シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
「正月開始だ────GO────っ」
「正月駅伝はリアルだけの専売特許じゃねぇんだぜ」
「イダテンの兄貴! ファイブルからの荷物を抱えた漢達が見えてきやしたぜ!」
「ドン・マッコウはどこ行った!?」
「へい! プロテイン切れで脱落しやした!」
「た……大変だあっ、“冥王・母です”が……着物コス制作に失敗して死んだあっ」
「だァからガチ志向はやめとけって言ったろォがよえーっ」
「ちょっと! 聖女ちゃんに献上する巫女服はどうなってるの……ッ!?」
「あの……“ヴォーパル餅”なんて変な餅がつき上がったんスけど、何なんスかこれ」
「『クリティカル判定時、対象に即死効果』こわっ……こえーよ。……………………はうっ」
「た……大変だあっ、
ま た な に か や っ て る
クリスマスほどの盛り上がりは無いものの、一部のプレイヤーが今度はお正月という概念をシャンフロにもたらしてどんちゃん騒ぎをしていた……!
特にサードレマ発祥でシャンフロに宅急便という概念を作ったというクラン“みちひらき韋駄天便”*1の人達が目立っており、街から街へのアイテム運搬に忙しなくしている。
……メンバー全員が長距離ラン特化ビルドで肌の露出が多く、なにより全員がボディビルダーのようにポーズを取りながらアバターの肉体美を辺りに見せつけつつ走っているため嫌というくらい目立つのだ。ポージングは何らかのスキルの発動条件であって……性癖の発露ではないはずだ。
「俺を見てくれえええええ!!!!」
あー! あー! 聞こえません!!
「……ヒロくんから返事きた?」
「ええと……
『帰省しない人達とか年末忙しくてイン出来なくてバブルに乗り遅れた人達が団結したらしい_(:3」 ∠)_
こっちもライガの姐さんの鬼電でログインさせられたばかりでよー知らん……トキシック・イーグル嫌ぁ(´;ω;`)』
……だって」
「バブルの時と比べて午後十時軍の連中が目立つ理由だけはわかったね」
犯罪者プレイヤーが街中に潜伏する際に用いる外套を纏った京極ちゃんにもUIを見せつつ話す。
シャンフロに提携したメーラアプリで虎人さんにこの正月ムードの説明を求めたものの、残念ながら向こうもログインしたのは少し前であったようで大した情報は得られなかった。
……お正月の今、私と百姉さんを含む斎賀家一同は京都の龍宮院家に泊まりがけで来ているのだけど、シャンフロログイン皆勤の姉さんとは違って私はVR機器一式を自宅に置いてきている。結構な荷物になるのだから持ってくるわけがない。*2
ただでさえ新春稽古や親戚付き合いで忙しく、その上地元を離れたせいで陽務くんの姿を見られない日々が続くのだから……ただでさえ防具とか道着でかさばる荷物を増やすほど中毒では無い。…………だというのに
「
「一度くらい仙姉さんに絞られた方が良いかも……」
────実際には今現在、百姉さんに押し付けられた現金を手にネットカフェの鍵付き個室でシャンフロにログインしていた……!
ちなみに当の本人はというと京都滞在にあたって個別で取ったホテルからログインしており……今はどこか別な
『次の方どうぞ。聖女様のご加護があらんことを……』
「ありがとうございます……ところでどうしてこのようなことを?」
『“オミクジ”? という占いの話しを聖盾騎士団団長からお聞きになったという聖女様から、『少しでも励みになれば』と開拓者の皆様にお配りするよう仰せつかりました』
(……ジョゼットさんが発端か)
聖女イリステラこと聖女ちゃんの祝福が付与された“おみくじモドキ”を神官NPCから受け取り列を外れる。……この紙片の配布というゲリライベントこそが今回姉さんを駆り立て、そして私が巻き込まれた理由だった。
(『大願の進展に備えるべし。戦場跡に吉凶あり』。戦場跡というと……“去栄の残骸遺道”、美味しくないなぁ)
ゲーム的な話をすると、このおみくじは記載されたエリアに限ってアイテムドロップ数・レアドロップ率が倍増する期間限定アイテムだ。
所持しているだけで『聖女の祝福(限定)』という効果不明のバフがかかり、具体的な内容が明言されていないにも関わらず前述した恩恵が『明確にある』という報告が続出したことで開拓者達のお正月は荼毘に付された。
「「「フンッ! フンッ! フンッ! フンッ! 今だっ、メンズ・ダーッシュ!」」」
「ヨッ! フトモモ最強種!!」
「肩にオーバドレス・ゴーレム載せてんのかいっ!!」
……“韋駄天”の人達が平時に増して往来している理由はそこにある。
各エリアで周回をしたことでインベントリ過多に陥ったプレイヤーからの依頼でドロップアイテムの運搬代行、また周回プレイヤーらの消費アイテム需要に応える生産職プレイヤー・NPCらの消費アイテム運搬および素材アイテム補充依頼のため大忙しらしく…………この光景がシャンフロにおける新年の風物詩にならないかと真剣に危惧されていた。
そもそもシャンフロにはお正月を始めとする日本的慣習が……少なくとも現状報告されている限りでは存在しない。けれど暦に該当する仕組みはあるのと、世界観的にも『開拓の始まり』は非常にめでたいものであるとされているため今のお正月ムードはそれに便乗したものだと考えられる。
季節限定イベントを基本的に行わないシャンフロには珍しい例であり……なんというか、ゲーム開発も一枚岩でありえないのだと思わされた。
『お正月と言えばウチの旦那がね、会社の社長だかを説得するのに随分と
(……なぜ今このタイミングで年末の真奈さんとの雑談が脳裏に?)
なんにせよ“
『次の方……──ッ!? 貴様は……!』
「あー、ストップストップ。
『……失礼ですがお名前を』
「
『…………はい、確かに。では……』
「ども〜。…………うーわ、大砂漠だ。あそこ苦手なんだよね」
「レッドネームなのにどうして並んでるのかと思ったら……」
「僕は身内に『どうにかし
(大差ないと思う……)
高カルマ値のプレイヤーはNPCから蛇蝎のごとく嫌われるため、本来であれば今行われているようなアイテムの支給等は受けられなくなる。……そのため、それらのプレイヤーは非正規・非合法な方法や経路で掠め取ろうとするらしい。具体的にどうするのかは想像の域を出ないからハッキリと言えないけど。
「さぁて、貰うもんは貰ったし……あまりポやっとしてられないから僕は失礼するよ」
「? 急に何を……」
「いやね、ヒロくんの性格的に担保してくれるのはアイテムまでで────」
『居たぞ! 居たぞォ!』
『逃がすな! 一斉に掛かれ!』
「ほら来たっ、じゃあね!」
(『そん後は知らん』というところかな……)
…………NPC集団による大捕物の渦中にありながら京極ちゃんはまるで動じていない、“慣れ”を感じさせる飄々とした立ち回りだった。
虎人さんのやり方は甘いのか厳しいのか判断に苦しむ。
「ん? メール……?」
ちょうど今考えていた虎マスクのあの人からだった。ええと……
タイトル:新年のご挨拶
本文:あけましておめでとうございますm(_ _)m
ワイちゃんだけおみくじバフ付与されてないんだよね、ひどくない?
添付ファイル:『空を飛ぶ数多のトキシックイーグルを背景に、あからさまに劇毒持ちな長ナスのような体色とフォルムの巨大アリクイに立ち向かう馬マスクレスラー』のスクショ
(まともな人がやることじゃ無い……!)
あのエリアの地上部攻略という正気を疑う所業に加え……干支に扮した虎人さんのたわけたスクショを見てモチベーションがついに尽きた。
年末年始の陽務くんのお話とか聞けないかなあ……。
……思い立ったが吉日と考え早速、今年最初の雑談に誘ってみたところ驚くほど前向きな返事が返ってきた。トキシック・イーグル相手の周回が普通に嫌だったらし────ッッッ!?!?
「うおっ!? なんだアイツ……」
「“黒狼”と“韋駄天”はできてたのかぁっ」
『友達とやったボドゲがおもろかった』というメールの文言により迷いが消えた私は、ポージング珍走団の後に続いて彼らを風よけに利用しつつ合流地点へと向かった。
遅ればせながら新年おめでとうございます。
今年の目標はロジカルな文章を書けるようになることです、対戦よろしくお願いします。
ポージング決めてる間だけアホほど防御力が上がるスキルを修得出来るジョブの設定を最近知りました。早く本編でヒロインちゃんにポージングさせて、やくめでしょ。
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
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あ、いっすよ(快諾)
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頭湧いてるんですか?
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そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも