人外が差別される世界で、いつの間にか人外になってました。~色々大変なことがありますが俺は元気です 作:kuroe113
「ちょっと、銃器を仕入れてくる」
俺は二人を連れて、行きつけの店にやってきていた。
これからは銃のレンタルなどといった雑用を任せるかもしれないのだ。ちょっとした研修という意味もあった。
待たせている二人は、きっと怪しい店を想像していたのだろうが、ごくごく普通の店に返って驚き戸惑っているように見えた。
店に入ると、店主には二人のことを話すことなく、いつも通り仕事を進めてもらう。
二人のことは信じるが、正直この店主にそこまで信用はない。いつ裏切るか、いつ騙されるか。そんな警戒があるからこそ、初回、まだ、二人に化物退治の適性があるのかどうかわからない今紹介するつもりはない。
だってそうだろう、最悪二人のことでこちらを脅してくるかもしれないし。
それで、取引してわかることは一つ。
お金を持っているのって素晴らしい!
持ち逃げしないように金を置いて行けという話も、実物持ってるからあっさり終わった。
これで狩りから帰れば何倍もの金が手に入るのだ。
ぼろい商売だ。
「自動拳銃。幽霊ように聖水。塩、逃走用に煙幕と。これはできれば使いたくないけど、爆弾が数個。」
複数人で狩りに行くのだ。持っていく物資は普段よりも断然多い。
特に爆弾なんてものは毎回最終手段に持っていくけど、いまだ使ったことがない。
あ! 今思えば、銃器の使用に不慣れなメンツがいるし、置いて行ってもいいかもなと思ったが後の祭りだった。
「で、改めて聞くんだけど危険とかないわけ」
「そりゃあ危険じゃないわけないだろう」
お前バカだなぁっと俊樹があおれば、美香はこういうのは心構えが大切なんだから些細なことでも聞いておいたほうがいいでしょと反論する。
それは確かな真実であり、二人の不安を解消すべく俺はあえて大丈夫だと声をかけた。
「俺も、数度狩をやった。
感想として、危険度は普通の獣と変わりない。なんなら熊のほうが恐ろしいくらいだ」 ま、俺クマと戦ったことないんだけどな。
大げさなほどに怖がっているようだが、でもこれは仕方ないと思う。
未知という事象はどうしても人に恐れを生むのだから。
分からない、理解できないということはそれだけ人の神経に負担をかける。
誰だって、初めてやるときは不安を感じあれやこれやと余分な動きがあり、余計な体力を消耗してしまう。
本質的にはそれと同じだ。
「それにしても、未成年のあんたが大量の銃器を仕入れるといったから、もっとやばいところかと思ったけど、案外普通の場所よね」
もっと、路地裏の奥にあるこじんまりとした隠れ家の様な店を想像していたのか、ごくごく普通に営業している武器屋を見て美香は驚いていた。
「現地にも基地があるのよね。だったらその基地で銃器の貸し出しすればいいのに」
「そういってやるな。後ろ暗いことをやっている連中はどいつもこいつも回りくどく事を運ぶものだぜ」
「ああ、わかるわかる。これを手に入れたのも闇の武器商人よね。そんなもんが巷に武器をばらまくとか怖いわよね。この国の未来は暗い」
美香が妄想全開で自分の意見を語る。こいつは噂話好きで、たまに、よく分からない噂話を仕入れてはそれを自慢げに語るのだ。
たいていそれは見当はずれの荒唐無稽なものばかりだが、ごくまれに、物事の本質を突いたような、真実までのステップを数段かっ飛ばしたような話題を持ってくるのだ。
まぁ、今回は前者だが。
「ちなみに、ここは、普通のガンショップだぞ。
偽造された身分証で買っているから一応表向きは犯罪行為ではない」
その分、俺は犯罪を犯してるんだけどな。
「うわ、知ったかぶりすんなよ。これで間違えるとかものすっごい恥ずかしいやつだよな」
「いや、これ、普通のガンショップで色々とやばいことができるほうがまずいよね、闇深案件でしょうよ」
「ごもっとも」
美香の指摘に、俺たちは何も言えなかった。
「まぁ、現地の基地でも、目立つ武器。ライフルを受けとるんだがな。
治安悪いから、ここはすぐ出るぞ。
最悪二、三日野宿するけど、お前らなら問題ないよな」
その問いに二人は大きくうなずいた。
「そういえばだが、このバスどこ向ってるんだ」
「俊樹さんや、そんなことも分からないのかい。
この辺で化け物が出るなんて樹海以外ないでしょうよ」
と、世間話をしていると、俊樹がその持ち前の警戒心の高さを発揮して、湿原をかました美香の太ももをつねっていた。
俺たちは化物の死骸を手に入れようと行動を起こしたわけだがそこには様々な制約が存在している。
人の視線や注目を避けるためにと様々な決まり事をつくったほどだった。
その一つがこれからの仕事、これからの予定のことを人がいる中ではなさないというもの。
化物と連想されることを話していればバスの運転手に怪しまれるかもしれないからだ。
「つうか、これまだつかないのかよ」
もともと、こういった時、口数多く場を和ませる俊樹だが、今ではその面影すらなかった。
バスの外を覗けばろくに整備がされていない田舎道が広がっている。
ガタンゴトンとアスファルトさえ敷かれていない道を時折石をはねたのか水たまりを踏んだのか上下に揺れる。
そのたびに俊樹はうーうー言いながら、目的地にはまだつかないのかと、虚しく呪詛を送る。
そう、こいつはこの舗装されない道路のせいで酔ったのだ。
国土の狭い日本では平野というだけで開発する価値がある。
実際、道にはここに昔人が住んでいたのだろうと思わせる屋敷の跡地と瓦礫の山があった。
その理由こそが第一級禁足地富士の樹海だ。
あるいは話に聞く夢見る人たちが口にする魔法の森か。
邪神降臨による世界のバランスの崩壊。
それはこれまで空想のものとされてきた神秘を現実のものとして表出された。
それにはそう、悪い面と……悪い面があり。
古くから存在するパワースポットでは怪我の直りが速くなるなどの効能があるのだが、それと同時に妖怪・お化けと悪いものが出てくる始末。
最後には、樹海から人類が追い出されたのだから、やっぱり悪い面しかないよな。
「すいません乗ります」
と、そんな寂しい場所の寂れ、忘れ去られたかのようなバス停に乗客が現れた。
国の政策というのは難儀なものだ。便利だからという理由で行きたくもない場所に向わないといけないし、乗せたくもない客を乗せなければならないときもある。
交通インフラというのは特にその傾向が顕著であり、そこに行くのかもしれない誰かのためにめったに人が来ない場所にまでバスを運ばなければならなくなる。
バスに入ってきたのは一人の女だった。
年のころは二十代前半くらい。ほっそりとした体躯に艶やかな黒髪。
この年頃ならばみな美しさの盛りということもあってか、誰でもそれなりに見栄えがいいのはあるがそれを差し引いても美しいと思える女性だった。
そこら辺のOLが着るスーツを着ていることからも、どこか人生に疲れているのではないかと思えるけだるさを感じるもののどことなく品がある。
ただし、その上品な雰囲気を台無しにするかのように首筋がはめられていた。
一瞬おしゃれ目的のチョーカかと思ったのだがそんなことはない、それはもっと武骨で度し難い拘束具だった。
俺は一瞬体がこうちゃくした。
二人に、派手な行動をするなとくぎを刺したのに、自分でそれを破るのはどうかと思ったからだ。
しかし、俺は我慢できなかった。
「おい」と俺は運転手に声をかけた。
となりで、俊樹の背中をさすりながら、あっと一体どれくらいで目的地に着くと予想を立てていた美香が突然の大声に、びくりと反応した。
「なんでこの人間用のバスに混血が乗車している」
「とはいえこのバスは公共の乗り物でして。金を払えばだれでも」
「それは人間同士の話だろうが。なんであんな危険物と」
怒りからつかみかかろうとした俺を背中をもはやタックル同然の勢いで細い腕が拘束した。
「すいません。此奴過去にいろいろあったみたいで。でもまぁ、お仕事頑張ってください」
と会話を切り上げようとするが、まだ話は終わっていない。
「ちょい! 私たち、これからあれでしょ。目立つ行動はちょっと!」
でも、耳元でささやかれたことも正論だった。
というより、俺が決めたルールだ。
あんな掃き溜めに向かうのはすべかららくが訳ありだ。
このバスに乗っている時点で俺たちが怪しまれていてもおかしくはない。
「おい、俺の視界に入るな化け物」
すれ違いざまに黒い長髪の女に対してさげすむように口にしてどっかりと俺は席に座った。
「はぁ」
諦めたように小さなため息をつき、女のほうも騒ぎを起こしたくないのかバスの奥の席に座った。
これなら俺の視界に入ることはないな。
主人公が人外になると書いていますが、人外になるのはかなり先ですね。