僕、大きくなったら〇〇ちゃんと結婚する!! 作:おじいちゃん
第1話
「凄え久しぶりに来たな、モンド」
方やエルマイト旅団、方やこだまの子出身の戦士。両親の出自が出自ということもあり、幼少期から各地を転々としていたが故、具体的にどこの国が故郷というわけでもなく。
流石に子供を郊外で生活させるのは倫理的にどうなんだ、という微かに残った配慮から中心街で生活していたこともあり、少しばかり記憶にある懐かしい景色を歩く。
冒険者となって暫くはスメールに留まっていたが、折角ならば幼少の頃のように各地を転々としてみよう、と。そう思い立ったのが16の春。
璃月の方が近くはあったが、どうせなら旅路を最初からなぞりたい。そんな欲求から、まずはモンドを訪れた。
「ふふん、風に誘われてこの地に訪れし勇士よ。天は汝にこう告げている。この"断罪の皇女"と共に依頼を達成するべきである、と!」
「お嬢様は普段諜報任務を中心にこなしている為、正面からの戦闘には不安が残る。故に、貴方の協力を得たい、とのことです」
「あ、ああ。了解した。……その、名前を聞いてもいいか?」
「失礼致しました。私はオズ、此方はフィッシュルお嬢様です」
「異邦より訪れし勇士よ、汝の魂に刻まれたその真名をここに告げるが良い!」
「カンナだ。よろしく頼む」
改めて、依頼内容を聞いてみると。モンド郊外に集落を作っているヒルチャールの討伐。一応暴徒がいるらしいことから決して気を抜くことはできないものの、神の目を持つフィッシュルであればそう苦労せず仕留め切ることが可能なはず。
一般的に依頼においてペアを組む場合、報奨金が折半となることから、多少リスクが伴おうともソロで行ける任務はソロで行く、というのが冒険者の鉄則。
ではなぜ、フィッシュルは彼に同行を依頼したのか。
「アビスの魔術師、か」
「はい。雷元素のバリアは、お嬢様と些か相性が悪いものでして」
フィッシュルの神の目は雷、カンナの神の目は炎。アビスの魔術師の面倒なところは、それぞれの個体が異なる元素のバリアを纏っているところにある。
偶々ヒルチャール集落の指揮をとっている個体が雷元素のバリアを纏っていた。一応遠くから弓でチクチク撃ち続ければそのうち倒せはするが、凄く面倒。かと言って、この依頼をこなさねば割と手持ちが怪しい。さてどうするべきか、というところで、カンナを見つけた、というわけである。
「よっし、俺が突っ込むから援護よろしく」
「任せるが良い! オズ!!」
「畏まりました」
その場で結成された冒険者ペアに緻密な戦略など存在するわけもなく、結局はサーチアンドデストロイ。カンナが片手剣を持って正面から突っ込み、フィッシュルとオズがその援護をする。
直線的に突き進むカンナ。進路上にいる雑魚ヒルチャールは例外なく切り伏せられているが、その速度についていけず、倒されはしないものの何も仕事ができていないヒルチャールがポツポツと発生。そう言った撃ち漏らしをフィッシュルとオズが撃破するという、噛み合っているんだか噛み合っていないんだかわからない連携を繰り広げる。
「っと、流石に硬えな」
暴徒の斧を躱して首筋に一閃、炎を纏わせた剣を振るう。確かな手応えから少なくはないダメージを与えられたのだろうが、それまで。一撃で倒し切ることは叶わず、暴徒は斧を振りかぶり、反撃の態勢に入る。
普段であれば適当に躱すのだが、今回はペア。フィッシュルにも活躍の場を用意してやるか、と。敢えて受け太刀の形を取り、暴徒の斧を受け止める。
単純な膂力の勝負では互角か、少しカンナが上回る程度か。押し合いを続ける最中、狙いを定めるのはフィッシュルの弓。カンナの真の狙いは、押し合いを行うことにより暴徒の足を止めることにあった。
「断罪の矢よ、今こそ彼の者を貫かん!!」
雷元素を纏わせた必殺の矢が、フィッシュルの弓より放たれる。寸分違わず暴徒に直撃した矢はその頭部を穿ち、絶命した暴徒は力を失い、地面に倒れる。
「我らが組めば向かう所敵なし───」
「っと、ちょっと失礼!」
フィッシュルの背後から、何者かを中心にして円状の形を取った雷元素の攻撃が襲いかかる。
間一髪、それに気付いたカンナはフィッシュルを抱き抱え、後方に退避。結果、両者共に無傷での回避に成功した。
「く、油断したか……!」
「ま、反省だな。ちょっと下がってろ、俺がやる」
カンナを直接狙う形で雷を落として迎撃を試みるアビスの魔術師だが、いかんせん相性があまりにも悪すぎる。
彼のスピードに碌に対処することも叶わず、ただただ炎元素を纏わせた剣によりバリアがガリガリと削られて行く。
そうして、遂にはバリアが破れ、地面に落ち。そこにカンナの一刀が振るわれる。
「討伐完了ってな」
終わったぞー、と。フィッシュルに向けて手を振りながら歩くカンナ。
その背後。まだ微かに息の残るアビスの魔術師が、その杖を振るい、最後に少しでも嫌がらせを。自身の生命を終わらせた男に対する復讐を、と。最後の力を振り絞った瞬間に。
「はぁ……」
突如、"氷元素''を纏った槍がその身体に突き立てられ、今度こそ完全に息の根を止められる。
唖然とするカンナとフィッシュル。そんな二人を他所に、下手人は一言。
「ねえ、カンナ。敵が完全に死んだことを確認するまで油断するな。私、貴方にそう言ったわよね?」
「え、すまん。誰?」
「───はあ?????」
後に、フィッシュル曰く。その時の彼女はまさしく世界を滅ぼさんとする大魔王の如く、憤怒に塗れた表情をしていた、という。
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