人外が差別される世界で、いつの間にか人外になってました。~色々大変なことがありますが俺は元気です   作:kuroe113

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第26話救援

 時が来れば救援がやってくるかもしれない。それは希望だった。

 信号を送ってきた人物がたてた作戦はまだ分からない。それでも、援軍がやってくるのが確定したので、いくらか気が楽になった。

 問題はそれまで俺たちが耐えきれるかだ。

 

「いくら何でも、いくら何でもですよ、出会ったまだ数時間しかたっていない人間を囮にしますか、普通」

「そちらも儂を助けなければならないと納得していたと思うが」

「いくらなんでも限度があるでしょう」

 

 ピエロになることで二人は時間を稼いでいた。

 仲間割れをしている俺たちを見て楽しんでいるのか、すぐに始末できるからという教書の余裕か。いまだ化物は上座でこちらを眺めていた。

 よい御身分で。

 せめて精神面では優位に立とうと、俺は内心で侮蔑の声を投げかける。

 もっとも、時間稼ぎができる状況はこちらにとっても都合がいい。それをむざむざ潰さないので内心でだけだが。

 

「もうそろそろいいか」

 

 言い分けないだろ、もっと時間をよこせ。とは思うが、落ち着いて周囲を観察し信号に気がつかれるのも面倒だ。

 ほら、もっと油断しろよな。と俺は願う。

 実際、時間稼ぎができている理由はこいつの油断だ。

 相手が弱い、自分なら絶対に勝てるという驕りが敵に与える必要のない時間を与えている。

 その時間で作戦会議を終えたのだ。

 しかし、猶予はこれまでだった。俺たちは時間を向こうの施しによって与えられている。相手が施しを与えないと決めれば休憩時間は終了だ。

 

 

 さあ、これから戦闘を再開するぞという、まさにその時だった。

 波子三が俺たちにハンドサインを送る。

『目を閉じろ』

 という指示に思い出したのは先ほどの閃光弾。ここでそれを使うつもりだなと推測した。

 

「戦闘に巻き込まれるとまずい、離れるぞ」

 恐らく俊樹はハンドサインを理解していない。言葉で伝えるのはさすがにばれる。上手い理由を何とかひねり出し、俺たちは戦場から背を向けた。

 え! 背中を向けるなら、誰か一人を忘れている。はっはっは!あいつは人間じゃないので誰かには当てはまらないんだぜ。

 実際、明確に敵視されているあいつが背中を見せれば化物が何をするか分からない、なので大将を置き去りにした。

 

 

 ーーそして、世界が白い光で覆われた。

 その光量は恐ろしく、背中を向け、思いっきり目をつぶっているのに、世界が白一色に染まっている。

 この漂白された世界でも争いごとがなくなることはないらしく、金属と金属がぶつかり合う音が響く。

 これだけ有利な状況を整えても勝ち越せないとは。化物め。

 

 光が収まり、目を開けると、武器と武器をぶつかり合わせる二人の女の姿があった。

 両者とも、渾身の力を籠め押し合っているせいか顔が赤らみ、汗が地面にしたたり落ちている。

 

「光の呪詛か、それを人型に押し付けるとは、なかなかに考え抜かれた作戦じゃないか」

「そちらこそ、視界がきかないこの状況で見気だけで周囲を把握するとは。恐ろしい腕前よね」

 

 激戦のさなか、二人はお互いを讃えあう。この、戦闘狂どもと俺は理解できない状況に頭痛すら感じた。

 

 

 分かっていたが、不利なのは波子三だ。

 もはや物理的な干渉すらしてくる気と魔力の波動。

 ただそれだけでも両者の実力が如実に現れていた。

 じりじりと、波子三が押されていく。

 

 それでも勝負が決まっていないのは武器の性能の差だった。

 釘バットと巨大な鏡。

 両者とも、どう言いつくろっても上等な武器とは言えない。

 

「武器の性能ならば、まだこっちのほうがましなのに」

 

 それでも、どちらが優れた武器かと問われれば一目瞭然だ。

 化物の武器は鏡。頑丈なのでたてにはなるだろうが、あれ絶対使いにくいよな。だってそうだろう。そもそも武器として設計されていないんだから。

 釘バットも上等な武器とは言えないだろう。けど、こん棒というのは有史以前から使われてきた歴史ある武器だ。それだけで鈍器としての優秀さが知れる。

 

 こんなことをしていてもらちが明かないと考えたのか、両者は一歩後ろに下がり勢いよく武器をぶつけ合う。

 

 その攻防を制したのは化物だった。

 腹部に対しての重い一撃。しかし、「まだまだぁ」と、波子三はすぐに復帰した。

 

 そう、両者の頑強な肉体のせいで、鏡という鈍器程度の一撃では波子三を崩せないのだ。

 接近戦という土俵に立っているからか、化物はろくに魔術をつかえていない。

 有利なのは波子三のほうのはずだ。だがーー、

「だというのに、こいつはその武器の性能差を純粋な自力の差で覆している」

「その通りだ。ただ一撃を食らわせられた以上の差が、この二人の間に存在している」

 

 と、俺の独り言に大将がのかるが気まずいのでやめてほしい。

 

 

 心の距離はあれど、その考えに差異は存在しなかったようだ。全く同じ行為を俺たちは取った。

 俺は銃を、大将は矢をつがえる。

 このままでは負ける。ならば、ほんの少しでも隙ができればそこから援護射撃を叩きこむ。しかし、その隙がこれっぽちも見つからない。

 

「なんて攻防だ。鎌倉で見た武芸大会の決勝にも匹敵する」

 と大将はかつてを思い出しているが、俺にとっては人生最高の攻防戦だ。

 これほど激しいどつきあいを始めてみた。

 一瞬ごとに立ち位置が入れ替わる。とてもではないが、狙いを定めることができない。

 

「そもそものレベルが違う」

 

 それどころか、俺は敗北感すら感じていた。

 一生かければだとか、決死の覚悟で挑めばだとか、そんなレベルではない。どうあがいても、どんなに努力しても、こいつらに追いつけないのではないかという生物としての格の違いを俺は感じる。

 結局、拳銃を構えてごっこ遊びをするだけで、それ以上の行動を俺は取れないでいた。

 

「そういえばの話なんだけど、どうして波子三はあの光の中で動けたんだろう。呪詛を押し付けたと徳子は言ってたよね」

 

 緊迫した雰囲気のなか、打つ手がなくただ待ちぼうけを食らうしかない俺たちに俊樹は自分の意見を口にした。

 

「恐らくだが、憑依系統の力で、人型に押し付けたんだろう……な」

 

 そこまで口にして、俺はようやく俊樹の仮説を理解した。

 もしも人型に押し付けが可能なら。これは逆転の一手になるかもしれない。

 

 

 運がいいことに波子三は戦闘の邪魔になるとカバンを放り投げていた。

 閃光弾らしきものもそこにはあった。

 

「ねえ、これどうやったら使えるんだよ」

「分かるわけないよ。そもそもの話、独自に改造されてるんじゃないの」

 

 しかし、俺たちには使い方が全く分からない。

 

「よし、説明書があるだろうからそれを探して」

「そんなことよりも適当にボタンを押して」

 

 そんな風にああでもないこうでもないと言っていれば、最終的に大将がそれを手に取った。

 そして思いっきり地面に叩きつけた。

 

 すると、光が世界に漏れ第s田。

 結局アナログが最強だったということだ。

 

 援助を受けた波子三が遂に化物を捕らえた。

 

 

 それと同時に鏡が割れ、化物は無傷になる。

 このままどつきあっても勝ち目がないのはもうわかった。

 だから援助に俺たちは賭けることとする。

 そして、攻防の末にやってきたのは……。

 

「あれは」

 それを最初に見つけた俊樹が驚きの声をあげた。

 

「何でこんなところに、飛行機が」

 

 正確にはグラインダーだが……。

 どうしてこんなところにという驚きと、同時に助かったという思いがあった。

 

「美香もう少しだ。あと少しだから頑張れ」

 これから逃げるということで、俺たちはいったん下した美香と月与ちゃんを背負いなおしていた。

 後は空を飛び逃げるだけということで、重い美香を俺が、軽い月与ちゃんを俊樹が背負う。

 そうこうしている間にもうグライダーが迫ってきた。

 

「月与ぉぉおおおぉぉぉ、お姉ちゃんが助けに来たよぉぉぉおおおっ!!」

 

 気持ちは分かるけど、うるせえ!!

 横で、波子三の上司らしき人物が何か言ってるようだけど、聞こえねえ。

 

「あれっていったいどうやって乗るんだよ」

 

 困惑する俊樹に、俺ははっとなった。

 もしかして、あの男が今口にしているのがこのグラインダーへの登場方法じゃないのか。

 それを聞き逃すなんて、不安しかないぞ。

 

 ここは、同僚であり、あの男の手の内を知っている波子三に恥を忍んで攻略方法を知らせてもらえれば……。

 

「これってどうやって乗ればいいの」

 

 いや、お前も知らないんかぃ!!

 

「弐の鎌」

「神、有能、天使!!」

 

 俺たちの困惑を知ってか知らずか、男は見るからに頑丈な鎖を差し出してくれた。感極まった俊樹が訳の分からないことを言っているが、ここは放っておこう。

 

 急いで鎖が差し出された場所へ俺たちは走り出した。

 最初に波子三、次に俊樹、そして最後に俺。

 大将も鎖を掴もうとしたが、鎖そのものに弾かれてしまった。

 

 こいつは人間じゃないから、ここに置いていくつもりだ。

 手を伸ばせば連れていくことができそうだが、わざわざ化物を連れていく義理はない。

 

 それに、こいつをつれていくことはリスクも存在している。

 ほぼ確定であの化物が追跡しているのだ。

 その恐怖を想像するだけで、身が震える思いだ。

 

「嫌がらせ万歳」

 

 だが、そんなものは知ったことか。俺はこいつを連れ去った時、あいつがするであろう間抜け面を思い浮かべ手を伸ばすことにした。

 

「待って、そいつ連れていくの」

 グライダーの上から困惑する声が聞こえて来た。

 

「早く出せえええ」

 

 と言っても、動いているこれが止まることはないんだけどな。

 

 

「ネズミ目。このような手を残していたとは」

 

 そして、最後の後ろを振り返れば、そこには悔しそうに表情を歪める化物の姿があった。

 これだけでご飯三杯はいけそうだ。

 

 




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