仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ エリシア×ハカイブ 灼熱!?人工太陽と日本フライパン作戦   作:大ちゃんネオ

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灼熱!?人工太陽と日本フライパン作戦

 緑に萌えていた木々は葉を落とし、冷たい風が吹くようになった季節。夕日差し込む中、博士ことエリシアの自宅ではあの陽の気溢れる日向盈月が物憂げにため息を吐いていた。

 あまりのことにエリシアは言葉をかける。

 

「どうした、ため息なんてらしくない」

「博士ぇ……」

 

 エリシアへと潤んだ瞳を向ける盈月。あまりの事態にエリシアはギョッとして、思わず姿勢を正す。

 

「ほ、本当にどうした……」

「博士……夏が終わっちゃったよ〜!!!」

「……は?」

 

 エリシアは、呆れた。

 まさか、そんなことで憂鬱になって泣きそうになっていたなんてと。

 どこまで陽の気に溢れるつもりだと。

 

「馬鹿か?」

「ひどい! 博士は悲しくないの!?」

「夏が終わってか? 私はむしろ清々しているが」

「そんな!? もうプールも海もいけないんだよ!」

「行かなくていい、行かなくていい。第一、夏なんて暑くてジメジメして私は嫌いなんだ。年々秋を侵食して、過ごしやすい時期がどんどん短くなっているんだぞ。憎たらしいったらありゃしない」

 

 エリシアがそう言うと、盈月は頬を膨らませて抗議の視線を向ける。

 そして、盈月は博士の家から飛び出した。

 

「博士のバカー!!!」

 

 エリシアは気にも留めずパソコンと向き合うのみ。

 どこへ行ったかと追いかけていくべきかもしれないが、盈月の行く先などエリシアには分かりきっていた。

 すぐお隣の盈月の家である。

 

「はぁ……まったく。全人類が夏を愛する頭サマーパーティバケーション人間とでも思っているのかあいつは……」

 

 一人呟き、それからは研究に没頭したエリシア。時間も忘れ、夕食も忘れて気がつくと銀色の月が天高く。

 凝った身体を伸ばして時計を確認したエリシアはこんな時間かと就寝。

 すぐに寝付くと、深い眠りの中へと落ちて熟睡。の、はずだった。

 

「うあ……あ、暑い……」

 

 寝付いてからしばらくして。

 エリシアは布団を蹴飛ばし、目を開けた。

 汗が滲む、ではすまないほど、普通に汗をかいていたエリシアは袖で汗を拭うとまずはエアコンを確認する。

 

「暖房をつけた覚えはないが……」

 

 そのエリシアの記憶は正しかった。

 エアコンは稼動しておらず、部屋を暖めるなんてことはしていなかった。

 そもそもこの暑さはエアコンどころの話ではない。

 汗のせいで身体に張りつく寝巻きから、夏物のシャツを取り出し着替えて外に出ると季節に似つかわしくない気温。散々と煌めく太陽が眩しい。

 

「い、異常気象もいよいよここまで来たか……。いや、待て」

 

 暑さにやられてか、エリシアはもっと単純に異常なことに気が付かなかった。

 

「ここは……どこだ」

 

 見覚えのない住宅地だ。

 自身の家はそのままで、隣は日向と表札がかかっている。

 お隣は紛れもなく盈月の家。そうとなれば行動に移るのが早いエリシアは盈月の家のインターホンを押そうとした。

 すると、ちょうどいいタイミングで扉が開く。

 

「おい! 非常事態、だ……」

 

 現れた盈月を見てエリシア、絶句。

 その時のことをエリシアは後にこう語った。

 

「後光が差すというが、あの時のあいつは完全に後光が差していた。それも七色に輝いていた。レインボーは空だけではない、あいつの背景にもかかるのだということを初めて知ったんだ」

 

 あの現象について、エリシア博士はどうお考えですか?

 

「あれは科学を超えたものだろう。科学なんてものでは推し量れない。綺麗な言い方をすれば人の心の光。俗に言えば……陽キャパワー全開というやつだ」

 

 閑話休題。

 現れた盈月は今までにないほどの輝きを放っていた。

 頭にはシュノーケル、首にはハイビスカスを巻き、手には浮輪とビーチパラソル。赤いアロハシャツを羽織った盈月は、完全に夏模様。

 

「お前……!」

「博士! 夏ですよ、夏!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、というわけで現状を確認するぞ」

「……あ、はーい」

 

 二人が話し合おうとすると、近くを通りがかる女性の集団に話が遮られる。

 

「望ぃ、お腹ちょっと弛んでるんじゃない〜?」

「そんなことないわよ。胸ないからって僻まないで〜?」

「きー! 優李、やっておしまい!」

「あいあいさー!」

「いや〜まな板が迫ってくる〜」

「やめろよ人前で。恥ずかしいだろ。なあ、莉緒さん?」

「ん? ずるずる……」

「焼きそば食ってる……」

「いやぁこんな別嬪さん達とプールなんて人生でそうないことだからな章太郎。有意義に時間を使うんだぞ」

「おじさん、なんか鼻の下伸びてる」

 

 そんな少し個性的なグループが通り過ぎていくのを視線で追い、静かになると同時にエリシアは口を開いた。

 

「……現状、というか、現状だな。まず……やっぱり場所を変えないか」

 

 二人がいるのは、近所にあったレジャープール。

 水着に着替え、パラソルの下で状況を整理することにしたのだが、やはりプールというのはいただけない。流れで水着に着替えてしまったが、どうにも集中出来ないとエリシアは不満を洩らした。

 そもそも、エリシアがいま着用している黒のビキニは盈月が用意したものでサイズがぴったり合ったことも気になるが、それは今話すべきではない。

 

「えー。だって、博士のお家も私の家のもエアコン壊れちゃってたし。こっちのが涼しいでしょ?」

「それはそうだが……。くそ、あの近所の喫茶店が営業していれば……」

 

 忌々しげにエリシアは吐き捨てた。

 盈月の家の隣の隣にレトロな喫茶店があったのだが、あいにくの休業日ということでここに来ることになってしまったのだ。

 

「はぁ……時刻は3時、か。もうこの際なんでもいいが、集中して話を聞くように」

「暑いからプールの中でお話しましょう!」

「いやいや待て待て」

「ふー!」

「ふー! じゃなっ!」

 

 盈月がプールに飛び込んだ飛沫を思い切り被ったエリシアは清涼感を味わうではなく、げんなりと落ち込んでしまった。

 

「博士も入りましょうよー! あれ? もうプールで遊んだんですか?」

「濡れたのはお前のせいだ! いいから上がれ!」

「せっかくのプールなのに遊ばないなんてもったいないですよ!」

「ああもう分かったから! 状況整理が終わったら好きに遊んで構わないから今はだな……ん?」

 

 ふと、エリシアは落ち込んだ様子でプールサイドをトボトボと歩く一人の女性に視線を移した。

 泳がないのか白いTシャツとジーンズという出で立ちで、この施設のスタッフというわけでもない様子。

 俯きがちに歩き、どこか不審感を感じざるを得ない。

 

「プールなんて……プールなんて嫌いだぁ!!!」

 

 女はそう叫ぶと、青白い光の球体が二つ女の身体に入り込み、その肉体を変貌させる。

 紫の肢体にサメを思わせる水色のアーマーを纏い、長い黒髪のような飾りが特徴的な怪人となった。

 周囲は騒然とし、プールは一転阿鼻叫喚。

 パニックとなり逃げ惑う人々を掻き分け、盈月とエリシアは怪人の前に立ち塞がった。

 

「博士! これってスコアノート!?」

「いや、違う! 初めて見る怪人だ。とにかく変身して戦え!」

「はい! ……博士は!?」

「……家にドライバーを忘れた」

 

 ばつが悪い顔で、小声でエリシアは言うと盈月はオーバーなぐらいに驚きながらドライバーとスコアプレートを起動させる。

 

《フライトイーグル!》

 

「えぇ!? もう! 変身!」

 

《SET! YOU ARE MAJESTY! REQUIP! フライトイーグル!》

 

 盈月は白き荒鷲の戦士、仮面ライダーエリシアへと変身し謎の怪人へと向けて駆け出す。

 

「やあっ!」

「ぐあっ!?」

 

 エリシアは素早く拳を怪人へと叩き込み、戦闘を有利に運ぶ。よろめいた怪人はそのまま地面に膝をつき、エリシアはこれを好機と蒼弓風刃ツインラプターを呼び出し、双剣モードで一気に畳み掛けようとする。

 しかし、そこへ。

 

「近付いたらダメ! 避けて!」

「えっ?」

 

 物陰から大声で呼びかける黒のシンプルなワンピースタイプの水着を着たポニーテールの女性に気付き、エリシアは立ち止まる。

 すると、怪人は足首に巻いていたアクセサリーを外してアクセサリーを鞭へと変化させてエリシアへと向けて振るう。

 

「うわっ!?」

 

 咄嗟に屈んで鞭を回避したエリシア。鞭は傍らの照明に命中すると、この猛暑の中で急速に凍りつき白い煙を上げる。

 それを見たエリシアは仮面の下で目を見開いて、もし当たっていたらと息を飲んだ。

 その頃、仮面ライダーの方のエリシアに助言を飛ばした女性が博士の方のエリシアへと小走りで近付いて声をかけた。

 

「あの……! あの仮面ライダーの関係者の方ですか?」

「そうだが……貴女は?」

 

 その女性は仮面ライダーのことを知っているようでエリシア博士は身構えるも敵意のようなものは感じられず、質問にもしっかり答えた。

 

「私は新田千佳っていいます。ところで、あの仮面ライダーは墓守じゃないですよね?」

「墓守? なんだそれは」

「詳しい説明はちょっと出来ないんですけど、墓守じゃないとあの怪人を倒し切れないんです」

「なに? どういうことだ」

 

 墓守だとか、あの怪人を倒し切れないなどと言われ困惑するエリシア博士をよそに、仮面ライダーエリシアと怪人の戦いは終わりを迎えようとしていた。

 蒼弓風刃ツインラプターを蒼弓モードにし、アロワナが描かれたスコアプレートを装填。

 

《APPORT! スコアプレート!》

《SET! タックルアロワナ!》

 

「これで!」

 

《RESOLVE SHOOT FINISH!》

 

 放たれた矢はアロワナを形どり怪人に直撃。

 爆発し、怪人から青白い光が二つ抜け出て元の女性の姿に戻るが……光は再び女性に取り憑いて、再度怪人化。

 

「うああ!!! プールなんて! プールなんて!」

「そんな! 倒したのに!?」

「陽キャは消えろ!」

 

 怪人はサメの歯のような大刀の二刀流でエリシアを攻めたてる。

 ツインラプターを再び双剣モードにして対応するエリシアだが、リーチとパワーは怪人の方が勝り、苦戦。

 

「くっ……!」

「盈月! おい、あいつを倒すにはどうしたらいい!?」

「も、もうちょっと待って! そろそろ儚が来るはずだから!」

 

 儚?とエリシア博士が首を傾げると同時にバイクの駆動音が鳴り響く。

 施設の壁を飛び越えて、メタリックグリーンの鋭いボディのマシンが舞い降り、怪人を轢き飛ばした。

 マシンには黒いフルフェイスヘルメットを被った黒衣のライダーが跨っており、軽やかにバイクから降りて地面に立つ。

 その時はじめてエリシアはそのライダーの腰にベルトが巻かれていることに気付いた。

 漆黒のベルトが黒衣に馴染んでいたのだ。

 

「儚ー! 取り憑いてるのはゴ・ベミウ・ギとアビスラッシャーよ!」

「流石チカさん……当たりです……」

 

 その少女は折本のようなものを開いて呟く。

 黒いローブを纏い、顔が見えないライダーだったが、声から少女だと気付いたエリシアは何者か尋ねた。

 

「あの……あなたは?」

「……あなたも、仮面ライダーですか……。儚も、仮面ライダーです……」

 

 儚と名乗った少女は折本に細筆で書き込むとローブが消失し、黒地にオレンジ色のラインが蜘蛛の巣状に走るボディスーツの姿となる。

 少女の露わとなった銀髪に目が惹かれるエリシアをよそに、儚は折本をバックルへと装填。

 

「変身」

 

《蜘蛛男×アナザーアギト》

《始まりの死 魂の遺志 怪奇強襲!》

《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》

 

 ベルトのバックル、折本ことキセキレジスターかれ発せられる緑光が強まると同時に儚の顔には蜘蛛の巣が広がっていく。

 光が収束すると同時に儚は暗緑の戦士、仮面ライダーハカイブ アサルトゴシックとなる。

 

「すぅぅ……」

 

 ハカイブは息を吐き、拳を構えると轢き飛ばされた怪人が怒り狂って大刀を振り回して接近。

 斬りかかってくるのを全て、紙一重で。それでいて余裕あり気に躱すと力強い右ストレートが怪人の胸を穿つ。

 

「ぐあっ!? おのれぇ……プールなんて消えてしまえ!!!」

「すぅぅ……」

 

 吹き飛び、売店の壁に背中を叩きつけられた怪人は再び鞭を手にし、ハカイブへと向けて振るう。

 

「私も負けてられない!」

 

 エリシアはツインラプターを蒼弓モードにして矢を放ち、ハカイブへと迫った鞭を迎撃。

 更に怪人へと向けても矢を連射してダメージを与える。

 そうして、怪人がダウンした隙にハカイブがバックルのキセキレジスターを一度閉ざし、必殺の構え。

 

《怪奇強襲! 怪奇強襲!》

 

「あなたに戒名を授けます……あなたは、プール嫌い女です」

 

 その場にいた怪人プール嫌い女以外がずっこけるのを気にせず、ハカイブはキセキレジスターを開く。

 するとハカイブの口元を覆うマスクが開き、鋭い牙と蜘蛛の牙を生やしたクラッシャーが露わとなり、足元にアサルトゴシックの紋章が浮かび上がる。

 

《アサルトゴシックブレイク!》

 

「すぅぅ……とうっ」

 

 ハカイブの足に紋章が吸収され、跳躍。

 右足を突き出すと同時に蜘蛛の巣が足先から放たれ、プール嫌い女を拘束し、そのまま砲弾の如き勢いで蹴撃が炸裂。

 ハカイブは着地すると、拳を構え残心しプール嫌い女が爆発するのを見届ける。

 ゴ・ベミウ・ギとアビスラッシャーの魂が女性から抜け出るとハカイブはキセキレジスターをバックルから取り、魂へと向けてキセキレジスターを開帳させて二つの魂を回収しホッと息を吐いて変身を解除した。

 それを見てエリシアも変身を解除すると、盈月は一目散に儚へと向けて駆け寄り、詰め寄り、目を輝かせた。

 

「ねえねえ!」

「ひっ……!」

「ハカナ……ちゃん? であってる? 私は日向盈月! 仮面ライダーエリシアだよ!」

 

 盈月はローブの下の儚の顔を覗き込むようにして名乗る。背の高い盈月は屈んで、ぐいぐいと興味津々といった様子で儚に近付く。

 だが、それは儚が最も苦手とするタイプの人種の行動。

 

「あ、あう……」

「ん?」

 

 儚は距離を取ろうと後ずさる。すると、それを追うように盈月が距離を詰める。

 それの繰り返し。

 盈月からすればなんてことはないのだが、儚からすると腹ペコの肉食獣が狙いを定めて一歩、また一歩と迫ってくるかのよう。

 そんなところを傍から見るとなんとも間抜けなやり取りである。

 

「なーにやってるのあの子達は……」

「まったくこれだからあいつは……。おい、なにやってるんだお前は。引いてるだろ、そちらさんが」

 

 エリシアが盈月を嗜めると、盈月はひどく驚いた様子で先程までのは無自覚で行なっていたようだった。

 

「えっ! 引いてた? ごめんね?」

「い、いえ……」

「儚も気圧されてんじゃないわよ。コミュニケーションの修行してるんだから」

 

 千佳は儚に説教。初対面の人ともそれなりに話せるようにならなければと説いたが儚にはまだ難しい様子。

 

「……さて、とりあえずはここから離れた方がいいだろうな。色々と面倒が起こりそうだ」

 

 徐々に大きくなるパトカーのサイレン音を耳にし、エリシアが言うと全員頷いてこの場から立ち去ろうとする、が。

 

「あ、あの……」

「なによ?」

「皆さん……水着……」

 

 あ、と儚以外の三人が声を洩らすと一行は更衣室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで一行は喫茶Hamelnへ。

 こう書くと旅番組みたいだな。

 そんなことはどうでもよく、あの開店していれば入っていたのにと思っていた盈月の家の隣の隣の喫茶店に入ることに。

 なんなら喫茶Hamelnと盈月の家に挟まれている大きな家は結城荘という儚達が暮らすシェアハウスである。

 カフェのテーブル席でエリシア、盈月、千佳、儚の四人が向かいあって座り、改めて自己紹介となった。

 

「というわけで、改めまして新田千佳です」

「日向盈月です!」

「エリシア・フェリキタスだ」

「儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブです……」

 

 自然、盈月とエリシア、二人の視線が儚に集中する。

 真っ黒いローブに身を包み顔を隠す仮面ライダーの少女というだけでも興味惹かれるのに、名前までこれでは。

 

「ああ、名前は気にしないでください。儚とハカイブだけ覚えておけば大丈夫なんで」

「ひぃん……雑……」

「大丈夫! 私は覚えたよ儚ちゃんの名前! 儚・インフェルニティ・ブツダンブツグ……」

「違います……」

「えっ、ごめんなさい……」

 

 盈月と儚の間に微妙な空気が流れる。

 それに気付かない大人達ではない。即座に話題を切り替えて、それぞれの情報を交換し合うことになった。

 

「つまり、あなた方も別の世界の人間というわけか」

「ええ。そんで儚はそのまた更に異世界人ってわけです」

「……?」

「まったく何も理解出来てない顔をしてるな」

「え、つまり? ここを1の世界とするでしょ?」

「妙な概念を持ち出すな。……それで、あなた方は何故この世界に?」

「あー、まあ、色々ありましてぇ……」

 

 回想。

 ハカイブの世界ではいつも通りの日常生活を送っていたのだが。

 

「儚ちゃ〜ん。また矢文が庭に刺さってる〜」

「矢文が庭に刺さってるのがいつも通りの日常とか嫌なんだけど」

 

 千佳と望が庭に矢文が着弾するところを目撃しており、二階にいた儚に呼びかける。

 そうして庭にやってきた儚が矢文を手にし、キセキレジスターに読み込ませるとため息を吐いた。

 

「またあの世界ですか……」

「またって、章太郎とこの世界? 何かあったの?」

「分かりませんが、とにかく盗まれた魂の反応を感知したので回収及び犯人の確保または撃破を命じられました……」

「そう……。気を付けてね。あ! 章太郎とマスターに会ったらよろしく伝えといて!」

「分かりました……。はあ、今度こそ皆さんを巻き込まずに行けます……」

「なんだかそれフラグに聞こえる〜」

 

 実際、フラグであった。

 儚は矢文に付属していたマゼンタ色でバーコードがデザインに取り入れられているタッチパネル式の端末、オーロラカーテン発生装置を操作する。

 

「ええと、このオーロラカーテン発生装置を……出力一人分にして……」

「儚ちゃーーーん!!!!!! 部屋にゴキブリ出たぁ!!!!! 助けてぇ!!!!!!」

「ひぃん!?」

 

 階段を駆け下り、まっすぐ儚へと向かって猛ダッシュしてきた優李。

 あまりの勢いに儚は優李を受け止めきれずに転倒。

 それにより、オーロラカーテン発生装置を粉砕してしまい……。

 

「ちょっ!? 儚!? くそでかオーロラ出たんだけど!?」

「ひぃん……ゆ、優李さんが飛びついてくるから……!」

「わたしのせいじゃなくてゴキブリのせいだよ!」

「ふふ〜なんとなくこうなる気がしてたのよね〜」

 

 そうして揺らめく銀のオーロラは結城荘を覆い、再びこの世界へと来てしまったのだった。

 

「という感じで、二日前に転移してきまして……」

「……まあ、その、なんというか。なんというかだな」

「博士、コメント薄いね」

「うるさい。それで、皆さんは帰れる見込みがあるので?」

「儚のお父さんが来て、帰してくれる予定です。……早くて三日後に」

「お父さん、忙しいから仕方ないです……」

 

 儚の父、グランは多忙の身のためすぐには駆けつけられない。

 そのため、結城荘の面々もこの酷暑を乗り切るべく章太郎らとプールへと足を運んで、怪人騒動に巻き込まれて現在に至る。

 

「並行世界への移動を自在にこなす技術があるとは……」

「まあ結果だけ見ると全然自在じゃないんですけどね」

「毎回巻き込まれてる……」

 

 自虐で笑う千佳とげんなりしている儚に場が和みながらもエリシアは真剣な顔を浮かべた。

 

「その、お恥ずかしい話だが私達には並行世界を超える技術もなく、今回に至っては原因も分かっていない。もし、そちらの力で元の世界に戻れるなら……」

「それはもちろん大丈夫ですよ! ね、儚?」

「は、はい……。機械が直れば、本当に自由自在ですから……」

「やった! ありがとう儚ちゃん!」

「ひっ!?」

 

 盈月の明るい笑顔が儚に向けられた瞬間、儚は咄嗟に千佳の背に隠れようとするもソファー席に座っているため上手くいくわけもなく。

 そんな儚に千佳はため息をついた。

 

「ちょっと儚。なにビビってんのよ。盈月さんは明るくていい子でしょーが」

「ひぃん……儚には、眩しすぎて……無理」

「失礼なこと言うんじゃないの。ごめんね盈月さん、うちの儚がこんなで」

「……うーん、もしかしてローブを被ってるから眩しく感じるんじゃないかな?」

「盈月?」

 

 至極、真面目な顔で盈月はそう考察すると困惑するエリシアを置き去りにして席を立つ。そして、儚へと歩み寄ると深く被っていたフードを勢いよく上げたのだった。

 

「えいっ」

「ひゃうっ!?」

 

 露わとなる儚の素顔。

 艶やかに流れる銀の髪。前髪が長く、髪と同じ色をした垂れ目がちで大きな瞳にかかり気味。

 童顔で内気。庇護欲を抱かせる少女を前にして盈月は……爆上がった。

 

「かわいい〜〜〜!!!」

「ヴェッ⁉︎」

 

 儚に抱きつく盈月を誰も止めることは出来なかった。

 女子だとこういうのよくあるよねといった具合に。

 しかし、儚の顔は青ざめていた。

 

「く、くるし……」

「さっきは後ろから見たから髪の毛お揃いだな〜ぐらいしか分からなかったんだけど、可愛い! 可愛い儚ちゃん!」

「ぐぇぇ……!」

「お、おい! なんだか様子がおかしいぞ!」

 

 エリシアの言うとおり、儚の顔はどんどん青白くなっていき、怪しげな光が儚を照らす。

 奇妙な音と共に、儚は泡となっていき……そして地面へと吸い込まれていった。

 

「あれ!? 儚ちゃんは!?」

「何が起こったんだ……!?」

「あ、気にしないでください。ちょっと死んだだけなんで」

「ちょっと死んだ!?」

「つまり私……儚ちゃんのこと殺しちゃったってこと!?」

「まあいつものことだから、心配しなくてもそのうち復活するから」

「いやいや! 泡になってたぞ!? いや泡になって死ぬってなんだ!?」

「久しぶりの反応ね〜」

「あんま深く考えない方がいいし、もう慣れろとしか言えないんだよな」

「慣れるか!?」

 

 今まで体験したことのない不可思議現象に科学者であるエリシアは特に狼狽える。

 科学という言葉の対極に位置する儚という存在にエリシアは恐怖するのだった。

 そんなことはお構いなしにと、話しかけるタイミングを窺っていた少年が一人。

 藤堂章太郎。

 喫茶Hamelnに住む仮面ライダーオタクである。

 章太郎は目を輝かせながら盈月へと話しかけた。

 

「ねえ! お姉さんが変身するライダーの名前はなんていうの?」

「ふふん、仮面ライダーエリシアだよ!」

 

 得意気に胸を張って答える盈月と、目線を窓の外へと移すエリシア。

 そんなエリシアには気付かず、盈月は色々と仮面ライダーエリシアについて語るのであった。

 

「博士がベルトのイマージュドライバーを開発してね」

「博士の名前もエリシアだよね?」

「うん! そうだよ」

 

 盈月が明るく答えると、章太郎は同じオタクの千佳に耳打ちをした。

 

「……戦極凌馬タイプ?」

「きっとそうよ」

「おい、何かは知らんが失礼なことを言われているというのは分かるぞ」

「まあまあ博士。事実だしいいでしょ?」

「いや何が事実だ!」

 

 色々と抗議したいエリシアであったが、キッチンにいたHamelnのマスター、権兵衛が慌てた様子で会話に割り込んでくる。

 

「そろそろ日が昇るぞ! 千佳ちゃん達は家に帰った方がいい!」

「日が昇る……?」

「太陽ならずっと出てるよ?」

 

 エリシアと盈月は権兵衛の言葉に不思議がる。

 すると千佳が「まだその話をしていなかった」と額を叩いた。

 

「一体なんだと言うんだ?」

「えーと、時計を見てもらえます?」

「6時になるところだけど……」

「それにしては明るい……いや、待て」

 

 窓から空を見上げたエリシアが気付いた。

 

「太陽の位置が変わっていない……!」

「え!? どういうこと!?」

「……あの太陽は人工太陽……。偽りの、もうひとつの太陽なんです」

「あ! 儚ちゃん復活した!」

 

 いつの間にか復活した儚が、この世界を今まさに混乱に貶めている元凶の正体を語る。

 その口調には、どこか普段よりも忌々しいものがこめられている。

 

「いや、それよりも人工太陽だと? そしてそろそろ日が昇る……私達はてっきり午後だと思っていたが……今は午前6時か!?」

「ええ。そして、更に今は……12月」

「12月!?」

「本来の太陽が昇ると、気温は50度にも達します……。あの太陽をなんとかするのも、儚の使命です……」

 

 昇る本来の太陽。

 空には二つの太陽が浮かび、気温はどんどん上昇していく。

 冬の東京を襲う熱波に仮面ライダーは打ち勝つことが出来るのか!

 次回に続く。

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