Q・ウルトラマン 吸血宇宙人現る!   作:ノザ鬼

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その2

** イデ隊員 **

 

 

 恐怖は、時間を無限大に引き伸ばしていた。

 

 

 そんな中で、

『ヒュ…。』

 小さな音を、

『ーン!』

 聞き取る余裕などは無い。

 

 

 何かが、

『パリ…。』

 割れる音だけが、

『ィィィィィン!』

 裏路地に響いた。

 

 直後!

 

 悲鳴とも、

「グァ…。」

 苦悶とも、

「ァァァァァ!」

 聞こえる声が上がる。

 

 

 そして…。

 

 立ち込める臭気に、

「うっ!」

 鼻を抑える男。

 

 自分を捕まえていた衛兵の両手から開放されている事に気が付いたのは、少し後になってからだった。

 

 男が恐る恐る開いた目に映ったのは、

「グァァァァァァ!」

 苦しみの中で自分の顔を掻きむしる衛兵の姿であった。

 

 その状況に、

「な…。」

 あ然と、

「何が…。」

 見詰めるしかない男。

 

 そんな男の耳が、

『タッタタ…。』

 捉えるよりも早く、

「大丈夫か?」

 声がかけられる。

 

 声の方向が、

「えっ?」

 自分の直ぐ右側だと知り、

「えっ!」

 驚きは増す。

 

 今だ状況が掴めない男には、恐る恐る右を向く事が精一杯であった。

 

 

 男の向けた視線の先には、[もう、安心だ!]と強く発する笑顔があった。

 

 その持ち主は、精悍な顔立ちの男…。

 

 我々の知るあの青年…。

 

 そう、【カトク隊】のハヤタである。

 

 

 突如、物陰から声と共に、

「やったな…。」

 月明かりの下へ、

「ハヤタ。」

 ニヤケ顔の男が登場。

 

 

 首を、

「いや。」

 巡らせ、

「イデ。」

 登場を、

「君のおかげたよ。」

 見届ける。

 

 

 

 イデと呼ばれた男を30歳代の前半といったところで、ハヤタと同じ隊服を着ている事から仲間だと判る。

 

 更に親しげな会話は、それを裏付けていた。

 

 

 

 折角なので、カトク隊のイデ隊員について解説しておこう。

 

 ニヤケ顔のこの男は、カトク隊の発明王である。

 

 その功績は素晴らしく天才と言っても過言…。

 

 である!

 

 発明品の数は多いが、中には…。

 

 いや、ここだけの話…。

 

 発明自体は凄いのであるが、役に立つ方が少ないのは、最早お約束である。

 

 だが、今までに無い斬新な機構を備えた発明品は皆を驚かせるには十分であった。

 

 まあ、驚いた後は…。

 

 誰かの、

「こうやれば、これ使わなくても…。」

 的な一言で終わる。

 

 『お約束の発明家』

 

 それが彼の代名詞。

 

 あっ…。

 

 でも…。

 

 彼の発明が無くてはカトク隊の今の活躍はなかったと付け加えておく。

 

 

 

 

 

** ソノ名ハ **

 

 

 イデを注意して見ると、ハヤタと異なるのは、背中に大きな袋を背負っていた。

 

 

 首を巡らせ、

「本当に…。」

 背負い袋に、

「これが効くとはね。」

 視線を送ると、

「頑張って搾ったかいがあったよ。」

 身体を、

『カチャ。』

 揺すって、

『カチャ。』

 中身に音を出させた。

 

 音が記憶を刺激し、鼻を摘みながらニンニクを絞り、銀色の粉を混ぜ合わせ、小瓶に詰めた…。

 

 その時の苦痛が現在進行形の様に臭いと共に思い出させた。

 

 

 銀色の粉は、ハヤタが用意したモノで、成分を聞いたイデははぐらかされ、そのまま忘れていた。

 

 

 軽い頷きを、

「ああ…。」

 相槌とし、

「僕も、話半分の半信半疑だったが…。」

 視線は、

「こんなに効くとは…。」

 右手に握る小瓶へ落とす。

 

 そう…。

 

 これが先程の割れる音の正体であった。

 

 

 褒められて、

「確か…。」

 照れたか、

「バンパイアーセージンだったか…。」

 逆に真面目な顔で、

「ハヤタが聞いた、この寄生する怪物は…。」

 話をふる。

 

 

 受ける方は、

「ああ。」

 真剣な、

「本当に、居たなんて…。」

 顔で、

「驚きだよ。」

 誤魔化す。

 

 

 会話の切れ目が合図となり、二人の視線が、衛兵に向けられた。

 

 

 

 そこには…。

 

 イデの頭が、

『!?』

 驚きのマークを、

「居ない!」

 出した。

 

 だが…。

 

 目は見失ったが、

『タッタタ!』

 耳は逃げる衛兵を聞き逃さなかった。

 

 足音を追って向いた目が捉えたのは、小さくなった衛兵を追うハヤタの背中であった。

 

 

 足は衛兵を追いながら、

「逃げる先に…。」

 首を後ろに向け、

「本体が居るはずだ!」

 声を上げるハヤタ。

 

 

 遅れ駆け出そうとするが、

「分かった!」

 背中の重みが、

「皆と合流して後から行くぜ。」

 イデに違う選択を選ばせた。

 

 

 首を前に戻しながら、

「目印を残しておく。」

 体を加速させるハヤタ。

 

 

 

 

** 追跡 **

 

 交差点に差し掛かる度に、

『キョロキョロ。』

 擬音を出しながら、

「こっちか…。」

 ハヤタが残した目印を探すイデ。

 

 目印は、小さく光る水滴の落ちた跡である。

 

 それは、ハヤタがイデに用意させた蛍光する液体を、地面に塗布したものであった。

 

 目印を、

「まったく…。」

 片膝を付き、

「ハヤタの言った通りに…。」

 確認しながら、

「夜になったな…。」

 思い出すイデ。

 

 立ち上がりながら、

「そのための準備は…。」

 背中の荷物に、

「万端だけどな。」

 視線を送る。

 

 そして…。

 

 気を引き締め、駆け出した。

 

 

 

 

 角を曲がった、

「こっちか…。」

 イデに、

『ヌーッ。』

 闇から、

『ガシッ。』

 伸びた手が、

「んっ。」

 喋らせまいと、

「ぐぐぐっ。」

 口を塞ぐ。

 

 そのまま、

『ズルッ。』

 闇へと引きずり込んだ。

 

 

 耳元へ、

「しーっ。」

 小さく声が、

「イデ。」

 かけられる。

 

 

 気が付くと、

「ハヤタか…。」

 口が開放されていた。

 

 

 ハヤタが、

「やはり…。」

 指す右手の先に、

「城に本体が居るようだ。」

 視線を向けるイデ。

 

 

 それを確認したと、

『コクリ…。』

 無意識に顎が答え、

「やはりそうか…。」

 口が同意した。

 

 

 城の門を、

「だが…。」

 見詰めたままで、

「思ったよりも…。」

 イデに、

「分体の数が多い…。」

 話し掛けるハヤタ。

 

 

 イデも、

「確かに…。」

 城を見詰めたままで答える。

 

 

 少し前から街中では、カトク隊の協力要請でボーエイ隊が、バンパイアーセージンに寄生された人達をアノ小瓶で攻撃していた。

 

 そいつ等が、撃退されて城の本体の元へと集結していた。

 

 その人数が、予想を超えていたのだ。

 

 

 ハヤタは、

「そろそろ…。」

 イデに、

「キャップ達が…。」

 向き直り、

「到着する頃合いだろう。」

 同意を求めた。

 

 

 イデの口は、

「そうだな…。」

 同意し、

「これじゃ…。」

 目は、

「足りそうもないな。」

 背中の荷物を確認した。

 

 

 ハヤタの合図で、

「行こう。」

 二人は街へと駆け出した。

 

 

 

 

** キャップ **

 

 

 月に照らされ銀色の石畳を、

『ガラガラガラ!』

 荷馬車の列が駆け抜ける。

 

 

 御者台に座る男性は、当然ハヤタやイデと同じ隊服を着ていた。

 

 異なるのは、漂う雰囲気…。

 

 分かりやすく言うなら、貫禄であろうか…。

 

 そのせいで、男性は実年齢よりも、いつも上に見られていた。

 

 この男性が、精鋭部隊であるカトク隊を纏めるの隊長…、通称[キャップ]である。(以降、キャップと表記します。)

 

 トレードマークのパイプを斜に咥える。

 

 

 キャップの鋭い目が、

「おーい!」

 行く手の先で、

「おーい!」

 手を振る二人を捉える。

 

 手を上げ、

『スーッ。』

 後続に合図すると、

「どうどう。」

 手綱を引き減速をかけた。

 

 

 キャップが発見した二人…。

 

 言わずもがな、ハヤタとイデである。

 

 

 荷馬車が、

「どうだ?」

 止まるが、

「ハヤタ!」

 早いか、

「イデ!」

 状況を聞くキャップ。

 

 

 ハヤタの、

「そりゃあ…。」

 口が、

「もう…。」

 開くよもり早く、

「バッチリですよ!」

 イデが、

「キャップ!」

 声を出した。

 

 そして、

「流石…。」

 上目遣いで、

「僕の仕事だ…。」

 自慢を始めた。

 

 

 

 そんな事は、

「ハヤタ…。」

 慣れているぞと、

「どうだ?」

 スルーするキャップ。

 

 

 こちらも、

「はい。」

 同じく、

「効果はありました…。」

 スルーするハヤタ。

 

 だが、その口は、

「が…。」

 含みを残す。

 

 

 当然、

「どうかしたか?」

 問い返すキャップ。

 

 

 視線は、

「思ったよりも…。」

 キャップを通り越し、

「数が多いです。」

 荷馬車へ注ぐハヤタ。

 

 

 受けたキャップも、

「そうか…。」

 視線を、

「やはり、これが必要か…。」

 荷馬車に送る。

 

 

 ちなみに、イデの自慢は続いていて、二人の背景となっている。

 

 

 ハヤタは視線を、

「本体の居場所は…。」

 キャップに、

「解っています。」

 戻す。

 

 

 キャップの表情が、

「分かった!」

 決意に、

「案内してくれ。」

 変わる。

 

 そして、後続の荷馬車に、

『スーッ。』

 右手で合図を送り、

「行くぞ!」

 声を掛ける。

 

 

 顎で、

『コクリ。』

 了解すると、

「こっちです。」

 右脚を軸に、

『クルリ。』

 回る。

 

 踏み出す左足が、

「イデ!」

 忘れたと、

「行くぞ!」

 一瞬止まる。

 

 が…。

 

 今だ自慢を続けるイデの返事を待たずに、

『タッ!』

 身体を駆出させる。

 

 

 その後を、

「はっ!」

 手綱を、

『バッシッ!』

 打ち、

『ガラガラガラ。』

 キャップの荷馬車を先頭に隊列が続いた。

 

 

 最後の荷馬車の通過が、

『…………。』

 静寂をもたらす。

 

 いえ…。

 

 音源がまだありました…。

 

 そう、イデの自画自賛が…。

 

 だが…。

 

 それを、

「あっ!?」

 静寂が咎め、

『キョロキョロ。』

 一人になった自分を、

「待ってぇ!」

 確認させた。

 

 直後、

『タッタタ!』

 慌て走り出す。

 

 

 

 

** アラシ隊員 **

 

 

 前を行くハヤタが、

『ビシッ!』

 右手で指す。

 

 

 その先を視線で追い、

『コクリ。』

 反射的に頷くキャップ。

 

 

 接地する足が蹴り出すベクトルを変え、指差した場所へとハヤタを向かわせる。

 

 

 キャップの手綱さばきが、

「はっ!」

 追従したのは言うまでもなく。

 

 

 そこは城からは陰になり見え難い場所であった。

 

 どうやら、先程来た時に目星を付けていたらしい。

 

 

 ハヤタに遅れる事、少し…。

 

 荷馬車の隊列が、そこへ滑り込んだ。

 

 最後尾の荷馬車が止まるのを確認したキャップが、

『スルリ。』

 御者台から降り歩き出す。

 

 目的地は、

「どうだ?」

 壁の隙間から、

「ハヤタ。」

 様子を伺うハヤタの横。

 

 

 正面を、

「さっきよりも…。」

 見据えたままで、

「集まって来てますね。」

 答える。

 

 

 その答えに、

「そうか…。」

 自然と険しい顔になっていたキャップ。

 

 

 そこに、

「はぁ。」

 息を、

「はぁ…。」

 切らせながら、

「ぜぃ。」

 走り込んで、

「ぜぃ…。」

 来たイデ。

 

 整わない、

「じゃ~ん!!!」

 息のままに、

「こんな事も!」

 大きな声で、

「用意してますよ!」

 会話に割り込んだ。

 

 直後、目配せで、

『パチッ!』

 合図する。

 

 

 受け取り、

『コクリ。』

 顎で返す。

 

 荷馬車の列の後方の御者が、

『バ…。』

 掛けられていた幌(ほろ)を、

『サー…。』

 示し合わせていた様に、

『ーーッ!』

 宙へ舞わせた。

 

 それも、三人同時に…。

 

 

 幌に隠された物は、

「お…。」

 キャップとハヤタを、

「ぉーっ。」

 驚かせるには十分だった様だ。

 

 

 二人に浮かんだ表情が、

「こんな事も…。」

 イデの声を、

「あろうかとぉ!」

 大きくした。

 

 そのまま荷馬車に近付くと、

「これは…。」

 右手で荷物を、

『ポンポン。』

 叩きながら、

「新発明の投石器です!」

 再び、自慢を始めた。

 

 右の人指で、

「特に!」

 投石器の一部を、

「ここが!」

 指しながら、

「新発明なのです!」

 細かく説明…。

 

 否、自慢した。

 

 

 そんなイデを無視して、

「セッティング…。」

 指示を出しながら、

「頼むぞ。」

 キャップとハヤタへと向かう少しガタイの良い登場人物。

 

 

 二人は、

「アラシ。」

 同時に名前を呼ぶ。

 

 

 軽く上げる、

「キャップ。」

 右手を、

「ハヤタ。」

 挨拶としたアラシ。

 

 この男も、ハヤタやイデと同じく先乗りで街で戦っていた…。

 

 が…。

 

 戦いの流から、カトク隊のメンバーと合流したのであった。

 

 流石、生え抜きの部隊のメンバーと言ったところである。

 

 

 ここで、アラシ隊員についても少し説明しておこう。

 

 彼は、カトク隊…。

 

 いや、この界隈で彼に並ぶ者等無い程の射撃の名手である。

 

 イデ隊員の開発した、連射式の大型クロスボウ(通称:スパイダーショット)を得意武器とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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