説明回です。
「ここは……」
辺りを見渡すと一面真っ暗な空間。ここは見覚えがあるというか……前世の最期、女神様と対面した場所だ。
何もなく、ただ暗いだけの空間だが、そんな場所に私以外にいるのは当然──
「もう魂が肉体に定着したのね。流石は私のルクス、そこらの
女神様だ。 転生したからか、転生前はただ漠然と感じていたものがより克明に感じ取れる。その姿も。
一言でいうのならば圧倒的な美。この一言に尽きる。
腰まで伸ばしたウェーブのかかった金髪に、輝くような白い肌。女体の極致ともいえる黄金比の肢体。そして、どんな宝石でも敵わないと思わせるほど美しい瞳を持つ女神がそこにいた。
「ここはルクスの夢の中よ。夢の世界に干渉するのは神々にとって造作もないことよ」
夢に現れた女神様は転生前に見た時よりも……なんというか、親しみを感じる。神聖な雰囲気よりも安心するというか……言葉にするのが難しかった。
「ああ、それと……女神様、なんて他人行儀な風に呼ばないで? 私のことは……そうね、お母様と呼んで?」
「なんて?」
突然のお母様発言に思わずたじろいでしまった。しかし、女神様──「お母様よ」──……お母様は気にしてはいない様だ。呼び方は気にしているけど。
それよりも何故お母様?それに加えて私の心を読めるのか?
「心は読めないけれど、大体貴方様の……ルクスの魂を見れば何を考えているか分かるわよ? だって神様ですもの」
魂で判別とか何かすごい。(語彙力)
やはり神とも呼ばれる存在は出来ること、やれることのスケールが違う。死した者の転生なんて人の身じゃあ決して出来ないことだしな。
「フフフッ、これぐらいのことならいずれルクスにも出来る様になるわ。
だって私の子供になったんですから」
「……ど、どういうことです?」
「あら? ……ああ、そういえばちゃんと説明せずに事を進めてしまいましたね。 簡潔に言えば──私がルクスを産みました」
とんでもない爆弾発言に声も出なかった。ただただその情報を飲み込むのが精一杯だった。
転生って女神「お母様」……お母様から産まれるってことだったのだろうか?
「転生者って全員めが──お母様から生まれるってことですか?」
そう聞くと少し不機嫌になったのか眉を顰めムッとした顔になる。 ただそんな顔をしてもその美は一切崩れていないのは流石だ。
「私が産んだ転生者は後にも先にもルクスだけよ。 でもまあ、いずれは貴方様と……」
何か不穏なことを口にしているがよく聞こえない。いや、聞こえない方がいいかもしれない。
「簡潔に状況を説明しますね。 転生した魂が新たな肉体に定着するまでにはある程度の年月が必要なの。大体早くても5年から10年ってところなんだけど……ルクスはたった3年で定着している。
これは素晴らしいことだわ。馴染むのが早ければ早いほど世界に順応出来るのだから」
なるほど、3歳と言えば前世の世界では赤子から子供へと成長する頃だ。そう考えれば私はいいタイミングで目覚めたといっていいのだろう。
「流石は私のルクスね。 後はこれからについて、ね」
「確か、使徒として仕事をしないといけないはず……ですよね?」
おぼろげだがあの時「やめました」と言われた気がしたんだけど、どうなのだろう?確認は重要だ。
「いいえ。ルクス、貴方にそれはもう求めていないわ」
「はい?」
「本当はね、王族の赤子に転生させてその与えた『魅了』の力で私への信仰力を高めさせようと考えていたのだけど……そんなルクスが望まないようなことをさせられないもの」
「え?そんなこと考えてたんですか?」
王族に生まれるのはある意味で勝ち組人生とも言えるが、王族は王族できっと苦労が絶えなかっただろう。
それに加えて、あの明らかにヤバい『魅了』を使わせようとしていたってことは、ろくでもない事をさせようとしていたのは確かだ。
信仰力というのはめ──お母様にとって重要なことだったんだろう。
「ごめんなさいね? でも、今はもうそんなこと微塵も考えていないから!」
うーん、いい笑顔。 むしろこっちが魅了されそう。
「その『魅了』はもうルクスのものよ。好きに使いなさい。
誰も彼もを虜にしてルクスのための国を──いえ、世界を作っても構わないわ」
「いや、そんなことしませんって。 むしろお返しします」
何を言ってるんだこの
そんな明らか悪役がやりそうなことを私がするはずがないだろう。
──私は普通に暮らしたいんだ。
憧れだった人並みの暮らしを。家族がいて、友人がいて、普通に学校に通って遊んだり恋をしたりして、やがて結婚して家庭を築いて──そんな、前世では叶わなかった素朴な、ありふれた夢を叶えたい。
その夢を叶えるのにこの『魅了』の力は必要ない。 無論、この力を使えば気になった相手を虜に──好きに出来るんだろうけど、それは私の望むものではない。
「あら、無欲なのね。 でも……私は母としてルクスには幸せになってもらいたいの」
そっと両手を取られ、
「……ああ、やはり美しい。 私の容姿もちゃんと受け継がれているようで良かったわ」
「お、お母様? ぼうっとしているみたいですけど大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。 だけど、もう少し、このまま……あぁ……」
そのまま
同時に私も
数分経った頃、ようやく
「ありがとうルクス。 貴方様の魅力を再び確認出来て良かったわ」
「それはどういう──」
……もしかしてだが、また
いや、私はそんなことをしていない……が、まさかだがこの魅了の能力は自動発動とかそういう融通が利かない能力なのか?
もしそうだとしたら、迂闊に他人と目を合わせられないぞ!?
「お母様、至急確認したいことが──!?」
瞬間、空間が揺れる。一体何事だろうか?
死んでからも、転生してからも怒涛の展開が続きすぎている。
「そろそろ目覚めの時の様ね。 残念なことにしばらく会えませんが……母はいつでもルクスを見守っていますよ」
「お母様! そんなことよりも聞きたいことが──!」
「神官たちには既にルクスを託した時に神託を下してあるから、この世界のことは彼らから学びなさい。 生活も全てサポートさせるようにしてあるから安心してね。
──愛してるわ、私のルクス」
そうして
「……夢、だったのか?」
私は目を覚ました。
神に与えられた能力は基本的に神々には通用しない様になっています。
なのに魅了が女神様に効いてしまったのは、能力と魂の相性が良すぎた結果、昇華されて魂の姿限定で神にも通じる様になってしまった……というわけです。
なお、魅了して意のままに操る能力ですが、主人公は特に何も命令していないので勝手にルクスのために女神様が善意でやらかしてます。
これも全部、魅了と相性が良過ぎた主人公のせいですね。
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