シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
『キルログが上がらん…………は? 死んどらんの……? なんで、どうして────ッ!?』
『虎くん、その木片って……ま、まさか……』
『逃げた!! 逃げた!! 羽黒チャン・カワイさん、ヒイラギが逃げた!!』
『!? 逃亡……!!』
『逃げたことより逃げおおせた事実に驚けよヤブ蛇柱がよえーっ!』
『ガチのマジでもうそのまま死んでくれって思ったね』
『……! 【
『でかした! フォルティアンのリスポーンポイントを全て封鎖しろっ』
『ヒイラギをいち早く見つけた者にはこのタイガー金貨を進呈するッ』
『あ、できればコロシアムのVIPチケットも欲しいっス。それがあればサバさん達も動かせるっス』
『手持ちの10枚を先に進呈するッ』
『キミ、グッド雇用主として認めるネ。全員“着せ替え隊”に片っ端からDM送れェ! 俺はサバさんに『俺ならここにいるゼ』なんで居るんスか怖っ、こえーよ!?』
『焦んなヨ今殺してやっから』
女戦士のアバターから発せられたドスの効いた猿語録、チケットの束を横から掻っ攫ったその男プレイヤーの声には聞き覚えしかなかった。急に鯖缶出身者が画面に生えてきて困惑してるのが俺なんだよね……マジでこのゲームやってんのかあのロリコン。
『殺せー!! 今日中に!! ログアウトする前に……!! キルした奴にはリョーザン・パーク保有資産の半分を進呈するッ』
『アァ? それってどのくれェなんだ』
『具体的にはワイちゃんの全財産』
「全然具体的じゃねぇ……! それはどのくらいなんだよえーっ」
『今のを聞いた連中が全員野蛮人化してヒイラギ・ラッシュになる程度なのは確かみたいだよ』
『特賞の金額が数千億円とかになるって言うアメリカの高額宝クジあるでしょ、たぶんその当選者が特定されたくらい? ……ウチの愚弟、てか
「小国の国家予算レベルかよ」
『私だって選手控え室にアバターが軟禁されてなければワンチャン狙いたいよ』
ネトゲの中とはいえ想像を絶する大富豪気分を味わえるのは良いもんだな、闘技場運営も暗黒金持ちの道楽って感じがしてきた。なんなら暗黒金持ちごっこするサロンとか作ってそうだしアイツ。
『てか軟禁って……?』
『あぁ、言ってなかったね。“
『半公式とはいえプレイヤー主催のイベントにしてはちゃんとしてるね』
『試合前の裏工作対策……というのは建前かな、こうしてログアウトして好き勝手するのを許されてるし。実際は虎人くんの
「あぁ……そりゃガチギレするな」
『え、サンラクくんそれだけで納得するの? どうして?』
「アイツの嫌いなものは『不戦勝』『塩試合』『手抜き』な」
『どこまで
『台パン激しすぎて草超えて庭』
骨折とかしたら仕事に響くんじゃね? いや知らねえけど。
『…………いや、うん、正直私もあの子のこと舐めてた。まさか残りの“食いしばり”全部吐かせただけじゃなくて情報のなかった自動蘇生とユニーク魔法まで使わせるなんて……! やばっ、あの子が女神に見える』
『実際鉛筆との試合を優先するならあのブラックホールの矢は使わず隠しとくべきだったよね? 事前情報なしじゃ対応すら出来ないだろうし……そんなにキルしたかったのかな』
「よしんばこの後勝てたとしても予後悪すぎじゃね? アイツがそこまでするような相手をけしかけたわけだろ、俺なら憎悪で怒りを燃やすね」
『淫売の小娘ェ!!』
恐ろしく早い手のひらドリル……俺たちじゃなくても見逃さないね。
まあそんなことより今はイベント開会時刻の15分前、コイツの今回の計画における理想は『会場到達前にキルする、あるいは開会時刻まで足止めして失格にする』というもので、どちらも達成出来なかった。よって自動的に次善策である直接対決に臨むことになった。
『試合開始はセレモニー明け、残り時間はあと30分弱……改めて情報を整理するよ。まず事前情報がなかった手札について』
・【土竜の鱗、瞬改】:脆弱性が暴かれてるからまた使う確率は低いと思う。
・【神々の滝】:【極小詠唱】を併用した辺りクールタイムが長い大規模なユニーク魔法、これはたぶんもう使えない
・【封臓熔融】:プレートアーマーをバターみたいに、それも打撃武器で斬り裂いたエンチャント。
「超高倍率の防御無視効果ってとこか?」
『回避で対応がマストと考えとこう』
・クソデカメテオ:【
「どうしようねえだろあんなの」
『撃たれるまでは意識したところで無駄』
『もう撃てないと思いたいなぁ』
・【黒の指先】:あんなSAN値直葬スペル、コロシアムでは絶対使わない
「敷かれ隊からは一躍人気者になってるけどな。見ろよあれ、スクショを遺影みたく掲げてやがる」
『見た目だけの女性陣とは対照的に見た目に反比例した高潔さ……俺がギャラリーなら涙で頬を濡らすね』
『女性陣の具体的な内訳を教えてくれよ』
・横バフ各種:使う意味なし
・【ケイオス・ヴォイド】:…………使えるんだ、彼。ま、まあこれはレギュレーションで禁止されてるから大丈夫。
『レギュレーションとかあるの?』
『競技性を確保するための“梁山泊ランキング戦ルール”が適用されてるよ。単純禁止のアイテムとか、ラウンド内併用禁止のスキルとか魔法が設定されてて、六割くらい虎人くんをはじめとするランカーへの縛りとクソ試合防止策って感じ。逆に違反しなければどんなクソ技使ってもOK』
・【羿射九日】:とんでもなく速い矢とブラックホール……
「即撃てる感じじゃ無さそうだったよな」
『あの子がグライダー展開する直前には狙い定めてたし詠唱必須……詠唱自体も長いタイプの魔法かな』
『とりあえず遠距離で弓を構えたら動き回って撹乱、ブラックホールもあるから大袈裟に回避……そんなとこかな』
『ちなみに君たちはアレを見てから対応出来そう……?』
「あんなクソ技見てからじゃ無理」
『撃たれる前に対応する以外無いね』
『クールタイム1日とかあってくれないかなー!』
『……初見だけでこれ?』
「もう十分だ……もう十分だろ……!?」
『いえいえまだです、これからですよ。改めて虎人くんとの直接対決前に君たちの所感を聞かせてもらおうかァ』
所感を求められてもなぁ……俺はこのゲームミリしらだからよくわかんねえよ。
「あー……今の虎人ってもうオワタ式*1なんだろ? そこまで追い込んでんなら耐久差押し付ける相打ち狙いで終わりじゃねえか?」
『お、サンラクいいとこに気が付いたね? わかるよ、俺も彼のランリプ*2見始めた頃に同じこと考えてたし』
『まあまずそこだよね。残念ながら彼に対してそんなあからさまなスタンスで挑もうものなら……』
「うおっ!? すげえ弾幕……STGかな?」
チャットアプリ経由で一つの動画ウィンドウが共有されてきた。
その動画の内容は半年近く前に行われたデイリートーナメント、その決勝戦の映像だった。動画内の虎人はトーナメントを勝ち抜く過程でに多少の有効打を受けているようで、おそらく今現在の状態より多少マシ程度ではないかと思われる。
対するは金髪碧眼の凛々しい見た目の女騎士然とした軽鎧アバターの槍使い。装備重量を減らした上で速度バフを盛り、左手には水晶素材の魔法防御特化っぽい中盾を構え弾幕の中を最短距離で突貫していた。
ヤバそうな攻撃だけを可能な限り回避するか盾受けしつつ、それ以外の攻撃に対しては必要以上に対処していない。接近後確実に倒し切るためにスタミナ温存を重視しているのだろう、ゲーム内の水準は分からないにしても一見して『やれそうじゃん』と思える程度のプレイスキルが感じ取れた。
近距離。
速度をそのままに右手の槍を突き出して牽制し、その後に本命のシールドバッシュをぶつける動き……速度も相まって轢くという形容が似合う。命中すれば相当な反動があるだろうが、それでも虎人の方が先に倒れるはずだ。
…………が
『いつ見ても馬鹿げたDPSしてるよね……』
「……かなり被弾抑えてこれかよ」
最小限の杖さばきで刺突をいなすとほぼ同時、杖で円を描くような攻防連動の動きで繰り出された顔面への殴打により、衝突前に軽装女騎士のHPが底をついた。
『まず問題なのが彼の平均火力。今の動画みたいにユニーククラスのレア魔法を牽制と
『言われて思い出したけど多勢に無勢だ仕掛けた奴らのアバターも蒸発させてたよね。こわー』
「クソデカメテオに耐えたゴキ百合ってすごかったんだな……てか相手に弾幕STG強制すんのが本来のスタイルなのか、そりゃ周りに味方がいたら邪魔だわ」
『本来というか代表的なスタイルの一つかな、それしか能がないなら純魔対策しとけば実際どうとでもなるんだけど……』
『ふぅん、そういうことか』
「あーそういうことね、完全に理解した」
鉛筆の言わんとするところはわかった。
シャンフロにおけるアイツの構成は
「つまりこっちから接近戦に持ち込まなきゃ死ぬってことだろ?」
『そうだね』
『それってタイガー相手にこっちから距離を詰めるってことだよね?』
『そうだよ』
「馬鹿なの?」『死ぬの?』
『そこを何とかするためにこの通り頭を下げてるんでしょうがよえーっ』
「ふんぞり返ってんじゃねぇか! あーっ」
クソゴミ前衛能力をPSで無理矢理カバーした結果として遠中近隙のないフルコンタクト野蛮虎が爆誕したらしい。自由度とかアバターの操作性が絶賛されてるとかは聞いたことあったが、そこまで行ったらゲームとしてダメだろもう。
「接近戦でも火力あるのがな……マジな話キツイぞ。俺もカッツォもアイツと格ゲーでガチる時はなるべく近付きたくねえし」
『少し前にタイガーにギャラクシア・ヒーローズ2の調整付き合って貰ったんだけど彼のPSYボーグ・ロードが近接でも普通に戦えちゃっててさ』
『わかったからこの話はここまでっ、試合開始までに詰めなきゃならないことはまだあるんだから! ……このシャンフロにおいて職業別とか役割別とかでそれぞれ最強と議論されるプレイヤーはいくらでもいる。けど、けどね……“プレイヤー最強”に関してだけは「
『────────あー』
……………………あー、そのレベルね、シャンフロのプレイヤーって。
虎斗は昔から付き合いの良い奴ではあるが、それにつけてもシャンフロに熱中し始めて以降も誘えば俺とのクソゲー並走に付き合うし、カッツォに対しても結構な時間を割いている。時間が有り余っているならわかるがアイツに限ってそれはない。
アイツは完全休養日に設定している日曜日以外は忙しい。もしも俺が年一クラスのクソオブクソゲーに本腰入れたとして……それと同時期にアイツと同じように貴重な可処分時間を他人のために使えるか? 少なくとも見返りなしにやりたくは無い。
…………本当に熱中出来てんのか怪しいもんだ。
「んじゃまあ、時間もねーし直前にはなるがアイツの最大の強みを教えてやるか。ちょっと部屋行ってくるから待ってろ」
『あ、そういえばお前今タイガーの家なんだっけ。いいね、
『え、なに? 秘蔵のえっちな本とか? 動揺誘うのに使えそうだし是非知りたいカナ』
『エロよりはグロじゃないかなあ……』
『えっ、彼ってそういう趣味……!?』
『ちげーよ! てかあのオープンスケベにその手は通じないと思うよ!?』
「鍵のかからねえ部屋に堂々と水着キャラのタペストリー飾ってるやつがエロ本晒された程度ビビるかよ」
『あ、瑠璃の宝石でしょ。8000円する等身大のデカイやつ買ってはしゃいでたの知ってるよ』*3
『マジで通用しないやつじゃん……え、彼って高校生だよね? 家族の目とか大丈夫なの……?』
そもそもその家族、というか母親に仕向けられた結果の二次元趣味っぽいんだよなぁ……お陰でリアル女子と間違いを犯したことが無いと思えば悪いことばかりじゃないんだが、息子可愛さにしても行き過ぎだろ。
なんにしてもこのまま試合が始まっちまうと鉛筆は100パー負ける、それだと虎人が不憫だ。
・タイガー金貨:リアルで『エイハブ』を読んだ虎が悪ノリで制作した貴重品。これを担保に各種NPC商会が保有するユニークアイテムをレンタルできる程度の信用価値があるが、敷かれ隊のリーダー格である羽黒チャン・カワイ(ヤブ蛇柱)はその価値を承知の上で下記アイテムを必要と判断し要求した。
・サバさんがVIPチケットを欲しがる理由:タイガーコロッセオのVIPルームでは幼女ちゃんコラボメニューを注文できる。
番外編12
https://syosetu.org/novel/363204/37.html
・暗黒金持ちサロン:フォルティアン地下に存在するとかしないとかウワサがあったりなかったり(開業届提出済)
・鰹のシャンフロ知識レベル:梁山泊の配信やランカーリプレイを見て他ゲーの参考にしてるエアプ状態。動画にコメントするとたまに英語のリプライが付いてくる。
セヴェリアン・ローウェルガチャまで石を備蓄すルと申します。
レミエールガチャに備えすぎた結果ノルムーを引けなかった哀しい過去が現在も響いていルと申します。わ、私には似たような理由でライトと福福と盤嶽先生を実装当初に引けなかった過去があるんだあっ。
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
-
あ、いっすよ(快諾)
-
頭湧いてるんですか?
-
そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも