シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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ゴリラゴリラ学会追放も覚悟の上です。



24 【幕間】私は最悪

 

「とーらとくんっ」

「……うげ、ヒイラギ」

「えへへ……きちゃった♡」

「こないで……」

 

 梁山泊のメンバー二人……バ美肉おじいちゃんこと獅子十六と、ゴリラのゴリラゴリラを引き連れてフォルティアンの表通りを練り歩いている彼を見つけた私は迷うことなく目の前に躍り出た。両手を後ろに組んで上目遣いで見つめる私に胸がいっぱいになったのだろう……目の前の彼は片手で目を覆って空を仰いでいる。

 

「……しっかし今日も殺されとらんとか大したもんやの」

「でしょっ!? 虎人くんをキルするまで絶対に死なないからねっ……ねっ!」

「擦り寄ってんじゃねぇよ嘘泣き女! 怖がってんだろ!! てかなんだそのあざといポーズ!?」

「そ、そんなこと無いよねっ、ね!?」

「ありがとうゴリちゃん…………もう少しで手が出るとこやった」

「マズった余計なことしちまった……ッ!」

 

 ゴリラゴリラゴリラのせいで虎人くんの姿がよく見えないけど、おかげさまで初手の条件反射迎撃が潰されたので安心して話せるようになった。

 

「あー、坊ちゃん……俺のとこにゃ今日もソイツの報告は上がっとらんがよ?」

「はぁ……ワイちゃんのとこにもなんも無い」

「そうきゃ────武器を収めろゴリラ。この(スケ)、街で悪さしちょらせん」

「はぁ!? 別に良いだろ……! とりあえず殺しとこうぜソレ!?」

「アカンよ。少なくともフォルティアン内に限って言えば“よい子”なんやから」

「へ、へへ……虎人くんの国()()悪いことなんにもしてないからね、ねっ!」

 

 シャンフロにおいてカルマポイントが高い犯罪者(レッドネーム)はPL・NPC問わず街中での各種機能の利用が制限されるだけでなくほぼ全てのNPCから敵対行動を取られるため街を自由に歩き回れないだけでなく出入りさえも難しくなる。

 

 そのため犯罪を犯して表社会の恩恵を受けられなくなったプレイヤーは裏社会的な領域に身を寄せ、闇店舗(裏ルート)の割高な料金設定で各種機能を利用せざるを得なくなる。買い物に関しては変装等による擬態や仲介人(ブローカー)の利用など手段はありはするものの、時間と手間がかかるから私はあまりやらない。その辺のやつからとっちゃう方が早いし。

 

 一方それらの例外として、このフォルティアンには治外法権が適用されているとかでカルマポイントや指名手配の状況に関係なくストレスフリーに過ごすことが出来、多少足元は見られるけど買い物も快適にできる。“国盗り”以前は他の街と同様犯罪者に人権が無く大月輪を含む()()PvPコンテンツへの参加も出来なかったけど、その一点のみを憂いた虎人くんの意向によってこの街は表・裏どちらの社会も併呑されたため、結果として犯罪者の避難所(アサイラム)という一面を有するに至った。

 

 フォルティアンで何かやらかすというのは最後の聖域を追われることを意味する。そんな真似をするやつは────

 

 

 

「ヒャアッ! 我慢できねぇー! 万引きだァ!」

『ど、ドロボーだー! 誰か捕まえてくれー!』

 

 

 

 普通にいる。

 

 リアルで言うところのアメリカのラスベガスに近いこの街は大陸最大の娯楽都市としてNPCに認知されており、そのため各種産業も併せて発展しているためマーニさえかければ際限なく高性能なアイテムや装備を手に入れることができる。たまにユニーククラスの装備がNPCの商店に卸されていることさえあるため、動機という点で言えば他の街よりも充実してるまである。

 

 窃盗系スキルのレベルが低いくせに手癖が悪くてほかの街に居られなくなったやつがそんな街逃げ込んできて、いつ買い手がついてもおかしくないレア物をマーニが足りない時に目にしようものならどうするか考えるまでもない。

 

「ん? あの泥棒ちょっと前に戦士職のトーナメントで入賞してたブラッチョやん」

「あー、“破城斬”の? ……なあ虎人くん、あの野郎の特大剣欲しいんだけど俺」

「ん、ええよ。はい」

 

 そう言うと虎人くんはインベントリを操作し、ゴリラの巨体とほぼ同じ高さのゴツゴツした物理大弓と専用の……槍のように長大な矢を合わせて渡した。

 

 弓という武器種を扱うに当たって最も重要なステータスは技量(TEC)、ダメージへの補正はさることながら、システムアシストによる補正が無ければ命中精度がそれは酷いことになるためステータスが不十分だと使い物にならないことが理由だ。

 

 ゴリラの持つ物理大弓は装備するのに高い筋力(STR)を要求する一方で技量の要求値は低い、けれど弓であることに変わりは無いため武器のランクが高く技量が低いほど特に狙撃の命中精度がシステム的に低くなる。そして脳筋として有名なこのゴリラが弓を万全に扱える程度のポイントを技量に振っているわけがなく、まともに命中するとは考えられなかった。

 

 ……ただし、システムの補正に頼らなければその限りでは無い。

 

「持ち手死んでる、左肘開いてる。……ほらこうして、こう」

「アッ……イイニオイ……」

「……よし、射角は、そう。向きはこう……保持して。3、2、1」

「────フッ」

「射て」

 

 

ボンッと。

 

 

「ぎゃんっ!?」

 

 弦を打つ音とは思えないほど暴力的な、見えない壁のような音波に頭を殴られるような感覚があった。

 

 ノーロックオンのマニュアル狙撃。システムに依らず虎人くんによって補正され放たれた金属製の大矢は空気との摩擦により赤熱しつつ、泥棒の背を追うMOB達の頭上を追い越して────

 

「ギャッ!?!? な、なん、なにが……ァ」

 

 路地裏に入ろうと方向転換した直後の逃走者を正確に捉え、右肩から命中した後も勢いは止まらずそのまま石畳にアバターを固定してしまった。

 

「ビューリフォー……」

「オーイエー……」

 

 ……打ち終わったんだからいつまでも虎人くんと密着してないで離れてくれないゴリラ? なんでゴリラごときに私がこんなにも苛立たないといけないの……

 

「うん、アレたしかレベル90超えとったはず。大弓のマスタリーもうすぐ上がるんちゃうゴリちゃん?」

「だなっ! ちょっとドロップ回収してくるわ、センキュー虎人くんッ!」

 

 この街で犯行に及ぶということは、他の街よりも練度が高い衛兵だけでなく梁山泊(リョーザン・パーク)の対人狂達────より言うと虎人くんと獅子十六の二人が敵に回ることを意味する。

 

 フォルティアンという街は犯罪者であっても受け入れているが無法地帯ではなく、むしろ他の街と比べて突出した武力を背景とした非常に高い秩序を誇っている。

 

 ……特に目の前の二人に関しては、どんな好条件が揃っていてもまともな状況では私でも殺しきれない。そのためこの街では変な気を起こすべきじゃないんだ。

 

「さて……ほんでヒイラギ、今日はどしたん?」

「……こんなクソガキ相手にしんとけ坊ちゃん」

「相手がコイツやからって何してもええって気にはならんよワイちゃん。ちゃんと正面から声かけてきた以上は敵やない、そういう約束や」

「お優しいのはええがの、この際それは欠点ぞ……?」

「それでも対話拒否で一方的にってのはつまらん」

 

 虎人くんってばホントにやさしい、すき。

 

 ……それに比べて、武器こそ構えていないものの彼の隣に立つバ美肉おじいちゃんの目は険しい。……虎人くんの前でなにかするつもりは無いけど、この人の前だと変な素振りすら出来ず息苦しさがあるから苦手だ。しかも虎人くんと同じくらい強い上に私の事を目の敵にしてるからそもそも近付きたくないんだよね。

 

 この人の中身がおじいちゃんな事を知らなかった頃、いっつも虎人くんの隣に居ることが気に入らなかったから一回キルしようとしたことがあるんだけど…………手も足も出なくて地獄を見せられた。虎人くんとの契約(やくそく)のためにキルされて懸賞金を取り下げられるわけにはいかない私は必死で逃げたけど、その過程で当時の最強装備の大半を失う羽目になったのは今でも忘れられない。

 

「え、えへ……あのね? 今日は、プレゼント持ってきたの……す、すごく気に入ってくれると思う……」

「す、すごく嫌な予感しかしない……」

「こ、これあげる……ッ! うれしいよね……ねっ!?」

「猫ちゃんのお土産(セミの死骸とか)くらいうれしい…………ほんでなんなのこのThe氷属性な剣、ユニーク? もしかせんでも『殺してでもうばいとる』したやつよね……? こんなん被害者の怨念まみれで────あ? これの元の所有者(オーナー)……」

「へ、へへ……気づいた? それ、貴方のキライな黒狼のイキリ野郎が持ってたの……!」

「…………あの口先小僧、まんまと不覚を取ったか」

 

 少し前のアップデートによりアイテムの詳細画面で直近の所有権の移動を追う機能が追加された。PKによるドロップや盗品等の元々の持ち主を確認することが出来るためPKerの中にはこれによる事実確認を前提としたPK依頼を請け負うプレイヤーもいる。

 

 詳しい理由は知らないけど虎人くんはアレは敵だと私にポロッとこぼした事があった。黒狼から脱退した当時に何かあったのかもしれないけど……目の前の彼の気を引くのに使える情報と言うだけで私には十分だった。

 

「……いや、ワイちゃんってばリベリオスのことは別に嫌いやないけど」

「え!? ウソでしょ、虎人くんにとって敵なんだよね、ねっ!?」

「? おー、リベリオスは敵やね。アイツはサイガー100の敵やから、つまりワイちゃんの敵でもあるわけで。……いやまー、ワイちゃんのこと担ぎ上げようとかくだらん事考えとった頃は好かんかったけど、サイガー100を上回れると信じとる今のアレは悪くない」

「え、えぇ……?」

「…………まー、敵=嫌いってのはちゃうって話や。ワイちゃん的には殺す相手とも出来れば仲良くしたいし、仲良くなってから殺し合いたい」

 

 虎人くんが戦闘狂なことは誰もが知るところではあるけど、その極端な思考は正直理解に苦しむ。敵と仲良くするなんて出来るわけないのに。

 

 …………あ、でも、その口ぶりだと虎人くんはつまり

 

「じゃ、じゃあ……ね? と……虎人くんは私とも、な、仲良くなりたいってことだよね……! ねっ!? ねえっ!?」

「せやね、ワイちゃんは自分のこともちゃんと見詰めて理解出来るようになりたい」

「えうっ!?」

「あ……? どしたん」

 

 ……え? あれ!? 否定されたりはぐらかされると思ってたんだけど……いつもながら変な口ぶりだけど、やっぱり嫌よ嫌もなんとやらだね! 

 

「まーこれは貰っとく。……十六さん、今日の掛かり稽古は無しで良い?」

「あぁん? そりゃ構わんが────いや待て、まさかソイツ連れて黒狼館行くつもりきゃ!?」

「うん、これ返したらなアカンし。あと()()()のご機嫌取りで幾つかクエスト回ってくるね」

「えへへ……やったぁ」

「よせやめろ正気か!? ソイツとあのウスラトンカチがかち合ったらどうする!? ────ああ、ああッ! もうええ……! 黒狼館には俺が行っとく……おみゃーらはフィフティシア以外に行けッ!!」

「アッハイ。リベリオスには連絡しとくね……」

 

 ……思ってた流れとは違ったけど、とりあえず当初の目的通り虎人くんとの周回(デート)を取り付けることが出来た。

 

「ね、ねっ、私ドラゴン素材で新しい装備作りたいな……?」

「お、そらええな。今日はちょうどいっちゃん強いやつが“竜狩りの志錬”で運動不足解消しとる季節や。すぐ行こ、はよ逝こ」

「それって“龍”(ジークヴルム)のことだよね……? そんなに私とオフ会したくないの!? ねぇ……!」

「絶対イヤっていつも言うてるやん……それと、ワイちゃんのSNSに捨て垢で自撮りDMすんのマジやめろ、またやったらフレンド切るから。……てかそろそろお母────」

「ヒッ……!? ゴメンなさいもうしません……! 絶対、ゼッタイ……ッ!」

「止めても止まらんからな? ……てかお母さんが手を汚しそうになった時はその前にワイちゃんが【規制ワードです】」

 

 

 …………規制入った、本気だこれ。え、本当にリアル○人視野なの……? 

 

 

 というかあのムスコンさえ居なければ直接会いに行けるのに……なんであんなのが現実社会で野放しにされてるの!? 

 

「あ、お返事来た、はや。……自分のこと絶対殺すって言うとるけど? ワイちゃんは助けたらんよ」

「つ、冷たい……でも大丈夫、あんな奴またキルすればいいからねっ」

「リベリオス舐めすぎや。今回どう寝首かいたんか知らんけど……いや、不意打ちでもすごいっちゃすごいが」

「そ、そうゆうと思って、今回は正面から倒してきたよ。ほら、録画もし、してきたから……ほめてくれるよね、ねっ!?」

「…………マジか、それならリベンジ無理やね。てか、まともにやったら普通に強いくらいのはず……それを()()構成で奇襲のアド捨てて?」

「……詳しく聞きたい?」

「すごく聞きたい。……やっぱ()()だよ、お前」

「────あははっ♪」

 

 私だけを見ている彼を挟んだ向こう側で、黒髪美女のアバターが歯噛みしているのが見える。

 

 あー、やっぱりわかるんだ、虎人くんのこの“貌”の意味と価値が。まあ、虎人くんが傍において離そうとしないくらい強いなら知ってるよね。

 

 ……べー。

 

(このクソガキ……ッ!)

「ひー、こわ……虎人くんどこ行く?」

「竜狩りの志錬」

「まだ死んで欲しいの……!?」

「はっ……気が変わったから安心せえ、今日は絶対に死なさん。最強種()()()に殺させてたまるかよ。阿修羅会(クラン)連中(みうち)から背中刺されるくらい稼がせたる」

「せめて明日まで守護(まも)ってよ……! ねえっ!?」

 

 私こそが彼の最悪(さいこう)なんだ。他の誰にも譲らない。

 






今現在私が○害したい人物は、虎の人物像を深掘りするのにあの女を添えようと考えた過去の自分自身です。
ところで原作者がレイちゃん推しな理由って……ま、まさか

Q:見た目よし性格よし能力よし、接触すればするほど他者の正気を失わせる少年が居ます。その魔性に最も熱狂する人物とは誰でしょう?
A:母親

名前を言ってはいけないあの人:間違っても原作主人公とのフラグが立たないようにしておきましたぜ。

ゴリラゴリラ:見た目、メンタリティ、プレイスタイル全てが虎好みのお気に入り。サイガー0ちゃんもこの枠に該当する。

レイちゃん:虎がうっかり上の彼と同じ感覚で接した際は強めにシバかれた。将来的に彼女のグッドルッキング・マッチョアバターが性転換したら三分くらいへこむ。

虎:ゲーム開始時のアバター編集には時間をかけない主義。自分の身体データを読み込んで体型だけは性別問わずマッチョにし、女キャラなら胸とケツを雑に盛る。結果としてどのゲームでも顔の良いマッチョが出来上がる。

リなんとかさん:漫画最新刊読んでもっと好きになりました、それが僕です。

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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