魅了チートなんて欲しくなかった……   作:ざいざる嬢

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毎日投稿逃してしまった……!



4話 儀式

 

 

 メディを先頭に儀式の会場へと案内されている。

 一応、そう言った儀式に関する知識はないと告げたものの「スカラップ神官長が進行するので、ルクス様はそのお姿を皆に披露なさるだけでいいのです」と言われてしまった。

 

 大広間へと辿り着くと、迎えてくれたのはあの場にいたスカラップを除いた8人。

 代表としてなのか、銀髪を短く刈り上げた髪型が特徴の男性が近づき礼をした。

 

「お待ちしておりましたルクス様。 既に準備は整っております」

 

「そ、そうか。 えーっと、あな──貴公の名は?」

 

「申し遅れました。 私はドルフィ。女神様の神託を受けるまでは神官騎士としてこの神殿の守護をしておりました。以後お見知り置きを」

 

 神官騎士か。よく見ればその体つきはガッチリとしていて鍛えられているのが見て取れる。剣などを握っていたからか、一瞬見えた掌にはタコが出来ているのも見えた。

 

「それと他の者も紹介したいのですが、時間が押していますのでまた後程……」

 

「わかった。 それで、私はここから何をすればいいんだ?」

 

「これよりルクス様はスカラップ神官長のお呼びが掛かった時に、こちらのドアから入場していただき舞台の上へと立ち、御身の存在をこの世の者に知らしめる……という手筈になっております。

 この儀式にはルクス様の御母上であらせられる女神様もその威光を示すと聞いております」

 

 え?女神様(お母様)夢でいつでも見守ってるとか言うから、しばらく会えないとかそういうものだとばかり「サプライズよ」 ……女神様(お母様)、マジで私のことずっと見守ってるのかな? それはそれで気が休まらないんですが……。

 

 

 それからしばらくして、スカラップの合図が届いたようでメディにこちらへと促される。

 扉が開かれ、歩を進めると──そこにあった光景は圧巻の一言だ。

 大広間というだけあり、天井は遥か高く、見渡せる空間も広々としている。

 スカラップがいる壇上の中心には女神様(お母様)を模して作られたであろう像が置かれていた。

 壇上から壇下を見下ろせば空間を埋め尽くすほどの聴衆がいた。例えるなら人気アイドルのライブ会場が満員になっているかの様な。 尤も、ライブの様にファンという名の聴衆が盛り上がっていたりはしなかったが。

 

 その場の雰囲気にのまれて思わず声が出そうになるのをぐっと飲みこみ「大丈夫よルクス。私も傍にいるわ」 ……うん。有難い。有り難いよ?緊張している最中、こうして姿が見えずとも誰かがいてくれるのは有難いことなんだけども! 少々介入しすぎじゃあないですか女神様(お母様)ァ!?

 私の心の絶叫に女神様(お母様)は言葉を返してはくれなかった。

 

「お待ちしておりましたルクス様。 こちらへ」

 

 スカラップ神官長が深々とお辞儀をして私を迎え入れ、壇の中心にある女神様(お母様)の像の前にと立たせた。

 

「皆の者! ここに御座すのが女神ヴィナス様の御子息であるルクス・アフロディア様である!」

 

 え?女神様(お母様)の名前今初めて知ったんですけど。 ヴィナス……似通った名前で覚えがあるのはヴィーナスだったか。有名な絵画にも題材にあったはずだ。 もしも同一神ならとんでもなく高名な女神「あれは私がモデルよ」 はい、まさかの本人でした。とんでもない方に転生させてもらったんだな私。頭が上がらないな。

 

「およそ30年前、かつてこの世界に混沌を齎した女神エリスが神座を降り、戦乱の世は終わりを告げた。 それから新たにこの世界を治めることとなった女神ヴィナス様の操る奇跡により、傷ついた世界は癒えつつある。

 しかし、ヴィナス様は我々を、世界を救うには信仰力が足りないと嘆かれた。 そう、あの忌まわしい女神エリスの所業のせいでヴィナス様まで疑うものは多く! あれだけの恵みを齎してくれたヴィナス様を未だ信用しておらぬ者が多いのだ!」

 

 なるほど、聞く限りだと女神様(お母様)の前にいた女神の尻拭いをしているのか。 前世でも覚えがある。勤めていた会社の上司が失敗を俺たち部下に押し付けてきて、全員で対処し手柄だけ持って行かれた──いや、これはちょっと違うな。 まあ、そのせいで女神様(お母様)がこの世界の管理に梃子摺っていた。だから、女神様(お母様)に従う使徒とやらを作って信仰力を取り戻そうとしていたみたいだが……。

 

「しかし、ヴィナス様は我らを、世界を見捨てなかった。 この世界を救う手立てとして、掌中の珠である御子のルクス様を我々に託されたのだ! ルクス様とヴィナス様が、二柱の神がこの世界を救ってくださると、神託を下されたのだ!」

 

 聴衆が騒めき立っていた。そもそも、私の存在を初めて知ったという反応の方が多いように見える。 そして私も世界を救うとか初めて聞かされたんだけど、どういう事なんでしょう女神様(お母様)

 

『ああ、所詮建て前だからルクスは気にしなくてもいいのよ? 今は世界よりもルクスの方が大事だから』

 

 それはダメでしょ!女神様(お母様)を信じてる人たちを裏切ることになるんだぞ!? くそっ、これも不可抗力とはいえ魅了してしまった弊害がこんなところで……!

 

「我々、女神の信徒はヴィナス様の御期待に応えねばならない! 我々のヴィナス様とルクス様への信仰が! 巡り巡って世界を救うのだ!」

 

 わああああ!と盛り上がる聴衆。 女神様(お母様)はあんなんだけど、不可抗力ながらこうしてしまったのは私なので精一杯のことはしようと思う。

 ──すると、突如背後にある女神様(お母様)の像が光り出した。

 

『──神託である。我が名はヴィナス。 ヴィナス・アフロディア』

 

 女神様(お母様)!? 女神様(お母様)の像から女神様(お母様)の声が聞こえる!?

 聴衆もスカラップ神官長も感嘆の声を上げて像へと跪いた。

 

『ヒトよ、これよりは我が子ルクスへも祈りを捧げよ。 我が子ルクスは生まれて間もない。それ故に神としての権能は未だ振るえぬ。 だが、其方らの信仰がルクスに捧げられし時、この世においてルクスの権能に勝るものはないだろう。 故にルクスのために生き、ルクスのために死に、ルクスに全てを捧げよ。 其方らの献身が力となり、後にこの世は希望の光に包まれるであろう──』

 

 神託が終わると同時に像から光が失われた。

 檀下を見れば私に刺さる視線の多いこと多いこと。視線で殺されそうだ。 女神様(お母様)なんてことを言ってくれたんでしょう。

 

「皆の者、神託は聞いたな! これより我らの信仰はヴィナス様とルクス様に捧げるのだ!」

 

「ルクス様万歳! ヴィナス様万歳! この世に神の祝福あれ!」

 

 万雷の喝采と共に儀式は終わった。

 本当に立っているだけで全てが終わったが、これから先の神官たちの期待が重い……!

 

 メディたちの案内のもと、用意されていた私室へと戻り今日はこのまま休ませてもらうことにした。 なにせ今日はまだ転生して自我を取り戻したばかりで色んなことが進みすぎたのだ。少しばかり気持ちを整理する時間が欲しい。

 そう思いながらベッドへと横になるとうとうととしてしまい……そのまま寝落ちしてしまい、気づけば朝になっていた。

 

 

 





用語解説

女神エリス
この世界の管理をしていた女神。転生者(使徒)を利用して自分の趣味に没頭した結果、100年単位で世界が戦乱に包まれたため管理者として不適切と神々に判断されクビになった。
割とデカい傷跡を世界に遺している大戦犯。

女神ヴィナス
ルクスのお母様。実はこの世界の管理をし始めて30年ほどしか経っていないが、神の権能を振るい戦乱で荒廃した世界に恵みを与えた──が、女神エリスのせいで神への信仰力がガタ落ちしていたため、それを取り戻すべく転生者(使徒)を利用し信仰力を取り戻そうとしていた。その第一弾がルクス。第一弾で終了した。
魅了されたこともあり、世界よりもルクスのことを見続けている。

信仰力
神への感謝や祈りがそのまま神が世界に対して振るえる力になる。また、信仰力の高さがそのまま神の格になる。
その為、人から信仰されないと神であっても世界に手出しできなくなってしまう。
エリスのせいで信仰力はガタ落ちし、ヴィナスが使えた権能は割とギリギリだった。



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