仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ エリシア×ハカイブ 灼熱!?人工太陽と日本フライパン作戦   作:大ちゃんネオ

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酷暑!二大灼熱怪人現る!

 晴天の下に人の姿が消えた。

 ただの晴天であれば良かったが、この空には輝かしい太陽が二つ、昇っている。

 

「本当に太陽が二つある……」

 

 カーテンの隙間に顔を入れて空を見上げた盈月が呟く。

 眩しく輝く太陽が二つという異様な光景に盈月は息を飲む。

 暑さ対策のため直射日光を入れぬようにと閉められたカーテン。エアコンがよく効く結城荘のリビングに招かれた盈月とエリシア。そして盈月のペット、ハリスホークのガルダ。

 盈月はカーテンを閉め直してぱたぱたとリビング中央のソファへと戻りガルダと戯れ、エリシアは申し訳なさげに今日何度目か頭を下げる。

 

「すまない。こんな時にエアコンが壊れていて……」

「いいですって気にしなくて」

「そうですよ〜。エアコンつけないと室温すごいことになるんですから〜」

「マジで死ぬと思うんで」

 

 優李と望、あゆがエリシアにそれぞれ優しく声をかける。マジで死ぬと思うというあゆの言葉が現実的なものということに冷や汗が流れそうな二人にあまり気にしないようにとフォローしていると、二階にいた儚と千佳が階段を降りてリビングへとやって来た。

 

「空き部屋の準備完了おっけー。 二人と一匹が寝る分には大丈夫だと思う!」

「わー! ありがとうございます!」

「ピィー!」

「本当に何から何まで申し訳ない……」

「もう博士。こういう時はありがとうだよ?」

「……そうだな。ありがとう」

 

 どういたしましてと返す千佳。その背後からひょっこりと顔を出すローブを被った儚がいた。

 そんな儚を見つけ、盈月は儚に直接お礼を言おうと歩み寄る。だが、当の儚は千佳の背に隠れてしまう。隠れられたので、盈月は反対方向から覗き込もうとする。

 儚は更に逃亡しようと千佳を盾にぐるりと回り、盈月がそれを追いかけ始める。

 

「ちょっとー。人のまわりで鬼ごっこはやめてくれる?」

「あはは、ごめんなさい。つい」

「ま、いいけど。あと儚。なーにローブで隠れてんの。もう家の中ではしないでしょ」

「ひぃん!」

 

 千佳が勢いよく儚のローブを捲り、儚の顔が露わになる。すると、盈月の目が輝いて、今にも儚に飛びつこうという気配が溢れ出る。

 そんな危険を察知して、儚は即座にローブに包まった。

 

「儚がいつになく俊敏」

「儚ちゃーん。急に抱き付かないからお顔見せてー」

 

 盈月がそう呼びかける。それを聞いたエリシアは内心で、「急でないなら人に抱きついていいと思っているな」と盈月の言葉の裏を読み取った。

 

「ごめんね〜。儚ちゃん、極度の人見知りだから。わたし達には懐いてくれたけど!」

「優李さんにマウント取られた〜!」

 

 やたら自信満々に平坦な胸を張って主張する優李に盈月は涙を流した。

 悔し涙である。

 しかし、儚はそんな優李の背中をばっさりと斬り捨てるかのようなことを口走る。

 

「ユウリさんに懐いた覚えはないです」

「ええっ!?」

「やった、優李さん私と仲間だ」

「うう……盈月ちゃ〜ん!」

 

 みっともなく盈月に抱きつく優李。そんな優李を優しく受け止め、抱擁する盈月は頭まで撫で始める。

 とても慣れた様子で。

 

「よしよし」

「うう……はじめて年下に優しくされた〜! ひどいんだよ儚ちゃんもあゆも! わたしのこと二人していじめてくるんだ〜! 盈月ちゃんの爪の垢を煎じて二人に飲ませたいよ〜!」

「そうやって年下に甘えてっからナメられんだろ」

「爪の垢は流石に不衛生すぎて……。儚、ドン引き」

「くそ、異世界人に諺が通じない! 違うからね、本当にやるわけじゃないからね!」

「優李さん……それは流石に私も……」

「盈月ちゃんは通じてよ!!!」

 

 相変わらず弄られ役の優李に和やかなムードになると同時に台所に詰めていた莉緒が夕飯の支度が出来たと顔を見せた。

 更に見計らったかのようにインターホンが鳴り、莉緒が迎え入れると章太郎と権兵衛がやって来た。二人とも汗を滲ませている。

 

「いやぁ、お隣まで来るので汗だくだよ」

「そうだと思って……これ、使ってください」

 

 莉緒は白いハンドタオルを差し出すも、権兵衛は遠慮した。

 

「いやいや、若いお嬢さん方が使ってるものをおじさんが汚しちゃいけない。だから、ちゃんとこれ持って歩いてるんで」

「用意がいいですね」

 

 権兵衛は手持ちのタオルを章太郎へと渡し、自身もまた汗を拭った。

 

「喫茶店のマスター達も来たのか」

「この前来た時に、お世話になったからそのお礼にって莉緒が」

 

 盈月とエリシア、章太郎と権兵衛の四人と結城荘入居者達あわせて10人もいるので、夕食(時間的には朝食であるが)は広いリビングで食べようということになり、テーブルの上にまず小鉢が並べられた。

 

「本格的だね博士」

「あ、ああ……。まさか別の世界でこんな食事に行き当たるとは……」

「莉緒さんはガチのプロだからな」

「へ〜! 莉緒さん、これはなんですか?」

 

 小鉢に興味津々な盈月が莉緒に尋ねると、まだ配膳中の莉緒は短く答えた。

 

「酢もずく。上に乗ってるのは生姜だから」

「もずくだって博士! もずく!」

「もずくでそんなテンションが上がる女子高生はお前ぐらいのものだな」

 

 この調子では料理が並ぶ度に盈月に付き合わされると話半分のエリシア。

 一方、もずくで盛り上がる盈月を見て望は口を開いた。

 

「知ってる〜? 仮面ライダーはもずくと緑茶パウダーを入れたお湯に浸かると闘争心を刺激されるのよ〜」

「そうなんですか!!! 博士、もし私が戦えなくなったら……」

「信じないで盈月さん。望の冗談だから」

「橘さんのやつだよね!」

「誰だ橘さん」

「設定上はシュルトケスナー藻。絶滅した太古の水生植物」

「流石莉緒。設定のことはすぐに出てくるわね!」

「さっきから何の話をしているんだ……」

「博士、もし私が戦えなくなったらシュルトケスナー藻を……」

「お前も乗っかるな!」

 

 一人孤独にツッコミを入れるエリシアの姿に、あゆは親近感を抱いたとかなんとか。

 そんな中、儚はせっせと配膳を続けていた。

 

「儚ちゃん。私も手伝おうか?」

「いえ……お客人にやらせるわけにはいきませんから……」

 

 盈月の申し出を断り、儚は次々と皿を並べていった。

 鴨肉の温燻、吸い物には穴子蒸し、氷鉢に刺身の盛合せ、鮑のステーキ、海老天、冷やし茶碗蒸し、カレイの煮付け、丸豆腐、さつま汁、牡蠣ご飯、香の物には白菜の浅漬け。そしてガルダには生の鴨肉が与えられた。

 どれも料亭で出てきてもおかしくない仕上がり。

 芸術品のような品の数々に盈月はスマートフォンでの撮影が止められなかった。

 

「本当は一品ずつ出すんだけど……」

「いいのいいの。莉緒と儚が大変でしょ」

「ありがとう。水菓子には抹茶のアイスがあるから、それだけ最後にね」

 

 莉緒が千佳と言葉を交わしながら座り、全員の準備が整うと誰が言い出すでもなく全員が手を合わせ、自然と言うのであった。

 いただきます、と。

 

「ああ……沁みる……」

 

 酢もずくを一口食べて、エリシアは感嘆の声を漏らす。

 

「博士、こういうの好きだったの?」

「いや、なんというか、あれだ。お前の料理ばかり食べたせいか……大人の味が舌に心地良くてな……」

「うーん。流石にこの味は私には作れないなー。博士の言う通り、大人の味だから。でもするすると食べれちゃう! 美味しい!」

 

 盈月の素直な感想に、莉緒はありがとうと礼を言うと珍しく莉緒の方から盈月に話を振った。

 もちろん料理の話である。

 

「盈月ちゃんも料理するの?」

「はい! 両親が海外出張してて、今は一人暮らしなので! 博士の分も作ってます」

「そうなんだ、偉いね」

「えへへ」

 

 照れる盈月。その傍らで章太郎が海老天にかぶりついていた。

 

「こら章太郎。こういうのには食べる順番っていうのがあるんだ」

「えー、そうなの?」

「そうだ。まず先付けからだな」

「ああ、全然気にしないで食べてください。章太郎くんも、あんまり子供受けのいい料理じゃなくてごめんね」

「ううん! 莉緒さんの料理美味しいよ」

 

 申し訳なさそうに苦笑する莉緒に章太郎がそう言うと、莉緒は安堵の表情を浮かべる。

 そうして、皆の箸が進む中でエリシアはあるひとつの結論に達していた。

 

「……酒が欲しくなるな……」

 

 ぼそりと呟いたそれを、盈月は聞き逃さなかった。

 

「博士、お酒飲むの? 見たことないけど……」

「いやまあほとんど飲んだことはないが。研究研究で、飲む暇もない。だが、これに酒が欲しくなるというのは、分かる」

 

 そう語るエリシアの背後には既に、酒の魔人が二人立っていた。

 酒瓶を両手に携えながら。

 

「飲んだことないなんてもったいない! こういう時は飲まなきゃ損!」

「まずはビールからにします〜? それとも日本酒にします〜?」

 

 盈月が押し除けられ、エリシアの左右を千佳と望が挟んだ。

 既に酔っているのではないかというテンションである。

 そんな光景を見つめ、あゆと優李はこの後の展開を思い描いて苦い顔となる。

 

「あーあ」

「終わったねー博士さん」

「終わったって……?」

「あの二人に絡まれたら、潰されるぞ。未成年のお前が止めれば、まだ止められるかもしれねぇけど」

「あー……でもまあ、酔った博士も見てみたいのでこのままにします!」

「いい性格してるねー盈月ちゃん」

 

 エリシア、盈月に見捨てられる。

 とはいえ、どうなってもエリシアが酒を飲むことは確定したことであったらしい。

 エリシアの両隣はすっかり千佳と望に占拠され、二人のグラスにはトクトクと小気味の良い音を鳴らしながらビールが注がれる。

 黄金色に浮かぶ泡に目を奪われるエリシアは喉を鳴らし、境界線を踏み越える。この誘惑に乗らない理由はなかった。

 

「私も、ビールを」

「ささ、どうぞ〜」

「おやっさんも飲んだ飲んだ!」

「じゃあ、ちょっとだけ」

 

 指でちょっとと言う権兵衛だが、そのニヤけた顔は完全に飲むつもりである。

 そうして、エリシアも権兵衛も酒を入れる。

 二人とも、一気にビールを飲むと景気良く息を吐いた。

 

「おっ! いい飲みっぷりー!」

「きゃ〜マスター惚れちゃう〜!」

「あ〜あ。こりゃ長引くぞ」

「だねぇ。わたし達も避難しとかないと……」

「あゆ! 優李! あんたらも飲めるんだから飲みなさいよ!」

「アルハラ怪人が来た!」

「無理矢理飲ますな!」

 

 しかし、二人の抵抗は呆気なく終わった。

 飲んでしまったら、あちら側なのだ。

 そうして20歳以上は莉緒を除いてすっかり出来上がる。

 残った莉緒はというと食事を終えて、酔っ払い達のために再び台所へと赴いていた。

 

「は〜! えいげつ! おまえはよく……よくやっている……」

「あはは……ありがとう」

 

 盈月はエリシアを見捨てはしたが、まさかここまでになるとはと若干の後悔をしながらも、エリシアに認められていることが口で伝えられて嬉しいという微妙な気持ち。酔ってない時に言ってくれたらもっと嬉しいのにと盈月は心の中で付け足した。

 

「盈月姉ちゃん」

「なぁに章太郎くん?」

「お酒って、怖いね」

「え! エリシアさん、自分で仮面ライダーエリシアって名付けたの!?」

「それはちょっと戦極味じゃない? え、博士もしかして敵だったりします?」

「何を言ってるのか分からないが、良いことでないことだけは分かる」

「あはは……そうだね、章太郎くん」

「ピィ……」

 

 未成年三人とガルダはすっかり取り残されてしまったと感じた盈月は置いてけぼりにされた三人で何か楽しいことでもしようと思いついて儚に声をかけようとした。

 ちょうど、自分の席の対角に座っていた儚。

 この食事中、儚は一切口を開いていなかったと盈月は思い返しながらそちらへと目を向けると儚はちょうど食事を終えたところであった。

 

「あ、儚ちゃ……」

 

 呼びかけるも、儚はそそくさと食器をまとめて台所へと向かってしまう。

 その背を見つめ、盈月は立ち上がった。

 

「ちょっと待っててね章太郎くん」

 

 儚の後を追う盈月。

 台所に盈月が着いた時、ちょうど儚が台所から出てきたところで鉢合わせる。

 

「儚ちゃん。あのね」

「し、失礼します……」

 

 盈月の脇をすり抜けて、儚は廊下に出る。リビングには戻らないらしいと盈月は儚の追跡を続行した。

 

「ねー儚ちゃん。大人達、みんな酔っ払っちゃって章太郎くんがつまらなさそうにしてたから、子供三人組で何かしない? ガルダもいるよ!」

「すいません……少し疲れてしまったので……」

 

 歩く黒い背中に話しかけるも、喑に断られてしまう。

 それでもめげずに盈月は話しかけ続ける。

 何故かは、分からないけれど。

 廊下を進み、階段を昇る。

 

「儚ちゃん、ライダーになったのはいつ?」

「……15の時です」

「そうなんだ! えっと、儚ちゃんはいまいくつ? 私は17だよ」

「……17になる年です」

「じゃあライダーになって2年なんだ! 先輩だね! 同い年だけど、先輩! 強いのも納得だよー」

「……あの」

 

 二階の廊下を往き、奥の部屋の扉の前で儚は立ち止まって盈月の言葉を遮った。

 

「儚に、構わないでください……」

「え……っと、どうして?」

「その……儚は、部屋にいるので……それでは」

 

 儚は軽く頭を下げてから扉を開け、自室へと入るとため息をついた。

 

「ふぅ……」

「へえ、ここが儚ちゃんのお部屋か〜」

「ひぃん!? な、なんで入ってきてるんですか……!?」

「気になっちゃって」

 

 たったそれだけの言葉で、盈月は儚の部屋に足を踏み入れた。

 どこか生活感に欠ける、物の少ない部屋を盈月は興味津々に見ていた。

 

「あ、あの……」

「ベッド派なんだね儚ちゃん」

「いや、あの……!」

「シンプルな部屋で……カッコいい!」

「カッコ……にへへ……」

 

 褒められるのに弱い儚である。

 しかし、今回は相手が盈月だからかすぐに気を取り直して再び警戒の構え。

 

「じゃなくて……あの、エイゲツさん……」

「なぁに?」

「その……なんで、構うんですか……?」

「だって、儚ちゃん一人で部屋にいてもつまらないでしょ?」

 

 さも当然のことのように言う盈月に儚は視線を落とした。

 もっとも、ローブで顔を隠しているため盈月はそれに気付かないが。

 

「さっきも、言いました……儚は、エイゲツさんとは違います……」

「儚ちゃん……」

「エイゲツさんは……みんなで、いたいかもしれないけど……。儚は、一人でいたいから……。みんなが太陽を求めるわけじゃ、ありませんから……」

 

 閉められたカーテンの向こう側に浮かぶ太陽を思うように儚は窓を見つめた。遮られた光。薄暗い部屋は、儚にとって心地の良い場所。

 明る過ぎないこの部屋が、儚は好きだった。

 そんな場所に、眩しい人がいる。いるが故に、儚は光に焦がれぬようにローブを纏っていた。

 

「そっか、儚ちゃんは私のこと太陽みたいだって思ってくれたんだ」

 

 絶えず、彼女は笑顔であった。

 拒絶するようなことを言ったのにと、罪悪感が胸に募る。

 

「でも私、盈月だから月だよ! 太陽と月どっちも名前にあるんだー」

「……たしかに」

 

 そう言われては認めざるを得ない。

 盈月。

 新月から満月に至るまでの月のこと。

 儚は日の光を受け、淡く優しい銀色に満ちようとしていく月の姿を盈月に重ねた。

 

「月にしては……エイゲツさんは、苛烈……」

「えぇー? そうかなぁ。じゃあ、どうすれば月っぽいかな?」

「つ、月っぽい……?」

 

 生きているうちに、いやたとえ死後を含めたとしてもこんな質問をされるなんてと儚は思った。しかし、儚も儚で根の真面目さ故か考えてしまう。

 

「……つ、月は太陽の光を反射して光ってるから……ええと、その……」

「あー! 分かった! 月は地球の衛星だから儚ちゃんを地球として」

「え……? 儚が、地球……?」

「儚ちゃんの周りをぐるぐる周ってればいいんだー! ぐ〜るぐる〜」

「ひぃん……!」

 

 儚を起点に盈月はニコニコしながらぐるぐると周っている。その中心では儚が身動きを取れず、盈月に怯えるばかり。

 

「何してんの……」

 

 そんな光景を儚の部屋にやって来た章太郎が見て、そう呟いた。

 

 

 

 

 酒に溺れた大人達は置いといて、特別やることもない未成年組もとい仮面ライダー組は作戦会議を開くことにした。

 

「仮面ライダーが二人もいて現状についての対応も考えずに遊んでたらダメだよ」

「あはは、ごめんね」

「ひぃん……なんで儚も怒られてる……?」

 

 小学生に怒られるハイティーン二人。特に儚は腑に落ちない様子でいる。

 そんなことはお構いなしにと章太郎が音頭を取って作戦会議を進めていく。

 

「儚姉ちゃんはもう分かってると思うけど盈月姉ちゃんがいるから最初から話すね。まず、あの偽の太陽は多分クロイゼルの力だと思う」

「クロイゼル?」

「クライシス帝国怪魔ロボット大隊の怪魔ロボット……。クロイゼルは生前、人工太陽をエネルギー源とし東京を異常な暑さに陥れた……」

 

 盈月は話を聞いてはいるが頭に入っているとはとてもじゃないが言えないような状態。章太郎と儚の二人に見つめられた盈月はニコリと微笑むが頭の上には疑問符が浮かんでいた。

 

「……クロイゼルの詳細な情報は頭に入れなくていいので、今回の敵はこのクロイゼルの力を利用している可能性が高いとだけ覚えておいてください」

「分かった!」

「魂融合怪人だからあともう一体の怪人の力が含まれてるんだよね? うーん。そっちは分からないなぁ」

「今のところ人工太陽以外に何かを仕掛けてきたわけじゃないから……」

「じゃあ今回の敵はまだ出てきてないの?」

「はい……。他の魂融合怪人は何体か倒したんですが、どれもあの人工太陽とは関係のないものでした……」

 

 盈月と儚が出会ったプールでの怪人も全く関係がなかった。

 つまりは、あの人工太陽の原因となった怪人は表には現れずに隠れ潜みじわじわと暑さで人類を苦しめているということ。

 

「卑劣な奴……。正々堂々名乗りをあげて現れてさっさと儚に倒されるべき……」

「この手の能力で相手が出てこないってめちゃくちゃ厄介なんだね……」

「どうすれば出てくるかな……」

「あの人工太陽、二人の攻撃で吹き飛ばせたりしないかなぁ。RXでも磁力砲で吹き飛ばしてたし」

 

 章太郎は盈月と儚を交互に見て提案する。

 盈月は「それいいね!」と二つ返事するが、一方の儚は難色を示していた。

 

「うーん……」

「どうしたの儚ちゃん?」

「やっぱり同時攻撃というのは息の合った人達じゃないと出来ないからその作戦は難しいと思いましゅ!」

「すごい早口」

「儚ちゃん、そんなキビキビと喋れたんだね」

「でも、これまでここで戦ったライダーのみんなは出会ったばっかりでも連携取れてたよ」

「儚ちゃんは私と一緒に戦うの嫌なんだ……」

 

 今にも泣き出しそうな盈月と、儚を非難するように見つめる章太郎。

 そんな状況に儚はとにかく慌てふためいた。

 

「いや、その、嫌とかじゃなくて……」

「儚姉ちゃん」

「ひゃ、ひゃい……」

「盈月姉ちゃんに謝って」

「あう……ご、ごめんなさい……」

 

 年下の男子に気圧されて盈月に謝る儚だが、盈月はそっぽを向いたままでいる。

 そして、儚に問いかけた。

 

「……許してもらいたい?」

「え? いや、正直どっちでも……」

「儚姉ちゃん」

「ひゃい……ゆるしてください……」

「じゃあ、一緒に戦ってくれる?」

「えっ」

「儚姉ちゃん」

「ひゃい……戦いましゅ……」

「あはっ。じゃあ許してあげる!」

「ヴェッ!?」

 

 さっきまでの泣き顔、膨れっ面はどこへやら。盈月は太陽のような笑顔を儚へと向ける。そんなものを直視して無事でいられるはずもなく、儚は目を焼かれるのであった。

 

「目がぁ! 目がぁぁぁ!!!」

「……やっぱり一緒に戦うのダメかもしれない」

「えー! そんなことないよ。ほら、儚ちゃん太陽を撃ち落としに行くよ!」

「ひぃん……太陽を撃ち落とした女にされちゃう……」

「あ! 章太郎くんは危ないから結城荘にいてね」

「うん……いってらっしゃい……」

 

 儚を引き摺るようにして盈月は太陽を撃ち落としに行った。

 そんな戦士二人を見送った章太郎は自然と呟いていた。

 

「大丈夫かなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 灼熱の炎天下を歩くのはそれだけで苦行。何かの修行をしているかのように思えてくる。

 日向を避け、日陰を歩いてもちっともマシだとは思えなかった。

 

「流石に、これは……暑いね……」

「……何も、今出る必要なかったんじゃ……。夜になって、本物の太陽が沈んでからでも……」

「もー! それを早く言ってよー!」

「ひぃん……また儚怒られてる……」

 

 今日何度目かの儚からすれば理不尽な怒り。だが盈月も本気で怒っているわけではない。

 すぐに笑顔を見せた。

 

「ほら、今なら人工太陽を解決してもまだ明るい時間帯でしょ? 帰りにどこか寄ろ?」

「えっ……戦いが終わったら帰りたい……」

「寄ろ?」

「ひぃん……はい……」

 

 儚との接し方を理解しているのか自然とそう振る舞っているのか分からないが完全に盈月がペースを掌握している。

 これがコミュニケーション強者の力なのかと儚は恐れ慄いた。

 

「あ、あのビルの屋上とか攻撃するのにいいんじゃない?」

「そ、そうですね……」

「よし、それじゃあ……」

 

 盈月と儚は周囲を見回し、人がいないことを確認してからそれぞれのベルトを巻き、それぞれの変身アイテムを手にした。

 

「変身!」

「変身……」

 

《SET! YOU ARE MAJESTY! REQUIP! フライトイーグル!》

《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》

 

 仮面ライダーエリシア フライトイーグル。

 仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック。

 二人の戦士が並び立つ。エリシアは翼を広げて飛び立ち、ハカイブは跳躍し、最高到達点で手から糸を出して更に上昇していく。

 エリシアとハカイブは同時にビルの屋上に着地し、エリシアは蒼弓風刃ツインラプターを蒼弓モードにし人工太陽へと狙いを定める。

 

《仮面ライダーハカイブ パニッシャーマグナム》

 

 ハカイブはアサルトゴシックからパニッシャーマグナムへと変化し、ガイストマグナムをライフルモードへと変形させ銃口を人工太陽に突きつける。

 

「同時に撃ちますよ……!」

「うん!」

 

 二人のエネルギーが高まっていき、今にも放たれようという瞬間。

 火炎が二人を襲った。

 

「きゃっ!?」

「っ……! 現れてくれましたか……」

 

 二人の前に現れたのは青い身体に銀色の機械的な装甲を纏い、真っ赤な炎のような意匠を宿した魂融合怪人。

 ハカイブはキセキレジスターを手にし、一体なんの魂が取り憑いているのかを確認した。

 

「やはりクロイゼル……それと、火焔プロメテスですか……」

「名前も見た目も熱そうだね……」

 

 人工太陽を守るため現れた怪人は頭部から赤い稲妻状の光線を放ちエリシアとハカイブを攻撃する。

 二人は回避してそれぞれ矢と銃弾で反撃。

 

「うおおお!!!!! 燃やす! 陽キャ燃やす!」

「ひぃん……中身は陰キャ……」

「俺の邪魔をするなぁ!!!」

 

 怪人は口から炎を吐きながらライダー二人に接近し格闘戦に移行。

 ハカイブは盾を構えながらガイストマグナムを撃ち続けるもまったく意に介さないように怪人は突き進み、盾ごとハカイブを蹴り飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

「儚ちゃん!」

「お前からは陽キャの気配がする!」

「そんなこと言われても!」

 

 エリシアはツインラプターを分割し双剣にして怪人を迎え撃つも火炎の前に怯んでしまう。

 怪人はとにかくエリシアを集中的に攻撃しており、陽キャへの怨念が更にエリシアを圧倒する。

 

「くっ……エイゲツさん……」

 

 ハカイブはアサルトゴシックに戻り、格闘戦に対応し怪人に向かって横から殴りつける。

 よろめいた怪人。その隙にハカイブとエリシアは態勢を整えて怪人と向かい合う。

 

「その程度か! はあ!」

「なに!?」

 

 人工太陽から放たれた光を怪人が浴びる。

 そしてまた頭部からの光線をライダー達へと向けて放つ。先程同様に回避しようとしたライダー達だが、光線は先程以上の威力で爆発の余波だけでもダメージを与えてくる。

 

「っ!?」

「儚ちゃん!?」

 

 ハカイブは吹き飛びビルから落下。屋上にはエリシアと怪人の一対一となる。

 

「何が陽キャだ! 焼き尽くしてやる!!!」

「っ!」

 

 襲いかかる怪人にエリシアは果敢に立ち向かう。

 一方、地上へと落下したハカイブは……。

 

「あついっ!?」

 

 地面に伏すもアスファルトのあまりの熱さに即座に立ち上がった。

 

「いや……いくらなんでも熱すぎる……」

「そのとおり! 暑いのは人工太陽のせいだけではなかったのだ!」

 

 ハカイブの前に現れたもう一体の怪人。

 円筒型のボイラーのような身体に溶岩で形成された手足。ガマガエルのような顔をし、口からはマグマが垂れ流しとなっている。

 

「ゴースターとガマボイラー……!」

「俺の日本フライパン作戦も同時進行で進んでいるのだ! 邪魔をするなライダー!」

「うるさいですね……ポッと出ガエル……」

「ふざけた名前をつけるなー!」

 

 地上と屋上で戦いが始まる。

 恐るべき灼熱地獄の中でエリシアとハカイブはこの凶悪な怪人二体に打ち勝つことが出来るのか。

 次回へと続く。

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