シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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忍者と極道、近日連載再開……超絶感謝(マジアザ)ッス


番外編12 傘者と夢女 サイガー0「“強請”(オネダリ)……いいですか?」

「あ、あのゆきちゃん……? さっきから何を見てるの……?」

「──推しカプ」

(…………分別はある子だと思ってたのに、遂に実在男性にまで“やおい”趣味を向けがったな──ッ!!)

 

 隣で頭を抱えているマネージャーちゃんを無視して私は、商品棚で身を隠しつつその光景を目に焼きつける。

 

 

 ────奇跡にまみえていた。

 

 

 私の名前は蒼井ゆき。幼少から役者名・碧依悠姫としてのキャリアを積み重ね、現在では人気声優として世間よりお墨付きを頂いている22歳だ。ただ今回のところはそんなこと、まるで全然取るに足りない事実だから忘れてもらって良いですよう。

 

 地方での公演(イベント)を終えた翌日のこと。東京に戻る前の半日という短い時間で観光を楽しんでいた中、ふと入店したゲームショップにそれはあった。 

 

 

「なにみとるのー」

「ぐぇーっ!? 体重かけんな……!」

 

 

 男だ、しかも二人。

 

 

 お買い得プライスコーナーでゲームを物色しているなかなか可愛い顔をした飾りっ気の無いジャージ姿の少年と、そんな彼の頭に顎を乗せてもたれかかる超高身長のワイルド系イケメンという“幻想(ユメ)”のようなワンシーン。三次元(リアル)ではおよそ許容(ゆる)されない(ガチ)(ラヴ)……! 美術館(ルーブル)未来永劫(とこしえ)守護(まも)られるべき芸術(アート)のような光景に私は既にそそりまくりだけど、けどね……それだけでは無いのですよう。

 

「見ろよ、“猿空カン”で有名な()()『VR麻雀舞踏会』だ……!」

「そんな“皆様ご存知”みたく言われてもワイちゃん困る。……えっ、麻雀? テーブルゲームでクソゲーとかありえるのん……?」

「“外宇宙麻雀”の混沌を前に現代人の常識だの当然だのは吹けば飛ぶ矮小なものでしかないんだぜ」

 

 声のプロである私が聞き紛うことは無い……その声は明確に“助手T”と“友人S”だった────! 

 

 顎の置き場を頭から肩に移しつつ、リアル助手Tはリアル友人Sの手にあるパッケージを覗き込んでいる。友人Sも鬱陶しそうにしつつも振り払ったりはせず…………い、美顔(イケ)てる男子同士でそんなことするなんて実在(ありえ)て良いの!? 

 

 そもそも、私が今ゲームショップ・ロックロールに入店しているのは一週間前のとある配信……バーチャルライバー・紫電ライガさんのゲーム配信における『“ハコ・ディ・ロチャ”世界スコア大幅更新』という歴史的快挙、そのアーカイブを視聴してからゲームへのモチベーションが上がっていた事が一端にある。

 

 私が“現場監督”に声を吹き込んだあのゲームは、もちろん私自身もプレイした……が、その狂気的難易度故に“現場監督”のたわわを堪能することも叶わず今では収納の肥やしとなっている。……我担当声優ぞ? そんな無体が許されてええんか?? 

 

 SNS上で“現場監督”へのコンプライアンス違反という悲願が為されたと聞いた私はリアタイ出来なかった事実にひとしきり咽び泣いた後でアーカイブを視聴した。

 

 

 するとどうだ────そこには至高の“美”があった。

 

 

 作り物(イミテーション)ではない本物(ガチ)共演(イチャイチャ)……太陽(S)(T)踊り(ワルツ)を思わせるリアル親友(マブ)同士の遠慮も加減も無い協奏(ギグ)は、私が日頃から夢想し(おもいえがい)ている輝々(ギラギラ)(マブ)しい関係性(カップリング)だった。

 

 ……本音を言えば“次”がいつなのか本人たちに聞きたくて仕方なかった。けれど

 

「推しの間に入る不届き者(シャバゾー)は“死のペナルティ”ですよーう」

 

 イエスBL(カサノバ)お触り厳禁(ノータッチ)

 

 ………………ね、“お隣さん”? 

 

 

「────」

「────」

 

 

 一瞬目が合うも、すぐさま互いに目を逸らす。

 

 この辺りの女子高生らしい。

 女の子にしてはやや背が高く肉付きも良い、育ちが良さそうで柔らかな印象の美少女が……隣の商品棚に身を隠し、刺さるような眼光で彼らを見据えている。

 

 私ほどの愛好家(オタク)であれば臭いで理解(わか)る……さては夢女子(アンチ)だなおめー。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「まさかサイガ-0からこんな弱みを突かれる日が来るとは思っとらんかった……」

「……なんとでも言ってください。今日ほどの機会がまた巡ってくるとは思えない以上は私も手段を選んでいられないんです。……しかし重いですねこのテーブル」

「ワイちゃんとしたことが、甘く見とったようやの……もうちょい、もうちょいそっち」

 

 秘匿性を最大限確保できる虎人さんの自室、タイガーコロッセオの上階部にある『覇者の間』にて……立派な調度品の数々を部屋の端まで運び寄せた私たちは互いに武器を構え対峙している。

 

 従来は高額な利用料故に無用の長物と化していた貴賓室(VIPルーム)の一つだったというこの広い部屋は、コロシアムでの試合を直接観戦可能なロケーションも相まってプレイヤー個人のプライベートスペースとしては間違いなく最高級だろう。部屋の四隅に複数配置されたユニーク武器や装備一式を纏うマネキンも悪目立ちしておらず、むしろ趣さえ感じさせる相応の格式ある空間を演出していた。

 

 姉さんと二人で招かれた初回には、私がまだシャンフロの知識が不十分だったため姉さんから『下手に触って倒すなよ? 壊そうものなら黒狼(ウチ)の財政が傾きかねんからな……!』などと脅かされたものだけど…………それがまさか嘘でも大袈裟でもない純然たる事実だったのだと、最近になってようやく理解できた。あれら一つ一つが手が届く場所に置いて欲しくない、およそ個人で弁済するのが非常に厳しい代物揃いだ。

 

『泥棒にでも入られたらどうするのか』と聞いた際には、『マスター国松よろしく戦法の実験体にするよ、むしろ入ってきて欲しいからSNS上で定期的に公開してるよ』などと頭のおかしい回答がきて頭を抱えたことは記憶に新しい。マスター国松という方が何者なのかは知らないけど……。

 

 ……さて、そんな極力暴れたくない場所で私たちが臨戦態勢をとっている理由はと言うと

 

 

 

 

「キエエエエエ!! ……あのごめん、もっかい確認していい? ワイちゃんが、えっと──サイガ-100とゲームとリアルの両方で仲良くやってけるようになった過程を詳しく? それがホントにお望み?」

「あ、はい。()()姉さんに『異性を部屋に招き入れる』という世紀の偉業(プラチナトロフィー)をなさしめた虎人さんのお話を詳らかに……っ!」

「ケエエエエエ!! ……前も言うたけど話したくないし、そもそも絶対参考にならんよ?」

「勝手に咀嚼しますので聞かせてください。話してくださらないなら────【座標移動門(テレポートゲート)】のことを姉と雷牙さんに報告します……!」

「クエエエエエ!! ……どうせ強請(ゆす)ンならもっとマシな要求せえよっ、しょーもな!!」

「し、しょうもないとは何ですか!? わ、私にとってはこれ以上なく大事なことなんですっ。それとテンポが悪いのでその猿叫やめてください」

「キャアアアアア!!」

 

 事の発端は数十分前……今日は虎人さんとクエストに出る予定だったけど、個人の秘密あるいはクラン外秘の情報を三つも目の当たりにしたためにそれどころではなくなった。

 

『あのクソ女から条件を聞いてから苦節数週間……ババーン! ねんがんの、【座標移動門】を、てにいれたぞ!』

『おめっとさん、虎の人!』

『ありがとう! …………いやなんやねん合計1000回って!? まともにプレイしてたら気付くわけないだろうがよえーっ』

『そ、それより、人族の街を案内してくれてホンマおーきにな!』

『……おー、回数稼ぎのついでやから気にせんでええよ、楽しかったし。ああ、これでようやくワイちゃんも自前で八雲紫(やくもゆかり)*1ゴッコが出来る……』

『“ヤクモ”? うちのオトン……カシラがたまに“なんとかヤクモ”って呟いとる時があるんやけど、なんぞ知っとるん?』

『……またなんか情報踏んだ? いや、まったく別人というかそもそも別ゲーやし……そのカシラって、ラビッツのお城かなんかで隠居してるってヴォーパルバニーよな? ワイちゃん会ったことある?』

『無いはずやで。というか虎の人はカシラから名指しで兎御殿登上禁止されとる』

『え、なんで…………あー、ラビッツ二回目の時の、街のメス兎達が続々と泡吹いて倒れたアレ?』

『エードワード兄ちゃんが招待した時の「“死を呼ぶ青の馬車”事件」やな。阿鼻叫喚の地獄絵図やったで……ん? ホンマにそれが理由なんかな……? あー、それとなんやけど、そのエードワード兄ちゃんが『いつも代理しか寄こさねぇ』ってボヤいて…………あっ』

『どしたんピーツちゃ…………サイガー0、いつからそこに?』

『て、転移門が顕れる直前から……』

『ふぅん、ツーアウトってとこか』

『スリーアウトですよ』

 

 サードレマでの待ち合わせ時間までの暇つぶしがてら、虎人さんのお気に入りであるらしい謎の行商人の露店を探して覗いてみようと思い立ち向かった先……入り組んだ路地裏の奥の奥でそんなやり取りが行われていた。

 

 大きな背嚢を背負った喋るヴォーパルバニー、兎の国ラビッツへの2回目の招待という情報……そして争乱を呼ぶ【座標移動門】! 

 

 なにかと抱え込んでいる虎人さんだけど、 今回の内容は正直かなり手に余る。特に前二つに関しては絶対に口外してはならない……万が一にも“愛好家達”に知られようものなら、その人たちは本当にありとあらゆる手を尽くすだろう。そうなると当然、虎人さん本人だけでなく私や姉さんを含む関係者全てに被害が及ぶことは疑いようがなかった。

 

 それらに関しては墓場まで持っていく覚悟でいるものの、最後の一点に関してはそうでは無く……むしろ最低でも姉さんには報告しないと後が怖い。

 

【座標移動門】

 

 ファストトラベルがプレイヤー共通のシステムとして実装されていないこのシャングリラ・フロンティアにおいて、使用者と同行者全員が行ったことのある場所への門を開くそのファストトラベル魔法は…………()プレイヤー中で若干名という使用者の少なさから、あるプレイヤーが習得している()()()()()()という噂程度の情報でもマーニが動く程に価値が大きい。

 

 それが全エリア踏破済みで、さらに今後実装されるであろう新規エリアを当然に踏破出来るようなトップオブトップがそれを手にしているとなれば大手クラン間での引き抜きや奪い合いが発生することは間違いない。小競り合い程度は確実に起こる。

 

 それを虎人さんは先程、他クランのリーダーである姉さんはともかくとして本人が属するリョーザン・パークのリーダーである雷牙さんにも『黙っていて欲しい』と言ってきた。

 

 …………そんな弱みを見せられふと、前に聞こうとしたけど断られた話を聞くチャンスと考えたのと、ロックロールでの光景を目の当たりにしてちょっと機嫌が悪かったのも相まって性格の悪いことをしているのが現在の状況だ。

 

「……そもそもどうして姉さんやライガさんにも秘密にしたいんですか?」

「だってあの二人は遠慮もヨーシャも無く絶対に使()()やん。送迎ついでに周回とか付き合わされそうでメンドイししつまらん……」

「間違いありませんね。……虎人さん、私は何も多くを望んでいるつもりはありません。た、ただ、お話を聞きたいだけなんです……!」

「この部屋のマネキン全部じゃダメ……?」

「何の価値もありませんッ!」

「マジで言ってるこの子……!」

 

 無価値は流石に言い過ぎではあるけど、実際のところ偽心でもない。

 

 ユニーク装備というものは希少価値が高いだけでなくピーキーな性能であることが多く、二束三文で処分しようとでもしない限りは買い手が着きにくい……流動性がとても悪いのだ。

 

 既に相応かつ最適な装備がある私からしたら手に入ったところでむしろ扱いに困るという面は紛れもない事実だった。使いもしないレア装備を貯め込みがちな虎人さん自身もきっとそうなのだと思う。

 

 それはさておき、虎人さんはゲームにおいてパターン化された金策やレベリング等に時間を取られることは本人が言うところの『つまらない』と感じるタイプであり、可能な限りPvPや新しいクエストをやっていたいというスタンスらしい。より言うとMMORPGというジャンルに共通の反復作業(ルーティン)に費やした時間とプレイヤーのレベルが正比例するゲーム性がそもそも合っていないんじゃないかな。

 

 そのため周回に誘われた際は他の提案をしていることが多く、気分次第では身近な相手からでも逃げ出すことがある。……逃げたところでアバターがとても目立つ上にNPC人気の高さが災いしほぼほぼ捕捉されてるけど。そして身内に甘い上に面倒臭がりなのか積極的に仕返しすることも無いからなぁ。

 

 特に姉さんの場合は逃げた後しばらく捕まらなければ最終的に自分から出てくる始末だ。甘いなんてものじゃない。

 

 もとより強くて裏が無い寛大な人格で周囲から時に頼られ時に利用されている人が、上位クランが大金を支払ってでもスクロールを用立てている希少魔法まで使えるともなれば、それはそれは良いものですよね…………都合が。姉共々つけ込んで本当に申し訳ありません……。

 

「……ぶっちゃけワイちゃんが話したくない理由の大半がここにおらん本人のイメ損にしかならんからであってやね。家族の幻滅する話しとか聞きたくなくない……?」

「そ、そうは言いますが、姉さんと知り合って一年弱の虎人さんと違って私は十年と少し同じ屋根の下で育ってきたんですよ? 今更そうなる余地はあまりないというか……」

「十? 思ったよか短い……あー、たしか大学は寮生活とか言うとったねサイガー100」

「…………一度だけ寮にお邪魔する機会がありましたが、ひどかったです。ルームメイトの方も悪い意味で相性が良くて……」

「こっち側の余地を開拓しないで欲しいと虎は思っているよ」

「……言われてみれば普段から私ばかり陽d────()()お話してもらってますよね。た、たまには私も姉さんのお話とかしましょうか……?」

「いいや、本人がおらん場所で探り入れるような真似は好かんし気持ちだけ貰っとくわ。男なら男らしく堂々と、引け目なく向かい合ってわかり合いたいやん?」

「ぐもあッ」

「ローキックを受けたヘビー級ファイターのような声……!? だ、大丈夫……?」

 

 とても立っていられなかった……自分自身の卑小さに押しつぶされるようだった。

 

 …………陽務くんの前に自分一人満足に立たせられない私に対し目の前の彼はどうだ。意識も、目標も、志も、何一つ及ぶべくもないじゃないですか。

 

 罪悪感が胸に刺さり、自己嫌悪という毒が広がった身体が重くて持ち上がらない……。 

 

「わだじだっで……わだじだっでぼんどは向ぎ合いだいんでずぅぅぅ…………うあ゙ぁああ゙ぁあぁ゙ああぁぁ」

「丸くなって泣かないで……! と、とりあえず座ろ? ねっ? 誰かー! お茶とおやつ持ってきてーッ!!」

 

 テーブルとイスを引きずって来た虎人さんに抱えられ卓に付くと、コロシアムのコンシェルジュNPCがお茶を手にして入室し……少し遅れてメイド服のようなデザインビキニ姿の小柄な少女の手により、大きな丸皿の外縁部にだけお菓子が盛り付けられた不自然なデザートプレートが配膳された。

 

「『ランチ部門において満足度大陸一と幼女師匠よりお墨付きを頂いたVIPルーム限定メニュー』……として絶賛売出し中の豪華四段アフタヌーンティーセット────“ティーアスちゃんご満悦ジャワティーセット(特別チェキ付)”や」

「一段しかありませんけど……」

「え? …………原形ないやん!? あの、セレブがお茶する時の、なんか、なんかいい感じにオシャンな……金色の三段あるやつ 、どこへっ」

 

 口元に証拠を残した幼女ちゃんことティーアスはケーキスタンドを小脇に抱え、コンシェルジュの後に付いてそそくさと去っていった。

 

「……当然のように現れますよねいつも」

「理由はわからんけどワイちゃんどーも睨まれてるくさいのよ。……腹減ると出てくるのは普通に本人の勝手やろうけど」

「それはともかくカーテンを締めてもらって良いですか……?」

「質の高いコラボメニューはウケがいいってライガの姐さんが言ってた」

 

 眼下で行われているバトルロイヤルに見覚えのある不審者集団……着せ替え隊の人たちが大挙して参加していることが気になっていたけど今合点がいった。間違いなく上位入賞賞品の『VIPルーム利用券』が目当てだった……。

 

 ともあれ、せっかく出された料理なのでありがたく頂戴し────

 

「…………一口で【美食舌】が。……あ、あの、これ……おいくらですか……?」

「⟡.·PRICELESS⟡.·」

 

 元より利用されていないVIPルーム利用の権利を賞品として提供する代わりに、そこでのサービスで集金する方向に梁山泊は舵を切ったようだ。普通に注文したら相当なお値段になること間違いなしの代物を愛好家(ファン)向けに売り出すなんて質の悪い商売だなぁ……。

 

「……ほんで、何を話そか。初めてお邪魔した時の話でええかな?」

「話してくれるんだ……なにはともあれ是非っ! しかし改めて考えても姉さんがあの部屋に他人を招き入れる様子がまるで思い浮かばないんですよね……」

「まーそん時アホほど酒飲んどったからね。お部屋片付いて調子乗ったんか、ついこの前友達と集まってタコパとかしたらしいのん」

「…………続けて?」

「うん。……それは先週、ワイちゃんがタコ釣り初挑戦に失敗し「そっちじゃありませんよ……!」

「軽いジョークやん、分かっ────フリスビー!?」

 

 大皿を投擲したもののあっさり回避され……壁に当たる直前で、慌てて入室してきた幼女ちゃんのアクロバットキャッチにより回収された。……システムがフードロスを容認しなかった事実に気を取られていた虎人さんの肩をつかみ、『次やったら即報告(DM)』と念を押して続きを促す。

 

「だ、第二回大月輪が終わった後にな、お疲れ会的に二人でご飯行ったんよ」

「……ご飯に行く仲が前提かぁ」

「そこは自分で頑張って欲しいとワイちゃん思うわけ。……そもそも当時のサイガー100ってばノーマスクのワイちゃんにまだ慣れとらんくてな、目が合うだけですーぐ俯いてお酒クピクピしてて……で、段々シャンフロのサイガー100と話してる感覚になってると気付いた時にはもうベロベロ、最後の方は人語話しとるかも怪しかったわ」

「~~~~~~~~っっっ!?!?」

 

 姉さんはお盆やお正月の集まりでいつもお酒を飲んでいるけど、呂律が回らなくなるどころか紅潮している姿さえ私は一度も見たことが無い。……どれだけの量を口にしたのかは置いておいて、そもそも異性と二人きりで自分だけアルコールを!? いや虎人さんは未成年だし当然だけど……覚悟決まりすぎじゃない姉さん!? 

 

「大変やったのはお店出た後でな……袖引っ張ってあっちこっち行こうとするんよ」

「そ、袖を!?」

「最初は飽きるまで付き合おうかしたんやけどね……終わる気配無くて朝までお散歩コースやって、しゃーなし本格的におしまい宣告したら今度は座り込んで帰宅拒否やし……」

「ええ……?」

 

 そんなワンちゃんみたいな真似を……

 

「ほんでもう無理やり家まで送ろうと()()抱っこしt「抱っこ!?!? ”こう”!?!?!?」いいリアクション助かる。……運ぼうとしたらやね、バカみたいなテンションで身体揺すりまくった挙句『ウッ……』てワイちゃんオキニのジャケットに──!」

「あっ…………も、もう細かい所は良いので着いてからの話が聞きたいです」

「……いやまー、部屋まで連れてって気道確保してベッドに寝かせてやね、うっかり寝起きに転んだりせんよう足元綺麗にしてやね、山のような洗濯物の片付けしてやね、あと…………いや、安全確保しておしまいよ。ね、参考にならんかったでしょ?」

「ソ、ソウデスネー」

 

 素面の姉さんには断じて出来ない奇行の数々に、酩酊の恐ろしさとアルコールの凄絶(スゴ)さに感じ入り、そして骨身に染みた遵法意識が恨めしかった。*2

 

「お酒は二十歳になってからという当然の話はしないとして、どうやったらご飯に誘ったり出来るようになりますか……?」

「……『お弁当一緒に〜』ではいかんの? じょーとー手段でしょ。ワイちゃんだって二人きりじゃなければそのくらいはOKするし」

「誘った側からすれば『NO』ですからねソレ!? そういうのが怖いんですよ……!」

「誘われた側からしてもよー知らん相手とサシは怖いし……とりあえずランチのお誘いより朝の挨拶を習慣にするとこから始めようや、『サイガー0くんおはよ〜☆』ってな感じで名前とセットのワンツーがオススメ」

「な、名前を……?」

「それとなく特別感は出しとかんと」

「うぅ……険しいなぁ」

「今回の脅迫はそれ以下ってこと……? ……もう昔の話やからぶっちゃけるけど、サイガー100でさえそーいう積み重ねをすっ飛ばして絡んで来たから会ったばかりの頃は印象悪かったからねー? マジでそういうのって大事」

「えっ、あの姉さんが知り合ってすぐの人の気に障るような真似を? それはそれで想像できないなぁ……」

 

 私達って姉さんに関して拙い面ばかり話題にしてて忘れがちだけど、そもそも姉さんは礼を失する行動を通常は取れない。取()ないではなく取()ない、そうなるように教育受けてきたからだ。

 

 いや、今の姉さんが実際どうなのかはわからないけど……少なくとも私には、過日の辛く厳しい稽古の記憶が仙姉さんを筆頭とした家族の顔と共に脳裏をよぎるためきっと出来ないと思う。

 

「……まー、今にして思えばリュカオーンとの初遭遇直後で頭が面白(おかし)くなっとったんやろね。二言目にはあのワンちゃんを倒したい、強くなりたくてしゃーないと……それで知り合ってすぐのワイちゃんにプレイスキル目当てで付きまといかけて来やがったの」

「う、うそでしょ……そ、そんなことが許されていいんですか!?」

「全然許しとらんかったけど。お問い合わせフォームがゴチャゴチャしとってメンドーやから通報せんかっただけで、その辺で勝手にデスってくれんかなくらいは思ってた。……ご存じの通りそうそうドジ晒すタマじゃなかったから気に入っただけで、最初は普通に嫌いやった」

「きっ!? ふ、普段から姉さんとそれ以外の人とで雰囲気が全然違うのに、そ、それは流石に無理がありません……!? 柔らかいを超えて“もちもち”な自覚ないんですか!?」

「もちもち……? ……だから昔の話やって。今やられても『遊んどるなー』くらいにしか思わん。おんなじ行動でもよー知らんクソ女と仲の良い友達がやるのとで全く(ちゃ)うよって話し」

「積み重ねって大事ですね……ッ!!」

 

 強さ至上主義の奇特な虎人さん相手だから巻き返せただけで第一印象最悪じゃない姉さん……! 

 

「ついでに昔と違って今のワイちゃんには悪魔を超えた悪魔の殺し屋を雇う伝手があるで精神的に余裕があるし。だが基本的なモラルも守れない者には……“死のペナルティ”ね!」

「幼女ちゃんの監視下でそんなイリーガルな話をして大丈夫なんですか……?」

「…………首繋がってるしセーフ。ところで、腕の良いアサシンとかスカウト系のプレイヤーと知り合ったらレベルも所属もカルマ値も性癖も問わないからすぐワイちゃんに紹介してね、ワイちゃん個人が“真剣(ガチ)”で投資するから……」

「性癖……わ、わかりました。けどどうして投資なんて?」

「そいつを同じ土俵で抑えられるプレイヤーがおらん状況自体がまずい。マジで一人もおらんからイベントやるたびにワイちゃんが身柄抑えとかなきゃいけないのん……」

「は、はあ……」

 

 ……これって例の“あの人”の話だよね? 虎人さんでも手に負えない存在なのだと思うと一周まわって畏敬が勝るから不思議だ。

 

「虎人さんって女の人から振り回されてることが多いですよね……」

「……ワイちゃんってばよっぽどの事が無い限り自分から女に絡みに行くことが無いし、ほんで頼んでもないのに寄ってくるような人種は周りを振り回すタイプが多いってだけやないかなぁ」

 

 彼女の他にも、虎人さん本人から聞いた話で天音さん──アーサー・ペンシルゴンさんとのファーストコンタクトは街中で待ち伏せされてたとかで、ジョゼットさんからは隙があってもなくても命を狙われてて……動物園(SF-ZOO)の園長さんからもモンスターと間違えられてフィールドで不意打ちされたことが交流のきっかけだとかも聞いたことがある。さらにリョーザン・パーク(旧:ライガ親衛隊)のリーダーである麗華さん──雷牙さんですら虎人さんを丸め込んでサブリーダーに据えたらしいし、叩けば他にいくらでも似たような話が出てくるだろう。

 

「……姉さんもそうですかね?」

「ワンちゃんが絡むとダントツよ」

「殿堂入りですね」

 

 聞くまでも無いことだった。

 

*1
虎の好きな弾幕STGの登場キャラ、ワープ的なことが出来る。本ユニバースでは美麗でルナティックな弾幕をVRで堪能できるんだァ

*2
『斎賀流護身術「骨抜」』の話はやめろ、ワシは今機嫌が悪いんや。「だから折れてないのに……」じゃないんだよえーっ





忍者と極道を“拝読”(よ)め……鬼龍のように

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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