シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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戦争とヒイラギを採用した過去の自分が嫌いな私ですが、何とか赦せそうな気がしています。


24 VS“最大罪業” 虎人、死す。

「……【黒の指先】」

『な、なんだあの魔法……!?』

『気味が悪いわ……』

「なんあれキショ!?」

「一応味方ユニットやから……! はよ前出ろォ!」

(NPCの前で黒系統、本当に手段を選んでない────本当に?)

 

 攻撃対象の影から体長2mほどの五体のゾンビ(厳密にはそんな感じのゴーレム)を湧かせ、遅れて単純な攻撃行動を持続的に行わせる魔法。脆いけど頭を潰すか聖属性でトドメを刺さない限りは復活し続けるそれらはうっとおしい嫌がらせに近い。

 

 呪術師や死霊術師(ネクロマンシー)系統の魔法に近い魔修羅の黒系統、虎人くんはそれをコロシアムでの戦闘など衆人の前では積極的に使用しない。その理由はwikiにも記載があるように性能が軒並み陰キャじみてる上に見栄えが悪いこと……そしてもう一つ、wikiには書かれてないけどNPC受けが最悪という理由がある。

 

 そもそも呪術師系統の魔法はNPCからすると根源的な恐怖を想起させるようで程度の差はあれど好感度に影響する。SF-ZOOの園長のように人間NPCからの好感度に無頓着なプレイヤーは気にせずバンバカ撃ちまくるけど、そんな真似をしていると『近寄ったら呪われそう』的な扱いを受けるようになる。つまりそれを使うほどに彼は今追い詰められている────

 

 

(そう思わせたいんでしょ?)

 

 

 私があなたの考えることが分からないわけがない……少なくとも一回は装備による食いしばりと、過去数時間で推定未使用のスキル“食いしばり”、そしてあと一つ────刃隠心得【空蝉】の()()()()

 

 装備によるダメージカット……固定値で20〜30程度だったかな? その効果が無ければかすり傷でも致命傷でレベル1初期装備の初心者でもキル出来てしまえる()耐久の彼は、本人が言うところの『残機』を増やす手段を常に探求している。京極ちゃんに対して忍術を複数使用したのを見た時点であれらがそのついでであったことはわかったし運用可能になっている事も確定した。

 

 彼がスペルの熟練度上げを欠かしているわけがないし発動タイミングに関しても百発百中だろう。視界外からの攻撃に対しても外さないという想定でいた方がいい。

 

「【駆り立てる赤】」

「……速度(AGI)とスタミナ回復バフ? 全員(横バフ)でこれとか倍率やばくない……?」

「はよ行け」

「「「デュナちゃんカワイイヤッター!」」」

 

 “敷かれ隊”の内三人が向かってきた……! 

 

【駆り立てる赤】は知ってる……あれは効果対象の人数に応じて使用者本人の速度・スタミナ回復速度デバフを伴うため、たぶんこの人数なら本人はまともに動けないはずだ。他ならぬ虎人くんにボス攻略を手伝ってもらった際にかけられたバフであり……つまり、彼は私がその効果を()()()()()()()()()()()()()

 

「しゃあっ」

「おらっ」

「イヤーッ!」

 

 左から両手槍、手斧二刀流、手槍+中盾。

 

 あのロリコンのシンパだっただけあり速度を無駄にしてないし目立った隙もない……適当に回避しながらさらに向こう側を見据える。

 

『脇を固めろ! 抜けてくるぞ!』

「「ウッス!」」

「俺もデュナちゃんと並んで戦いたかったなぁ……なんであの二人に脆弱ナイフ当たったんだよ」

「ちゃんとワイちゃんを守れたら何かしらお願い聞いて貰うから……」

「俺が守護(まも)らねばならぬ────」

「現金すぎるんだよね、ひどくない?」

 

 目の前に迫る三人の後ろでは大盾と大鎧を解除し両手で手槍を構えている二人、片手・両手持ちのどちらでも取り回しやすいバスタードソード系列のユニーク両手剣を構えるオタク受けが良さそうなデュナ。

 

 最後の1人は大盾を両手持ちして虎人くんの右……腕が無い側を補うように位置取っている。

 

 この変態共は無駄に強い────だからこそ割り切れる。

 

「わ、私は虎人くんが変態でも受け止められるからね……!」

「何を言ってるあのバカは」

「もう受け入れてやったら? そうすりゃ少しは世界も平和になるって……」

「平和の暁にはフォルティアンが誇るかわい子ちゃん四人の撮影会は二度と開催されんくなるのでシクヨロ」

「世に混沌のあらんことを! 俺たちの推し活のために死ね“開拓者の天敵”ィ!!」

「「「「「「世に混沌のあらんことを!」(「【ケイオス・ヴォイド】」)」」」」」

『よ、世に混沌のあらんこと……を?』

 

 愛と勇気が勝つんだってお約束を知らないなんて、みんな小さい頃テレビ見せて貰えなかったタイプなのかな? 

 

 まあそんなことより

 

「【その場しのぎの奇跡】」

「チッ……こっそりやったのになんでわかったん?」

「き、昨日パレードの打ち合わせしてたの知ってるんだよ……?」

「そうだったチョーホーも上手いんやったアイツ……!」

「……誰も気づけなかったの普通に怖くない?」

 

 高ランク使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)で発動した高位魔法で、変態共の奇声に紛れて虎人くんが用いたPK絶対殺すスペル【ケイオス・ヴォイド】による一分後の即死効果を浄化した。……というかこれって喪失条件厳しい魔法だったはずなのに対人好きの虎人くんが維持できてることに驚いた。

 

「────ん? なあゴールドタイガーさん、あの女俺たちの話をどっからどこまで……」

「……ヒイラギちゃーん、ワイちゃん達の秘密会議ってどこまで聞いてたー?」

「……え、えへへ。虎人くんの好きな『アウスちゃん』って私そっくりだよね、ねっ?」

「打ち合わせ後の霊使い*1談義まで聞かれてんぞ!?」(水霊使いエリア*2派)

「女人禁制の密会を暴かれたらお前のこと許してやれないよ……もう殺すしかなくなっちゃったよ」(火霊使いヒータ*3派)

「あのごめんマジでその巨乳アピールやめてこのゲームレーティング:C*4だから……!」(風霊使いウィン*5派)

「てか配信BANされたらどうしてくれるんや!? あとアウスちゃんの名前を口にすんなイメ損はワイちゃんだけに留めろォ!」(地霊使いアウス*6派)

「よせやめろキッズの健全な何かをお前ごときが汚すな!」(光霊使いライナ*7派)

『な、なんの話をしてるんだ……?』(何も知らないNPC)

 

 はい隙あり“心臓抜き”。

 

「ギャッ!? 卑怯な……」(闇霊使いダルク()()()*8派)

 

 向かって左の大槍持ち──女アバターの男プレイヤーの懐に潜り込み両手持ちした短剣スキルで即死させ、消滅前の死体を壁にして手斧持ちの攻撃をやり過ごす。

 

「「「TS太郎ーっ!?」」」

「ヤロー精神攻撃で揺さぶりやがったな!」

「デュナ()()派閥筆頭をよくも……!」

 『だからなんの話!?』(「【竜狩りの落雷】」)

 

 …………さっきのほとんど自滅だったよね? いやノータイムで切り替えて真っ先に攻撃仕掛けてくる虎人くんもそれはそれで怖いけど。合言葉をトリガーとする“通し”が幾つかあるのは昨日盗聴して把握してるけど……今のは虎人くんが合図無しで一方的に、周りの騒ぎ声にタイミングを合わせていた。

 

『ホ ギ ャ ア ア ア ア ア』

『ホ ギ ャ ア ア ア ア ア』

「ゴリラは怒ってなどいない、玩具を与えられた幼児のように奴を破壊して楽しもうとしているだけだ」

「なんあのグロゴリラキッショコワ!?」

 

 ────というか変態共の落ち着き具合から伺うにさっきの変な騒ぎは【黒の指先】のゾンビが起動するまでの時間稼ぎだったようだ。昨日の打ち合わせとは内容が即興でズラされたらしく気付くのに遅れた。

 

 ゾンビ五体のうちの二体が攻撃行動を開始したためで、もう後ろに退けない……というかゴリラみたいでキモイ!? あの鳴き声も聞いてると正気が削られそうな感じするし近寄るの無理……! 

 

「背筋がゾワゾワするんだけど……!」

「うえ──っ、こ、こわいよ──っ」

 

 ……私より近くに立つ敷かれ隊の奴らの怯えようを見るにどうやらこの嫌悪感は私の好みとかじゃなくてゲームとしての仕様らしい。

 

 それよりも雷の落下地点のマーキングを見逃さず、遅れて動いた手前側の手槍持ちによる突きをいなして手斧二刀流の方に流し────

 

『“スラックランペイジ”!』

 

 デュナの両手剣によるパリィおよびはじき判定無効の攻撃スキル。

 

 下がれば避けられる、でも次に繋がらなくて詰む。

 受ければ生き延びられる、でも固め殺される。

 

 だから、前に出る。

 

「【瞬間転移(ブリンク)】……!」

「またスクロール!?」

「金のかかる戦い方しやがって……! 誰から強盗(うば)ったんだよえーっ」

 

 各種消費アイテムを戦闘中に手早く、かつ幅広く活用できるのは盗賊系派生ビルドの専売特許だ。スクロールも当然その択に含まれるわけだけど性能が高い上位になるほど希少価値が高く入手出来る機会が少ない……つまり高額(たか)いため普段使いしようものなら漏れなく赤字になる。

 

【瞬間転移】のスクロールはランク自体は高くないもののその汎用性故に魔法適正が低い前衛職からの需要が大きく、裏ルートに出回ることがほぼ無い程度に市場価値が高い。まあ私はほかのPKとは違って虎人くんから融通してもらえるけどね(ドヤァ

 

 とはいえ融通してもらった物は当たり前だけど選択肢の一つとして把握されてるから決め手にならないという問題が────

 

()()やろ、【赤い馬脚】」

「グエッ……!?」

「わかりやすい。まともに動けんからって動かんと思った?」

 

 私の転移先に先回りしていた虎人くんの、置いておくようなタイミングの左アッパー……いや、斜め下からの軌道の左スマッシュが襲い来る。リアルの虎人くんが前回の試合でガード越しにも関わらず対戦相手を悶絶させていた殺人ブローと寸分違わぬ同じものだった。

 

 それを見ていたからこそ咄嗟に防御のヤマを当て両腕を間に合わせることが出来た。

 

「……防がれた? やるや────え、もしかして前の試合ちゃんと観たの? やだぁちょっと嬉しいかも……!」

「えへへへへへ……!」

 

 マスク越しで、しかも口元を手で隠しているにも関わらずハッキリ伝わってくる喜色満面にうっかりニヤけてしまう。虎人くんの女ファンって試合の内容見てないやつばかりだもんね? 接近禁止のせいで現地で観戦はできないけど私はそんな浅い連中とは違うんだから。

 

(……おー、そうだ、今のはわかりやすかった。ワイちゃんが対応するのが最適解な位置、そしてタイミングで()()()()()()()()。しかもこの期に及んでまだ逃げ出す気配が欠片もない、まだ本命じゃない────何を狙っとる?)

 

 ……それは後で本人に直接伝えるとして、発動後一度だけ命中させた物理攻撃のダメージとノックバック距離を魔力(MP)依存で強化する【赤い馬脚】。名前から誤解されやすいけど蹴り以外の攻撃もちゃんと補正するそのスペルによって大ダメージを負うと共に、距離を大きく離された。

 

 速度、ヒットポイント、タイミング……打撃攻撃におけるファクターは当然のように完璧であり、クリティカルも発生していたにも関わらず致命傷で済んでいるのはガードが間に合ったからだけでなく【赤の狂奔】の本人へのデバフでSTRとクリティカル倍率がかなり下がっていたからだ。

 

(…………それで致命傷!?)

 

 私の耐久は確かに低い、それでも単発火力が低い腕甲(ガントレット)の一撃でガード越しでも八割削ってくる……? 当て感が半端ではない……普通に食らっても一撃じゃ死なないくらいだと思ってたから心臓がバクバクしてる。

 

 刺突や斬撃と比較して打撃は刃によらない単純攻撃であるため苦手な相手や状況が少なく、システム的にもクリーンヒットした際のダメージが下振れることが少ない。一方でカス当たり時は刃物と比較してダメージが低くなる側面があり、総じて当て方が上手くないとDPSが下振れる印象だ。特に武器性能に甘えられないモンク系統の物理魔法構成は格闘ゲーム慣れしていないと使い続けるのは難しいし、理論値を出し続けるなら相当な────それこそプロレベルの安定したプレイヤースキルが必要であるとさえ言われている。

 

 ……それらを踏まえた上で虎人くんはおかしいのだ。格闘センスやプレイヤースキルの話ではない。

 

 どこまでゲームが上手で強くても死ぬ寸前まで追い詰められれば平然とはして居られないし、普段通りの判断力を発揮できなくなるものだ。さらに言えばこのシャンフロではAIで動くNPCでさえ死ぬ寸前までいたぶると怒りや恐怖で正常な判断が出来なくなったような行動を取るためプレイヤーに限った話でもない。……だが彼にはそれがない。ありとあらゆるシチュエーションにあってもパフォーマンスがブレない。

 

 ────彼は正気を失うことがない。あるいは、元より正気じゃ無いかのように。

 

 ありとあらゆる相手をキルし、幾度となく彼をキルしようと試みてきた私だから分かる……レベルとかゲーム知識とか、テクニックの巧拙等とは一線を画す異常性だった。

 

 

 彼は間違えない、だから────

 

 

「ぐおっ!? やっぱり煙玉使ってきたな……!」

「【アクティブソナー】! 十二時方向、人混みの中、離れとる!」

『対奇襲陣形、急げ!!』

「逃げたかあのアマ!?」

「わからん! 備えろ!」

『『『『『ホギャアアア……』』』』』

「あ、ターゲット見失ったキモゴリラがシュンとしてる……」

 

 煙玉を同時に4個投擲し、捕捉を切ってから群衆に紛れる。ただ虎人くんのアクティブソナーと動揺する群衆の反応から位置は割れているためここからタダでは奇襲できない。

 

(あー、この愉快な変態共頼もしいわ。打ち合わせ通りすぐさま体勢を────ヒイラギには昨日話した作戦は割れてる。…………そもそも言わんでおいた方がアド取れそうな事実をなんでアイツは自慢げに口にした?)

 

 虎人くんが大盾持ちを壁にしつつ私がいる方向に杖を向け指し示し、周りに共有している。

 

 ……私が群衆に紛れて奇襲を狙い出した段階で行われる虎人くんとデュナの()()()中心とした変態共の防御陣形。最初に盾を二つ減らしたのはこの状態を突破するための大前提で、ついでに頭数が二人減ったおかげでさらにやりやすくなった。

 

 敷かれ隊の連中は強いからまとも相手してられない、だからターゲットだけを狙う。

 

(一番最初の奇襲と【瞬間転移】でワイちゃん狙ったのは失敗ではなく、何かの準備だった……)

 

 最初の虎人くんへの奇襲の大目標は『マーキングの付与』だ。

 

 隠しジョブ:華麗なる鬼札(スティルジョーカー)

 

 虎人くんを含め誰にも明かしていない本当の奥の手、ジョブ固有転移系魔法の転移先として参照するマーキングを彼の左腕に付与しておいた。

 

 虎人くんはユニークスペルなどの大技を見せ技捨て技にして基本的な技量で圧倒するのを好むけど────やっぱり切り札(ジョーカー)は最後まで取っておくものだよね!! 

 

 ……胸に秘めた虎人くんへの『熱い想い』に忘れず火をつける。

 

 

「【見惚れるような夜を(ブリリアントジョーク)!】!!!!」

 

 

 

 

 パパパパァァァンッッッ!!!!

 

 

 

『うわあっ!?』

『な、なんだぁっ』

「め、眼が……眼が〜ッ!」

 

 断続的に弾けるクラッカーのような音と共に、発動地点に眩い光とビックリ箱のようなエフェクトが発生しこの場の────見渡す限り全ての存在の視線(ヘイト)が集まり、同時に私のアバターがマーキング付近に転移する。

 

 虎人くんの背と、あさっての方向を向いているデュナの姿が目の前にある。

 

 おそらくは犯行を終えた怪盗が派手な演出と共に大脱出するというのが本来想定された使い方なのだろう、プレイヤー・NPC問わずあらゆる存在が音とエフェクトに釘付けになっている。もちろん、ターゲットと変態達も例外ではない。

 

(────()())におるな? 受けて立つ……ッ!)

 

 ……見ても聞こえても居ないはずなのに虎人くんは左足を一方引き、私との間に腕甲を壁にするように構えてくる。

 

 だよね、この状態でも虎人くんは対応してくるし、きっと出来る。間違えてくれるなんて期待できない。

 

 

 迷わず行く。

 

 

【空蝉】もスキル“食いしばり”もタイミングを合わせるのが難しいが、この状況でも虎人くんは外さない。

 

 ならどうする? 

 

 どう外す? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………なぁんて、京極ちゃんみたいな押せ押せタイプは考えるよね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうするか、ではない。

 

 

 どう外すか、でもない。

 

 

 そんなのは脳筋(ファイター)の思考だよ。

 

 

 どうするか、ではない。

 

 

 どう外すか、でもない。

 

 

 

 

「────────っっっっ!?!?!?!?」

「────────ニィ」

 

 

 

 視線の誘引が解除されすぐに振り向いた虎人くんの目が私を捉え、即座に私の意図を理解したようだった。

 

 そうだよ、わかるよね? 貴方に私の願望(のぞみ)が分からないわけがないよね? 

 

 だから、叶えてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………………………は?』

「お疲れ様、足手まといちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面に尻もちを着き呆然としたデュナが、突き飛ばされて命を救われた役たたずが私達を見上げている。

 

「へ、へへ、守れなかったね、お飾りの隊長さん?」

 

 血の気が引くってこんな感じなんだ、遅れて状況を理解したNPCの顔色が青を通り越して白くなってる。

 

 

 ────フォルティアン西方警備隊長デュナ。昨日の時点でプランニングし最初から本気で彼女を殺すつもりで動いていた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……! 

 

 

 この瞬間までデュナを無視し虎人くんに狙いを定めていたのは敷かれ隊の意識から、連中のアイドルがキルされる想定を排除するための布石だ。

 

 好きな人の胸の中ってこんなに心地良いんだ……シャンフロのリアリティに私はかつてないほど感動していた。

 

 

「こ、の────クソ女ァ……ッ!」

「あはっ♡」

 

 

 どうするか、ではない。彼は私を上回る。

 

 どう外すか、でもない。私では彼を上回れない。

 

 

 だから、こう()()()()()。彼は私を下回れる。

 

 だから、彼に()()()()()()。この世で彼だけはそれが出来る。

 

 

 

 さもなければ誰かの大切なNPC(もの)が死ぬ。

 

 

 

「やあっ!」

「“食いしばり”……!」

 

 

 お腹に突き刺した短剣を抜き、もう一度突き刺すがスキルを合わせられトドメをさせなかった。

 

 スキルとしての“食いしばり”の効果は被ダメージ発生の瞬間に発動することでスキルLvに応じたダメージ軽減・ノックバック無効のスーパーアーマー、そして食いしばり効果だ。

 

 このタイミングで【空蝉】ではなく“食いしばり”を選ぶのは理にかなっている、【空蝉】と違い攻撃に合わせて私をキルすることができるから。

 

 

 …………でも、それは出来ないよね、ねっ? 

 

 

「────っ!」

「そ、そんなにガン見されるとちょっと……」

 

 彼の視線が私の胸元に釘付けになる……サービスのつもりでやってみたけど、思ったよりも恥ずかしい……

 

 ────『爆土の偶像〈Ψ式改〉』

 

 リョーザンパーク・PvPランク8、【本気☆ボンバー】Ψ谷屋の手により魔改造され威力・破片量が倍増し安全性が半減した爆土の偶像……『こんなもん二度と街中で作りません、使いません、持ち込ませません』と製作者本人と素材提供者一頭、そして悪ノリ配信者一名による謝罪会見が行われた後に全量破棄されたと一般には言われていた代物だ。

 

 ……サブリーダー所有のこれが阿修羅会のクラン倉庫の奥に保管されているのを見つけた時は背筋が凍ったけど、今日この瞬間のために窃盗スキルで持ち出してきた。

 

「えいっ」

「〜〜〜〜〜〜っっっ!!」

 

 ムニッと、胸の中のテケテケが彼にも伝わるように勢いよく押し当てる。

 

 爆発物ならなんでも良いわけではなく、彼がそれを見た瞬間脳裏に()()が過ぎってくれなければならなかった。

 

 踊っている最中のそれに衝撃が加わったらどうなるか、避ければどの程度の被害が生じるのか────原理的には小規模な転移魔法であるためアバターの判定が一時的に消える【空蝉】を合わせたらどうなるのか。

 

「ッッッ!!!!」

「きゃっ♡」

 

 期待はしてたけど実際にやられるとすごくドキドキする……! 

 

 最短最速で状況判断した彼は私を地面に押し倒しながら身体をより深く密着させるよう腕と脚で強く抱き締め────

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

『あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ”!?!? あれ私の秘蔵っ子ちゃんじゃない!!!! ガチで最後の一個だったのにあの淫売ィ……!!』

「……………………」

『……………………』

 

 俺はただ静かに十時を切り、黙祷を捧げる。恐らくはカッツォも手を合わせるなりしている事だろう。

 

 …………PK一つに、こ、ここ……ここまでやるかぁ!? 

 

『た、タイガーが高潔すぎる……! どうしようサンラクお、俺…………おえっ』

「おお、ち、落ち着けカッツォ……! 誠心誠意謝ればアイツは────いやダメだキルされた相手が悪すぎる……! は、半殺しで許して貰えねえかなあ!?」

『ま、まだ諦めるのは早いよ!? 唐澤弁護士なら何とかしてくれるはず……!』

「それどうにもならねぇやつじゃねえかよえーっ!」

『…………てか鉛筆、お前マジでどうすんの?』

『……………………ちょっと整理できないかも。あー……こんな時にかけてこないでよ……』

「とりあえず俺は今からアイツに土下座決めてからお前を差し出すからな」

『ちょっと待ってサンラク、その前に俺とテレビ通話繋げて貰える? 連座するから……』

『…………いや、いやいやいや、まだ! まだワンチャンある……!』

「ノーチャンに決まってんだろ……! アイツはなぁ……! 最近になってようやく三次元の異性に興味を持ち始めてたんだぞあのクソ女以外の女性(ヒト)によ……!」

『ごめんてぇ……てか聞いて!! 愚弟から改めた情報では彼女が虎人くんをキルするか、あるいは彼女がキルなりデスなりでペナルティが執行されるかで賭けをしてたらしいの……! つ、つまり……』

『……引き分けで勝負なしになるかもしれないって、こと!? 確かに最悪の事態は避けられるかも……!』

 

 よ、よ……よかったあ〜〜〜〜〜〜ッ!! 

 

「……いよいよアイツに殺されるかと思った」

『俺も……』

『殺されるって流石に大袈裟じゃない……?』

『タイガーのリアル知らないんだから黙っててもらえる……!? 一般ピープルじゃ彼には抵抗すら許されないんだよ……! 刀とか槍とかあっても無理っ!』

「俺はショットガンとかあってもやりたくねぇ……せめてダンプカー、いやキツイか……?」

『陸走してる時点でワンチャンやられるんじゃね……?』

「じゃあとりあえずヘリか……」

『真面目にやりたいから小学生並の話しするのやめてもらえるかな?』

「『こちとら大真面目なんだよ……!』」

『いい加減に……え、マジで言ってる? 流石にお変クス案件だよ……?』

 

 冬眠出来なくて人里に降りてきたヒグマを山に追い返した実績があるバケモンなんだからなアイツは! いっそリアルで引き合わせて半殺しにさせてやろうかこいつ……何もしないか一線超えるかの二択しか無さそうだしダメだな。

 

「なんにせよ決着はついたんだな」

『俺たち呼んだ意味無くなっちゃったね』

『……それはそれとして効果的な謝罪の相談をしたいかな』

「『断る』」

 

 どういう順序で弁明するかなぁ今回のこと……それにしても、配信のコメント欄見るに歴史的な()()扱いされるっぽいなこれ。

 

 爆風が晴れ、全身が血肉……をマイルドに表現してると思しきポリゴンに塗れている二体のアバターが重なっている様子が映し出された。

 

 ……あん? 

 

「おい鉛筆。このゲームって死んだ直後の操作って出来るか?」

『え? いやHPがゼロになった瞬間に操作を受け付けなくなるよ。一応蘇生はアバターのポリゴンが全損するまで受け付けられるけど』

『じゃあ死んだ本人が自分に蘇生とかは出来ないんだね……?』

『そうだけど……』

()()()()()?』

「視点が遠くてハッキリしねえけど、クソ女の方……()()()()()()?」

『……いや、例外はある、ね。聖職者限定の死亡時自動発動する復活魔法とか、他には────“歌う骨”!? ま、まさか……!』

「おいなんだそれ説明しろ!?」

『サンラクこれ! このページ……!』

 

 カッツォから送られてきたリンクを開いて表示されたのは、非公式wikiの盗賊系ジョブ固有スキルのページだった。

 

『…………スキル“歌う骨”、盗賊系ビルドの相手をPKする際の知識として一応目を通したことはあった、けど使われてるところは見た事なくてピンとこなかった────死亡後自動発動のこのスキルの効果は』

「……『死亡判定から一定時間、任意のアイテムを一つ使用できる』」

『…………おい、うそだろ、嘘って言ってよ!?』

 

 

 その手に握られているのは三角錐のアイテム、ガラスのような材質で中には液体が封じ込められているように見える。

 

 それが軽く放られてクソ女のアバターに接触すると、緑色の謎の文字列が空中に飛び出して────

 

 

『────あは』

 

 

「『『終わったあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ”〜〜〜ッ!!』』」

 

 ヒイラギが墓から蘇る!! 

 

*1
某カードゲームの可愛らしいイラストが人気のキャラクター達の総称。知らない人はどうか調べて欲しい。

*2
水色の長髪と瞳の正統派美少女

*3
赤いロングヘアで気の強そうな貧乳少女

*4
※15歳以上推奨の内容が含まれます

*5
大人しそうでどこかあどけない容姿のポニーテール少女

*6
少しボーイッシュな容姿のデカパイ眼鏡少女

*7
天真爛漫な笑顔で白い短髪にアホ毛が特徴な少女

*8
霊使いの黒一点の中性的な容姿の少年……なのだが、コイツのように性転換させたりする層もいる






なんか強くない? 京極ちゃんこれ天誅できんの?

あと本作のスケベ要素は虎に全てに背負ってもらおうと考えていましたが淫売の小娘にも荷を分かちあってもらうことにしました。よろこべよ

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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