、あの人だと胡散臭くて信用できないかも”
「おいユウキ、アタシの相棒をそんな風に言うなよ。オクトーは胡散臭くなんて・・・・・・・・・・・・まぁ取り敢えず、アタシなりに頑張って説明する」
『(否定しなかった(な/です)・・・・)』
ユウキがオクトーを胡散臭いと言い、ムイミが否定しようとしたが、数秒程沈黙してから改めて説明を始め、全員が内心でツッコミを入れた。
そしてムイミは黒板に白いチョークで【アストルム】と書いた枠の中にランドソルの風景らしきものを描くと、その隣に【げんじつ】と書いた枠の中に、見た事のない風景を描いた。
「ーーーーんっとな。今、アタシ達は『夢』を見ているんだ。そしえ、目覚める事ができずに『夢』の中に囚われている。本当の、アタシ達にとっての『現実』は他にある。確かラビリスタかま、そんな様な事を言っていたが・・・・オマエらは、『変な夢』を見た事が無いか? アタシ達の知っている『この世界』とは全然違う、けれど『奇妙に懐かしい世界』で・・・・泣いて笑って怒って、普通に生きている自分達の『夢』を」
確かに、覚えがあった。ペコリーヌやコッコロやキャル、『ユイ達』やサレン達、他のギルドの友人達と過ごしている時に、時々訪れる『変な光』と『夢』。記憶は曖昧だが、自分と、皆は良く似た名前と姿をしていて、ソレを『当然』とし疑わずに生きていた。
そう言えば、【サレンディア救護院】のアヤネや、【聖テレサ女学院なかよし部】の『ユニ』のように『違和感』を感じている人がいた事を思い出した。
“・・・・つまり、あの『夢の世界』と『姿』が僕達の『現実』で、『この世界』こそが『夢の世界』?”
「そ、その様な事が有り得るのでしょうか。あぁ、頭がクラクラ致します」
コッコロが頭を抱え、リノとダイゴに至っては頭から湯気が出そうになっている。
しかし、妙な『納得感』もあったから、否定できなかった。
「嘘みたいな話だけど、ソレが『事実』だ。今提示できる『証拠』はないし・・・・そんな思春期特有の妄想みたいなのを、すぐ信じて貰えるとは思わないけど」
“ムイミちゃんは、どうして覚えているの?”
「アタシは『超能力』・・・・ん〜、『特別な魔法』みたいなものが使える。その誰にも真似できない力を活用して、全てが変貌した決定的瞬間に己の記憶を保護したんだ」
“(ハツネちゃんのような『力』をムイミちゃんも持っているんだ・・・・)”
「突然だったから、自分だけ守るので精一杯だった・・・・今では後悔してるし悔しく思ってるよ、まさかこんな事態になるとは思わなかったもん」
ムイミの悲痛な表情から、どれだけ悔しかったのかが分かる。
「つまり・・・・ムイミ様は、謂わば『本当の現実』の記憶を持っているのですね?」
「うん。突然だったし、あまりにも巨大な『力』が炸裂してさ・・・・完全には防御できなかったから、記憶が抜け落ちてる所もあるんだけど。大体の事は覚えてる。絶対に、忘れたくない『大事な記憶』だ」
恐らくソレは、オクトーに関する事なのかも知れない。
「そんな存在、この世界でもアタシ位しか居ないらしくてさ。アタシは本当の事を言ってるのに、『妄想をまくし立てる変なヤツ』だって思われがちだ。でもアタシ程じゃないにせよ、『記憶』が僅かに残ったり思い出したりするヤツもいてさ・・・・この【ラビリンス】の首魁、ラビリスタとかがそうだけど。今はそんな連中と協力して、何とか『おかしくなった世界』を元に戻そうとしてる。こんなの絶対に不自然なんだ、終わらせなくっちゃ駄目だ。オクトーに・・・・大事な相棒にまで忘れられたままなのは、哀しいしな」
“・・・・そう言えば、『偽者のユースティアナさん』も、この世界は偽物だ、ってみたいな事を話していた”
「アイツか・・・・確かにアイツなら、『違和感』に気付いても不思議じゃないな」
どうやらムイミも、『偽者のユースティアナ』の事を知っているようである。
「兎も角。『現実』と『夢』が入れ替わる様な、大変な出来事かまあったんだ。その瞬間から、『世界』はガラッと変貌した。地形も何もかも、『記憶や心の中身』すら書き換えられて・・・・『改変』されて、『世界』は再構築された。『夢』が『現実』になり、『現実』は『夢』になって、その状態がずっと続いてる。だけど本来、コレは有り得ない状態なんだ。アチコチ不具合も出てるらしくてさ。『ロスト』や『シャドウ』と言った怪現象も、そのせいで生じた『バグ』、あぁ、『世界の法則』が乱れたって言うか、ぶっ壊れかけてるみたいなもんだ。このまま放置すれば、何がどうなるか分からない。だから、『元に戻さなきゃいけない』。この世界を、『在るべき姿』に戻して、正さなくちゃいけない。そして、アタシ達は『本当の現実』に帰るべきなんだ。アタシはそう思ってる。ラビリスタとかも手伝ってくれてるけど、オマエらにまで強制はしないよ。人によっては、『辛い現実』が待ってるかも知れないしな。でも。いつまでも、『夢』を見ている訳にも行かないだろ」
と、ソコまでムイミが説明を終えると、一同の間に、少しばかりの沈黙が支配した。『今の世界』が『夢』で、『夢』が『現実の世界』と言われたら当然であろう。
「ふむ・・・・難解で奇妙な話で、スンナリとは受け入れられませんが。『事実』だとしたら大変な事ですし、ゆっくりと考慮したいと思います」
“でも、なんでこんな事態になったのかな?”
世界を反転させるような、まるで天災のような、ソレこそ神の所業を一体誰が、なんの為にとユウキが聞くと、ムイミは口を開いた。
「この事態は、ある『悪意のある人物』が望んだ『結果』だと思う。ソレこそ『神様』みたいな、『どんな願いでも叶えられる存在』がいたんだけどな。ソイツは、ある人物が悍ましい願いを叶えて貰ったんだろう。その結果として、『夢と現実が反転したんだ』。アタシはその夢が叶った現場に、その瞬間Ⅱいた訳じゃないから、ある程度は推測で話してるけど。多分、そうなんだ。輝かしい、善意ある夢や希望を抱えて戦った者達は、力及ばず無惨に敗れて・・・・反吐が出るような悪人が勝利した」
何故かムイミは、一瞬だけユウキの事を一瞥した。
「そして『願い』を叶え、己の欲望を満たす為に、『世界』を創り変えた。今アタシ達が生きてるのは、そんな『バッドエンドの先に続いてる醜悪な蛇足の世界』だ」
「もしやと思いますが・・・・その『悪人』とは、現在『ユースティアナ』を名乗っているあの人物ではありませんか? 私から、全てを奪ったあの極悪人」
ペコリーヌが顔を顰めて聞いてくる。確かに今の『創り変えられた世界』で得をしているのはあの人物であるので、その可能性は大きいだろう。
「その推測は正しいと思う。現在ユースティアナと名乗っているアイツの本名は、『千里真那』。『七冠‹セブン・クラウンズ›』の1人、『覇瞳皇帝‹カイザーインサイト›』として悪逆の限りを尽くした存在だ」
“『覇瞳皇帝‹カイザーインサイト›』・・・・”
何故だろうか、その名前が妙に心をザワつかせるのをユウキは感じていた。そしてムイミも、ユウキに目を向けた。
「ユウキ。お前やその『仲間達』、そしてアタシ達はアイツの野望を食い止める為に戦っていたんだ。そして多分、力及ばずに敗れたんだろうな」
“僕、が・・・・”
「ユウキくん、が・・・・? そんな、物語に登場する『勇者』みたいな存在だったんですか? ふふ。ちょっと納得しちゃいます。何かいつでも『運命の中心』にいるって言うか、偶に凄く格好良いですもんね・・・・ユウキくんって」
ペコリーヌがにこやかに納得した。
「えへへ。私もユウキくんと一緒に戦った、『仲間』だったりするんですか? だって今の、『改変された』って言うこの世界ではこんなに仲良しですし・・・・♪」
「いや・・・・ゴメン、残念だけもお前やコッコロの事は知らないんだ。少なくともアタシは、世界が変貌してから始めて会った。ユウキは主に、他の女の子達や『フィオ』って言う妖精みたいなのと一緒に戦っていたよ。その時は、『聖剣』なんて持っていなかったし、〈仮面ライダーセイバー〉とか、〈仮面ライダーブレイズ〉ってのにも変身していなかった」
ペコリーヌの問いに、ムイミはバツが悪そうに応えた。
「何で今、『その子達』じゃなくて・・・・【美食殿‹お前ら›】と行動を共にしてるのか、分かんない位だ。その位、ユウキと『仲間達』は強い絆で結ばれてたよ」
ムイミのその顔と声から、ユウキとその『仲間達』がどれだけ素晴らしい間柄だったのかが伺えるが、ペコリーヌとコッコロは残念そうな顔になる。
「えっ・・・・あっ、そうなんですか。ちょっと、ううん、凄く残念です。いやでも、うん、仕方ないですね・・・・『書き換えられた』って言う世界で、こうして巡り逢えた事を幸運と思いましょう。そのユウキくんの大事な『仲間達』にとっては、私達、『お邪魔虫』なのかも知れませんけど・・・・ユウキくんを、横から奪ったようなものなのかも知れませんけど。そう思うと、やるせないですね・・・・何か、ションボリしちゃいます」
「・・・・この世界はおかしくなってるけど。こうして出会ってお前達が紡いだ『絆』が、『嘘』だったって事にはならないよ。そんな風に、気休めを言ってやる事しかできない」
【美食殿】は、自分達はユウキにとって、『本当の仲間ではない』のだと思ってしまったのか、顔を少し曇らせるペコリーヌとコッコロに、ムイミがフォローを入れた。
「ふふ。いえ、すみません話の腰を折っちゃって。全部忘れて『世界』が変貌しても、また巡り逢えて仲良くなれたなら運命的だなって・・・・御伽噺みたいだなって、ちょっと思っただけです。そう言うの、憧れだったんですけどね。えへへ・・・・♪」
「ペコリーヌ様・・・・うん?」
と、笑顔を浮かべるペコリーヌにコッコロが話し掛けようとしたその瞬間・・・・。
ーーーーグラッ・・・・!
まるで地震でも起こったかのように、アジトが揺れた。
「あの、すみません。今、グラっと揺れませんでした?」
「・・・・確かに。ソレに、アジトの外に仕掛けてる警報が作動してるな。迂闊だった〜、色々話すのに夢中で気付くのが遅れた。ラジラジ、ちょっと空間跳躍して外の様子を見てきてくれるか?」
「承知しました。・・・・少々お待ち下さい」
ムイミが頼むと、ラジラジはシュンッとその場から空間跳躍した。
「な、何事ですか?」
「分からん。警報の誤作動とか、勘違いとかだったら良いんだけど・・・・アタシ達の場合、そんな平和な展開が待ってるって期待しちゃ駄目な気がする」
ムイミがやれやれと肩を落とす。
「皆、何があっても大丈夫なように身構えておいてくれ。まだまだ話すべき事は沢山あったんだけど、悠長にしてられない事態かも知れないからな。シズルとリノも、皿洗いとかは後にしてこっちに来い! 全員集合〜! ヤバそうだったらすぐに逃げられるように、準備だけはしておこう!」
「戦闘になるかもね。リノちゃん、今の内にマスターから弟くんに渡すように頼まれていたものを出すよ」
「はいですお姉ちゃん!」
ムイミが全員に集まるように声を上げると、シズルとリノは急いで別の部屋に行くと、シズルは1本の剣を持ち、リノは1冊の本を持ってきた。
その時、
ーーーーキィィィィン・・・・キィィィィン・・・・。
ーーーーキィィィィン・・・・キィィィィン・・・・。
何と、ユウキの剣から波動が放たれ、シズルの持ってきた剣も波動を放ち、お互いに共鳴音を奏でた。
“っ! シズルさん、ソレって・・・・!”
「マスターが弟くんに渡そうと思っていたーーーー『雷の聖剣』だよ」
シズルが持っていた『聖剣』が独りでに宙を浮き、ユウキの持っている剣に引き合うように向かってきた。
『炎の聖剣 火炎剣烈火』、『水の聖剣 水棲剣流水』と似た形状をした黄色い剣。
[ーーーー雷鳴剣黄雷‹ライメイケン イカズチ›!!]
『雷の聖剣 雷鳴剣黄雷』と一体化した。そして、リノは『Dimension Room』と言う開かれた扉が描かれた『ライドブック』であった。
“リノちゃん、この『ライドブック』は?”
「よく分からないんですが、マスターがお兄ちゃんに必要になるって言ってたんです」
“ありがとう”
ユウキは新たな聖剣と、ライドブックを手に、ラジラジが戻って来て、外の様子が分かり次第すぐに動ける様にしていた。
ユウキは新たに、『雷の聖剣』と『特殊なライドブック』を手に入れた。