ーユウキsideー
“(・・・・『アキノさん』にも負けないくらい、元気いっぱいで、派手で綺麗な人だなぁ。それに、かなり強いな、このお姉さん・・・・)”
ユウキは突如現れた女性に対して、以前友人となった『財団のご令嬢』と重ね、さらにその立ち振るまいから漂う強者の気配を察していた。
しかし、そんなユウキを置いて、その女性と【自警団‹カォン›】の間で、話が始まる。
「うおっ? 壁をブチ抜いて登場しやがった、無駄に派手だなっ!? こいつぁ、確か【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の・・・・?」
「あぁ、礼儀として名乗っておこうか。『騎士』なんてのは肩書きだけで、別にお上品な作法なんか学んじゃいないんだけど、冥土の土産だ。私の名前を、脳ミソに刻んでおけ」
そう言って、女性は自己紹介をする。
「我が名は、クリスティーナ・モーガン。栄えある【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の、強く美しい副団長様だよ」
女性、クリスティーナが自分の名を名乗った。
「今宵は、町を彷徨く目障りな獣共を駆逐する為に、参上してやったよ。さぁ、誰から屠って欲しい? 『死に方』と、『死ぬ順番』ぐらいは選ばせてやるよ! あははは・・・・☆」
「てめぇっ、何なんだ藪から棒にっ! あたしらのギルドハウスを襲撃するとは良い度胸じゃねぇか。戦争するつもりかっ? 喧嘩なら、買ってやんよっ! かかってこいや!」
クリスティーナのこちらを舐めた態度にマコトは怒り、剣を抜こうとする。
が、それをマホが止めた。
「辛抱しておくれやす、マコトはん。戦ったらあかんえ、相手はんの思う壺どすえ。ホンマに、戦争になってまうよ・・・・?」
「止めんな、姫さん! 話し合いの余地なんかねぇよっ、あいつら揃いも揃って重武装じゃねぇか! やらなきゃ、やられんぞっ!?」
マコトが剣を構えると、クリスティーナは目を鋭くした。
「はは。元気が良いな犬ッコロ、お前から死にたいのか?」
「あぁ? 調子こいてんじゃねぇぞコラ! あたしを殺せるものなら殺してみろよっ!?」
「ちょ、挑発に乗らんといておくれやす・・・・マコトはん、何でそんなに血の気が多いのん?」
飛び掛かりそうなマコトをマホが必死に抑えながら、クリスティーナに目を向ける。
「えぇっと、クリスティーナはん? 【自警団‹カォン›】のギルドマスターとして、ご要件をお伺いします。一体、どういう了見どす? 土足で余所の家に上がり込んで、ちょっと礼儀知らずとちゃいますか? いくら【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】が、王家直属のギルドやからって・・・・何でもかんでも許されると思たら、あきまへんえ?」
普段はのんびりしているマホだが、流石はギルドマスターと言えるのか、マコトを抑えて、【王宮騎士団‹KNIGHTSMARE›】の副団長を相手に毅然とした態度で応じている。
が、しかしーーーー。
「あ~・・・・あはは、良い度胸♪ 私に怯えず気勢を吐いた事は賞賛に値するが、口の利き方がなってないな? 天に向かって唾を吐く、慮外者が!」
クリスティーナは声を激しくなる。
「貴様も言った通り、我らには国王陛下の後ろ盾が・・・・錦の御旗がある! 正義は、我ら【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】にある訳だっ☆」
クリスティーナは自分達の正当性を主張した。
「無駄だ、姫さん。もう、交渉ができる段階じゃねぇ。嵌められたっつったろ・・・・。そこの、えぇっとメイドさん? そいつが、あたしらの襲撃した馬車にいたのが問題だったんだ」
「ほぇっ? わわ、私ですかっ? ごめんなさい、私のせい何ですかっ!?」
マコトがスズメを見てそう言うと、スズメは謝罪するが、マコトは首を横に振った。
「いいや、あんたのせいじゃねぇよ。だが、あんたが所属してるギルドがマズい。あんたは、【プリンセスナイト】の傘下ギルドに所属してるんだろ?」
「あっ、はい。私の所属する【サレンディア救護院】は、【プリンセスナイト】の傘下ギルドです。あくまで書類上で、実質的な繋がりは殆ど無いんですけど」
「実際の繋がりがあるかどうかは、さほど問題じゃねぇんだよ。マズいのは、あの馬車の襲撃が・・・・主に、あたしら【自警団‹カォン›】の手で行われたって事だ。【自警団‹カォン›】は獣人‹ビースト›の互助組織。【動物苑】の傘下ギルドだ。それはご存知だよな? そして【動物苑】と【プリンセスナイト】は、歴史的にも実際的にも死ぬ程仲が悪い。これまでも、あちこちで何度も小競り合いがあったしな」
マコトが【動物苑】と【プリンセスナイト】が犬猿の仲である事を説明する。
「ぶっちゃけ、一触即発だった。今回の一件は、そこに燻ってた種火を爆発させる結果になっちまったんだよ。あの馬車の襲撃は、客観的には・・・・【動物苑】が【プリンセスナイト】の構成員を襲撃して、殺そうとしたって事になる」
説明されるが、スズメとユウキとコッコロは今一分からないようであった。
「要するに、だ。先に戦争を吹っかけたのは、あたしらの方って事になっちまうんだよ」
「!? えぇっ? でも私が馬車に乗っていたのは、偶々で・・・・? 皆さんも別に私を狙った訳じゃないですよね?」
「そうだけど、そう言う図式が作られてるって事だよ。連中、戦争のきっかけをでっち上げたんだ。あの馬車の襲撃は、そう言う陰謀の一環だったんだよ。【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は、“身内が襲撃された報復”・・・・って言う名目で、あたしらのギルドハウスに攻めてきてる訳だ。実際、世間的には正義はあっちにある」
マコトが顔を苦々しく歪めると、クリスティーナは意気揚々と声を上げる。
「そのと〜り、お利口さんだな! 抱き締めて、良い子良い子してあげたいよ! まぁ実際、きっかけは何でも良かったんだがな? 偶々オクトーの坊やが良い立ち位置にいたので、便利に利用させてもらった♪ 私は単純に、生温い平和に飽き飽きしてるんだ! 戦争をおっ始めたかったから、軽く仕組ませて貰ったよ? こんなに簡単に思い通りになるなんて、些か拍子抜け〜と言った所だがな! あはははは・・・・☆」
上機嫌に笑いながらクリスティーナは続ける。
「きっとこの世界を管理する神様も、退屈な日常なんかよりも血と臓物が見たいのさ! これはもう運命ってやつだ、諦めて状況を受け入れろ! 共に楽しく、死闘を繰り広げようじゃあないか!」
そして、大剣の切っ先を【自警団‹カォン›】に向ける。
「別に嫌なら構わんぞ、一方的に虐殺するだけだ! 相手が乗り気じゃなくても、ダンスは踊れるからな!」
そして、後方にいる団員達に声かける。
「さぁ【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の同胞達よ、永き泰平で倦み疲れた鬱憤を晴らそう! 獣人‹ビースト›共の血で、波々と祝杯を満たそう! 楽しい楽しい宴席の始まりだっ、あっはははははははは・・・・☆」
“・・・・・・・・”
ユウキはクリスティーナを見て、火炎剣烈火を召喚しようとする。
が、その手をコッコロに掴まれて引っ張られる。
「主さまこちらへ! あぁ、どうしてこんな事に・・・・?」
“大丈夫だから、安心して”
ユウキが、剣を持った自分の手を不安そうに掴むコッコロの手に、もう片方の手を優しく添えてそう言った。
「うう、主さまは、時々太平楽に構え過ぎです。まぁ、そう言う所が頼もしくもあるのですが。正直な所、楽観して良い状況には思えません」
と、言ってると、戦闘が開始された。
「う〜りゃぁぁぁぁぁ!」
先ず先陣を切ったのはカオリだった。
クリスティーナに接近すると、蹴撃や拳打を繰り出す。しかし、クリスティーナは余裕の笑みを浮かべたままこの攻撃を軽やかに回避する。
“???”
その時、ユウキは目を細めた。クリスティーナの腹部に突き刺さりそうになったカオリの拳や蹴りが、まるで『見えない何かに受け流された』かのように、不自然に軌道を曲げたのだ。
「っ!?」
カオリもそれに気付いたのか、一瞬隙が生まれ、そこからクリスティーナが大剣を振るってきた。
“!?”
「!?」
すると、またユウキとカオリは驚く。明らかに出鱈目で大振りで、カオリが回避した大剣の軌道が不自然に変わり、カオリの身体に迫ってきた。
「っ! あっ!!」
カオリは寸前で両手の手甲で防御するが、その威力に耐えられず吹き飛んでしまった。
“っ!”
危うくギルドハウスの柱に衝突しそうになるカオリを、ユウキが寸前で抱き留めた。
「カオリ!」
「主さま!」
マコトとコッコロが声を上げ、マコトは同時に飛び出してクリスティーナに向かう。
「うりゃぁあああああああああああ!!」
「ーーーーふっ」
マコトが下から斬り上げると、クリスティーナはまたも不自然に動き、上体を反らしてマコトの一撃を回避した。
「っ!」
「うっ! ぐはっ!!」
そして、バネのように身体を戻す勢いで大剣を振るい、マコトと防ぐが衝撃でギルドハウスの柱に叩きつけられた。
“マコトちゃん!”
「ふっ。ほらほらどうした? 元気がなくなってきたな? 疲れてしまったのか?」
二対一、それも武闘派のカオリとマコトを圧倒し、悠然かつ不敵に佇むクリスティーナ。
「もっと楽しませてくれ! 生と死の狭間で斬り結ぶ高揚感を、生きている実感を与えてくれ! あまり期待外れなら、せめて貴様らの血肉を浴びて渇きを満たすしかないぞ! さぁ、奥の手や必殺技があるなら早い内に見せてくれ!」
完全に余裕かつこちらを舐めた態度でいるクリスティーナに、沸点の低いマコトは起き上がって怒声を上げる。
「ぐっ・・・・調子に乗りやがって、こんにゃろう! 人の縄張りを面白半分に荒らし回りやがってっ、あんまりはしゃいでんじゃねぇぞ!?」
激昂して突撃しそうになるマコトを、起き上がったカオリが引き止める。
「マコト、一人で突っ込んじゃ駄目さ〜? 私が速度で撹乱するから、マコトは隙を突いて本命の一撃を・・・・おっとっと?」
と、作戦会議をしているとクリスティーナが攻めて来て、カオリは回避する。
「おいおい・・・・作戦をペラペラと口にするのは、あまり感心しないぞ? 【自警団‹カォン›】は【動物苑】の中では、武闘派のギルドと聞いていたから期待していたのにな! あぁ、ガッカリだ! 連携が取れていない、練度が低い繊維が足りない! 単なる、町の喧嘩自慢と言う所か? それでは本物の騎士には、軍人には勝てんぞ!」
“・・・・意外と的確に教えてくれるね?”
「主さま。そんな呑気な事を言っている場合ではありませんよ」
ーカオリsideー
と、ユウキとコッコロが話していると、クリスティーナがカオリに剣を振るう。
ガキンッ! と、カオリが再び防御するが、衝撃に後ずさる。
「お〜? 私とマコトの二人がかりなのに、大分劣勢さ〜・・・・?」
と、言いながら、カオリは思案する。
「(でも、変な感じ〜。この人、どうも私の動きを目で追えていないっぽいのに。拳や蹴りがまるで当たらない。紙一重で避けられてるさ?)」
あまりに不自然なクリスティーナの攻撃と防御に、カオリは訝しそうに眉根を寄せる。
「(向こうの攻撃も、不自然さ〜。室内だと、あんな大剣は取り回しが不便な筈なのに。出鱈目で大振りな一撃が、何故か的確に私やマコトを捉える。“こっちの攻撃は絶対に当たらないのに、向こうの攻撃は絶対に当たる”。そう言う風に、“物理法則で決められてるみたいさ〜?”)」
普段は能天気なカオリだが、戦闘時においては冷静に相手を分析する思考を持っている。
ーユウキsideー
“・・・・・・・・”
そして、その戦いを少し離れた位置で見ているユウキも、カオリと似たような感想を抱いていた。
ーカオリsideー
「(理屈に合わないさ〜何かトリックがあるよ・・・・。とは言え今、それを確かめている余裕はないさ〜?)」
と、このままではこちらが不利と考え、カオリがマコトに話しかける。
「マコト! こっちは奇襲されて態勢が整ってない、一旦ギルドハウスを放棄して退避すべきさ〜? 私達で、死ぬ気でマホ達の退路を確保するさ〜!」
「あぁ? 尻尾を巻いて逃げろって言うのかよ、やりたい放題やられてさ! 滑られたままじゃ我慢できねぇ、せめて一発ぶん殴る・・・・!」
ここは一旦退避するべきと、カオリが言うが、マコトは拳を握り締めて言う。
「一対一の喧嘩なら、それでいいけど・・・・ギルド同士の抗争では、陰謀に嵌められた時点でこっちの負けさ〜? 後は被害を最小限に抑えつつ、撤退した方が良いさ〜?」
「ほう? 見た目の印象とは裏腹に、中々知恵が回るようだな貴様!」
意外と状況を的確に判断しているカオリに、クリスティーナは感心したように声を上げた。
「だが残念っ、逃がさんぞ! 待望の、折角手に入れた玩具なのだからな・・・・☆」
「むぐっ!? あっぶない、どうしてこの距離と大勢から当てられるさ〜?」
そして再び、クリスティーナが大剣をカオリに向けて振るい、カオリが打ち払う。
「(む〜やっぱり敵の攻撃は必ず当たるさ〜。不自然さ〜。私は身軽さを活かして、普段は回避しながら敵を殴るって戦い方をするから・・・・? いちいち防御するのは、ちょっと不慣れさ〜? こっちは徒手空拳、向こうは大剣・・・・このままじゃ削り殺されちゃう? 耐えるのにも限界がある、凌ぎきれないさ〜? 悔しい〜おじいとおばあに伝授された空手は最強なのに!)」
大好きな祖父と祖母に仕込まれた空手が通用しない状況に、カオリはマコトと同じくらい悔しい気持ちがある。
「(でもぉ・・・・敵の奇妙な攻撃と防御の絡繰りを解き明かさんと、ジリ貧さ〜?)」
が、それはそれとして、自分達が劣勢である事は事実だ。カオリが攻めあぐねていると、マコトが前に出る。
「カオリ、どいてろ! いくら何でも、そいつも攻撃と防御を同時にはできねぇだろ! こっちからガンガン攻めまくって、そいつの決め手を止める! おりゃああ・・・・!」
マコトは飛び出すと同時に、マホに向けて声を発する。
「姫さんは、あたしとカオリに強化と回復の魔法をかけてくれ! ついでに余裕があったら、ギルドハウスを囲んでいる連中を吹っ飛ばして退路を確保しろ!」
ーユウキsideー
「あっ、うん! 了解どすえ、やっぱり荒事ではマコトはんが頼りになるわぁ♪」
マホが朗らかに了承した。
「うちは、あかしまへんな。どうも、喧嘩になるとからっきしどす」
ギルドメンバーが戦っているのに、共に戦えない自分を不甲斐なく思うマホ。が、気を取り直すように声を上げる。
「なんて、泣き言は後にせんと・・・・。王子はん達、うちの後ろに待避しとおくれやす」
「あ、あのマホさん・・・・! 大変言いづらいのですが・・・・!」
「主さま、今飛び出して行きました」
「えっ?」
マホが振り向くと、ユウキの姿がなく。クリスティーナの方に目を向けたその瞬間ーーーー。
ーーーーガキィィィィンンッ!!
『火炎剣烈火』を携えたユウキが、クリスティーナの大剣を、その刃で受け止めていた。
ークリスティーナsideー
マホに指示を飛ばしてすぐ、クリスティーナに向かう。
「あはは☆ どいつもこいつも、何も考えていないように見えて、戦闘における嗅覚だけは一流だな! 面白いっ、これが獣人‹ビースト›か! 獣の本能と強度、人間の知性と柔軟さを併せ持っている! 嬉しいなぁ、いつだって未知なる強敵と戦うのは心躍る! 浮き浮きするよ、戦闘とはこうでなくてはな! 楽しませてくれ、もっともっと・・・・☆」
貌を喜色に染めたクリスティーナの身体から、異様な魔力が迸ってくる。
「簡単に終わってはつまらんと思って、優しく撫でてやっていたのだがな・・・・どうやら、遠慮は無用のようだ。こっちも、少し気合を入れてやろう!」
クリスティーナが大剣をマコトに振るい、マコトは蛮刀でそれを受け止めた。
が・・・・。
「うおわっ!? くそっ、人間の腕力じゃねぇぞ! こいつの一撃を受け止めただけで、軽く足が宙に浮いたっ!?」
「そぉれ! もう一撃だ!!」
そして、クリスティーナが大剣をマコトに向けて、さらに振るったその時ーーーーマコトの後方から『誰』かが飛び出し、自分の一撃を、『炎を纏った剣』で受け止めた。
ーーーーガキィィィィンンッ!!
ぶつかり合った剣の衝撃で、炎が消し飛ぶと、剣が露わになった。それを見た瞬間、クリスティーナは目を見開いた。
「!? 何っ!? これは!? この剣はっ!?」
[火炎剣烈火!]
そこにあったのは、自分が忠誠を誓っている『陛下』の持つ『聖剣』と同じ『剣』、否、『聖剣』を携えた少年であった。
“ーーーーはっ!”
少年が剣を押して、呆然となるクリスティーナを押し出すと、その勢いでクリスティーナは後方に小さく退く。
ーユウキsideー
「ゆ、ユウキ!? お前何で!?」
“ごめん。でも、見ているだけはできなくて・・・・協力するよ!”
「おぉ〜助け合いの精神さ〜。ありがとうね〜」
ユウキの両隣に立ったマコトとカオリも構え直して、クリスティーナを見据える。
しかしーーーー。
「・・・・・・・・・・・・」
クリスティーナは、ユウキを、否、ユウキの火炎剣烈火を見据えながら、愕然としていた。
「何だ? どうしたんだアイツ?」
「ユウキを・・・・いや、ユウキの剣を見てるさ〜?」
“???”
「・・・・そこの坊や」
“? 僕の事?”
「今この場で坊やの呼べるのはお前だけだろう。他は女ばかりなのだからな」
そう言いながら、クリスティーナの口調は先程と違ってエラく真面目な感じであった。
「坊や。その剣はどうした?」
“えっ? 火炎剣烈火の事?”
「『火炎剣烈火』、か・・・・」
クリスティーナは暫しの間、思考するように目を閉じている。圧倒的に隙だらけ、なのだが。
ユウキもマコトもカオリも、クリスティーナの突然の行動に訝しげな視線を向けていた。
「坊や。“その剣をこちらに渡せ”」
“っ!?”
「はぁ!? お前いきなり何言ってんだよっ!?」
「黙っていろ犬。私はそこの坊やに話をしているのだ。坊や。お前がその剣を渡すのでならば、今回の【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】と【動物苑】のいざこざは無かった事にしたやっても良いぞ?」
『っ!?』
クリスティーナの言葉に、全員が目を見開いた。
こんな手の込んだ回りくどいやり方をしてまで、戦争になるような陰謀を起こした相手の意外な提案に驚いたからだ。
“どうして?”
「良いか。お前がその剣をどう思っているかは知らんが、その剣は『聖剣』と呼ばれる、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】・・・・いや、この〈ランドソル〉の王家から『監視対象』とされている特殊な武器なのだ。使い方を誤れば災いを引き起こす、とされている、な。子供の玩具として振り回して良い物ではないと言う事だ」
クリスティーナの言葉に、さらに全員が息を呑んだ。まさかユウキの持つ剣、否、聖剣が、王家から監視対象とされていた事に。
“・・・・・・・・”
ユウキは少し悩んだ。クリスティーナの言葉を完全に鵜呑みにするつもりはない。しかし、この聖剣を渡せば、この場が収まり、尚且つ、人間と獣人‹ビースト›の戦争を一時的とは言え回避できるのだ。ならば、渡すべきかと思った。
しかしーーーー。
「王子はん、渡したらあきまへんえ」
“っ、マホさん?”
悩むユウキに話しかけたのは、マホであった。
「確かにエエ話やと思うけど、うちらのいざこざに、王子はんのーーーー聖剣やったね。それを犠牲にするのはあかん」
「ああ! こいつに聖剣を渡しても、どうせすぐに別のやり方で戦争を吹っかけて来やがるんだ!」
「私達の事は心配ないよ〜、なんくるないさ〜。だから、ユウキの聖剣を渡さなくてもいいよ〜」
「あ、あの! 私も! ユウキさんにとって、その聖剣って、凄く大切な物なんじゃないかって思います! だから、簡単に渡したら駄目だと思います!」
「主さま。いかがなさいますか? 主さまのお心のままに、応えて下さいまし」
“・・・・・・・・”
ユウキは、皆の言葉を受けて一瞬瞑目して考えてから、クリスティーナを見据える。
“この剣はーーーー渡さない!”
「ほぅ・・・・」
クリスティーナは、意外半分、ユウキへの興味半分が沸いたような視線を向ける。
“記憶の無い僕が唯一持っていた、たった一ヶ月ちょっとの付き合いだけど、一緒に戦ってきた大切な相棒なんだ。それに、これがその『聖剣』って武器なら、何故僕が持っているのか? この聖剣の『他にある聖剣』と『ライドブック』を回収して、何を成すべきなのか? それを見つける為にも、聖剣は誰にも渡さない!!”
「(ほう・・・・他の『聖剣』の存在も知っている、か・・・・。それにしても・・・・)」
火炎剣烈火を構えるユウキのその目に宿る光を見据えると、クリスティーナはフッと口角を上げた。
「良い目をしているなぁ坊や? 個人的には嫌いではないぞ。その無謀とも取れる行動と決意を宿した目をした者は」
そして、クリスティーナは大剣の切っ先をユウキに向ける。
「ならば見せてくれ! 貴様がその聖剣を持つ『資格』があると私に認めさせてなら、この場を退こう! だが、認められないと判断すれば、聖剣だけでなく、その両腕を失う覚悟くらいはしておけ!」
“(コクン)”
クリスティーナの言葉に頷くと、ユウキは聖剣ソードドライバーを腰に巻き、火炎剣烈火を納刀して、『ブレイブドラゴンワンダーライドブック』を開く。
[ブレイブドラゴン! かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた・・・・]
ワンダーライドブックを閉じてドライバーに装填した。
すると、ユウキの背後に巨大な『ブレイブドラゴンワンダーライドブック』が現れ、ユウキは抜刀する。
[烈火抜刀!]
ーーーーギャォォォォォォォンッ!!
スロットに装填したワンダーライドブックが開き、それに連動して背後の巨大なワンダーライドブックも開き、『ブレイブドラゴン』が飛び出し雄叫びを上げる。
“変身ッ!”
[ブレイブドラゴン!]
✕の字の斬撃を目の前に放ち、ブレイブドラゴンはユウキの身体を包み込むように回転し火柱が上がると、ユウキの全身にフルアーマーが装着され、火柱が収まると斬撃がユウキの仮面へ装着される。
[烈火一冊! 勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!]
「ほぅ・・・・!」
クリスティーナが笑みを濃くする。
“ーーーー『仮面ライダーセイバー』。物語の結末は、僕が決める!”
「大口を叩くではないか? だが、この宴の結末を決めるのは、この私だ!」
セイバーが火炎剣烈火を構え、クリスティーナも大剣を構えた。
“っ!!”
「ふっ!」
すると、両者が一瞬で近づくと、お互いの剣をぶつけ合った。
次回、仮面ライダーが七つの冠の一角(本気ではない)に挑む!