聖刃コネクト!   作:BREAKERZ

9 / 32
宴の幕引き、優雅な令嬢サレン

ーセイバーsideー

 

セイバーがコッコロを後ろに置き、【自警団‹カォン›】がクリスティーナの後ろで構え、挟撃しようとしたその時、ギルドハウスの正面玄関の扉を開き、そこから一人の女の子が現れた。

騎士のような仕立ての良い服に白いマントを付け、長く綺麗な金髪に青い瞳、右側頭部に宝石を付けた片翼のアクセサリーを付けた優雅な令嬢のような女の子だった。

その子が、毅然とした態度でクリスティーナの隣に立って声を発する。

 

「そこまで! 双方、武器を納めなさい! 憚りながら、仲裁する! 今すぐ、私闘をやめなさい! もう真夜中よ、ご近所迷惑でしょうが!」

 

「お、おおっ、お嬢さま〜!?」

 

と、そんな女の子に近づいて、お嬢さまと呼んだのは、スズメであった。女の子もスズメに気づくと、すぐに駆け寄り、その手を取る。

 

「スズメ、無事!? あんたが【自警団‹カォン›】に保護されたって聞いたから、慌てて屋敷から飛んできたわ! どう言う状況よ、これはっ! 大丈夫? 怪我してない?」

 

“あっ、『サレンちゃん』だ”

 

そう。この少女こそ、スズメの主である『サレン』である。そして勿論、ユウキとも顔見知りの友人である。

 

「・・・・やっぱりお知り合いなのですね。もう大分慣れてまいりました、主さま」

 

僅か一ヶ月で、ここまでの女性、それも美少女とも言える子達と仲良くなっている主に、今日一日でコッコロはもう諦めの境地に到達していた。

しかし、クリスティーナは気安い態度でサレンに挨拶する。

 

「Haller、サレンのお嬢ちゃん。いいや、『元・副団長』と呼ぶべきか?」

 

「クリスティーナ・・・・今通りがけに、他の【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の団員達から、事情を聞いたわ。独断専行の大暴れに、『団長』もいたくご立腹みたいよ? 今日の所はあたしの顔を立てて、撤退してくれない?」

 

「構わないよ。正直、まだまだ食い足りないのだけど・・・・」

 

クリスティーナはセイバーを一瞥する。

 

「まだまだ青い果実。暫くの間は野に放ち、より美味しそうに熟してからと言うのも一興だな。最低限の目的も果たしたし、これでも結構、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】は気に入ってるんだ。“今”は、この位置を保っておきたい」

 

そして、サレンの方にも目を向ける。

 

「それに貴様に手を出すと、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】では村八分にされてしまうからな。随分人気者だったものなぁ、元・副団長・・・・♪」

 

クリスティーナは大剣を納めて、コッコロにも視線を向けた。

 

「未来の、楽しみの為に・・・・今、グッと我慢するのも人生を謳歌する秘訣ってものさ。良いだろう、今日は退いてやる。ちょっと、調べておくべき事もできたしな」

 

「ひっ・・・・!」

 

“・・・・・・・・”

 

コッコロが怯え、セイバーが守るように移動する。

が、サレンがクリスティーナを制するように声を上げる。

 

「こら。ちっちゃい子を怯えさせるんじゃないわよ。この事は問題にするわ。【プリンセスナイト】上層部に報告する。いつまでも、無法が罷り通るとは思わない事ね」

 

「肝に命じておくよ、お嬢ちゃん。ではな、失礼する。今日は久方ぶりに心から楽しかったぞ! また遊ぼう、紳士淑女の諸君っ♪」

 

そう言って、クリスティーナは【自警団‹カォン›】のギルドハウスを出ようとしーーーーたが、その場に立ち止まり、顔を振り向かせ、視線をセイバーに向ける。

 

「あぁそうそう、ボウヤ。その聖剣は暫く預けておく。王宮にも聖剣は見つかったが、お前が所持している事は黙っておいてやるよ。しかし忘れるな。次に会った時に、また私を楽しませてくれなかったら・・・・分かるな?」

 

“・・・・・・・・(コクン)”

 

その時こそ、両腕を斬り捨てて聖剣を奪う。と、クリスティーナは暗に宣言していた。セイバーはそれに気付き、変身を解除してから頷いた。

 

「ーーーーフッ。そう言えば、お前は他の聖剣を探していると言っていたな。楽しませてくれた礼のついでに教えてやろう。この〈ランドソル〉周辺には、所々に聖剣が眠っている。そこのサレンのお嬢ちゃんの経営する『救護院』にも、“聖剣が一振りある”」

 

“っ!”

 

「・・・・聖剣? もしかして、あの『岩でできた剣』の事?」

 

「ああ! 『救護院』の裏庭にありましたよね!? 『大きな岩に突き刺さった剣の形をした岩』が!」

 

サレンとスズメがそう言った。どうやら本当らしい。

 

“・・・・・・・・”

 

「ん? 何で態々教えるのか不思議そうな顔をしているな? なに簡単な話だ。ボウヤ。お前は聖剣の力をまだ引き出しきれていない。他の聖剣も手に入れてーーーーもっと強くなってくれ! 私が楽しみ、心ゆくまでの闘争のダンスを踊り、私を楽しませてくれ! 期待しているぞ♪ それでは、アデュー・・・・♪」

 

そして漸く、クリスティーナが去って行った。が、マコトがその背中に向けて吠える。

 

「あっ、待て! こんだけ大暴れしといて、ただで帰れると思ってんのかっ!?」

 

「マコトはん、深追いせんといて。帰ってくれる言うんやから、それで良ぇやん。カオリはん、マコトはんを抑えて」

 

「はいは〜い。マコト、悔しい気持ちは分かるけど、これ以上は本当に戦争になっちゃうさ〜。それにあの人、どうも手心を加えてくれてみたい? あの人が本気だったら、私達今ごろ死後の世界‹ニライカナイ›よ〜♪」

 

追おうとするマコトをマホとカオリが止めた。

 

「そうなのですか、主さま?」

 

“うん、あの人。完全に試していた感じだったよ”

 

聖剣ソードライバーと水棲剣流水を消し、火炎剣烈火を元の剣にもどしユウキがコッコロに応える。

 

「マジかよ、あれで手ぇ抜いてたってのか? ちっくしょ、馬鹿にしやがって・・・・!」

 

「妙に強かったなぁ、あの人・・・・。マコトはんとカオリはんを片手であしらって、王子はんが全力でも手加減してたん? う~ん、不自然な気ぃするけど。何かご存知やろか、えぇっと・・・・あんた、どうも【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】とは因縁がおありのようやけど」

 

マホがサレンに目を向けると、サレンはにこやかに応対した。

 

「うん、ちゃんと説明するから安心して。でも、その前に・・・・無事で良かったわ、スズメ。この子はもう、あんまり心配させないでよ」

 

「お、お嬢さま〜! こここ、怖かったです!」

 

サレンがスズメに目を向けると、涙ぐんだスズメが抱き着いた。

 

「今日だけで、あり得ないような修羅場を何度も味わっちゃいました! あ、頭が変になりそうでしたよ〜っ?」

 

「よしよし、可哀想に・・・・。ごめんね、駆けつけるのが遅くなって」

 

サレンはスズメを慰めながら、やれやれと肩を落とした。

 

「全くもう。何が何だか分かんないけど、どうも嫌な感じね・・・・。暫く平和だったのに、あちこちキナ臭いったらないわ。困ったものね。子供達の未来を、暗雲で閉ざしたくはないんだけど」

 

“・・・・・・・・”

 

サレンの気持ちが、ユウキにも分かった。

何かが起こる。クリスティーナの襲来は、その何かが起こる前兆でしかない。これからの行き先に、不吉な雲が立ち込めているのを、ユウキも感じていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ークリスティーナsideー

 

「♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜」

 

意気揚々と上機嫌で歩くクリスティーナと、その後についていく団員達。

そして、夜の星空と月明かりに照らされた『王都 ランドソル』の王宮の入り口前に、二人の人影があった。

銀色の長髪を後ろで結わえ、頭頂部にはアホ毛がチョコンと伸び、動きやすさを重視した中々に露出の高い格好に軽装の鎧を付け、腰には剣を巻き付け、右肩に羽根のアクセサリーを付け、凛々しい顔付きをしたユウキ達と同い年に見えるが、実は十三歳の女の子であり、【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の一員である剣士『トモ』。

そしてその隣、王宮の城門の前に仁王立ちしているのは、全身を漆黒に金色のラインが走った鎧で、その身を包みこんだ長身の鎧騎士。【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の団長‹ギルドマスター›『ジュン』であった。

 

「ーーーークリスティーナ! ただいま帰参した! 出迎えてくれ! 盛大に!!」

 

「っ! クリスティーナ! あ、あなたと言う人は!!」

 

が、そんなクリスティーナの態度にわなわなと震えながら、トモが声を張り上げて詰め寄る。

 

「一体何を考えている!? 陰謀を巡らせ、【自警団‹カォン›】のギルドハウスを急襲するとは、道理にもとる悪行だ! それが騎士のやることか!?」

 

「おや? いきなり喧嘩腰とはいただけないな? おかえりなさいくらい言ってくれ、『トモちゃん』♪ ふふん。それに、これが騎士のやる事さ・・・・世間知らずの、お嬢ちゃん」

 

しかし、トモの怒りなど何処吹く風と言わんばかりの態度のクリスティーナに、さらにトモは神経に障り、怒りのボルテージを上げていく。しかし、クリスティーナは止まらず言葉を続ける。

 

「騎士だの何だと、格好を付けてみても。所詮は、血塗れのならず者に過ぎない」

 

「あなたが、そんな風に堕落しているから! 我ら【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の評判も、地に落ちるんだ!」

 

我慢できなくなったトモが、更に声を張り上げる。

 

「あなたに、『誇り』はないのか!?」

 

「そう興奮するな、鬱陶しい。いつもは軽口を叩いて余裕ぶっているだろう。そっちの方が愛らしいぞ? くくく♪ 根は真面目なんだな、火傷してしまいそうだよ。否。庶民の出である貴様は、そう言う風に誇り高く振る舞う事で・・・・ごっこ遊びじみた『騎士らしさ』を振る舞う事で、劣等感を克服しているのか?」

 

「私を解釈するな、クリスティーナ!!」

 

クリスティーナの態度に、声を荒げるトモは、もう爆発寸前の状態であった。

 

「口の利き方には気を付けろ、小娘。今日は楽しい経験を存分に堪能したし・・・・このまま良い気分のまま、寝てしまいたいんだ。それに見た通り、肩の鎧を失ってそれなりにショックでもあるからな。貴様とじゃれ合う元気がない。明日にでも、また相手をしてやるから。今日はお家に帰って、ママの手料理でも食べて寝ろ」

 

「こ、子供扱いするな! 『ジュンさん』からも、何か言ってやってください!」

 

成人女性のクリスティーナから見れば、十三歳のトモは十分子供であるが、トモはそれに憤り、団長のジュンに話しかける。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しかし、ジュンは沈黙していたが、その仮面の奥の眼光はクリスティーナを見据えていた。

 

「団長。あんたも、私を蛮行を繰り返す愚か者として糾弾するか?」

 

クリスティーナがそう問うと、ジュンから凛々しくも美しい女性のような声が響いてきた。

 

「貴様の処遇は、『陛下』が差配する軍法会議によって決められる。私には、貴様を裁く権利はない。貴様は、『陛下』の『密命』を帯びて行動しているらしいな。貴様もまた、『操り人形』だ。それを自覚して納得しているならば、私から言う事は何もない」

 

しかし、ジュンは声を少し和らげる。

 

「だが、その立場に貴様が苦しんでいるなら、助けてやりたいとは思っている」

 

「お優しい事で。私は単に、平和に飽き飽きしているだけさ。今回の件で火種は蒔けたし、先行きが面白そうなのも見つけられたし、取り敢えず満足だ。後は、どれだけ燃え広がひ、熟してくれるか・・・・♪」

 

と、そこで、ジュンの後方からやってくる人影をクリスティーナは見つけた。

 

「・・・・おっと。呑気に、お喋りしている暇は無さそうだな」

「・・・・・・・・・・・」

 

クリスティーナの言葉にジュンとトモが振り向くと、そこには以前ゴーレムメギドとの戦いの後に、ユウキ達と行動を共にした獣人‹ビースト›の少女『キャル』がいた。

 

「・・・・ご歓談中、失礼致します。『陛下』がお呼びです。クリスティーナ副団長。至急、謁見の間へとお越しください」

 

「了解、『陛下』に呼び出されては無視もできん。一体何のご用だろうな、所在不明や行方不明となった聖剣を発見したご褒美でもくれるのかな?」

 

「存じあげません。用向きについては、陛下に直接お尋ね下さい」

 

気安い態度のクリスティーナに、キャルは素っ気なく応えた。

 

「ふふん。貴様、キャルとか言ったな? 貴様も獣人‹ビースト›だろう、その耳に尻尾・・・・今回の一件について、貴様も何か思う所があるのではないかな?」

 

クリスティーナはそのまま挑発するようにキャルに言葉を続ける。

 

「良いぞ、思いっきり面罵してくれても。同胞たる、獣人‹ビースト›達を襲った慮外者としてな。・・・・貴様と遊ぶのも、中々楽しそうだ♪」

 

「あたしは、単なる伝令役です。絡まないでいただけると、幸いです。それに・・・・“あたしも陛下も、この国の獣人‹ビースト›達とは関わりがありませんから”」

 

キャルの言葉に、クリスティーナはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、貴様らは一体何なのだろうな。おい団長、それにトモのお嬢ちゃん・・・・貴様らは、『不自然』だとは思わないのか? ランドソルの王族は、歴史的に獣人‹ビースト›達とは犬猿の仲だ。血生臭い、対立と闘争を繰り広げてきた。最近は、休戦状態ではあったが」

 

クリスティーナは更に続ける。

 

「だが・・・・そんか我らの親玉たる『陛下』も、その腹心たるキャルは獣人‹ビースト›だ。これは、変ではないか? 私はな、どうにも釈然としないんだよ。もしかしたら、私達は全員、あの陛下に一杯食わされているのかも知れないぞ?」

 

「口が過ぎますよ、クリスティーナ副団長。不敬罪に問われますよ。それよりも、お急ぎください。陛下を、待たせてはなりません」

 

「あぁ、良いとも。手を引いてエスコートしておくれ、愛らしいお嬢ちゃん・・・・♪」

 

そう言って、クリスティーナはキャルと共に王城の中へと向かっていった。

 

 

 

 

 

ートモsideー

 

クリスティーナが去るのを見送ると、トモはジュンに話しかけた。

 

「・・・・・・・・ジュンさん、どう思います?」

 

「取り敢えず、あんまりギスギスしないで欲しいな〜と思った」

 

クリスティーナが去るのを見送り、トモが話しかけると、ジュンは先程までの固い口調が消えて、気安い口調で応じるが、すぐに先程までの口調に戻る。

 

「クリスちゃ・・・・クリスティーナ副団長と、お前の馬が合わないのも分かる。仲良くしろ、と無理強いはしないが。一応仲間なのだから、もう少し理解する努力をして挙げて欲しい。あいつも、あれで中々難しい立場なんだ」

 

「まぁ、努力はしますけど。それよりも、気になる事が二つあって・・・・先ずはあの伝令役、キャルとか言いましたか? 一体、何者なんですかね? いつの間にか、陛下の小間使いとして」

 

「どうにも、不可解だな。私も先程副団長が言及するまで、何も変だと思わなかった。すんなり、受け入れていた。かなり、『不自然な存在』だと言うのに」

 

『違和感』と『不審感』が、徐々に大きくなって行っているのを感じている。

 

「そもそも、確かに妙だ。どうして歴史的に対立している筈の獣人‹ビースト›が、我らの長として君臨している? 矛盾している。論理の整合性が取れていない」

 

と、そこでジュンは一旦間を置く。

 

「喋るのは苦手だ。上手く説明できないが、どうも『心』と言うか、“認識が書き換えられているような”・・・・得体の知れない、『違和感』がある」

 

そして、トモに視線を寄越すジュン。

 

「トモちゃん。私には王宮の守りの要として、ここに鎮座している義務がある。自由には動けん。だから私の代わりに、お前には色々と調査などをして欲しい」

 

騎士団の団長であるジュンは、王城の門のに立つ事で、城には賊は入れないという証ともなっているのだ。故に、身動きが取りやすいトモに頼んだ。

 

「この『違和感』、先程クリスティーナが言っていた『聖剣』、そして今回の騒動・・・・全てが、巨大な陰謀の一環かも知れないぞ。どうも、思った以上に根が深そうだ。慎重に丁寧に解きほぐして、真相を詳らかにする必要がある。私が動ければ良いのだが、肩書きが『足枷』となっている。だから、お前に頼む。危険かも知れないが、他に方策がない」

 

「構いませんよ。信用されているようで、光栄でもあります。ちょっと、心当たりもありますし・・・・あちこち、探ってみます。危険は、元々承知の上ですしね。命を捨ててでも国難を廃し、王家の敵を成敗する。それが、我ら【王宮騎士団‹KNIGHTMARE›】の使命でしょう?」

 

「うむ。全ては、我らの信じる『正義』の為に」

 

頼もしいトモの言葉に、ジュンは力強く頷き、鞘から剣を抜いて夜空に掲げて宣言した。




さて次回、サレンちゃんのギルドハウスへと向かう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。