仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ エリシア×ハカイブ 灼熱!?人工太陽と日本フライパン作戦 作:大ちゃんネオ
ヴァンダル・リーグの基地の中ではカンナが普段とは違う薄物の着物を着て、いちご味のかき氷を食べながらライダーと魂融合怪人の戦いをモニターしていた。
室内にはカンナ以外にもう一人。長年愛用しているのだろう、若干くたびれた革のジャケットにファドーラ帽。長い赤髪を束ねた男はかき氷を頬張るカンナの横顔を見て口笛を吹いた。
「風情ってやつですかい、カンナさんよぉ。ま、この世界、今は12月なんですがね」
男の言葉には特に反応しないカンナ。黙々とかき氷を食べ終えると器をテーブルの上に置き、自信の能力で氷を生成し古式ゆかしいかき氷器にセットして氷を削り出す。
隣にズラッと並んだかき氷のシロップから今度はブルーハワイを選んで手に取ると、真白い氷にたっぷりとシロップをかけて爽やかな青を彩らせた。
「……カンナさんや、いくら自分の力で氷作り放題だからって食べ過ぎだろかき氷」
「……暑いのは、苦手」
「はっ! テメーらでやっておきながらそれかい。お客様にこんなこと言うのもなんですがね、馬鹿なのかヴァンダルなんたらってのは」
ようやく口を開いたカンナだが、依然として男の方を向くことはなく画面とかき氷に集中している。
「……うるさい男は嫌いよ、インディ」
インディ。それが男の名であった。
初めて名前を呼ばれたことに機嫌を良くしたインディは帽子を取り、営業スマイルでカンナの前へと立った。
「いやはや、フリーの墓荒らしなんて身なものでして今後ともぜひ御贔屓にしてくださいますよう、どうぞよろしくお願いしますね」
「……贔屓にするには、高すぎる」
「フリーでやってるためお値段は少々高くつきますがその分、品質は保証しますよ。今回ご購入いただいた魂のうち、特にその二つは最高級品と言っても過言ではありませんからね」
二つ並んだ桐箱に視線を向けながらインディは言った。
狡猾な蛇のような、それでいて狩りをしていない時の獅子のような目。
カンナの目にインディはそう映っていた。
だが狩りをしていない時でも獅子は獅子。
危険なことに違いはなかった。
「ひとまず見させていただきますよ。あなた方の世界の壊し方ってやつを」
くつくつと笑い、インディもまたモニターへと目を向けた。
カンナはインディが映像に集中したのを横目で確認してからかき氷を再び口にするのだった。
二体の灼熱怪人を前にライダー達は苦戦していた。
人工太陽だけでなく、地熱すらも上昇し日向は気温50度を突破したところ。
そう、突破したところなのである。
気温上昇は留まることを知らず、東京を焦熱地獄へと変えていく。
「こ、このまま暑くなっていったら……」
「東京が……日本も世界も危ない!」
ライダーに変身しているため活動出来ている二人だが、常人は外で行動などもはや出来ない。
しかし、その戦いぶりは万全とは言い難い。
「当たって!」
「どこを撃っている!」
矢を射るエリシアには精細さが欠け。
「ふんっ!」
「なんだそのパンチは!」
ハカイブの拳には力が乗り切らない。
厳しい環境下にも耐え得るライダーだが、じわりじわりと彼女らの体力が奪われていく。
そしてこの酷暑のように怪人達の攻撃は一切の躊躇なく苛烈に襲いかかる。
クロイゼルと火焔プロメテスの魂融合怪人は人工太陽の光を浴びてエネルギーをチャージし頭部から赤い稲妻のような光線をエリシアへと放ち、ゴースターとガマボイラーの魂融合怪人、ポッと出ガエル(儚命名)はマグマのエネルギーを宿した拳でハカイブを殴り飛ばす。
「きゃあっ!?」
「ぐはっ! ……エイゲツさん!」
エリシアは今の攻撃で屋上から吹き飛び、落下しつつある。
しかし、エリシアは鷲の力を宿すライダー。空中は彼女の舞台である。冷静に姿勢を整え、翼を広げ飛行するエリシアだが、屋上から怪人による赤い稲妻がエリシアの背を撃った。
砕け散った光の翼。
ハカイブはあの高度からエリシアが再び翼を生成して飛行するのは間に合わないと判断し咄嗟に駆け出す。
掌で蜘蛛の糸を編みながら。
「間に合って……!」
街路樹を利用して広げた巨大な蜘蛛の巣が落下してきたエリシアを受け止める。
見たところ、落下の衝撃によるダメージはない。
「よ、よかった……」
「ありがとう儚ちゃ————」
「戦いの最中に背中を見せるとは!」
「ッ!?」
ポッと出ガエルが口から放った白い泡状の体液がハカイブの背中を直撃する。何かダメージを受けているようには見えない攻撃であったが、ハカイブはエリシアに体液がかからないように受け止め続けた。
「儚ちゃん!」
「っ……」
ハカイブはよろめき、変身が解除されると膝をついた。
意識を失いかけている儚を受け止め、エリシアは必死に儚の名前を呼び続ける。
「儚ちゃん! しっかりして儚ちゃん! 儚ちゃん!」
朦朧とした意識の中で儚は自身の身に何が起きたかを考察していた。
痛みがあったわけでもない。
毒が回っているわけでもない。
急激に体力を消耗したかのような感覚。
厄介な攻撃を喰らってしまったと儚は内心で舌を打った。最早、舌を打つだけの体力もない。
ただ、その異様さに儚はエリシアを守ることを最優先にし、結果エリシアを守ることは出来た。
とはいえ、現状は何も好転していない。
「よいしょっと。墓守の方はやったか」
「ああ。これで残ったのは墓守じゃない方だ」
もう一体の怪人も地上に降りてエリシアと儚へ躙り寄る。
二対一。圧倒的な不利。
怪人にとっては条件も良い環境下で、勝敗は決したとすら言える状況。
絶望的とは、正にこのことか。
「……」
否。
「なんだ、一人で戦うつもりか?」
「いいぜこいよ。やってやるよ、拳で」
エリシアは、絶望などしていなかった。
力強い瞳で天に浮かぶ偽りの太陽を見つめていた。
『……えいげつ、きこえるか。そっちはいま、どういうジョーキョーだ』
「博士? 声、なんだかすごいふにゃふにゃだよ?」
『うっ……飲み過ぎた……』
唐突なエリシア博士からの通信に盈月は肩の力が抜けた。それでちょうどいいと儚を街路樹の影に寝かせて立ち上がる。
『それよりもだ、状況を教えろ……。勝手に戦闘するなんて……気温も上がって、もうエアコンが効かなくなってきてるしで一体どうなっているんだ!』
「あの太陽の原因になってる怪人を見つけたんだ。もう一体、別の怪人もいて、それで儚ちゃんが私を庇って……」
『ハカイブが……』
通信の向こう側では結城荘の面々の声も盈月に届いていた。
儚を心配する声。
盈月は仮面の下で一瞬、瞳を閉ざして決意する。
「博士、私ね、あの太陽を撃ち落としてくる」
『なっ……!? おい、ちょっと待て! ダメージを受けているんだろう!? そんな状態であれをどうやって……まさか!』
エリシア博士は最悪の想像をした。
脳裏に浮かぶは有名な神話のワンエピソード。
《ハウリング×フライト! イーグル!》
もう一枚のスコアプレートを使い、エリシアはエリシアOCへと変身。
純白の鷲に黄色い獅子の力を重ねて。
「どんな姿になったって!」
「燃やし尽くしてやる!」
「ッ……ハァッ!」
迫る二体の怪人の攻撃を掻い潜り反撃の蹴りが二連。怪人達をダウンさせると蹴りの勢いを利用しエリシアOCは再び空へと舞い上がった。
高く、もっと高く。
天地を焦がす偽りの太陽へと向かって、空を翔ける。
『無茶な真似はやめろ!』
「大丈夫! エネルギーならまだ充分あるから!」
『そういう問題じゃない! 体表面がどんどん熱くなっている! いくら変身しているとはいえ……いくら偽の太陽だとしても接近するのはよせ!』
「……博士。儚ちゃんがね、私のことを助けてくれたんだ。自分だって危ないのに、私のことを」
『盈月……。だとしても、これ以上は……!』
「ここでやらなきゃ私、仮面ライダー失格だよ! だから!」
盈月の頭の中を流れていく、この世界で出会った人達の姿。
たとえ、この世界との関わりがまだほんの僅かだとしても、この世界に来なければ章太郎や結城荘の入居者達、そして儚とは出会えなかった。
自分を守ってくれた儚のためにも、素敵な人達と出会わせてくれたこの世界のためにも。
「私は、飛ぶ!」
いよいよ、エリシアOCの必殺技の射程圏内にまで近付いた。
エリシアOCはツインラプター蒼弓モードを構え、ハウリングライオンのスコアプレートをセットする。
『盈月よせ! 盈月!』
叫ぶエリシア博士のPCモニター赤くアラートが表示される。
もう、システムの限界が近い。
人工太陽を撃つのが早いか、エリシアOCの限界が先か————。
《RESOLVE SHOOT FINISH!》
システム音声が鳴り響くと、黄色く輝くライオンの形をしたエネルギーの矢が放たれる。
獅子の牙が太陽を砕く! に、至らない。
生命の父たる太陽を模した力は百獣の王を灼き焦がしてしまった。
「そん、な……」
『えいげ……』
仮面が、砕ける。
絶望に揺らぐ盈月の瞳。
エリシアという名の翼は焼け落ちた。
生命を縛りつける重力という名の枷に囚われ、盈月は落下していく。先程のビル屋上とは比較にもならない高度から。
どんどん遠くなっていく偽りの太陽が盈月を嘲笑うように見下ろす。
「ごめんなさい……儚ちゃん……。博士……」
最後、エリシア博士の張り裂けそうな叫びが聞こえた気がした。
儚にも合わせる顔がない。
盈月は諦めるように目を閉じた。
だが、その時だった。眩しい光が、盈月に瞳を開かせる。
光の正体、それは。
「……太陽……」
天高く、空を照らす太陽の優しい光。
本物の太陽の輝きだった。
「綺麗だなぁ……」
手を伸ばす。
生命の父たる太陽へと。
すると、伸ばした手の中でプロミネンスのような赫き焔が渦を巻く。
やがてそれは、盈月にとっての力となる。
「スコアプレート……!?」
新たに今この場で生まれたスコアプレートに盈月は目を奪われる。
何故こんなことが出来たのか、盈月に分かるはずもない。
ただひとつ、分かることは。
「これなら、いける!」
盈月は躊躇うことなく、そのスコアプレートを起動してみせた。
《サンライズドラゴン!》
「変身!」
《SET! REQUIP!》
《PERPETUAL BLAZING! サンライズドラゴン!》
纏うは灼熱の赫。
鱗模様の赤いインナースーツの上に、紅いアーマーを纏う竜騎士の如き姿。胸には竜が握る宝玉のような赤い宝珠「サンライズジェネレーター」が輝き、太陽のように滾っている。
竜の頭部を模した仮面は黄色のアイレンズが輝き、脚部の爪はより鋭く、より攻撃的な姿へと転じた。
その名は仮面ライダーエリシア サンライズドラゴンスコア。
『なんだそのエリシアは……おい盈月! 何がどうなって……』
「博士! これならいける!」
『なんだ、このエネルギー生成量は!?』
エリシア博士の悲鳴のような驚愕を置き去りにし、エリシアは背中より放出した熱エネルギーで翼を生成。
これまでのような鷲の翼ではなく、更に巨大な竜の翼。
地上すれすれを飛行したエリシア サンライズドラゴンスコアは燃ゆる翼で怪人達を攻撃し再び上昇。
エリシアOC以上の速さで、再び人工太陽のもとへ到達すると胸のサンライズジェネレーターの前で両手を向き合わせエネルギーを集中、収束させていく。
「はぁぁぁぁ!!!!!」
放たれる、赤色の熱光線は人工太陽を押し出していき人工太陽を爆散させる。
その爆発のエネルギーをもエリシア サンライズドラゴンスコアは吸収し地上へと舞い降りる。
「ば、馬鹿な! 俺の太陽を破壊するなんて!」
「お、落ち着けよバカ! あいつは墓守じゃないんだ! 強くても俺達を倒し切れないんだ! それにまだ地下のマグマは止まっちゃいねぇ!」
「どうしてこんなことするの! みんな暑くて大変なんだよ!」
「うるせぇ! どうせお前だって暑いの楽しんでたんだろ!」
「うぐっ……」
それは、そうだけど……とエリシアは口籠った。まったくその通りだったからである。
「そんなに暑いのが好きなら、暑さで死ぬのが本望だろうがよ!」
「そんなことないよ!」
「うるせえ! そんな暑苦しい格好してるお前が言っても説得力皆無だぜ!」
「うっ……」
エリシアではまったくこの口合戦に勝てる見込みがない。
そんな時だった。
「……本当、その人達の言うとおりです。眩し過ぎるんですよ、エイゲツさんは……」
「儚ちゃん!」
地面に寝転んだままの儚が口を挟む。未だに身体を動かすことも出来ず、目も焦点があっていないような状態にも関わらず。
ただ、それでも目覚めたのは眩い輝きに目を奪われそうになったから。
「危うく、勘違いイタ女を目指すところでした……。儚はエイゲツさんみたいにはなれないのに……」
「儚ちゃん……」
「太陽は一個あれば充分なんです……。二個も三個もあったら、ましてや近くになんてあったら眩し過ぎて、何も見えなくなります……」
「儚ちゃん……。儚ちゃん、私に言ったよね。私のこと太陽みたいだって。だったら儚ちゃんは月だよ! 静かだけど、たしかにみんなのことを見守ってる、月……」
「月……」
波打つような儚の視界に、優しく降り注ぐ月光を見た。
銀色の涼やかな、静謐さを湛えて眼下の大地を見守る穏やかな月。
「儚は、まだ……戦える!」
血が滾り、銀の瞳が輝いて、儚が吼えるのと時を同じく。
ヴァンダル・リーグの基地の中。インディから買い付けた桐箱の中の二つの魂が自ら封印を解き、暴れ出した。
「なんだってんだ、おい! なに逃げ出そうとしてんだ死人のくせしてよぉ!」
慌ててインディは魂を追い回すが、その甲斐虚しく魂二つは脱走。
その様をかき氷を食べながら見つめていたカンナは最後の一口を食べ終えると、一言。
「……最高級品というだけあって、活きがいいわね?」
「チッ! ……取り返してきますので少々お待ちを」
インディが指を鳴らすと銀のオーロラが現れ、その中へと飲み込まれる。カンナはインディの出陣を見届けると、再びかき氷を作り始めるのだった。
一方、場所は戻り怪人達は女子二人の会話に混ざれずにいた。
邪魔してはいけないと思ったのだ。しかし、戦意を見せるというのなら話は別。
立ち上がった儚、新たな姿を得たエリシアへとそれぞれ攻撃を放つ。
「全部全部燃やし尽くしてやるんだぁ!!!」
赤い稲妻が、火炎が、マグマが二人を襲う。
しかし、炎と熱は今のエリシアには何の効果もない。儚を庇うように立ったエリシアにより、攻撃は無力化されてしまう。
「エイゲツさん……!」
「儚ちゃん、今のうちに変身して!」
「はい……!」
キセキレジスターを手にした儚。その上空から、二つの銀に煌めく魂が舞い降りる。
「この魂は……! 一体、どうして……」
儚は驚愕しつつも、この魂達は自分に力を貸してくれるようだと悟りキセキレジスターの中へと招き入れる。
そして、細筆を走らせる。
《ボディ 仮面ライダーSHADOWMOON》
儚の肢体が白銀の生体強化皮膚に包まれる。
硬質化した皮膚はさながら外骨格のよう。
《アーマー シャドームーン》
続けて筆で書き記すと儚はキセキレジスターを閉じ、合掌。
「……変身」
《仮面ライダーSHADOWMOON×シャドームーン》
《世紀の影 創世の月 月影之王!》
《仮面ライダーハカイブ シャドーセンチュリー》
キセキレジスターをバックルへと納め、開帳。
次の瞬間、キセキレジスターから緑光と銀光が放たれて怪人達は目を覆った。
光の中、儚の顔を飛蝗のような生物的仮面が覆うも光が仮面を鍛え直し、金属質の銀の仮面を形成。長いV字のアンテナを携え、巨大な複眼はエメラルドのごとく煌めき、強化皮膚の上に銀の鎧を纏う。
手足には飛蝗の脚に似た黒い刃を備え、両肩から鎧のように生える銀の飛蝗の脚が、胸部に埋め込まれたエメラルドのような宝珠「月影之石」を守るよう。月影之石を中心にグリーンのラインが身体中を駆け巡り、全身から噴き上がる蒸気は、漲る生命力。
「私は月影の子……仮面ライダーハカイブ、シャドーセンチュリー……!」
左手を突き出し、ハカイブがその名を挙げる。
共に月の影を名に冠し、創世王の次期候補たる世紀王。黒き太陽と激闘を繰り広げたという運命すらも酷似した二人の銀の戦士の力を宿した姿、シャドーセンチュリー。
陽光を受け止める銀の姿が眩い。
「どんな姿になったって関係ない!」
「焼いちまえばいいんだ!」
「儚ちゃん、いくよ!」
「ええ、エイゲツさん……!」
二大ライダー対二大怪人の死闘が始まる。
エリシア サンライズドラゴンは怪人ポッと出ガエルと激しい格闘戦を繰り広げる。マグマの拳と太陽の拳がぶつかり合い、灼熱を撒き散らす。
戦えば戦うほどにサンライズジェネレーターが輝きを増し、力強い拳がポッと出ガエルの胸を穿った。
「うがぁっ!? パワーで押される……!?」
「すごい……どんどん力が溢れてくる! やあっ!」
一方、ハカイブ シャドーセンチュリーは怪人の稲妻に動じることなく堂々と歩を進めていた。一歩、一歩と進む度に装具が揺れて特徴的な足音を鳴らす。
そして静かに右手を怪人へと向けると、月影之石が発光し全身のグリーンのライン、月影流線もまた光り輝く。
すると、怪人は見えない巨大な手に握り締められたかのように身動きが取れなくなる。
「ぐあっ!? な、なんだ、これは……!?」
「そういえば、まだ戒名をつけていませんでしたね……。あなたは……」
「太陽サンとかどうかな儚ちゃん!」
「えっ、あっ、え、あ、じゃあ、それで……」
肝心の名付けシーンをエリシアに取られたハカイブは念動力で動きを封じた太陽サンを吹き飛ばす。
吹き飛ぶ二体の怪人が積み重なり、エリシアとハカイブが並び立つ。
「お前達を世にも恐ろしい世界に送ってやります……」
再び月影之石が発光すると怪しげな緑光が怪人達に浴びせられる。
そして、怪人達は……学校の教室で席についていた!
賑わう生徒達の中、怪人達はまるでそこの一生徒のように誰に気にされるでもない。
「な、なんだここは!?」
「なんで学校になんか! 今更学校になんて行くつもりはないぞ!」
そこへ、スーツに黒縁眼鏡をかけた儚が怪人学と書かれた教科書を持って教室へと現れる。
「はい、みなさん席についてください……授業をはじめましゅ!」
「先生いきなり噛むなよ〜!」
「ひ、ひぃん……噛んじゃった……」
生徒達にとって儚が噛むことは日常茶飯事のようで笑いが絶えない。
そんな光景に怪人達もふと、笑っていたのだが……。
「あっ! 太陽サン君とポッと出ガエル君も笑ってる〜」
何気ない女子生徒……盈月の一言が怪人達にダメージを与えた。
次の瞬間、異空間から現実へと引き戻されて怪人達は全身から火花をあげた。
「ぐああああ!!!!!!」
「やめろぉぉぉ!!!!!」
「ヴェッ!?」
「なんで儚ちゃんまでダメージ受けてるの!?」
「が、学校……知らないけど……きょ、共感性羞恥……みたいな……」
今の一撃はあまりに威力がありすぎたのだ。
「なんで、笑ってるだけで……」
「笑うことも許されないのか!!!」
「えっと、ほら、普段あんまり笑ってない子が笑ってたから、嬉しいな〜って思って」
純粋な善意は時に鋭い刃となる。
陰キャ怪人達は身体を切り裂かれたかのような痛みに襲われてしまう。
「そろそろ可哀想なので、トドメといきましょうか……」
「うん! いこう儚ちゃん!」
エリシアはイマージュドライバーのバックルを二回叩くと、それに呼応するかのように胸のサンライズジェネレーターが輝きを増していく。
《SET! サンライズドラゴン!》
《SUNRISEDRAGON RESOLVE FINISH!》
灼熱の翼を広げ、エリシアは飛翔。
高高度で宙返りし、右足を突き出し太陽サンに向けて降下。それと同時に熱エネルギーを放出し更なる加速。
赫き彗星となってプロミネンスの尾を引き、エリシアの右足が太陽サンを蹴り飛ばした。
《月影之王! 月影之王! シャドーセンチュリーブレイク!》
ハカイブ シャドーセンチュリーはバックルのキセキレジスターを開閉させ必殺技を発動。
右の拳に緑のオーラを纏わせ、ハカイブは跳躍。
「シャドーセンチュリーパンチ……!」
「まぶし!?」
激しく明滅する光に怪人ポッと出ガエルは怯み、防御出来ない。シャドーセンチュリーパンチの直撃を受けて殴り飛ばされたポッと出ガエルに向けて、次なる技が放たれる。
再び強烈なフラッシュと共に跳躍したハカイブ。両足にエネルギーを回し、空中で身体を捻りながら放つは!
「シャドーセンチュリーキック……!」
ハカイブの両足がポッと出ガエルを吹き飛ばす。
それぞれのライダーキックを受けた怪人達は爆発し、取り憑いていた魂達が宙を泳ぐ。そこへハカイブがバックルからキセキレジスターを取り外して魂へと向ける。すると魂はキセキレジスターへと吸い寄せられて戦士の墓場へと帰っていくのだった。
「どうか、安らかにお眠りください……」
「終わったね、儚ちゃ……」
キセキレジスターを握りながら合掌するハカイブにエリシアが駆け寄ると、二人の足下が爆ぜた。
咄嗟に二人は緩んだ気を引き締め戦闘態勢に戻る。
二人が目を向けた方向にはレザージャケットにファドーラ帽を被り、束ねた赤髪を風に揺らすインディの姿があった。