** 光ノ輪 **
丁度、一回転。
うつ伏せから、
「ディ…。」
左膝を立てた膝立ち状態になり、
「ァッ!」
再びバンパイヤーセージンとにらみ合う光の巨人。
そして…。
回転と膝立ちの勢いを、
『グィッ!』
右手に集め右耳の後まで引き絞る。
その捻れは上半身をバンパイヤーセージンから見て半身(はんみ)にさせた。
その構えは、
『ギリッ…。』
番(つが)えた矢を、
『ギリッ…。』
引き絞るかの様に、
『ギリッ!』
擬音を出し力を溜める。
と!
溜められた力が、
『ブッ…。』
具現化したかのように、
『オンッ…。』
右手に光の輪が現れる。
それも、肉食獣の牙の様な刃が付いていた。
我々が知る丸鋸の刃が光で作られる。
バンパイヤーセージンが小刻みに左右にステップする。
本能で光の輪が危険だと、無意識の回避行動であった。
光の巨人の目がバンパイヤーセージンのステップを追い…。
顔が…。
頭が…。
追従する。
ベストタイミング!
そう呼ばれる瞬間に、
「デュア!」
引き絞った光の輪を、
『ビッ!』
右腕を前に伸ばす勢いで、
『ュウゥゥゥゥッ!』
加速させ解き放つ。
光の輪は、
『ザッ…。』
大気を切り裂き、
『シュワァッ!』
バンパイヤーセージンへと迫る。
デジャブ。
カトク隊の全員が、
「あ…。」
シチュエーションは違えど、
「っ!」
同じ光景を見る。
バンパイヤーセージンに光の輪が命中すると…、思われた瞬間。
左右のステップのリズムから、右足の着地…。
を!
意図的にずらし、飛来する光の輪に対して体の面積を最小限にする。
結界。
言うまでもなく、
『スッ…。』
光の輪はバンパイヤーセージンという目標を失い、
『カァァッ!』
空を斬る。
作り物の様なバンパイヤーセージンの顔が、
『ニマァ…。』
歪み嘲笑った。
まるで、
[お前の攻撃等当たらぬ!]
とでも言いたげに…。
空を斬った光の輪は、
『シュ…。』
バンパイヤーセージンの遥かに後方に、
『バババッ…。』
音をたてながら飛び続ける。
その時!
伸ばした右腕を、
『グィ…。』
力任せに引き戻す光の巨人。
その動きは、光の輪の方向を変えた…。
だけでなく、光の輪を全く同じ形に分身させ2つにした。
そして…。
今だ笑っているかの様なバンパイヤーセージンの背後から襲いかかる!
狙いは、
『ズッ…。』
勿論、
『バーン!』
バンパイヤーセージンの、
『バーン!』
背中の翼。
光の輪が、
『パカッ…。』
描いた直線が、
『パカッ…。』
翼を根元から斬り落とす。
地面が、
『ドサッ。』
僅かなタイムラグで、
『ドサッ。』
落ちた翼で輪唱を奏でる。
一瞬、止まったバンパイヤーセージンの動きは背中に意識が行ったからであろう。
それを見逃すはずもなく、
『ダン!』
踏み出す左足が、
『グォ!』
大地を蹴ると、
『ショウ!』
光の巨人をジャンプさせる。
そして…。
空中で振り上げた両手が、
『グィッ!』
体を反らせ反動にした。
光の巨人の両足が、
『ドッッシン!』
大地を揺らし着地。
同時に、
「シュワッ!」
振り下ろした両手が、
『ドガン!』
バンパイヤーセージンの脳天を捉える。
その衝撃は、バンパイヤーセージンに、
『ヨロヨロ…。』
蹈鞴(たたら)を踏ませた。
すかさずに、
「シ…。」
バンパイヤーセージンの左側から、
「ワッ…。」
左脇を通った光の巨人の右腕が、
「チッ!」
背中を捉える。
直後!
右足をバンパイヤーセージンの両足の前に差し込む光の巨人。
それは、
「あっ!」
カトク隊の全員に、
「あっ!」
声を、
「あっ!」
上げさせた。
そして…。
右腕でバンパイヤーセージンの背中に
「ヘャー!」
力を加える光の巨人。
前向きに押されるバンパイヤーセージンを、
「シャ!」
光の巨人の右足が、
『くるり。』
支点に回転させると、
『ズッ…。』
背中から、
『ドォーン!』
地面に叩き付けた!
その衝撃たるや…、
『ぴょーーー…。』
カトク隊の面々を、
『…ーーーん!』
30cm飛び上がらせた。
まあ、冗談である。
** 点滅 **
揺れが収まると、バンパイヤーセージンの頭は、光の巨人の足の直ぐ側に横たわる。
光の巨人は、
『シュタッ。』
軽く左にステップ。
からの、
「ヘヤッ!」
バンパイヤーセージンへの馬乗り!
それは、カトク隊員に、
「おーーっ!」
歓声を上げさせた。
光の巨人の打ち下ろし、
『ドシュ!』
右パンチ。
それを、バンパイヤーセージンは、
『ガシュッ!』
両腕をクロスさせガード。
続き、光の巨人は上半身の捻りを、
『ドスッ!』
利用した左のパンチ。
バンパイヤーセージンのクロスガードは、ダメージを最小限にする。
光の巨人の伸ばした左腕が、右腕に力を溜めさせた。
連続で打ち下ろされぬパンチ。
バンパイヤーセージンのクロスガードが、
『チラリ。』
一瞬だけ緩む。
刹那!
最大に溜められた右腕の力を解放する光の巨人が、見たものは…。
口元を、
『ニヤリ』
歪め笑うバンパイヤーセージン。
いや、そう見えたのかもしれない…。
躊躇う一瞬が、打ち下ろすパンチを同じ時間だけ遅らせた。
バンパイヤーセージンの口が吐き出す濃い緑色の霧が、
『シュフッ!』
光の巨人の顔を染め上げる。
その正体に、光の巨人の体が答えを出した。
顔を掻きむしるは万国共通で、
『ガリガリ。』
苦しむ仕草である。
濃い緑色の霧は、毒の類であったと誰もが容易に推測できた。
そのまま、
『ヨロヨロ。』
足が音を出しながら後退りする。
当然。
その隙に、
『そそくさ。』
起き上がるバンパイヤーセージン。
立つと同時に、
『シュタッ!』
戦闘態勢に移行した。
攻守交代…。
今風に言えば、
「俺のターン!」
である。
が、まあどうでもいい事であるが。
苦しむ光の巨人に、
『グワッ!』
一気に詰め寄るバンパイヤーセージン。
お返しとばかりに、振り上げた右腕で、
『バシッ!』
光の巨人を打ち付ける。
そして…。
体の捻りと反動を利用して、
『バシュ!』
左腕を振り下ろす。
苦しむ光の巨人のガードが甘くなるのは、
「デュァ…。」
至極当然であろう。
気が付いたイデ隊員が、
「あ、あれは!」
声を上げた。
今まで青かった光の巨人の、
『ピコン!』
胸の丸いドーム状の部分が、
『ピコン!』
赤く点滅を始めた。
それは、見る者の不安を煽る不気味な音と点滅である。
それを打ち消すためか、
「キャップ…。」
イデ隊員が、
「あれは…。」
答えを求めた。
無意識に、
「うむ…。」
顎に手をやるは、
「…。」
考える仕草である。
暫し、キャップは、
「…。」
口から沈黙を出し固まる。
そして…。
出た答えは、
「たぶん、だが…。」
口を開かせる。
確かめる様に、
「あれは…。」
ゆっくりと、
「光の巨人のピンチを知らせているのではないか?」
自分にも答えた。
*ナレーション開始*
光の巨人の太陽エネルギーは地球上で は急激に消耗する。
エネルギーが残り少なくなると胸のカラー タイマーが点滅をはじめる。
そして…、もしカラータイマーが消えてしま ったら、 光の巨人は二度と立ち上がれなくなる のだ。
がんばれ!光の巨人。
残された時間はあとわずかなのだ。
*ナレーション終了*
明らかに光の巨人は弱っていた。
それは…。
バンパイヤーセージンの殴る攻撃で、今まで以上に膝が曲がっているのだ。
無意識に、攻撃の威力を吸収させているのだろうが、その後の膝の戻りが明らかに遅くなっている。
それは、
「キ…。」
カトク隊にも伝わり、
「キャップ…。」
イデ隊員が代表して口にしていた。
呼応するように、
『ピコン!』
光の巨人の赤い点滅が、
『ピコンピコン!』
早くなっていった。
それは、突然やってきた!
『バシュ!』
何度目かの、
『バシュ!』
バンパイヤーセージンの、
『バシュ!』
腕の打ち下ろし。
それが、
「へァ…ッ。」
光の巨人の膝を
『ガック…リ。』
地面へと落とした。
** 十字架 **
千載一遇。
潮時!(本来のチャンスの意味)
汐時!(上記と同じ)
好機!
まっ、わかり易く…、チャンスです(笑)
そんな言葉と共に、勝利のフィナーレがバンパイヤーセージンの頭の中に大音量で流れる。
見る者に同じ印象を、
『ニマァ…。』
与える邪悪な笑みが、
『ァァァァァ。』
バンパイアーセージンの顔を歪めた。
直ぐ様。
一歩下がる理由が、
『スッー。』
直後に解る。
口の前で交差させた両腕に、
『グッ!』
これまでで最大の力がこもる。
それが解るのが、
『ブルブル…。』
両腕の震えとなって表れる。
周囲から大気と共に謎の赤い粒子を、
『シュゥゥゥゥゥゥ…。』
口の中へと吸い込む。
そして…。
腹部が、
『ぷっ…。』
見る見る、
『…くり。』
膨れる。
その姿は臨月の妊婦よりも大きく、お伽噺のお婆さんを飲み込んだオオカミの如く。
その膨らみは背中を押し、
『グィィ。』
体を仰け反らせた。
→(ガード方向に暫く引く)
ため!
タメ!
為!
交差させた両腕の、
『ブル!』
震えが、
『ブルブル!』
今が必殺だと、
『ブルブルブル!』
知らせた。
人間なら、軽い深呼吸で計るタイミングであろう。
そして…。
勝利の確信が、現実に変わる瞬間…。
口の前で交差させた両腕を、
『シュ…。』
今、必殺の一撃に変える様に、
『バッ!』
一気に広げる。
その姿は、漢字の[大]の文字であった。
顔に表れない光の巨人に、
「デュァ…、」
浮かぶに苦しみの表情。
それが、
『ガクン…。』
左の膝を、
『ドスン!』
地面へと落とさせた。
[それは、光の巨人が敗北の瞬間である。]と誰かが言った。
そう…。
勝利を確信した物言わぬバンパイアーセージンの口である。
結果的に、右膝立ちの姿勢なった光の巨人。
顔を掻きむしっていた両腕を、
『スーッ…。』
苦しみから無理矢理引き剥がす。
指先を伸ばし、胸の前辺りに天へと立てる右手。
そこに、地面と平行に交差させる左手は、地面と平行である。
両手で作られた特徴的なその形は、
「あれは!」
イデ隊員の口で、
「十字架!?」
説明された。
いや…。
誰もが思う事を口にしただけである。
聖なるシンボルである十字架が光の巨人により作られた。
刹那。
込めた力が、
「シァ!」
光の巨人の全身を、
『グィッ!』
駆け巡る。
と、同時。
その場の者の口を借りて、
「あっ!?」
「おっ!?」
「!?」
驚きの声と共に…。
光の巨人の右手の手刀の部分から、
『ビィ…。』
銀の粒子が帯の様に、
『ィィィィィィィィィ!』
解き放たれた。
それは…。
必殺の一撃を放とうする、その瞬間のバンパイアーセージンの顔に命中する。
そして…。
突然に訪れる静寂。
まるで時間を止めたかのように、腕を振り上げたままで、動かなくなったバンパイアーセージン。