シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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一言で言えば時代がそれを許さなかった。




17 伊達直人はなぜ真木冬憂里を殺さなかったのか

 

 闘技場の国、博打の国、勝負の国、多くの名を有するあなたの国──フォルティアン西側の目抜き通りに形成された有象無象(PC・NPC)の壁に挟まれたランウェイを堂々と往くあなたの姿を見据える。

 

「かわいそ」

 

 哀れだった。

 

 この場の誰も彼も、あなたの事を分かっていない。賞賛を口々に熱狂するモブも、賭けに敗れて野次を飛ばしているプレイヤーも、誰もあなたを理解していない。

 

 見世物(サーカス)の虎として振る舞うあなたを本当のあなただと信じきっている、その事実だけでお腹からクツクツと笑いが零れてくる。

 

 誰もあなたをわかってない。

 

 ペンシルゴンはそれをわかってないから相手にされてない。京極ちゃんだってそうだ。

 

 オルスロットは、まあ他よりはマシ……自分もあなたに成れると思い上がってる所は目に余るけど、少しはわかってる。

 

 あのロリコン…………は、いいや。

 

 黒狼のリーダーは特に滑稽。

 誰よりも長く誰よりも近くであなたにチャンスを与えられているのに、あなたへの理解とは最も遠い場所にいる。あんなオトコ女なんかより、私の方があなたのことをわかってる。

 

 あなただけが私をわかっているように。

 

「あは」

 

 あなたにふさわしいのは私だけだと、これからようやく教えてあげられる。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 このゲームはPKerへの締め付けが強い。

 

 ちょっとプレイヤーと揉めただけでお店が使えなくなったし、番兵から通りすがりの子供のNPCまでもが攻撃的になるのはやりすぎだよねっ? 

 

 とにかく私は途方にくれていた。

 

 街中ではもはや潜伏できないくらいカルマ値が増え、街中の倉庫も利用できなくなったためセカンディル城外の潜伏先の地面に戦利品を広げざるを得なくて、ただでさえ窮屈なスペースが余計に狭く感じる。

 

 役に立たない、使えない、プレイヤースキルが低い、ただ事実を指摘しただけなのにまるで私が間違ってるみたいにゆってきた奴らの、珍しくもない装備を換金する宛も無く消費アイテムの補充も満足に出来ていない……そんな現況も合わさって息が詰まる思いをしていた。

 

 ……詰んじゃった? 

 

 とてもじゃないけど進行できそうもないデータを作り直すことにした…………けど、それはどうやっても出来なかった。

 

(カラダの情報も認証に使ってるとかプライバシー侵害だよねっ!?)

 

 このシャングリラ・フロンティアというゲームはデバイス本体のコード認証、ID・PW認証に加えてユーザーの顔・静脈・虹彩などありとあらゆる身体情報を認証に使用しており、その上でセーブデータの作成は一つしか認められていない。

 

 そのためセーブデータの作り直しを行うには、『VRデバイスを買い換えて、なおかつ全身サイバネ換装でもしない限りは無理』ということで事実上不可能だった。

 

 あのモグラさえ居なければ。

 

 そう思わずにはいられない。あの、製作者の陰気さが反映されたエリアボスさえ居なければ、とうの昔に先のエリアに進めているのだから。

 

 序盤エリアであるセカンディルを往来するプレイヤーの平均レベルは当然低く、プレイヤースキルに関して言えば相応以下だ。レベルもテクニックも数段上の私なら、楽に楽しく“狩り(キル)”ができる。

 

 ……しかし最近はレベル差が開きすぎてるからか経験値が全く入らなくなったし、セカンディル周辺でのPK対策が浸透してきたことも相まって実入りが悪く、段々と快適にプレイ出来なくなってきた。

 

 ソロ殺しさえなければ。

 

 街の施設が使えたら。

 

 あの時のメンバーがあんなに下手くそじゃなかったら。

 

「……カラスの巣みたいや、随分溜め込んどるなぁ」

「ひっ……っ!?」

 

 通りの良い、男の低い声。

 

 私の他に誰も居ない、居てはならない空間に響いたその声に反応した私の身体(アバター)は、条件反射的に消費アイテムの『麻痺ナイフ』を三本同時に投擲していた。

 

 放り方はデタラメでも、システムアシストによってそれらは上・中・下段に別れつつ対象に命中する軌道をとる。

 

「────ええ反応や。狙いも良い」

 

 ゴリ体型のアバターに魔法職系のローブ、そして目が痛くなる色合いの虎マスク……趣味の悪い見た目の侵入者は素手のまま、下段に飛来した一本を左脚で器用に払い除けつつ、身体の中心に向け飛来する一本の柄を右手で掴み取り、顔へと飛来する一本を切り上げる形で逸らした。

 

 

 だから何? って感じだけど。

 

 

 上・中段のナイフへの対応で上方向へ流れた視線とは反対方向……懐に潜り込んで短剣を両手で構え、重たいものを押し上げる感覚で勢い良く突き上げる。

 

 腹部から刺して、肋骨を避けて心臓まで届かせる。

 

 金属鎧を着込めるほどステータスが無い低レベル帯や、高PS気取りの軽装ビルド相手なら漏れ無く大ダメージを与えられる急所狙いの突き刺しが、武器の特殊効果による補正から正確な軌道で

 

「見とらんからって、見えとらんとは限らんぞ」

「へっ……?」

「行動に意図が伴っとる、だからこそ()()

 

 短剣の持ち手に、緩やかに押すような力がかかっていると感じた時には既に、私自身の左胸にそれが深々と刺さっていた。

 

「……強いやん自分、聞いた話と大分ちゃうわ」

 

 機嫌が良さそうな声は下からだった。

 

 地面に仰向けになった状態から、右足で私の武器の柄を押し上げている。

 

 なんっ、なんで……なんで私が、キルされかけてるのっ!? 

 

「訳分からんって顔しとるな? 今ワイちゃんはな、空手やキックボクシングの二段蹴り、その二段目に近いヨーリョーで攻撃の軌道を逸らしつつ、地面に倒れ込んだんや」

「ま、待って……ッ!」

「おー、待つ。しゃあけど逃げようかしたら殺す」

 

 ……その頭上に表示されたPNを見てハッとした。

 

 現バージョン最終エリアであるフィフティシアへの最初期到達組の一人で、フォルティアンのPvPコンテンツで最強候補に挙げられてる一人、そして────プレイヤー内最多の犯罪者殺し(レッドネーム・キラー)の証となる称号【最大巧名(スコアホルダー)】の保持者。

 

 晒し対象のPKerでもないのに掲示板でよく話題に挙がるそのPKKerは『虎人』、このPNと実績でPKKクランの“in虎団”*1と無関係だから驚きだよねっ。

 

 そんな上位プレイヤーがこんな序盤エリアにまで来るなんて……! 

 

「……ほら、頑張って命乞いせえ。『ヒキョー者』、『雑魚狩りしか出来ないカス』、『モグラ超え出来ないクソ女』……ええ音鳴らせや晒し板のオモチャ」

「ひっ、ひぐ……どうしてそんなヒドいこと「あ?」ヒッ……」

 

 グリッと、胸に極わずかな圧力がかかる。

 

 う、嘘泣きしちゃダメな相手だ……容赦なく頭ブッて本当に泣かせてくるタイプっ! リアルは間違いなく女子に嫌われてる側のド陰キャでしょ……! そうかっ、現実で上手くいってないからゲームでそんなマッチョキャラ使って解消してるんだねっ、かわいそっ! 

 

「自分の話は色んなプレイヤー・NPC問わず聞いとるで、窃盗の濡れ衣着せられただの寝込み襲われただの、弱いものイジメしか能の無いハゲタカだのハイエナだの、野良パがギスってクランまで四分五裂にされただの…………いや、セカンディルでちょっと聞き込みしただけで悪口大会始まって三時間続いたし、ワイちゃんってばマジで引いたんやけど」

「そ、そんなに……暇なの?」

「悪びれもせんとか怖っ、こえーよ。……まあ、座れよ。負けた側の言い分しか聞かんのも不公平やからな」

 

 短剣から足を離し、目の前で胡座をかいた変人装備の男の声に対し、不思議と反発する気が起きなかった。

 

 逆らえば死ぬという確信があったと言うのがほとんどだけど……

 

 

()()の話しを聞かせてくれよ」

 

 

 認められている。

 

 

 目の前に現れたこの変人装備の虎マスクを、私は既に『()()』だと思い始めていた。

 

*1
原作だと鯛鮫Xくん達がはin虎団を結成するのはしばらく後だと書いてから気づきましたが、代わりのネタが思いつかなかったので弊ユニバースでは初期勢ということにします♨





百ちゃんとの絡みは基本番外でやりますが、彼女はガッツリ本筋でやります。そのくらいにはファクターです。

玲ちゃんは隙があればどこでもやります。

突然の新コーナー!
“““虎の地雷 〜これやってたら死んでたよ!!〜”””
・弱かったらそのままファステイア送りだったよ
・“in虎団”の関係者と誤認してたら機嫌を損ねて死んでたよ
・嘘泣き決行してたら問答無用で死ゾ

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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