魅了チートなんて欲しくなかった……   作:ざいざる嬢

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オリジナルなので初投稿です。

どうぞ皆さん、よろしくお願いします!



1話 転生

 

 

 世間一般の皆様は『魅了』という言葉を聞いて何を思うだろう?

 一般的には人の心を引きつけるようなことを指す言葉だが、これが能力だったらどうだろうか?

 あらゆる創作物における魅了能力のは、相対した人間や生物の心を奪い虜にする、精神的に操るというものが多いらしい。所謂、洗脳系、精神操作系と言われるものだ。

 相手の意思に関係なく従わせられるこの能力は、専ら悪役、敵役が持つような能力だ。安易に手を出していいものではない。

 

 何故こんな話をしたかって?

 それは、私──ルクス・アフロディアが転生した際に得た能力が『魅了』だったからだ。

 

 この『魅了』という力を得た経緯について、簡潔に話せば女神様から賜った──という一言で片付くが、詳しく話させて欲しい。

 

 

 

 

 

「第二の生を約束する代わりに、其方には私の──女神の使徒として働いてもらいます」

 

「当然ですね。こうして女神様直々に来世の約束をしていただけるのですから」

 

 俺は不運な事故で命を落とした。名前はもう覚えていない。 第二の生を得るのに前世の名は不要なのだと、肉体に置いてきた……らしい。

 そんな俺は魂だけの存在となり女神様と対面していた。魂が女神様の力で人型となり、肉体があるかの様に振る舞えているのはそういう訳だった。

 どうやら女神様の世界で働く人員が欲しいらしく、偶然死んだ俺を見つけたという。

 この時は幸運だと思った。なにせ新しく生を得られれば、欲しかったものが手に入るかもしれないと思っていたからだ。

 その為なら女神様のために働くのも吝かではない。

 

「では、まず対価として其方の魂に我が力の一欠片を授けよう。 其方らの世界では『チート能力』とでも言えば通じるのかしら?」

 

「そうなんですか?生憎、俺はそういうものに疎かったもので……」

 

 家族も友人もいない俺はそういった流行りのものにはあまり関心を得られなかった。ただ、職場でこういう作品が流行ってて〜という話を聞き齧ったぐらいだ。

 この後、女神様から「転生する時にこうして強力な能力を授かり、自分のやりたい様に生きるという創作物が流行っていた様ですよ」と改めて教えてもらい、なるほどと頷くことしかできなかった。

 

「まあ、私の授ける能力は女神である私と其方で契約していて初めて発揮されるもの。 私のために働かねばその能力は失われると思え」

 

「勿論です」

 

 要は貸し付けの様なものなのだろう。 働かずに能力だけ貰って自堕落に暮らすなど女神様が許すはずもない。当然のことだろうと思い、私は女神様と契約を交わした。

 

 

 ──思えばここが最大の分岐点だったのかもしれない。

 もしもこの時、与えられる能力のことをもっと詳しく聞いていれば……こんな人生を送ることはきっとなかったと思える。

 

 

 女神様の手がヒトの形をしている俺の魂に触れると、俺の中のナニカが埋められた──そんな感覚を抱いた。

 さて、どんな能力を与えられたのかと聞こうと女神様と目を合わせた瞬間──女神様の雰囲気が変わった。

 

「………なんて美しい……能力と魂がこんなにも綺麗に溶け合うだなんて……!」

 

「め、女神様?」

 

「………ハッ! いけませんいけません。つい魅入ってしまいましたわ」

 

 と、言いながらも女神様の様子が見るからにおかしくなっていた。

 先ほどまでは直面していたのに、急に恥ずかしそうに両手で顔を隠し、チラチラと指と指の間から俺を見ていた。まるで恋する乙女の様に。

 

「あ、あの女神様?」

 

「は、はひっ!?なんでしゅ?!」

 

 本当にどうしたんだと、何かあったのかと俺は女神様に近づき──

 

「あ、ああ!駄目! それ以上……それ以上私を見ないで───ッ‼︎⁉︎

 

「め、女神様!? って、なんだこれ!?」

 

 時すでに遅し。魂だけの俺は突如輝きだした。

 そして──

 

「…………はぁ、なんて美しい魂なの」

 

「め、女神様?大丈夫ですか?」

 

「あら、心配をおかけしましたね。 この通り、何の問題もありませんわ」

 

 確かに外観上特に何かが起こった様には見えなかった。

 ただ──明らかに俺を見る目が変わっていた。

 

「ああ、そうだ。 ()()()に与えた能力を説明していませんでしたね!」

 

 訂正。俺の呼び方も変わっていた。これは一体──?

 

「貴方様に与えた能力、それは『魅了』です」

 

「『魅了』ですか?」

 

「ええ、貴方様が望めば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そういった能力ですわ」

 

「な、なるほど」

 

 この能力の説明を受けた俺はこの能力を乱用しまいと心に決めた。

 精神に干渉し虜にする、この言葉だけで能力のヤバさがよく分かったから。

 だが、全く予想していなかった事態が既に起きていた。

 

「ああ……まさか女神である私まで魅了するとは……フフフッ、余程貴方様の魂と相性が良かったようですね」

 

「………え?」

 

 そう……転生前に能力を授けてくれた女神さまを『魅了』してしまったのだ。

 正直に言って私は女神さまを魅了しようとか一切考えてはいなかった。

 むしろ、来世──転生した先では誰かと愛し愛されるごく普通の幸せを望んでいた。

 それなのに何故こんなことに──?

 

「ああ、それと使徒の件ですが──やめました」

 

「は?」

 

「残念ながら貴方様を転生させないと、ここではやがて魂が霧散してしまいます。 なので、業腹ですが転生させなければなりません」

 

 そう言い女神様は俺の(身体)を掴み、人型から光の玉のような元の形に戻してしまった。

 

「本来なら、魂の宿らぬ赤子に魂を定着させ転生させるのですが──私の愛する貴方様は別です。 私が貴方様を宿しましょう

 

(──はい?)

 

 俺が女神様の下腹部へと押しつけられる。女神様の肌に触れるとそのまま女神様へと取り込まれていく。 同時に意識も薄れていく。俺は一体どうなるんだ?

 

「ご安心ください。 次に目覚める時は我が子として生誕するでしょう。 尤も、神の約定のもとそれぞれの神が管理する世界に誕生させなければなりませんが、いずれ必ず迎えに行きます」

 

 どんどん意識が薄れ、消えていく。それでも心地いいと思えるのは女神様の何かのお陰か。

 何も分からないまま、女神様の最後の言葉も途切れ途切れになり──

 

「ああ、私の貴方様。私の愛し子よ。 新たなる生における祝福として『ルクス・アフロディア』の名も授けましょう」

 

 

「そして──」

 

 

 ──俺の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを思い出したのが三歳の時。

 私、ルクス・アフロディアはこの世界に真に誕生した。

 そして自我を取り戻したその日の夜──再び女神様が現れた。

 

 





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