人外が差別される世界で、いつの間にか人外になってました。~色々大変なことがありますが俺は元気です   作:kuroe113

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第46話目覚め

「ここはどこだ?」

 

 あの大事件からいったいどれだけの時間が過ぎ去ったのだろうか。

 目を開けると、そこにはよく知らない天井があった。

 きょろきょろと周囲を見渡せば、骨折、裂傷、昏睡状態と多数の病人と消毒液の独特の臭いのせいで、ここが病院なのだろう。

 

 幸運というべきことだろうか。巡回中のナースが見えた。

 

「すいません、事件の概要を知りたいので俺のスマホはないか。新聞か雑誌持ってきてくれませんか」

 とお願いした。

 

「被害者の数は警察官や軍人も入れて、345名。負傷者は2035名か、近年まれにみる大災害だなこれ」

 そして、この事件は世間では『鎌倉事変』と呼ばれているのを知った。

 

「信じられますか、この町の霊的な復興は混血が取り仕切るんですって。あんな訳の分からない連中に国の命運を託すなんて」

 

 新聞を読んでいると、とこからナースさんが世間話をしようと話しかけてきた。

 街の声はそんな訳の分からない集団と関わりあいになりたくないだろうが、この町を修復した姿を見た俺から言わせてもらえば、他に適任者がいないのだろうと予測できた。

 何せだ、この事件を白夜一人が解決したのだ。

 

「それで、この混血のアジトなんだが」

「なぜ、そんなことを」

 

 俺は素直に自分もまた混血であると打ち明けた。

 

「うそでしょ、まさか」

 すると、さっきまでこちらに来やすく話しかけてきたナースがその態度を一変させた。

 

 もう話しかけることはないと、逃げ出したのだ。

 

「これが現実か」

 

 そうだ美香はと、俺は自分が寝ぼけていたことを自覚する。真っ先にきかないといけないことを聞き逃したのだから。

 

「いや、違うか」

 

 俺は逃げだしたのだ。

 自分が混血になったのだから、あのナースのように美香が俺の元から逃げ出してしまうのではないかと。

 でも、立ち止まるわけにはいかなかった。

 

 

 とにかく、白夜さんたちと合流できそうなところに行こう。

 当ては……、あの神樹がそびえたっていた場所なら、会えるだろうか。

 とにかく、今後について話そうかな。

 もっとも、この大混乱の中だ。あいつも忙しくてまともに話せるとは思わないけど。

 

 

 

「え! まじ、そこまで値引きしてくれるのかい」

「まぁ、これに関してはな。他では売れないし」

「ありがとう。おっちゃん」

 

 と思ったら、なんかのんきに買い物してるんだが。

 いやでも、農家相手に大量注文。それを考えれば現地で商売してるともいえるのか……。

 

「お前、こんなところで何やってんのp」

 

 言いたいことなど、それこそ無限に存在しているのに、あまりにも意外な姿に先に疑問を口にしてしまった。

 

「何って、食材の調達。なんというか、うちって、名目上だと国から、食料の配給が行われているんだけど、横領のせいでこちら側には禄にに食料が配給されないもんで。若いもんたちに食わせないといけないので、こうした廃棄されるしかない農場というのは結構貴重だったりするんだ」

 

 あれだけの力を持っていたとしても、やはりというか、懐事情は寂しいらしい。力でどうこうなる問題ではないから当然か。

 というか、よく農家と仲良く会話できるな。

 俺はナースと仲良く会話できなかったぞ。

 

 

「すいません、こいつと話があるんです」

 

 と言えば農家は空気を察してくれた。いい人だ。

 

「それで、一体」

「初めに言おう、悪いと」

 

 さぁ、歯を食いしばれと、俺は目の前の女に対して拳をたたきこんだ。

 

「お前よくも人間爆弾なんてやりやがったなぁ!!

 それをやって傷つく人間もいると少しは考えやがれ!!

 照さんなんか、目の前で妹の死体が改造されたんだぞ。

 俊樹もだ、お陰で俺はあいつの歯かを立ててやることもできない。

 この見た目だけの、ゴミ屑女ぁ!!」

 

「待って、まって、今はやめて。今は朝だから肉体強度はないし、夜みたいに回復できないから。

 それに、そっちだって、納得していたじゃないか」

「それは、理屈と感情は別なんだよ、このバカぁ!!」

 

 俺は容赦なく目前の顔だけ女を殴り続ける。

 

「後生だから、後生だから、顔は、顔だけはやめてぇ!! お腹とかならいいから、痛みは同じぐらいだし、夜になったら治せるし、下手したらこれ以降の仕事に影響出るから、マジやめてぇ!!」

 

 反撃しようと思えばいくらでも反撃できたのに。やり返さないのは、こちらに対して申し訳なさがあるのか、それともこれから入社する俺に対するご機嫌取りか。

 

 

 やがて、俺は疲れ切り拳を収めた。

 こいつにはまだまだ言いたいことが山のようにある。むかつくこともだ。

 遺族のためにこいつを殴ったが、こいつに恨みがある人間がいたらもっと殴らせてやってもいいとすら思える。

 

「まったく、あの時は私の下で働くといったけど、やっぱり、こんな汚れ仕事やりたくないと思う」

 

「ああ、もちろんだ。こんな多くの人が死ぬ仕事、人間爆弾なんていかれた作戦を行う上司、みんなからの風当たりもきついし」

 

「それじゃあ、最後に一つだけ。

 この光景、桜と紅葉が咲き乱れる、この鎌倉をどう思う」

 

 

「?」

 

 その問いかけに、胸中で様々な思いが、錯綜した。

 なんといえばいいのか、悩みに悩んだ末に、

 

「最高に『クール』だったよ」

 

 そう言って、小さく笑った。

 

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