仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ エリシア×ハカイブ 灼熱!?人工太陽と日本フライパン作戦   作:大ちゃんネオ

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太陽と月、重なる時

 酷暑の原因であった二体の魂融合怪人を撃破した仮面ライダーエリシアと仮面ライダーハカイブの前に現れた赤髪の男。

 ハカイブは男から敵の臭い。即ち、墓荒らしであることを感じ取った。

 

「……墓荒らし!」

「御名答だ墓守さん! 俺の名はインディ。組織に属さず自由にやらせてもらってる墓荒らしだ」

「あれが、墓荒らし……」

「しかし、今回は俺も被害者だよ。俺が汗水垂らしてゲットした魂を盗りやがって」

 

 わざとらしくため息をつくインディに儚は噛み付かずにはいられなかった。

 

「最初に盗み出したのはあなたでしょうに!」

「そうだよ! 元々は儚ちゃんの世界にあったんだから!」

「はあ、女は複数人になるとうるさくて仕方ねえな。ともかく、こっちはビジネスでやってるんだ。取り返させてもらおうか」

 

 インディは指を鳴らすと自身に取り憑かせている怪人の魂を目覚めさせる。

 

「あれは……!」

 

 闇に包まれ変貌していく肉体。禍々しい巨大な角を左右に長く伸ばしたかのような顔面にはエネルギーで形成されたプレートが突き刺さっていき、両腕にはリング状のアーマーが嵌められていく。そうして、爆発が起きたかのように怪人の幻影が広がっていく。

 

「儚ちゃん、あれは……」

「……アマダムと、アナザーディケイドの魂融合怪人……!」

「よお、これが俺の戦闘形態だぜ」

 

 インディ怪人態は魔法石に封印されていた魔人、アマダムを中心にしアナザーディケイドで挟んだかのような姿。

 両腕にはリングのような鎧を纏い、先刻まで戦っていた魂融合怪人とは圧倒的な格の違いを感じさせた。

 

「取り返すだけじゃない。そこのお嬢ちゃんの力も、お前が使ってる魂もまるっといただいちまうぜ、墓守さんよぉ!!!」

 

 指を鳴らすインディ怪人態。

 するとインディの背後に銀のオーロラが揺らめき、その向こう側から四人の刺客が現れる。

 

「ライノス……! それに、仮面ライダー!?」

 

 エリシアは現れた敵の中に見知った存在がいたことに驚愕した。

 ライノススコアノート。エリシアの世界で、盈月がエリシア博士と共に撃退まで追い込んだ強敵である。

 

「別の世界のライダーのようです……。それにドーパントまで……。これがアナザーディケイドの力……」

 

 ライノススコアノートの他に現れたのは仮面ライダーデイナの世界より、烏賊と貝の力を備えた仮面ライダーステイク。

 仮面ライダー焔羅の世界で覇を競った鋼鉄のミュータントライダー、仮面ライダー鋼魔。

 仮面ライダーシェリフの世界で殺戮を繰り広げたエッジドーパント。

 インディ怪人態を中央にし、四体は前へと躍り出る。

 正史とは違う、悪が勝利した世界、アナザーワールドより遣われし存在。

 皆、強敵揃いである。

 

「さらにもう一人、追加してやるよ」

 

 インディ怪人態は人間の顔ならば狡猾な笑みを浮かべているように愉しげに言いながら、右手の中指に指輪を嵌める。

 白い仮面に金色の三本角を備える戦士の仮面を象った指輪を。

 

「出なぁ! ツルギさんよぉ!」

 

 白い光を放ち、純白の剣士。仮面ライダーツルギが現れる。

 白い太刀をだらりとぶら下げたままツルギが歩き出し、インディ怪人態が召喚したライダー、怪人がエリシアとハカイブに襲いかかる。

 

「ハッハァッ!!! ライダーも怪人も俺の言いなりだ!」

 

 インディ怪人態の言葉にハカイブは仮面の中で舌を打ち、顔を顰める。

 墓守たるハカイブからすれば、耳にしたくもない言葉だったからだ。

 

「エイゲツさん、まだいけますか……?」

「うん! 今までにないくらい、すごいパワーが漲ってる!」

「それじゃあ……もうひと暴れです……!」

「行こう、儚ちゃん!」

 

 二人は頷き合い、敵に立ち向かっていく。

 

「たあっ!」

 

 エリシアは飛翔し、ライノススコアノートへと飛び膝蹴りを喰らわせて着地。その背後に仮面ライダー鋼魔がトンファーを構えて迫り、エリシアはサンライズジェネレーターが放つ熱エネルギーを拳に纏わせて鋼魔の堅牢な装甲を殴り付けて紅く変色させる。

 ハカイブは鮮血が刃と化したかのような深紅の魔剣センチュリーサーベルを呼び出し、エッジドーパントの刀と打ち合う。

 その最中、右腕のドリルを唸らせ仮面ライダーステイクが横槍を入れてくる。エッジドーパントを蹴り飛ばし、仮面ライダーステイクの攻撃を回避したハカイブ。だがその首筋を狙い、白刃が迫る。

 

「くっ……!」

 

 咄嗟に左手首の黒い刃、シャドーアームトリガーで受け止め白刃の主、仮面ライダーツルギと睨み合いながらジリジリと機を伺う。

 動いたのはエッジドーパント。背後からハカイブに斬りかかるも、ツルギの太刀を払い除けたハカイブはセンチュリーサーベルでエッジドーパントの胴に一閃。

 再びハカイブへと迫る仮面ライダーステイクにツインラプターを双剣モードに構えたエリシアが立ち向かい、轟音あげるドリルの一撃を紙一重で躱しながら斬撃を浴びせようとするもエリシアを執拗に狙うライノススコアノートが得意の突進を仕掛けてくる。

 

「エイゲツさん……! くっ!」

 

 エリシアに迫るライノススコアノートを止めようとハカイブは念動力を発動。ライノススコアノートの動きを封じ込めるも、念動力を使用しているハカイブは身動きが取れず、エッジドーパントと仮面ライダーツルギがハカイブの隙をつこうと刃を振るう。

 

「儚ちゃん!」

 

 エリシアはライノススコアノートを蹴り飛ばし、その勢いを利用し宙を舞う。灼熱の翼を広げてエッジドーパントと仮面ライダーツルギの前に降り立ったエリシア。その熱波に怯み、エッジドーパントと仮面ライダーツルギは一歩後退。

 ハカイブもその間にライノススコアノートを念動力で投げ飛ばし、仮面ライダー鋼魔へとぶつけ、センチュリーサーベルから放った光弾で仮面ライダーステイクを攻撃する。

 ここまでが一拍かのような激しい乱戦の中の小休止。エリシアとハカイブは呼吸を整える。

 敵方もまた同じく。

 

「二人だけでも結構やれてるね……!」

「乱戦は難しいですから……。連携が取れなければ、数の多さはデメリットです……」

「そっか。じゃあ、私達は連携がしっかり取れてる良いコンビってこと?」

「えっ、あっ、いや……それはどうでしょう……」

「そこは、はいって言ってよー!」

 

 エリシアが叫ぶと同時に二人の足下から火柱が上がる。即座に回避した二人。今の攻撃は、ここまで静観していたインディ怪人態によるものだと分かった。

 

「あいつを倒さないことには……」

「よし、じゃあ倒そう」

「気軽に言いますね……」

「大丈夫だよ。儚ちゃんと一緒だもん」

「……あの男、これまでほとんど動かなかったのはライダーや怪人を使役するのに結構力を割いてるからじゃないですか? この姿で念動力を使うのと同じみたいに……。  攻撃してきたのも儚達が動きを止めた時でしたし……。それが奴の弱点かもしれません……」

「冷静な分析すごい! でもそれより今の返事が欲しいな〜?」

「ひぃん……ハカナ、エイゲツサントイッショ、ウレシイ」

「なんでカタコトなのー!」

 

 駆け出したハカイブを追うようにエリシアも跳躍。

 狙うはインディ怪人態。

 儚の考察に賭け、二人は疾走。

 インディ怪人態の放った刺客達の攻撃を掻い潜ろうと駆けるも、召喚されたライダーも怪人も一筋縄ではいかない強者達。

 なかなか、思うように進めない。

 敵将まで遠い。

 しかし、ここで精神的疲弊などしてはいられない。

 

「シャドーセンチュリーフラッシュ……!」

 

 ハカイブは胸の月影之石から強烈な光を放ち、インディ怪人態の軍勢を怯ませる。

 それを見たエリシアは自身の胸で滾るサンライズジェネレーターに目を向けた。

 

「私も出来るかな……? はぁぁぁぁ……!!!!!」

 

 エリシアはサンライズジェネレーターをフル稼働させてエネルギーをチャージ。ますます紅に染まるエリシアは蓄えた熱エネルギーを一気に放出する。

 

「ハァ!!!!!」

「なんだ、この光は!?」

 

 白熱光を放つエリシア。灼熱が周囲を焼き尽くさんとする。

 さらに、ここでエリシアも想定していない事態が起こった。

 エリシアが放ったエネルギー、光をハカイブの銀色のボディが反射して威力を更に高めていたのだ。

 太陽の光を、月が反射するように。

 吹き飛ぶインディの軍勢は大きなダメージを受けたことで銀のオーロラがそれぞれのアナザーワールドへと送還させ、ライダーリングにより召喚されたツルギは白い光となって姿を消した。

 これで残るは、インディ怪人態のみ。

 

「なにィ!?」

「すごいね儚ちゃん!」

「いや、今のは偶然……」

「偶然でもすごいの! このまま一気に決めよう、儚ちゃん!」

「……はい! エイゲツさん!」

 

 このまま一気にインディ怪人態を倒そうと意気込む二人。エリシアは跳躍しインディ怪人態の頭上すれすれを飛び越えていく。サンライズドラゴンスコアの羽撃きはインディ怪人態へ熱波を浴びせダメージを与え、その隙にハカイブも接近しセンチュリーサーベルを振り下ろす。エリシアはインディ怪人態の背後に着地し、ハカイブの攻撃と合わせ紅蓮の拳で殴りつける。

 だが。

 

「……っ!」

「その程度の攻撃かぁ!!!」

「堅い!」

 

 インディ怪人態の想像以上の堅牢さ、そして。

 

「とあーっ!」

 

 恐るべきパワー。

 まず前方のハカイブへと拳を放ち、回避されるも反動を利用して振り返り背後のエリシアへも殴りかかるインディ怪人態。ハカイブとエリシアはインディ怪人態の拳を回避するが、あまりの威力に空気すらも殴りつけられハカイブの背後に停められていた車は巨大な拳に押し潰されたかのようにぐしゃりと崩れ、爆発。またエリシアの後方に聳えるビルの壁には大穴が開いてしまった。

 回避し、集合したライダー二人は非常に高いスペックを誇るインディ怪人態の迫力に背筋が凍えるかのような感覚を味わった。

 

「こいつ……本人が戦った方が強いんじゃ……」

「そうかも……」

「まだまだガキには負けねえよ仮面ライダーさんよぉ〜〜〜。ハアッ!」

 

 ライダー達へと向けて右腕を伸ばすインディ怪人態。

 エリシアとハカイブの足下から爆炎が噴き上がり、二人のライダーは炎に包まれた。

 爆破の威力も申し分ない。

 無事ではいまいとインディはほくそ笑む。

 

「吹っ飛んじまったか、お嬢ちゃん達は」

 

 ハカイブに奪われた魂でも回収してやるかと歩き始めたインディ怪人態だが、炎の中から金属が震えるような、甲冑を纏った者の足音のようなものが響いた。

 

「……なに?」

「やぁぁぁ!!!!!」

 

 爆炎を裂いて現れる紅と銀。 

 力強く大地を蹴って、二人のライダーがインディ怪人態へと立ち向かっていく!

 

「一気に……」

「攻める!」

 

 反撃に出たライダーの攻勢は激しく、インディ怪人態に息をつかせぬほどの猛攻。

 銀と赤の拳が代わる代わるインディ怪人態の身体へと打ち付けられていく。

 

「勢いだけで乗り切れるもんかよ小娘が!」

「その勢いに負けてるのはどっち!」

「おじさんにそういう元気はありませんもんね……ぷっ」

 

 攻撃、口撃。

 殴る、殴る、殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る————!

 

「小娘どもがぁ!!!」

「負けるかぁ!!!!」

「沈め……!」

 

 インディ怪人態は徐々に徐々に後退していく。

 そして、二人の拳が同時に放たれた時だった。

 崩れる、インディ怪人態のガード。開かれた勝機にエリシアとハカイブの瞳が輝く。

 二人の想いはひとつ、インディ怪人態を倒すこと。それに応えるかのようにエリシアのサンライズジェネレーターが、ハカイブの月影之石が鼓動を発し、二人のライダーが絆で繋がる。

 

「「ハアッ!!!!!」」

「ぬおおッ!?」

 

 ダブルライダー渾身の一撃がインディ怪人態を殴り飛ばす。

 宙を舞ったインディ怪人態。

 その隙に二人は頷き合うとエリシアが翼を広げ飛翔。インディ怪人態の真上を飛び、灼熱を浴びせて追撃し、エリシアはインディ怪人態の後方へと着地。

 エリシア、インディ怪人態、ハカイブが一直線となり、インディ怪人態は二人のライダーに挟まれる。

 更に、勝機を前に二人の勢いは最高潮。二人の心が一つとなり、エリシアのサンライズジェネレーターとハカイブの月影之石から赤と緑のレーザー光線のようなものが放たれるとインディ怪人態を透過しエリシアとハカイブを結ぶ。

 これにより二人は繋がり、意思疎通。

 同時に駆け出しインディ怪人態へと向けてライダーキックを放つ!

 

「「エクリプスライダーキック!」」

 

 赤と銀の衝撃がインディ怪人態を襲う。

 二人はキックの衝撃で反転し宙返り。着地し、インディ怪人態が爆ぜるのを目に焼き付ける。

 

「クソ、がぁぁ!!!」

 

 断末魔。

 炎に飲み込まれたインディ怪人態を見つめながら二人は立ち上がる。

 エリシアがハカイブへと歩み寄る中、ハカイブはバックルからキセキレジスターを外し、掌の上で開帳し見下ろしていた。

 

「儚ちゃん勝ったね!」

「……ええ。ですが、倒せたわけではないようです……」

 

 喜ぶエリシアとは対照的にハカイブの声色は浮かないものであった。

 

「えっ」

「アマダムとアナザーディケイドの魂の気配がありません……。恐らく、アナザーディケイドの力で別の世界へ逃げたのかと……」

「そう、なんだ……」

 

 勝ったとは言い難くなったエリシアは肩を落とし、分かりやすく落ち込む。すると、それに気付いたハカイブがエリシアへと慣れない様子で言葉をかけた。

 

「えと……でも、あのおっさんが逃げ出すぐらいには儚達が強かったわけだから……次は、絶対に勝てる……!」

「儚ちゃん……うん、そうだね! ひとまず、偽物の太陽も何とか出来たし実質私達の勝ちだよね!」

「はい……儚とエイゲツさんの勝ち……です!」

 

 二人は感極まり変身を解除し、喜びを共有しようとそれぞれの右腕を挙げてハイタッチ……のはずが、儚の右手が空を振った。

 突然蹲った盈月に儚は嫌な想像をして咄嗟に目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

 

「エイゲツさん……! どこか怪我でも……!」

「は、儚ちゃん……寒い……」

 

 ガタガタと震えながら盈月は言った。

 そう、季節外れの酷暑の原因は取り除かれて冬らしさが取り戻されたのだ。

 夏服の盈月にはとても厳しい気温となったのである。

 年中ローブに包まれている儚には関係のないことで一切気が付かなかったが。

 

「寒いよ〜!」

「あう……えっと……なにか、着るもの……」

「……儚ちゃん、あったかそうだよね」

「へ……? にへへ、ローブのおかげで……」

 

 ローブの首元を掴み少し自慢げに微笑む儚を見た盈月は頬を膨らませた。

 決して儚に悪意があったわけではない。

 大事なローブが暖かそうと言われたことが褒められたようで嬉しかったのだ。

 

「にへへ……快、適……!」

「むぅ……私もその中に入れて〜!」

「ひぃん!?」

 

 盈月、突撃。

 寒さに耐えかね、儚のローブの中に潜り込もうとする盈月に儚はドン引いた。

 

「む、無理です……定員、オーバー……!」

「結構大きいから入れるよ!」

「ひぃん……! そ、それじゃあ変身……! 変身して帰りましょう……!」

「それいいかも! さっきの使えばすごい暖かいしちょうどいいかも!」

 

 急いでサンライズドラゴンスコアプレートを取り出す盈月だったが……サンライズドラゴンスコアプレートは燃え尽きるように消失してしまったではないか。

 

「えー!? なんで消えちゃったの!?」

「さ、さあ……?」

「うう〜……儚ちゃーん! って、あれ!?」 

「エイゲツさん……」

 

 サンライズドラゴンスコアプレートが消えると、盈月の身体まで透き通り始めていき困惑。

 一方の儚は冷静に状況を推察していた。

 

「……この世界の危機を救ったので、世界がエイゲツさんを……エイゲツさん達を元の世界に帰そうとしている……」

「そっか……。ねえ、儚ちゃん」

「はい……」

「また会えるよね?」

 

 優しく問い掛ける盈月に儚は……。

 

「えっ」

 

 儚は二つ返事というわけにはいかなかったらしい。

 目線を逸らし、顔を引き攣らせる儚に盈月はショックを受けた。

 

「そこはうんって言ってよー!」

 

 叫ぶ盈月の世界転移は進んでいく。

 もうほとんどの消えかけの盈月はあれこれ伝えたいことをまとめようとするが、この世界からの退去は迫っている。

 そうして、結局。

 

「儚ちゃん! 絶対にまた会おうね! 絶対だからねー!」

 

 そう言い残し、盈月は消えてしまった。一人残された儚は————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戻ってきた」

「ピィッ」

 

 気がつくと盈月は見覚えのある自室にいた。

 ハリスホークのガルダの姿もある。部屋の中は少しばかり涼やかで薄手のパーカーを羽織った。

 家の外に出ると、隣にはエリシアの家が建っている。

 いつも通りの、自分の世界だ。

 

「博士〜」

 

 特に遠慮することなくエリシアの家へ入る。

 するとそこには、床に倒れているエリシアの姿があった。

 

「博士!?」

 

 駆け寄り、肩を揺らす盈月。体温は高いので生きているようではある。

 そうして。

 

「うあああ……やめてくれ……揺らさないでくれ……」

「わ、ゾンビみたいな声」

 

 エリシアは、完全に潰れていた。

 酒に。

 

「博士、通信してきた時はまだ大丈夫そうだったのに」

「あの時だって……めちゃくちゃ辛かったんだ……。途中でダウンしたしな……」

「あー。途中から通信してこなかったもんね」

 

 戦闘中のことを思い出しながら盈月はキッチンから水を汲んで持ってきてエリシアへと手渡した。

 慎重に寝返りを打ち、なんとか上体だけ起こしたエリシアは盈月からコップを受け取り、一気に呷った。水ではあるが。

 

「まったく……とんでもない酒乱軍団と出会ってしまった……」

「あはは……いい人達だったけどね」

「……念のため聞くが、問題は解決したんだな?」

「うん。完全ってわけじゃないけど……」

「そうか……。心残りがある顔をしていたからな……」

 

 心残り。

 インディを逃してしまったこともそうであるが、なによりも……。

 

「儚ちゃんともっと遊んだりしたかったなー」

「向こうは嫌がったりしてなかったか?」

「まあ、そうかもだけど……でもね、儚ちゃん約束してくれたんだ」

「約束?」

 

 そう、それはあの世界で最後の瞬間。

 

「儚ちゃん! 絶対にまた会おうね! 絶対だからねー!」

 

 もうすっかり盈月の姿はあの世界から消えていた。

 だが、盈月の意識が途切れようという時。

 

「はい……!」

 

 たしかに、そう笑顔で答える儚の声を聞いたのだ。

 

「……お前の幻聴じゃないのか?」

「違うよー! 絶対はいって儚ちゃん言ってたもん!」

「お前にとって都合のいい現実を生み出そうとしてるんだろう。そう考えればお前のその馬鹿みたいなポジティブ加減にも説明がつく」

「捻くれてるなー相変わらず」

 

 口を尖らせる盈月。とにかく、博士が何と言おうと儚は確かに約束してくれたのだという事実を胸にしまい、いつかこの約束を果たす日を心待ちにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 儚の父、グランがやってくるまでの間、残存している怪人の魂がないか調査を行い、現状脅威は認められないと判断し儚達はもとの世界へと帰ってきていた。

 

「今回も大変だったね〜」

「ユウリさんはお酒飲んでただけじゃないですか……」

「わたしは飲まされたの! 自分から飲んだわけじゃないから!」

「あたかも活躍したみたいな顔をしていたので……今回ほぼ出番なかったじゃないですか。あっちの世界行く原因を作っただけですよ。それも前回とほとんど同じネタ天丼して。どうなんですかね」

「なんかいつもよりひどいね儚ちゃん! 盈月ちゃんみたいないい子になってー!」

 

 優李の言葉に儚は一瞬目を見開くと、どこか自嘲するような、それでいて楽しげな笑みを浮かべて言った。

 

「儚まであんなになったら大変なので……バランスですよ、バランス」

「ふぅーん。儚ちゃん、なんだか嬉しそうだね。実は盈月ちゃんと結構仲良くなった?」

「……まあ、はい」

「へ〜。また会えるといいね!」

「え、いや、それはちょっと……」

「仲良くなったんだよね!?」

 

 優李から目を逸らし、儚は盈月との約束を思い出していた。

 また会おうと言われ、はいと答えたが盈月がギリギリ消えてしまったタイミングだったので約束出来たとは言えない。

 それにあの時は調子に乗って、うんなんて言ってしまったけれど会ったら会ったで絶対にめんどく……たいへん……困ったことに……なると思われ……。そう心の中で言い訳をしていた。

 盈月はしっかりと儚の返事を聞いていたことを知らない儚であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その世界は壊れていた。

 破壊され尽くした都市の真ん中で曇天を見上げるように不貞寝中のインディは今後のことを考えていたのだ。

 

「あ〜あ、せっかくの魂が盗られちまった……。あの分は返金してやんないといけねぇかなぁ、クソが!」

 

 かつてビルの壁であったコンクリート塀を蹴り飛ばし粉砕するインディ。すると、その衝撃でキックの直撃を喰らった背中にジンと痛みが走る。

 

「いってぇ! ……ああクソが。背中は痛えし、変身して滅茶苦茶疲れるしで大損だぜ、チクショウ」

 

 毒づく、毒づく。

 そうして毒を吐き切るとインディはニヤリと凶暴な笑みを浮かべる。

 

「まあ……やりようはいくらでもあるんだ。俺はライダーも怪人も意のままに操れるんだからな! ははははは!!!」

 

 男の笑い声に釣られるように廃墟の影から無数の怪人が引き寄せられ、ライダーが現れる。

 この世界はインディが破壊した世界。

 墓荒らしにして世界の破壊者たるインディ。

 危険極まりない男の脅威が、近付こうとしていた。




エリシア×ハカイブ 完

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